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第二章 ドロシーの婚約者
⑤
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王都・魔法学園。
寮に帰って来た、わたしとサクラ。
わたしの部屋に二人きり、ローテーブルを挟んで、向かい合って座っている。
エルネストは報告書をまとめに行った。
人が死んだ。目の前で。
多分ヤルマルは、自分が信じる、何か、のために、自ら命を断ったのだ。
『前世』を思い出してからわたしは、ここでの出来事をゲームの中の物語だと錯覚していた。
目の前で人が死ぬのを見て、ようやく気づく。
ここは現実だ。
この世界で、誰もが人生を送っているのだ。必死で。
サクラの顔も暗い。
帰りの道中、サクラも、エルネストも、誰も何も喋らなかった。
サクラは短く息を吐き、
「どんだデートだったな」
そう言って、笑顔を作った。
おそらく日本人であろうサクラ。
彼も、人が自ら死ぬ瞬間を見るのは、初めてだっただろう。
(強い子だな)
「ああいう自己中ヤローには、ハゲる呪いをかけるしかないな。……聖女パワーで本当に効いたりして」
エルネストの話?
わたしは想像して、吹き出してしまった。
「ドロシーはどんなデートがしたい?例えば俺が相手だとして」
わたしを元気付けようとしてくれているのだ。
「……女装姿で想像するなよ」
デートね、デート……。
今まで考えたこともなかった。
えーと……。
「ここだと、王都城下町かしら」
「お忍びデートだな」
「あなたは本当の姿で、わたくしも庶民の格好をして?」
楽しそう。
「露天で買い物したり。買い食いしたり。アイス……は、こっちにはないか」
「少し足を伸ばして、ピクニックもいいですわね」
「ドロシー、料理できるの?」
自炊できる程度の腕前ですが……
「が、頑張りますわ」
「海水浴もいいなあ」
「海は危険が多いので、あまりお勧めは致しませんわ」
害獣とか、海賊とか。スラムも近い。
そっか、とサクラは納得すると、真剣な顔になった。
「俺さ、剣、きちんと習おうと思うんだ。今日は、危険な目に合わせたから……」
「お誘いしたのはわたくしです。それに、サクラ様がいなかったら、わたくしはもう、ここにおりません」
「今回は運が良かっただけだよ」
それは、そうかもしれない。
「あいつの言うことも一理あるんだ。俺は今まで危機感が足りなかった」
サクラはすくっと立ち上がり、
「大人にならないと」
拳を握る。
「大切な友達を守るために、色々考えて動かないとな」
「サクラ様……」
サクラは聖女として、戦いから逃れられない。
わたしに出来ることはなんだろう。
あまりにも少ない。
「君は本当にドロシーのことが好きなんだな」
いつの間にか、ドアの前にエルネストが立っていた。
「好、き……?」
サクラの顔が驚いた顔のまま、真っ赤に染まる。
そうだったら嬉しい。
わたしもサクラのことを、今では親友だと思っている。
「ドロシーと二人で話したい。そう睨むな。危害を加えたりしない」
サクラはエルネストのことを睨みつけながら、考えて、
「わかった、今日は帰る。……大人になるって決めたからな」
わたしに小さく手を振って、部屋を出て行った。
残ったエルネストの顔を見る。
エルネストの話とはなんだろうか。
寮に帰って来た、わたしとサクラ。
わたしの部屋に二人きり、ローテーブルを挟んで、向かい合って座っている。
エルネストは報告書をまとめに行った。
人が死んだ。目の前で。
多分ヤルマルは、自分が信じる、何か、のために、自ら命を断ったのだ。
『前世』を思い出してからわたしは、ここでの出来事をゲームの中の物語だと錯覚していた。
目の前で人が死ぬのを見て、ようやく気づく。
ここは現実だ。
この世界で、誰もが人生を送っているのだ。必死で。
サクラの顔も暗い。
帰りの道中、サクラも、エルネストも、誰も何も喋らなかった。
サクラは短く息を吐き、
「どんだデートだったな」
そう言って、笑顔を作った。
おそらく日本人であろうサクラ。
彼も、人が自ら死ぬ瞬間を見るのは、初めてだっただろう。
(強い子だな)
「ああいう自己中ヤローには、ハゲる呪いをかけるしかないな。……聖女パワーで本当に効いたりして」
エルネストの話?
わたしは想像して、吹き出してしまった。
「ドロシーはどんなデートがしたい?例えば俺が相手だとして」
わたしを元気付けようとしてくれているのだ。
「……女装姿で想像するなよ」
デートね、デート……。
今まで考えたこともなかった。
えーと……。
「ここだと、王都城下町かしら」
「お忍びデートだな」
「あなたは本当の姿で、わたくしも庶民の格好をして?」
楽しそう。
「露天で買い物したり。買い食いしたり。アイス……は、こっちにはないか」
「少し足を伸ばして、ピクニックもいいですわね」
「ドロシー、料理できるの?」
自炊できる程度の腕前ですが……
「が、頑張りますわ」
「海水浴もいいなあ」
「海は危険が多いので、あまりお勧めは致しませんわ」
害獣とか、海賊とか。スラムも近い。
そっか、とサクラは納得すると、真剣な顔になった。
「俺さ、剣、きちんと習おうと思うんだ。今日は、危険な目に合わせたから……」
「お誘いしたのはわたくしです。それに、サクラ様がいなかったら、わたくしはもう、ここにおりません」
「今回は運が良かっただけだよ」
それは、そうかもしれない。
「あいつの言うことも一理あるんだ。俺は今まで危機感が足りなかった」
サクラはすくっと立ち上がり、
「大人にならないと」
拳を握る。
「大切な友達を守るために、色々考えて動かないとな」
「サクラ様……」
サクラは聖女として、戦いから逃れられない。
わたしに出来ることはなんだろう。
あまりにも少ない。
「君は本当にドロシーのことが好きなんだな」
いつの間にか、ドアの前にエルネストが立っていた。
「好、き……?」
サクラの顔が驚いた顔のまま、真っ赤に染まる。
そうだったら嬉しい。
わたしもサクラのことを、今では親友だと思っている。
「ドロシーと二人で話したい。そう睨むな。危害を加えたりしない」
サクラはエルネストのことを睨みつけながら、考えて、
「わかった、今日は帰る。……大人になるって決めたからな」
わたしに小さく手を振って、部屋を出て行った。
残ったエルネストの顔を見る。
エルネストの話とはなんだろうか。
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