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15.水の都アトラティア
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帝国から3日程かけてアトラティアの街に着いた。
白い石レンガの建物が並び、灰色の石レンガで出来た道の脇には運河が走り運河にはゴンドラが行き交っていた。
長い橋を渡った末にたどり着いた水の都、アトラティアだ。
アリスはついた途端にまっすぐに水着を買いに走った。
俺とは一度別行動だ。
「それで、隠れて何してんの?」
俺が裏路地に入って言うとココアが出てきて微笑む。
「報告だよ。火の鍵は閉じたよ。
後はここだけ。
だけどね、犯人はわからなかったや。」
ココアが言った。
相手が誰かはわからないのか。
こっちの神殿でわかったりするだろうか。
「それとね、この頃龍脈の流れが強くなってるみたいだよ。
スフィアなら大丈夫だろうけど下手したら新しい穴開くかもよ?」
ココアがそう言ってにやつく。
「そうか、わかった。
なら、穴が開きそうな箇所を監視してくれないか?」
「それは難しい話だねぇ。
この世界は広いんだよ?それを私1人でなんて大変だよぉ。」
ココアがそう言って微笑む。
「仲間がいるんだろ。アリスにちょっかいかけに来てたよな?
ファントムの。」
「あはは、バレてた?
そうだよ。様子見に行かせた。
お兄ちゃんの隣に相応しいかどうか、ね。」
ココアが言った。
相変わらず、の様だ。
「それで、お前は敵なの?味方なの?」
「んー、お兄ちゃんと愛し合えるなら敵でも味方でもどっちでも良いよ。
私はお兄ちゃんを愛しているの。
私の愛を邪魔する奴が敵。邪魔しないなら興味無し。
それだけだよ。
だから今のところは味方、かなぁ?」
ココアがそう言って俺に顔を近づける。
「敵にならない事を祈るよ。」
「大丈夫!何があってもお兄ちゃんの味方だよ。
なんせ、私はお兄ちゃんを愛してますから。」
そう言ってココアが俺の腕に抱き着く。
「体を重ねたあの日から、ずっとね。」
ココアはそう言うと俺から離れる。
「1つだけ忠告。鍵を開けた奴がどんなだか知らないけどね、1つだけ言える事があるよ。
相手はこの世界を憎んでいる。
だからこそ鍵を開くんだから。
きっと、これからも鍵を開けるはずだよ。
お兄ちゃんでも倒せなかったんだから鍵なんて開いたらこの世界は終わりだよ。
私はね、この世界に興味が無いよ。
お兄ちゃんがいるから興味があるけどね、いなければこんな世界どうなっても良いの。
お兄ちゃんさえいればそれで良いの。
けど、お兄ちゃんは違うんでしょ?
なら、お兄ちゃんがしたいようにこの世界を変えるべきだと思うな。
お兄ちゃんは創の龍なんだから。」
ココアはそこまで言うと口を開いた俺の口に指を立てる。
「言いたいことは言わなくてもわかるよ。
それよりもさ、早く行ってあげないとアリスがご機嫌斜めになっちゃうよ?」
ココアがそう言っていたずらな笑みを浮かべる。
「はぁ、わかった。じゃあな。」
「うん。またね。」
俺はココアと別れるとアリスとの待ち合わせ場所へと向かった。
─────────────
「ココア様、ここにおられましたか。」
「うん。」
「敵の正体が判明いたしました。
相手は・・・」
黒ずくめの男から耳打ちされたココアはにやりと笑みを浮かべる。
「大変な事になっちゃうね。お兄ちゃん。」
ココアは呟くと男を見た。
「引き続きお願い。
私は別の用事があるの。
雷のエレメントスフィアの鍵、開けてこないと。」
ココアが微笑む。
「かしこまりました。
引き続き敵の監視を行います。」
「うん、けどさ。敵、なんでしょ?何で殺さなかったの?」
今までの声とは違い、少し低い声でココアが言った。
「それは・・・」
「私はね、お兄ちゃんの役に立ちたいの。
お兄ちゃんに誉められたいの、凄いねって。
なのに敵を逃がしたなんてお兄ちゃんに怒られちゃうでしょ?
良い、もう一度言うよ?
私はね、お兄ちゃんの為なら何でもするの。
お兄ちゃんの敵なら全員殺すのみ。
わかった?」
ココアが男に顔を近づけて言った。
「か、かしこまりました。すぐに。」
「うん。できるだけ惨くね。
殺して、殺して、恐怖を与えて。
お兄ちゃんに逆らうような奴は生まれてこなければ良かったって思うほど惨たらしく殺して。
できるでしょ?ファントムだもんね。」
ココアがそう言って男の首筋にナイフを突きつける。
「はっ。お任せを。」
「うん。楽しみにしてるよ。」
ココアがそう言って微笑む。
「お兄ちゃん。愛してるよ。」
ココアはそう呟くと男を残してその場から消えた。
白い石レンガの建物が並び、灰色の石レンガで出来た道の脇には運河が走り運河にはゴンドラが行き交っていた。
長い橋を渡った末にたどり着いた水の都、アトラティアだ。
アリスはついた途端にまっすぐに水着を買いに走った。
俺とは一度別行動だ。
「それで、隠れて何してんの?」
俺が裏路地に入って言うとココアが出てきて微笑む。
「報告だよ。火の鍵は閉じたよ。
後はここだけ。
だけどね、犯人はわからなかったや。」
ココアが言った。
相手が誰かはわからないのか。
こっちの神殿でわかったりするだろうか。
「それとね、この頃龍脈の流れが強くなってるみたいだよ。
スフィアなら大丈夫だろうけど下手したら新しい穴開くかもよ?」
ココアがそう言ってにやつく。
「そうか、わかった。
なら、穴が開きそうな箇所を監視してくれないか?」
「それは難しい話だねぇ。
この世界は広いんだよ?それを私1人でなんて大変だよぉ。」
ココアがそう言って微笑む。
「仲間がいるんだろ。アリスにちょっかいかけに来てたよな?
ファントムの。」
「あはは、バレてた?
そうだよ。様子見に行かせた。
お兄ちゃんの隣に相応しいかどうか、ね。」
ココアが言った。
相変わらず、の様だ。
「それで、お前は敵なの?味方なの?」
「んー、お兄ちゃんと愛し合えるなら敵でも味方でもどっちでも良いよ。
私はお兄ちゃんを愛しているの。
私の愛を邪魔する奴が敵。邪魔しないなら興味無し。
それだけだよ。
だから今のところは味方、かなぁ?」
ココアがそう言って俺に顔を近づける。
「敵にならない事を祈るよ。」
「大丈夫!何があってもお兄ちゃんの味方だよ。
なんせ、私はお兄ちゃんを愛してますから。」
そう言ってココアが俺の腕に抱き着く。
「体を重ねたあの日から、ずっとね。」
ココアはそう言うと俺から離れる。
「1つだけ忠告。鍵を開けた奴がどんなだか知らないけどね、1つだけ言える事があるよ。
相手はこの世界を憎んでいる。
だからこそ鍵を開くんだから。
きっと、これからも鍵を開けるはずだよ。
お兄ちゃんでも倒せなかったんだから鍵なんて開いたらこの世界は終わりだよ。
私はね、この世界に興味が無いよ。
お兄ちゃんがいるから興味があるけどね、いなければこんな世界どうなっても良いの。
お兄ちゃんさえいればそれで良いの。
けど、お兄ちゃんは違うんでしょ?
なら、お兄ちゃんがしたいようにこの世界を変えるべきだと思うな。
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ココアはそこまで言うと口を開いた俺の口に指を立てる。
「言いたいことは言わなくてもわかるよ。
それよりもさ、早く行ってあげないとアリスがご機嫌斜めになっちゃうよ?」
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「はぁ、わかった。じゃあな。」
「うん。またね。」
俺はココアと別れるとアリスとの待ち合わせ場所へと向かった。
─────────────
「ココア様、ここにおられましたか。」
「うん。」
「敵の正体が判明いたしました。
相手は・・・」
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「大変な事になっちゃうね。お兄ちゃん。」
ココアは呟くと男を見た。
「引き続きお願い。
私は別の用事があるの。
雷のエレメントスフィアの鍵、開けてこないと。」
ココアが微笑む。
「かしこまりました。
引き続き敵の監視を行います。」
「うん、けどさ。敵、なんでしょ?何で殺さなかったの?」
今までの声とは違い、少し低い声でココアが言った。
「それは・・・」
「私はね、お兄ちゃんの役に立ちたいの。
お兄ちゃんに誉められたいの、凄いねって。
なのに敵を逃がしたなんてお兄ちゃんに怒られちゃうでしょ?
良い、もう一度言うよ?
私はね、お兄ちゃんの為なら何でもするの。
お兄ちゃんの敵なら全員殺すのみ。
わかった?」
ココアが男に顔を近づけて言った。
「か、かしこまりました。すぐに。」
「うん。できるだけ惨くね。
殺して、殺して、恐怖を与えて。
お兄ちゃんに逆らうような奴は生まれてこなければ良かったって思うほど惨たらしく殺して。
できるでしょ?ファントムだもんね。」
ココアがそう言って男の首筋にナイフを突きつける。
「はっ。お任せを。」
「うん。楽しみにしてるよ。」
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