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第六章 婚約破棄
⑤
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夜会の夜が、静かに更けていく。
『エルネストに婚約破棄されたドロシー・アクヤークは、闇落ちして魔物と化し、ヒロイン達に殺される』
わたしはヒロイン・サクラたちと共に、この最大の危機を脱したのだ。
浮かれた勢いで、みんなと躍りまくって、足が痛い。
テラスに出て、一休みすることにした。
風がきもちいい。
(そう言えば、エルネスト、どこに行ったんだろう)
みんな、の中にエルネストは含まれていなかった。
「ドロシー、少しいいか」
従者に見送られて、エルネストがテラスへ出てくる。
なるほど、仕事をしてたのか。
「おちゅかへはへす、えるえすろはま」
「……酔っているのか」
そんなバカな。
ドロシーは未成年である。
未成年飲酒、ダメ絶対。
こっちでは15から飲酒OKだけど。
「今日は、すまなかったな」
この展開は前にもあった。
「君が魔物になるなら、討伐もやむなしと思っていたのも本心だ」
冷めてるなー。
彼がこう育ったのは、一重に生育環境のせいか。
現代日本で24歳といえばまだまだひよっこなのに。
「おねいさんわ、気にしてまへんひょ」
わたしは、エルネストが哀れに見えて、彼の頭をよしよしする。
エルネストが驚いた顔をした。
しまった。
相当酔ってる。
「わらくし……わたくしが正気に戻れたのは、エルネスト様の行動が予想外だったおかげです」
「婚約破棄をしないと言ったのが、予想外だったか?」
「……ええ、貴族の婚姻は、体面が最も重視されますでしょう?」
エルネストは少し考えて、顔を曇らせる。
「犯人の反応も伺っていた」
犯人、リースベット。
ヴァルストレームを洗っていたエルネストが、彼女の計略に気づいたのは、当然と言えば当然か。
酔いが完全に冷めた。
「エルネスト様、リースベット様は……」
「陛下は私よりも妹を信頼している。法廷に出せる確たる証拠もない。すぐに捕まえる事はできないだろう」
エルネストがふっと息をつく。
「心配はない。敵は判明した。今までよりも打てる手は多い」
エルネストにとって、リースベットは実の妹なのだ。
中身はともかく。
わたしはエルネストの胸中を慮る。
彼の支えになりたいと思った。
……友人として。
自分の恋心を自覚しながら、知らぬふりをするのは、もうできない。
「エルネスト様、お願いがあります」
だから、自分の立場をはっきりさせないといけない。
「なんだ?」
「婚約を破棄してください。あなたより、大切な男性がいます」
わたしはエルネストをまっすぐに見つめた。
エルネストがわたしの頬に手を伸ばす。
だが、触れる直前で手を引くと
「それは残酷だな」
静かに笑った。
エルネストはわたしから距離を置くと、
「わかったよ、ドロシー。彼と幸せに」
そう告げて、会場に戻って行く。
わたしはその後ろ姿を見送った。
「え~!もったいな~い。あなたの推しはエルネストじゃないのね」
声がした方に視線を向ける。
屋根の上に、クスクスと笑いながらリースベットが座っていた。
虚な目のフェリクス・リンディを引き連れて。
『エルネストに婚約破棄されたドロシー・アクヤークは、闇落ちして魔物と化し、ヒロイン達に殺される』
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浮かれた勢いで、みんなと躍りまくって、足が痛い。
テラスに出て、一休みすることにした。
風がきもちいい。
(そう言えば、エルネスト、どこに行ったんだろう)
みんな、の中にエルネストは含まれていなかった。
「ドロシー、少しいいか」
従者に見送られて、エルネストがテラスへ出てくる。
なるほど、仕事をしてたのか。
「おちゅかへはへす、えるえすろはま」
「……酔っているのか」
そんなバカな。
ドロシーは未成年である。
未成年飲酒、ダメ絶対。
こっちでは15から飲酒OKだけど。
「今日は、すまなかったな」
この展開は前にもあった。
「君が魔物になるなら、討伐もやむなしと思っていたのも本心だ」
冷めてるなー。
彼がこう育ったのは、一重に生育環境のせいか。
現代日本で24歳といえばまだまだひよっこなのに。
「おねいさんわ、気にしてまへんひょ」
わたしは、エルネストが哀れに見えて、彼の頭をよしよしする。
エルネストが驚いた顔をした。
しまった。
相当酔ってる。
「わらくし……わたくしが正気に戻れたのは、エルネスト様の行動が予想外だったおかげです」
「婚約破棄をしないと言ったのが、予想外だったか?」
「……ええ、貴族の婚姻は、体面が最も重視されますでしょう?」
エルネストは少し考えて、顔を曇らせる。
「犯人の反応も伺っていた」
犯人、リースベット。
ヴァルストレームを洗っていたエルネストが、彼女の計略に気づいたのは、当然と言えば当然か。
酔いが完全に冷めた。
「エルネスト様、リースベット様は……」
「陛下は私よりも妹を信頼している。法廷に出せる確たる証拠もない。すぐに捕まえる事はできないだろう」
エルネストがふっと息をつく。
「心配はない。敵は判明した。今までよりも打てる手は多い」
エルネストにとって、リースベットは実の妹なのだ。
中身はともかく。
わたしはエルネストの胸中を慮る。
彼の支えになりたいと思った。
……友人として。
自分の恋心を自覚しながら、知らぬふりをするのは、もうできない。
「エルネスト様、お願いがあります」
だから、自分の立場をはっきりさせないといけない。
「なんだ?」
「婚約を破棄してください。あなたより、大切な男性がいます」
わたしはエルネストをまっすぐに見つめた。
エルネストがわたしの頬に手を伸ばす。
だが、触れる直前で手を引くと
「それは残酷だな」
静かに笑った。
エルネストはわたしから距離を置くと、
「わかったよ、ドロシー。彼と幸せに」
そう告げて、会場に戻って行く。
わたしはその後ろ姿を見送った。
「え~!もったいな~い。あなたの推しはエルネストじゃないのね」
声がした方に視線を向ける。
屋根の上に、クスクスと笑いながらリースベットが座っていた。
虚な目のフェリクス・リンディを引き連れて。
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