14 / 26
第三章 サクラへのプレゼント
②
しおりを挟む
寮の自室、応接間。
「エルネスト様、ご相談があります」
いつものように花を届けにきたエルネストに、わたしが切り出した。
「サクラ様の、ご友人……彼を解放していただけないでしょうか」
わたしの隣に座っていた、サクラも驚いた顔をする。
「今ではエルネスト様も、人質で聖女様に救国を強いることは、得策ではないとお考えでしょう?」
むう、と声を上げて、エルネストは考えこんだ。
「確かに、人質で脅されてる状態には、正直ムカついてまーす」
サクラは嫌味を含みつつも、姿勢を正し、真剣な顔で言った。
「あいつは無害な男だし、私が面倒みるし、解放しても問題ないと思いますけど」
囚われているサクラの友人。
攻略キャラの一人、伊瀬亘(いせわたる)。
サクラは、無害な男だから問題ないと言うが……実は、害はあるし、問題もある男なのだ。特にエルネストにとって。
「わかった。王に進言しよう」
数日後、エルネストの計らいで、サクラの友人が解放された。
「ユウジぃ!やっと出られたよ~」
緑色がかかった癖の強い黒髪に、茶色い瞳。
魔法学園の男子用制服を着せられた、人懐こそうな少年。
サクラの監視下に置くため、元は物置の、この埃っぽい寮の一室を与えられたようだ。
硬いベッドに腰掛けながら文句を垂れる。
「ていうか、ひどくない?おれ、首に爆弾つけられてんだけど」
軽快に喋るこの男が、攻略対象キャラの一人、伊瀬亘だ。
「つーか、お前そのかっこ、似合いすぎwww」
サクラの格好を見て笑う。
「……で、そっちの、めっっちゃ、キレ~~なおねいさんはどなた?」
わ、わたしのこと?
チャラいな~。
「サクラ様の学友で、ドロシーと申します。」
「モデル?モデルすか?俺身長175あるんだけど、変わらないすよね」
そうだったのか。
サクラが小さいんじゃなくて、わたしがデカかったのか。
周りの面々も西洋人体系だし、エルネストもでかいし、で、全く気づかなかった。
「おれともぜひ、仲良くしてくださいっ」
腰を低くして握手を求めてくる。
「サクラ様とは女性同士、仲良くさせていただいておりますので……」
わたしは亘との間に、『わたしは聖女様の正体を知らない』『あなたと仲良くする気はない』と言う一線を引いた。
「……」
勘の良いサクラは何かを感じ取ったようだ。
ゲーム『憂国聖女』の伊瀬亘。
いせ わたる。
いせかい わたる。
亘は元々、こちらの世界の人間なのだ。
暗殺を請け負ってきた一族の末裔。
その力を恐れた現王に、一族は滅ぼされてしまう。
処刑を免れた幼い亘は、母と共に、異世界へ追放されてしまったのだ。
異世界での苦労の末、母は倒れ……。
亘は、現王に、ヴァルストレーム家に復讐を誓うのだ。
設定が重い、重すぎるよ~~!
復讐の機会を狙っていた亘は、聖女召喚の儀を利用して、こちらの世界に戻ってくるのだ。近くにいた友人である、ヒロインを巻き込んで。
召喚された時にヒロインが魔法を一切使えないのは、本来選ばれるはずの少女ではなかったからなのだ。
(サクラ、そもそも男の子だし)
目の前の伊瀬亘も、現段階では危険人物である可能性が非常に高い。
仲間に引き込むまでは、警戒するのが吉だ。
特にわたしは、
サクラにとっての弱点になる。
慎重に物事を進めなくては…………
!?
サクラが亘にアイアンクローをかましている。
「がごぐぐっぐぐぐぐうっぐぐう」
なんかバチバチ出てるのは拘束魔法だろうか。
「さ、サクラ様?!」
なんで、こうなってるの?
サクラは、亘に冷たい目を向けると、
「魔力を感じる。お前、何者だ?」
「ユウジぃ、ちょ、やめ、痛いぃ」
亘は涙目だ。
サクラはわたしが距離を置いたのを見て、亘を警戒したのだろう。
勘が良すぎるのも困りものだ。
もう、段取りめちゃくちゃ。
「召喚された時に、目覚めたみたいカナーって、あたたたた」
バチバチバチ。
「あた、すみませぇん、バチバチするの、やめてもらえません?」
バチバチバチバチ。
「元々持っていた、あたっ、才能が、あたったたたた」
バチバチバチバチバチバチバチバチ。
「おれは元々この世界の人間です!すみません、バチバチやめてえええええ」
サクラが拘束を解く。
四つん這いになって肩で息をする亘。
(あー、もうバレちゃった)
さて、ここからどう展開するだろうか。
「エルネスト様、ご相談があります」
いつものように花を届けにきたエルネストに、わたしが切り出した。
「サクラ様の、ご友人……彼を解放していただけないでしょうか」
わたしの隣に座っていた、サクラも驚いた顔をする。
「今ではエルネスト様も、人質で聖女様に救国を強いることは、得策ではないとお考えでしょう?」
むう、と声を上げて、エルネストは考えこんだ。
「確かに、人質で脅されてる状態には、正直ムカついてまーす」
サクラは嫌味を含みつつも、姿勢を正し、真剣な顔で言った。
「あいつは無害な男だし、私が面倒みるし、解放しても問題ないと思いますけど」
囚われているサクラの友人。
攻略キャラの一人、伊瀬亘(いせわたる)。
サクラは、無害な男だから問題ないと言うが……実は、害はあるし、問題もある男なのだ。特にエルネストにとって。
「わかった。王に進言しよう」
数日後、エルネストの計らいで、サクラの友人が解放された。
「ユウジぃ!やっと出られたよ~」
緑色がかかった癖の強い黒髪に、茶色い瞳。
魔法学園の男子用制服を着せられた、人懐こそうな少年。
サクラの監視下に置くため、元は物置の、この埃っぽい寮の一室を与えられたようだ。
硬いベッドに腰掛けながら文句を垂れる。
「ていうか、ひどくない?おれ、首に爆弾つけられてんだけど」
軽快に喋るこの男が、攻略対象キャラの一人、伊瀬亘だ。
「つーか、お前そのかっこ、似合いすぎwww」
サクラの格好を見て笑う。
「……で、そっちの、めっっちゃ、キレ~~なおねいさんはどなた?」
わ、わたしのこと?
チャラいな~。
「サクラ様の学友で、ドロシーと申します。」
「モデル?モデルすか?俺身長175あるんだけど、変わらないすよね」
そうだったのか。
サクラが小さいんじゃなくて、わたしがデカかったのか。
周りの面々も西洋人体系だし、エルネストもでかいし、で、全く気づかなかった。
「おれともぜひ、仲良くしてくださいっ」
腰を低くして握手を求めてくる。
「サクラ様とは女性同士、仲良くさせていただいておりますので……」
わたしは亘との間に、『わたしは聖女様の正体を知らない』『あなたと仲良くする気はない』と言う一線を引いた。
「……」
勘の良いサクラは何かを感じ取ったようだ。
ゲーム『憂国聖女』の伊瀬亘。
いせ わたる。
いせかい わたる。
亘は元々、こちらの世界の人間なのだ。
暗殺を請け負ってきた一族の末裔。
その力を恐れた現王に、一族は滅ぼされてしまう。
処刑を免れた幼い亘は、母と共に、異世界へ追放されてしまったのだ。
異世界での苦労の末、母は倒れ……。
亘は、現王に、ヴァルストレーム家に復讐を誓うのだ。
設定が重い、重すぎるよ~~!
復讐の機会を狙っていた亘は、聖女召喚の儀を利用して、こちらの世界に戻ってくるのだ。近くにいた友人である、ヒロインを巻き込んで。
召喚された時にヒロインが魔法を一切使えないのは、本来選ばれるはずの少女ではなかったからなのだ。
(サクラ、そもそも男の子だし)
目の前の伊瀬亘も、現段階では危険人物である可能性が非常に高い。
仲間に引き込むまでは、警戒するのが吉だ。
特にわたしは、
サクラにとっての弱点になる。
慎重に物事を進めなくては…………
!?
サクラが亘にアイアンクローをかましている。
「がごぐぐっぐぐぐぐうっぐぐう」
なんかバチバチ出てるのは拘束魔法だろうか。
「さ、サクラ様?!」
なんで、こうなってるの?
サクラは、亘に冷たい目を向けると、
「魔力を感じる。お前、何者だ?」
「ユウジぃ、ちょ、やめ、痛いぃ」
亘は涙目だ。
サクラはわたしが距離を置いたのを見て、亘を警戒したのだろう。
勘が良すぎるのも困りものだ。
もう、段取りめちゃくちゃ。
「召喚された時に、目覚めたみたいカナーって、あたたたた」
バチバチバチ。
「あた、すみませぇん、バチバチするの、やめてもらえません?」
バチバチバチバチ。
「元々持っていた、あたっ、才能が、あたったたたた」
バチバチバチバチバチバチバチバチ。
「おれは元々この世界の人間です!すみません、バチバチやめてえええええ」
サクラが拘束を解く。
四つん這いになって肩で息をする亘。
(あー、もうバレちゃった)
さて、ここからどう展開するだろうか。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました
市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。
……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。
それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?!
上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる?
このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!!
※小説家になろう様でも投稿しています
変態王子&モブ令嬢 番外編
咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と
「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の
番外編集です。
本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。
「小説家になろう」でも公開しています。
溺愛王子と髪結プリンセス
水城ひさぎ
恋愛
美容師として働く真凛はある日、セドニー王国王子アウイにさらわれ、異国の地セドニーへと転移してしまう。
「おまえはセドニー王国王女マリン。だが、亡き陛下の娘の存在を知るものは一握りのみ。おまえは王女として生きることはかなわぬ」
身分を隠し、王子の身の回りの世話をする『髪結』として働くことになる真凛だが、ふたりの兄アウイ、ベリル、そして弟のセオに愛されてしまい……。
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる