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第23話 ヤバイのはお互い様
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「……えっと…侍従さん…ってこと?」
「…一応、そうなるのかな…」
ハァ、と大きな溜め息をつくラウルの少し後ろにいる人たちが、キラキラ、というよりは、ギラギラとした目をラウルや私たちに向けている。
「……綺麗な人のああいう雰囲気って、すごいんだね」
「…一日中、毎日ですよ…あれ…」
「…え」
「しかも、反省なんて、一切しませんから」
突然現れ、「縛る」やら「服が乱れる」やらなんだか色んなことを言い、一騒ぎを起こし、怒ったラウルに強制的に魔法壁の中に閉じ込められるという罰を受けている人たちを見て、ラウルは心底疲れた顔をしながら答える。
どうやらラウルの説明によると、後ろにいるお姉さん、お兄さんがたは、ラウルと同じお城で暮らす魔王派の方々らしい。
魔王派の中には私たちと同じ人間だったり、魔族だったり、と色んな人たちがいるらしく、現に今、飛んできた人たちも羽が生えていたり、尻尾があったり、ツノがついていたりと見た目だけでも個性豊かな人たちが揃っている。
「……ちょっと、いや、かなりヤバイ奴らなんじゃ…」
「そのようですね」
「一日中ギラギラしてるってすげぇな!」
ボソリ、と呟いたリアーノの言葉に、二ヴェルは頷きながら答え、ジャンはハハッと笑いながら口を開く。
「いや?! あんたら人のこと言えないからな?!」
「失礼な人ですね。ワタシたちと一緒にしないでください」
「だいぶ一緒だし?! 誰だよ昨日の夜フィンの寝床に潜り込もとしてたやつ!」
「……え」
「添い寝しようとしてただけだな!」
「息荒らげながら添い寝するやつ居ねえから!!」
ベシィッ、と隣に立つジャンの胸のあたりを、手の甲で叩きながらリアーノの口から語られる言葉に、思わず動きが固まる。
けれど、そんな私のすぐ傍にいるラウルから「おおおお…!」という小さな声が聞こえ、思考はすぐに活動を再開した。
「…ラウル? …どうしたの?」
肩を小刻みに揺らすラウルに、そう問いかければ、ラウルがバッ、と振り返って瞳を輝かせながら口を開く。
「ツッコミ担当がいる!」
「……はい?」
「…あ?」
キラキラと瞳を輝かせながら、「あなた、うちに来ませんか?!」とリアーノに駆け寄り彼の手を握るラウルに、リアーノはぽかんとした顔をしながら、かろうじて「……あ?」と答える。
けれど、そんなリアーノの表情に気づくことなく、ラウルはリアーノの手を、ぎゅううう、と握りしめている。
「あの……ラウル?」
「ジュニア様」
「ひゃぁ?!」
どうしたのだろう、と私がラウルに声をかけるのと同時に、突然、姿を表した見覚えのない人物に、思わず悲鳴をこぼす。
「おっと、これは、失礼しました」
「…い、いえっ…」
ドッドッドッ、と早鐘を打つ心臓に、思わず胸のあたりの服を掴めば、ラウルが「ごめんね、フィン」と眉をさげながら頭を下げる。
「大丈夫。それよりも…えっと…」
また綺麗な人が増えたけど、この人は何者…、と声に出さずにラウルを見やれば、ラウルが「この人はクレマン。ボクの傍付きの一人だよ」とラウルが私の疑問に応えてくれた。
「…ところで、なんでクレマンまで」
「そろそろジュニアの我慢が限界かと思いまして」
漆黒の髪を頬のあたりで真っ直ぐに切りそろえ、灰色の小さめ羽を背中に生やした、スーツ姿の一人が、ラウルにそう告げれば、その言葉を受けたラウルが、「ならもっと早く来てよ…」と大きなため息とともに呟く。
「まぁいいじゃないですか。ジュニアもお久しぶりでしょう? ちゃんと力を使ったのは」
「……まぁ…そうだけど…」
「それに」
「…?」
それに、と言ったあと、クレマンさんが、私とハルト、それからジャン達を見て、穏やかな笑みを浮かべる。
「ジュニアが楽しそうなのも、お久しぶりでしたからね」
そう言って、ラウルを見たクレマンに、ラウルは驚いた顔をしたあと、ほんの少し泣きそうな顔をして、笑った。
「フィンさんはこのクッションを使ってください」
「え、あ、はい…?」
ラウルのお城の人たちがあけた遺跡の天井の外、要は屋外へと出てみれば、何やら美味しそうなお菓子とお茶が用意された席があり、私たちはそこへと誘導され、各々に好きな場所へと腰をおろす。
どうしてここにこんな風に用意されていることに違和感が無いのだろう、と疑問に思うことが不正解なのかもしれない、と思うほどに景色に溶け込んでいるお茶の席に、戸惑いつつも、鼻先を甘く香ばしい香りがくすぐってくる。
「美味しそう…」
少し焦げたナッツと、キャラメルだろうか。
それにフルーツがたっぷりと乗ったタルトに、蒸しパンのようなもの。
一口サイズに作られた数々のお菓子に目移ししていれば、「あの」と控えめな声がかかる。
「お口に合うかどうかはわかりませんが…」
「これは…タルト、ですか?」
「ええ。前に城に来た人間の商人に作り方を教わったものです」
ことり、と見るからに高そうなお皿にのせられたタルトをじい、と見ていれば、隣に座ったハルトがふっ、と小さな笑い声をこぼす。
「フィンは甘いものが好きなんですね」
ふふ、とハルトに続いて楽しそうに笑うラウルに、「だって甘いものって幸せな気持ちになるじゃない?」と答えれば、ラウルが嬉しそうに笑う。
「まぁ、毒が入ってたとしても、ワタシが治しますから、気にせず食べたらいいですよ。フィン」
「ちょっと、二ヴェル。クレマンさんに失礼だよ!」
にこり、といつもと違う表情で笑いながら言った二ヴェルの言葉に、タルトを置いて文句を言えば、スッ、と無言で手があがる。
「おい、二ヴェル。こんな美味そうなのに毒なんて入ってるわけないだろう」
「忘れているのかもしれないが、ワタシたちは彼らを倒しにきているんだぞ? そんなヤツラにほいほいとただ美味いものを出すか? 出さないだろう、普通」
「二ヴェルが普通を語るか…?」
二ヴェルに、私の代わりに言葉を返したのはジャンで、そんなジャンに二ヴェルは呆れたような表情を浮かべながら言うものの、その二ヴェルの言葉に、ハルトが呆れと困惑を混ぜたような表情で呟く。
「あ? なんだハルト。じゃあ何か、フィンが変な毒に侵されてもがいて苦しそうにしててもお前は気にしないってのか?」
「フィンが死ぬなら俺も同じの食べて死ぬだけだ」
眉間に皺を刻みながら問いかけてきた二ヴェルに、はっ、とハルトは乾いた笑い声を吐く。
「え、まじかよ、ハルト。ひくくらいに愛がくっそ重いな?!!」
「まぁハルトだしなぁ」
「くそ、その手があったか…!」
「そこのメガネも大概だな?!」
ハルトの言葉に、半ばひきながらツッコミをいれ、そんなハルトを見てジャンはのんびりと笑い、二ヴェルはというと何故だかとても悔しそうな表情を浮かべており、リアーノは休むことなく二ヴェルにも間をおかずに瞬時にツッコミをいれる。
「おおおお…!」
そんな彼らの様子を、身体をぷるぷると揺らしながら「完璧なツッコミ役です…!」とラウルは感動の嵐に埋もれているらしい。
「なんか前にもましてややこしくなっている気が…」
はあぁ、となんだか少し痛みを覚えたこめかみを抑えながら呟けば、ガサッ、と立ち上がる音と空気が動く気配がして顔をあげれば、なにやらハルトと二ヴェルが本気で喧嘩をしそうな空気になっているらしい。
「上等だ、表でろ」
「ああ、受けてたつぜ」
「ってゆーかもうここ表だし?!だぁ、もう! なんだってお前らはすぐそうやって!」
「ハハッ!若いなぁ!二人とも」
「笑ってねぇで止めろよジャン!!」
「おおお!また…!」
さっきまでの楽しそうなお茶会の空気は何処にいった。
がちゃがちゃと煩い空気に、持っていた器をおき「あんた達、本っ当に…!」と小さく呟いた瞬間、ぱちり、と唐突に視線が交わったクレマンさんが、にこり、ととても綺麗な笑顔を浮かべ、口を開いた。
「あなたたち、座りなさい」
決して大きくはない、けれど、確実に全員に届いたその声に、全員が背筋を延ばして座ったことは、言うまでもない。
「…一応、そうなるのかな…」
ハァ、と大きな溜め息をつくラウルの少し後ろにいる人たちが、キラキラ、というよりは、ギラギラとした目をラウルや私たちに向けている。
「……綺麗な人のああいう雰囲気って、すごいんだね」
「…一日中、毎日ですよ…あれ…」
「…え」
「しかも、反省なんて、一切しませんから」
突然現れ、「縛る」やら「服が乱れる」やらなんだか色んなことを言い、一騒ぎを起こし、怒ったラウルに強制的に魔法壁の中に閉じ込められるという罰を受けている人たちを見て、ラウルは心底疲れた顔をしながら答える。
どうやらラウルの説明によると、後ろにいるお姉さん、お兄さんがたは、ラウルと同じお城で暮らす魔王派の方々らしい。
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「……ちょっと、いや、かなりヤバイ奴らなんじゃ…」
「そのようですね」
「一日中ギラギラしてるってすげぇな!」
ボソリ、と呟いたリアーノの言葉に、二ヴェルは頷きながら答え、ジャンはハハッと笑いながら口を開く。
「いや?! あんたら人のこと言えないからな?!」
「失礼な人ですね。ワタシたちと一緒にしないでください」
「だいぶ一緒だし?! 誰だよ昨日の夜フィンの寝床に潜り込もとしてたやつ!」
「……え」
「添い寝しようとしてただけだな!」
「息荒らげながら添い寝するやつ居ねえから!!」
ベシィッ、と隣に立つジャンの胸のあたりを、手の甲で叩きながらリアーノの口から語られる言葉に、思わず動きが固まる。
けれど、そんな私のすぐ傍にいるラウルから「おおおお…!」という小さな声が聞こえ、思考はすぐに活動を再開した。
「…ラウル? …どうしたの?」
肩を小刻みに揺らすラウルに、そう問いかければ、ラウルがバッ、と振り返って瞳を輝かせながら口を開く。
「ツッコミ担当がいる!」
「……はい?」
「…あ?」
キラキラと瞳を輝かせながら、「あなた、うちに来ませんか?!」とリアーノに駆け寄り彼の手を握るラウルに、リアーノはぽかんとした顔をしながら、かろうじて「……あ?」と答える。
けれど、そんなリアーノの表情に気づくことなく、ラウルはリアーノの手を、ぎゅううう、と握りしめている。
「あの……ラウル?」
「ジュニア様」
「ひゃぁ?!」
どうしたのだろう、と私がラウルに声をかけるのと同時に、突然、姿を表した見覚えのない人物に、思わず悲鳴をこぼす。
「おっと、これは、失礼しました」
「…い、いえっ…」
ドッドッドッ、と早鐘を打つ心臓に、思わず胸のあたりの服を掴めば、ラウルが「ごめんね、フィン」と眉をさげながら頭を下げる。
「大丈夫。それよりも…えっと…」
また綺麗な人が増えたけど、この人は何者…、と声に出さずにラウルを見やれば、ラウルが「この人はクレマン。ボクの傍付きの一人だよ」とラウルが私の疑問に応えてくれた。
「…ところで、なんでクレマンまで」
「そろそろジュニアの我慢が限界かと思いまして」
漆黒の髪を頬のあたりで真っ直ぐに切りそろえ、灰色の小さめ羽を背中に生やした、スーツ姿の一人が、ラウルにそう告げれば、その言葉を受けたラウルが、「ならもっと早く来てよ…」と大きなため息とともに呟く。
「まぁいいじゃないですか。ジュニアもお久しぶりでしょう? ちゃんと力を使ったのは」
「……まぁ…そうだけど…」
「それに」
「…?」
それに、と言ったあと、クレマンさんが、私とハルト、それからジャン達を見て、穏やかな笑みを浮かべる。
「ジュニアが楽しそうなのも、お久しぶりでしたからね」
そう言って、ラウルを見たクレマンに、ラウルは驚いた顔をしたあと、ほんの少し泣きそうな顔をして、笑った。
「フィンさんはこのクッションを使ってください」
「え、あ、はい…?」
ラウルのお城の人たちがあけた遺跡の天井の外、要は屋外へと出てみれば、何やら美味しそうなお菓子とお茶が用意された席があり、私たちはそこへと誘導され、各々に好きな場所へと腰をおろす。
どうしてここにこんな風に用意されていることに違和感が無いのだろう、と疑問に思うことが不正解なのかもしれない、と思うほどに景色に溶け込んでいるお茶の席に、戸惑いつつも、鼻先を甘く香ばしい香りがくすぐってくる。
「美味しそう…」
少し焦げたナッツと、キャラメルだろうか。
それにフルーツがたっぷりと乗ったタルトに、蒸しパンのようなもの。
一口サイズに作られた数々のお菓子に目移ししていれば、「あの」と控えめな声がかかる。
「お口に合うかどうかはわかりませんが…」
「これは…タルト、ですか?」
「ええ。前に城に来た人間の商人に作り方を教わったものです」
ことり、と見るからに高そうなお皿にのせられたタルトをじい、と見ていれば、隣に座ったハルトがふっ、と小さな笑い声をこぼす。
「フィンは甘いものが好きなんですね」
ふふ、とハルトに続いて楽しそうに笑うラウルに、「だって甘いものって幸せな気持ちになるじゃない?」と答えれば、ラウルが嬉しそうに笑う。
「まぁ、毒が入ってたとしても、ワタシが治しますから、気にせず食べたらいいですよ。フィン」
「ちょっと、二ヴェル。クレマンさんに失礼だよ!」
にこり、といつもと違う表情で笑いながら言った二ヴェルの言葉に、タルトを置いて文句を言えば、スッ、と無言で手があがる。
「おい、二ヴェル。こんな美味そうなのに毒なんて入ってるわけないだろう」
「忘れているのかもしれないが、ワタシたちは彼らを倒しにきているんだぞ? そんなヤツラにほいほいとただ美味いものを出すか? 出さないだろう、普通」
「二ヴェルが普通を語るか…?」
二ヴェルに、私の代わりに言葉を返したのはジャンで、そんなジャンに二ヴェルは呆れたような表情を浮かべながら言うものの、その二ヴェルの言葉に、ハルトが呆れと困惑を混ぜたような表情で呟く。
「あ? なんだハルト。じゃあ何か、フィンが変な毒に侵されてもがいて苦しそうにしててもお前は気にしないってのか?」
「フィンが死ぬなら俺も同じの食べて死ぬだけだ」
眉間に皺を刻みながら問いかけてきた二ヴェルに、はっ、とハルトは乾いた笑い声を吐く。
「え、まじかよ、ハルト。ひくくらいに愛がくっそ重いな?!!」
「まぁハルトだしなぁ」
「くそ、その手があったか…!」
「そこのメガネも大概だな?!」
ハルトの言葉に、半ばひきながらツッコミをいれ、そんなハルトを見てジャンはのんびりと笑い、二ヴェルはというと何故だかとても悔しそうな表情を浮かべており、リアーノは休むことなく二ヴェルにも間をおかずに瞬時にツッコミをいれる。
「おおおお…!」
そんな彼らの様子を、身体をぷるぷると揺らしながら「完璧なツッコミ役です…!」とラウルは感動の嵐に埋もれているらしい。
「なんか前にもましてややこしくなっている気が…」
はあぁ、となんだか少し痛みを覚えたこめかみを抑えながら呟けば、ガサッ、と立ち上がる音と空気が動く気配がして顔をあげれば、なにやらハルトと二ヴェルが本気で喧嘩をしそうな空気になっているらしい。
「上等だ、表でろ」
「ああ、受けてたつぜ」
「ってゆーかもうここ表だし?!だぁ、もう! なんだってお前らはすぐそうやって!」
「ハハッ!若いなぁ!二人とも」
「笑ってねぇで止めろよジャン!!」
「おおお!また…!」
さっきまでの楽しそうなお茶会の空気は何処にいった。
がちゃがちゃと煩い空気に、持っていた器をおき「あんた達、本っ当に…!」と小さく呟いた瞬間、ぱちり、と唐突に視線が交わったクレマンさんが、にこり、ととても綺麗な笑顔を浮かべ、口を開いた。
「あなたたち、座りなさい」
決して大きくはない、けれど、確実に全員に届いたその声に、全員が背筋を延ばして座ったことは、言うまでもない。
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