1 / 1
ななちゃんとお地蔵様。
しおりを挟む赤ちゃんなんかいらんのに。なんで赤ちゃん泣いてんねん。お母ちゃん、いっつも赤ちゃんばっかりや。赤ちゃんなんかいらんのに。
ななちゃんはそんなことつぶやきながらちょっと涙目でお布団に潜り込みました。
ほんまは私かて抱っこして欲しいのに。頭なでなでしてもろて、お話してもろて寝たいねん。お姉ちゃんなんかなりたないわ。
赤ちゃんなんかいいひんようになったらええねん。
ななちゃんがもう一度呟いた時、枕元がボワンと光って、お地蔵様が現れました。
「ななちゃん、ほんまにそれでいいんやな?赤ちゃんに戻したろ。もう一回赤ちゃんからやり直しー。」
そう言ったと思ったら、お地蔵様は消えてなくなりななちゃんはベビーベッドの中でおくるみに包まれていました。
お母ちゃん私のもんや。お母ちゃん、お話読んで。抱っこして。なでなでしてよー。
でもお母さんは振り向きません。
「ななちゃん、ちょっとまってねーお母ちゃんご飯食べさしてなー。」
お母さんはそう言うとご飯を食べにいってしまいました。お父さんが帰ってきて、お母さんはバタバタご飯の支度やお風呂の用意をしています。ななちゃんが泣こうとしたその時です。見知らぬ女の子がななちゃんの頭をなでなでしてくれました。
「ななちゃん、お母ちゃんが忙しいからお姉ちゃんがお歌うたったげるからなー。」
女の子は蝶々を歌ってくれました。調子っぱずれた可愛い声がななちゃんを包み込みます。女の子は柵の間から小さなお手手をにゅっと伸ばしてお腹をぽんぽんと優しく叩きながら何度もなんども蝶々を歌ってくれました。
「ななちゃんええ子やなぁ。ねんね、ねんね。」
するとお母さんは走ってきて女の子を引っ張って
「ななちゃんはまだ小さいねんで。あやちゃん何してんの!叩いたら痛いでしょ!」
と大きな声で怒りました。
ななちゃんは驚いて
「あやちゃんは叩いてないよー。おねんねの歌を歌ったのよー!」
と言ったつもりやったのに声は泣き声になってしまってお母さんに通じません。あやちゃんは悲しそうにななちゃんを見ると一人で子供部屋に入って行ってしまいました。
「あやちゃんって、さっきまであかちゃんやったやん!私とあべこべになったんや!おかあちゃんあやちゃん悪いことしてないねんよー。おこらんといてー。」
どんなにななちゃんがさけんでもななちゃんの声は全て泣き声に変わってしまってお母さんにはわかってもらえません。
あかん。このままやったらあやちゃん泣きながらベッドでひとりぼっちや。そう思ったらますます泣けてきて泣き止むことができなくなってしましました。するとお母さんは、ななちゃんにお乳を飲ませて、オムツを替えて、柔らかいタオルで体を拭いてくれました。
「さーお風呂入ろうねー、あやちゃん、お風呂の用意できてるよー。ななちゃんをお父ちゃんに渡したら入ってくるねんよー。」
と声をかけ、お風呂の中に入ってしまいました。優しくお湯をかけてふわふわの泡で洗ってくれるのはなんてきもちがいいんやろう。お母ちゃんは髪も体も泡泡で洗って耳を塞ぐとゆっくりお湯をかけました。そして湯船に浸かると笑ってくれました。
でも、ななちゃんは長く入っているとのぼせるのですぐにお父さんに渡されました。お父さんはななちゃんを優しく拭いて新しいパジャマをきせてくれました。あやちゃんがお風呂に入っている間、お母さんはあやちゃんを洗って、自分も洗って、お風呂に浸かって、お風呂を片付けてあやちゃんを拭いて着替えさせて、その間ずっとスッポンポンで、お父さんの用意もしていた。まだちゃんと拭けてないのにパジャマに着替えて、ななちゃんにお乳を飲ませた。お母さんは汗だくでなんだか疲れてい見えます。
あやちゃんが、
「お母ちゃん、ご本読んで。」
と言うと、
「ななちゃんがお乳飲んでるから後でね。もうお布団に入っとき。」
と言って背中を向けてしまいました。ななちゃんは眠くて眠くてお母さんのお乳にしがみついていましたが、あやちゃんが寂しそうに部屋に行くのを見てお母さんに話し出した。
「お母ちゃん、あやちゃんさみしいねんで。ななちゃんすぐ寝るからあやちゃんとこ行ってあげてな。ななちゃん我慢するから。お願いやしな。」
お母さんはななちゃんがうにゃうにゃ言いながらウトウトしている姿を見ていました。
そしてななちゃんはそのままベビーベッドのおくるみの中にぬくぬくと包まれて眠りについていました。
お母さんはあやちゃんのところに、いったかなぁ。頭なでなでしてあげたかなぁ。そう思いながらもなんだか楽しい夢を見た気がしました。
「おかあちゃん、おはよう。あやちゃん起きたん?うんちでたかなぁ。見てくるねー」
ななちゃんは、お姉ちゃんだった時のあやちゃんが優しかったことを思い出しました。
「私も、あやちゃんにもっとやさしくしたいなぁ。
おかあちゃん。あやちゃんのこともっとお手伝いするしな。いっぱい教えてな。」
ななちゃんはそう言うとあやちゃんの横に座って朝ごはんを食べました。三人並んで食べた朝ごはんはとても美味しくて、嫌いだったプチトマトもみんな食べられました。
「いや!ななちゃんプチトマト食べたやん!えらいなぁ。お母ちゃんななちゃんのこと余計大好きになったわ!」
お母さんはそう言うとななちゃんとあやちゃんをぎゅっと抱きしめて頭をたくさん撫でてくれました。
だから今夜はあやちゃんにお歌を歌ってあげようと思いました。
なにがええかなぁ?
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
【完結】いい子にしてたら、絶対幸せになれますか?
ここ
ファンタジー
ナティアンヌは侯爵家の長女だが、不器量で両親に嫌わられていた。
8歳のある日、とうとうナティアンヌは娼館に売り払われてしまった。
書いてる言語とかは無茶苦茶です。
ゆるゆる設定お許しください。
全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!
蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。
家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。
何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。
やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。
そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。
やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる!
俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる