1 / 8
1
しおりを挟む
1000年の命を持つ魔女としてこの地に生まれてから、随分と時間が経ったようだ。
同胞は既に、魔女狩りによって全滅した。親も友人も私には誰一人として残っていない。
最後の生き残りの友人が十字架のもとで散ったとき、私は人間の前に絶対に姿を表さない事を決心した。
友人の分まで生きなければと、そんな焦燥感に駆られたのだ。
それからというもの私は森の奥深くで自分の屋敷を守りながら生きてきた。
自給自足の生活。けれど特に困ったことなどなく過ごせていた。
魔法があれば大抵どうにかなるし、暇な時間は大好きな森を散歩して、魔法薬の材料に目ぼしいものを持って帰れる。
ここでは何をしても、何を取っても誰も文句を言わない。そうやって自分なりにこの生活を謳歌していた。
けれどずっと一人ぼっちだったわけではない。
日課の森の探索中に見つけた、捨て子に小さな男の子を気まぐれに拾ってから、私の生活は常に人間とともにあるものになったのだ。
久しぶりに誰かと過ごす日々はとても充実したものだった。
ただ、やはり他人を気にしながらの生活は慣れていなくて、厄介事が起きてしまうことも何度かあったが。
当初、子供は怯えた様子で部屋の片隅で震えていた。
だが本来は破天荒な性格の持ち主だったようで、私に心を開いてからの暴れぶりがすごかった。
それこそ初めの怯えぶりが嘘であったかのようだった。
あれから15年。
小さな子供だったあの子は今ではすっかり大人になって背丈もいつの間にか抜かされていたし、体つきも男らしくなった。
出会った時点での年齢はわからないが、もう立派な大人の男性の仲間入りをしたと言えるだろう。
そう思って、何度か人里に下りて人間社会に戻ることを薦めたのだが、何故か私に懐いてくれた彼は今もこの屋敷で小間使いとして動き回っている。
彼とそばにいれることは嬉しいいが、本人の幸せを考えるとどうにも複雑な気持ちである。
今のところここを出るつもりは無いらしく、日々穏やかな生活を過ごしている。
そして今日は森の散策に付き添ってくれる予定───のはずだった。
同胞は既に、魔女狩りによって全滅した。親も友人も私には誰一人として残っていない。
最後の生き残りの友人が十字架のもとで散ったとき、私は人間の前に絶対に姿を表さない事を決心した。
友人の分まで生きなければと、そんな焦燥感に駆られたのだ。
それからというもの私は森の奥深くで自分の屋敷を守りながら生きてきた。
自給自足の生活。けれど特に困ったことなどなく過ごせていた。
魔法があれば大抵どうにかなるし、暇な時間は大好きな森を散歩して、魔法薬の材料に目ぼしいものを持って帰れる。
ここでは何をしても、何を取っても誰も文句を言わない。そうやって自分なりにこの生活を謳歌していた。
けれどずっと一人ぼっちだったわけではない。
日課の森の探索中に見つけた、捨て子に小さな男の子を気まぐれに拾ってから、私の生活は常に人間とともにあるものになったのだ。
久しぶりに誰かと過ごす日々はとても充実したものだった。
ただ、やはり他人を気にしながらの生活は慣れていなくて、厄介事が起きてしまうことも何度かあったが。
当初、子供は怯えた様子で部屋の片隅で震えていた。
だが本来は破天荒な性格の持ち主だったようで、私に心を開いてからの暴れぶりがすごかった。
それこそ初めの怯えぶりが嘘であったかのようだった。
あれから15年。
小さな子供だったあの子は今ではすっかり大人になって背丈もいつの間にか抜かされていたし、体つきも男らしくなった。
出会った時点での年齢はわからないが、もう立派な大人の男性の仲間入りをしたと言えるだろう。
そう思って、何度か人里に下りて人間社会に戻ることを薦めたのだが、何故か私に懐いてくれた彼は今もこの屋敷で小間使いとして動き回っている。
彼とそばにいれることは嬉しいいが、本人の幸せを考えるとどうにも複雑な気持ちである。
今のところここを出るつもりは無いらしく、日々穏やかな生活を過ごしている。
そして今日は森の散策に付き添ってくれる予定───のはずだった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
Sadness of the attendant
砂詠 飛来
児童書・童話
王子がまだ生熟れであるように、姫もまだまだ小娘でありました。
醜いカエルの姿に変えられてしまった王子を嘆く従者ハインリヒ。彼の強い憎しみの先に居たのは、王子を救ってくれた姫だった。
氷の魔女と春を告げる者
深見アキ
児童書・童話
氷の魔女と呼ばれるネージュは、少女のような外見で千年の時を生きている。凍った領地に閉じこもっている彼女の元に一人の旅人が迷いこみ、居候として短い間、時を共にするが……。
※小説家になろうにも載せてます。
※表紙素材お借りしてます。
10歳差の王子様
めぇ
児童書・童話
おれには彼女を守るための鉄則がある。
大切な女の子がいるから。
津倉碧斗(つくらあおと)、小学校1年生。
誰がなんと言おうと隣に住んでる幼馴染の村瀬あさひ(むらせあさひ)は大切な女の子。
たとえ10歳の差があっても関係ないし、 どんなに身長差があったってすぐに追いつくし追い越せるから全然困ったことじゃない。
今は小学生のチビだけど、 中学生、高校生になっていつかは大人になるんだから。
少しづつ大人になっていく2人のラブコメディでありラブストーリーなちょっと切ないお話。
※こちらは他サイト様で掲載したお話を加筆したものです。
月神山の不気味な洋館
ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?!
満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。
話は昼間にさかのぼる。
両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。
その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。
猫のバブーシュカ~しましましっぽ彗星の夜に~
catpaw
児童書・童話
猫の女の子バブーシュカは自然豊かなセント・ポピー村にあるタンジェリン夫妻の家で幸せに暮らしていました。しかしある事から、自分は夫妻にもう必要とされてないのだと思い、家出を決意します。家に閉じ込められたバブーシュカは彗星に願いをかけて家から飛び出しましたが、思わぬ世界へと迷い込みます。服を着て後ろ足で立って歩き、まるで人間のように暮らす猫たち。人間は見当たりません。王族・貴族・平民。猫が身分階級を持つ社会に突然放り込まれ、『おまえは何者だ』と問われるバブーシュカ。--バブーシュカの波乱に満ちた物語が始まります。
オレの師匠は職人バカ。~ル・リーデル宝石工房物語~
若松だんご
児童書・童話
街の中心からやや外れたところにある、「ル・リーデル宝石工房」
この工房には、新進気鋭の若い師匠とその弟子の二人が暮らしていた。
南の国で修行してきたという師匠の腕は決して悪くないのだが、街の人からの評価は、「地味。センスがない」。
仕事の依頼もなく、注文を受けることもない工房は常に貧乏で、薄い塩味豆だけスープしか食べられない。
「決めた!! この石を使って、一世一代の宝石を作り上げる!!」
貧乏に耐えかねた師匠が取り出したのは、先代が遺したエメラルドの原石。
「これ、使うのか?」
期待と不安の混じった目で石と師匠を見る弟子のグリュウ。
この石には無限の可能性が秘められてる。
興奮気味に話す師匠に戸惑うグリュウ。
石は本当に素晴らしいのか? クズ石じゃないのか? 大丈夫なのか?
――でも、完成するのがすっげえ楽しみ。
石に没頭すれば、周囲が全く見えなくなる職人バカな師匠と、それをフォローする弟子の小さな物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる