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ななちゃんとお地蔵様。

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赤ちゃんなんかいらんのに。なんで赤ちゃん泣いてんねん。お母ちゃん、いっつも赤ちゃんばっかりや。赤ちゃんなんかいらんのに。
ななちゃんはそんなことつぶやきながらちょっと涙目でお布団に潜り込みました。

ほんまは私かて抱っこして欲しいのに。頭なでなでしてもろて、お話してもろて寝たいねん。お姉ちゃんなんかなりたないわ。
赤ちゃんなんかいいひんようになったらええねん。
ななちゃんがもう一度呟いた時、枕元がボワンと光って、お地蔵様が現れました。
「ななちゃん、ほんまにそれでいいんやな?赤ちゃんに戻したろ。もう一回赤ちゃんからやり直しー。」
そう言ったと思ったら、お地蔵様は消えてなくなりななちゃんはベビーベッドの中でおくるみに包まれていました。

お母ちゃん私のもんや。お母ちゃん、お話読んで。抱っこして。なでなでしてよー。

でもお母さんは振り向きません。
「ななちゃん、ちょっとまってねーお母ちゃんご飯食べさしてなー。」
お母さんはそう言うとご飯を食べにいってしまいました。お父さんが帰ってきて、お母さんはバタバタご飯の支度やお風呂の用意をしています。ななちゃんが泣こうとしたその時です。見知らぬ女の子がななちゃんの頭をなでなでしてくれました。
「ななちゃん、お母ちゃんが忙しいからお姉ちゃんがお歌うたったげるからなー。」
女の子は蝶々を歌ってくれました。調子っぱずれた可愛い声がななちゃんを包み込みます。女の子は柵の間から小さなお手手をにゅっと伸ばしてお腹をぽんぽんと優しく叩きながら何度もなんども蝶々を歌ってくれました。
「ななちゃんええ子やなぁ。ねんね、ねんね。」

するとお母さんは走ってきて女の子を引っ張って
「ななちゃんはまだ小さいねんで。あやちゃん何してんの!叩いたら痛いでしょ!」
と大きな声で怒りました。
ななちゃんは驚いて
「あやちゃんは叩いてないよー。おねんねの歌を歌ったのよー!」
と言ったつもりやったのに声は泣き声になってしまってお母さんに通じません。あやちゃんは悲しそうにななちゃんを見ると一人で子供部屋に入って行ってしまいました。

「あやちゃんって、さっきまであかちゃんやったやん!私とあべこべになったんや!おかあちゃんあやちゃん悪いことしてないねんよー。おこらんといてー。」
どんなにななちゃんがさけんでもななちゃんの声は全て泣き声に変わってしまってお母さんにはわかってもらえません。

あかん。このままやったらあやちゃん泣きながらベッドでひとりぼっちや。そう思ったらますます泣けてきて泣き止むことができなくなってしましました。するとお母さんは、ななちゃんにお乳を飲ませて、オムツを替えて、柔らかいタオルで体を拭いてくれました。
「さーお風呂入ろうねー、あやちゃん、お風呂の用意できてるよー。ななちゃんをお父ちゃんに渡したら入ってくるねんよー。」
と声をかけ、お風呂の中に入ってしまいました。優しくお湯をかけてふわふわの泡で洗ってくれるのはなんてきもちがいいんやろう。お母ちゃんは髪も体も泡泡で洗って耳を塞ぐとゆっくりお湯をかけました。そして湯船に浸かると笑ってくれました。
でも、ななちゃんは長く入っているとのぼせるのですぐにお父さんに渡されました。お父さんはななちゃんを優しく拭いて新しいパジャマをきせてくれました。あやちゃんがお風呂に入っている間、お母さんはあやちゃんを洗って、自分も洗って、お風呂に浸かって、お風呂を片付けてあやちゃんを拭いて着替えさせて、その間ずっとスッポンポンで、お父さんの用意もしていた。まだちゃんと拭けてないのにパジャマに着替えて、ななちゃんにお乳を飲ませた。お母さんは汗だくでなんだか疲れてい見えます。
あやちゃんが、
「お母ちゃん、ご本読んで。」
と言うと、
「ななちゃんがお乳飲んでるから後でね。もうお布団に入っとき。」
と言って背中を向けてしまいました。ななちゃんは眠くて眠くてお母さんのお乳にしがみついていましたが、あやちゃんが寂しそうに部屋に行くのを見てお母さんに話し出した。
「お母ちゃん、あやちゃんさみしいねんで。ななちゃんすぐ寝るからあやちゃんとこ行ってあげてな。ななちゃん我慢するから。お願いやしな。」
お母さんはななちゃんがうにゃうにゃ言いながらウトウトしている姿を見ていました。
そしてななちゃんはそのままベビーベッドのおくるみの中にぬくぬくと包まれて眠りについていました。
お母さんはあやちゃんのところに、いったかなぁ。頭なでなでしてあげたかなぁ。そう思いながらもなんだか楽しい夢を見た気がしました。


「おかあちゃん、おはよう。あやちゃん起きたん?うんちでたかなぁ。見てくるねー」
ななちゃんは、お姉ちゃんだった時のあやちゃんが優しかったことを思い出しました。
「私も、あやちゃんにもっとやさしくしたいなぁ。
おかあちゃん。あやちゃんのこともっとお手伝いするしな。いっぱい教えてな。」
ななちゃんはそう言うとあやちゃんの横に座って朝ごはんを食べました。三人並んで食べた朝ごはんはとても美味しくて、嫌いだったプチトマトもみんな食べられました。
「いや!ななちゃんプチトマト食べたやん!えらいなぁ。お母ちゃんななちゃんのこと余計大好きになったわ!」
お母さんはそう言うとななちゃんとあやちゃんをぎゅっと抱きしめて頭をたくさん撫でてくれました。

だから今夜はあやちゃんにお歌を歌ってあげようと思いました。

なにがええかなぁ?
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