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12.戦争の行方
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1時間が経つ頃。
王国軍の使者がやってきた。
皇帝陛下の前まで通すとその場で跪く。
「申し上げます。
我がヒューゼル王国は奴隷制度の撤廃に賛同致します。
ただ、すぐに全てをとなると貴族の反感を買い内戦になりかねませんので徐々にとさせて頂きたいのです。
まずは王都から。
その後ゆっくりと国内全土へと広げるつもりです。」
使者が言った。
その声には強ばりを感じる。
「そうか、では我らは退こう。
しかし、もしそなたの言った事が嘘だった場合王国に雷が降り注ぐと思え。」
ルーギスがそう言うと使者は逃げるようにその場を去って行った。
「良かったですね。戦争にならず。」
俺が言うとルーギスが頷く。
しかし、その時の声には覇気が感じられなかった。
何かあったのだろうか?
─────────────
─30分前─
〈アリス視点〉
「陛下伏せて!」
私が叫ぶ。
ルーギスさんがしゃがんだ瞬間に私がルーギスさんの前に立ち塞がって短剣で毒針を弾く。
ガキンと音と共に針が地面に突き刺さった。
その瞬間に帝国の兵士達が周りを囲む。
「皆さん、時間稼ぎをお願いします!私は皇帝陛下を連れて1度離れます!」
私がそう叫んでルーギスさんの手を掴む。
「こちらに!」
「うむ、頼んだ!!」
私がルーギスさんを引いて逃げようとした時、目の前に黒ずくめのローブの男が現れた。
「俺は『ファントム』のユーグス。
ルーギス皇帝陛下、お初にお目にかかる。」
男はそう言ってお辞儀をする。
「先程の攻撃、申し訳ない。
だが、依頼の相手がどんな人間か気になったものでな。」
男はそう言って私の方を向いた。
「アリス。情報通りだ。
暗殺者としての実力も高い。
だが、慢心してはいけない。
お前はまだまだ弱い。
あの男に守られる立場に過ぎぬ。
強くなれ。
そうすれば道は開かれる。
そうお前に伝えるのが俺の仕事だ。
仕事は果たした。
お暇させて貰う。」
男はそう言うとまばたきをするわずかに眼を閉じる時間の間に消えた。
敵か味方かはわからない。
が、今は危害を加えるつもりは無いようだ。
「今のは・・・」
ルーギスさんが呟く。
ルーギスさんも動揺している様だった。
こんなときは私がしっかりしないとだよね。
「皆さん、周辺の警戒をお願いします!」
私が叫ぶと皆が頷いて周辺警護と陣の護衛を始める。
「アリス、あれをどう思う。」
「話している時、敵意を感じませんでした。
最初の攻撃も陛下からわずかに外れてました。
私が防がなくても陛下に当たりはしませんでした。
だから、敵意は無いのだと思います。
ですが、相手が誰だかもどの陣営かもわかりませんから、細心の注意をするべきです。」
私が言った。
今の私は陛下を護るのが仕事だ。
それが、オズから与えられた私の居場所だ。
「そうだね。だが、この事はオズに黙っていてくれないかい?」
ルーギスさんが言った。
オズに?
どうしてだろう?
「恐らくだが、オズに名前を言えばある程度陣営がわかると思う。
が、それと同時にオズはその陣営に対し敵対の態勢をとるだろう。
何時でも冷静で、完璧なオズだと思われている事も多いが本当のオズは仲間思いで仲間の為なら人でも平気で殺す様な人だ。
彼に知られれば・・・
後は言わなくともわかるだろう?」
ルーギスさんが真面目な顔で言った。
それは、私の知らないオズの話だった。
確かに、オズは優しくて旅の間も私の事を優先してくれた。
きっと、オズ1人ならもっと上手くやれていたであろう局面もあった。
それでもオズは私を優先してくれていた。
それを思えばオズが仲間思いなのも良くわかる。
「それに、オズも僕たちに秘密があるみたいだからね。」
ルーギスさんが言った。
「秘密?」
「あぁ、女の子が1人。たまにオズと密会していると言う噂を聞く。
帝国にオズが来て5日だがその間に数度目撃されているんだよ。
それが誰なのかはわからないけれどね。」
ルーギスさんが言った。
私もたまにオズと別行動をする。
多分その時なのだろう。
もしかして、今の別行動もそうなのかな。
「ま、お互い詮索は無しとした方が良い。
その方が良い友人関係を築けると言うものだ。」
ルーギスさんがそう言って微笑む。
私とルーギスさん2人だけの秘密だ。
王国軍の使者がやってきた。
皇帝陛下の前まで通すとその場で跪く。
「申し上げます。
我がヒューゼル王国は奴隷制度の撤廃に賛同致します。
ただ、すぐに全てをとなると貴族の反感を買い内戦になりかねませんので徐々にとさせて頂きたいのです。
まずは王都から。
その後ゆっくりと国内全土へと広げるつもりです。」
使者が言った。
その声には強ばりを感じる。
「そうか、では我らは退こう。
しかし、もしそなたの言った事が嘘だった場合王国に雷が降り注ぐと思え。」
ルーギスがそう言うと使者は逃げるようにその場を去って行った。
「良かったですね。戦争にならず。」
俺が言うとルーギスが頷く。
しかし、その時の声には覇気が感じられなかった。
何かあったのだろうか?
─────────────
─30分前─
〈アリス視点〉
「陛下伏せて!」
私が叫ぶ。
ルーギスさんがしゃがんだ瞬間に私がルーギスさんの前に立ち塞がって短剣で毒針を弾く。
ガキンと音と共に針が地面に突き刺さった。
その瞬間に帝国の兵士達が周りを囲む。
「皆さん、時間稼ぎをお願いします!私は皇帝陛下を連れて1度離れます!」
私がそう叫んでルーギスさんの手を掴む。
「こちらに!」
「うむ、頼んだ!!」
私がルーギスさんを引いて逃げようとした時、目の前に黒ずくめのローブの男が現れた。
「俺は『ファントム』のユーグス。
ルーギス皇帝陛下、お初にお目にかかる。」
男はそう言ってお辞儀をする。
「先程の攻撃、申し訳ない。
だが、依頼の相手がどんな人間か気になったものでな。」
男はそう言って私の方を向いた。
「アリス。情報通りだ。
暗殺者としての実力も高い。
だが、慢心してはいけない。
お前はまだまだ弱い。
あの男に守られる立場に過ぎぬ。
強くなれ。
そうすれば道は開かれる。
そうお前に伝えるのが俺の仕事だ。
仕事は果たした。
お暇させて貰う。」
男はそう言うとまばたきをするわずかに眼を閉じる時間の間に消えた。
敵か味方かはわからない。
が、今は危害を加えるつもりは無いようだ。
「今のは・・・」
ルーギスさんが呟く。
ルーギスさんも動揺している様だった。
こんなときは私がしっかりしないとだよね。
「皆さん、周辺の警戒をお願いします!」
私が叫ぶと皆が頷いて周辺警護と陣の護衛を始める。
「アリス、あれをどう思う。」
「話している時、敵意を感じませんでした。
最初の攻撃も陛下からわずかに外れてました。
私が防がなくても陛下に当たりはしませんでした。
だから、敵意は無いのだと思います。
ですが、相手が誰だかもどの陣営かもわかりませんから、細心の注意をするべきです。」
私が言った。
今の私は陛下を護るのが仕事だ。
それが、オズから与えられた私の居場所だ。
「そうだね。だが、この事はオズに黙っていてくれないかい?」
ルーギスさんが言った。
オズに?
どうしてだろう?
「恐らくだが、オズに名前を言えばある程度陣営がわかると思う。
が、それと同時にオズはその陣営に対し敵対の態勢をとるだろう。
何時でも冷静で、完璧なオズだと思われている事も多いが本当のオズは仲間思いで仲間の為なら人でも平気で殺す様な人だ。
彼に知られれば・・・
後は言わなくともわかるだろう?」
ルーギスさんが真面目な顔で言った。
それは、私の知らないオズの話だった。
確かに、オズは優しくて旅の間も私の事を優先してくれた。
きっと、オズ1人ならもっと上手くやれていたであろう局面もあった。
それでもオズは私を優先してくれていた。
それを思えばオズが仲間思いなのも良くわかる。
「それに、オズも僕たちに秘密があるみたいだからね。」
ルーギスさんが言った。
「秘密?」
「あぁ、女の子が1人。たまにオズと密会していると言う噂を聞く。
帝国にオズが来て5日だがその間に数度目撃されているんだよ。
それが誰なのかはわからないけれどね。」
ルーギスさんが言った。
私もたまにオズと別行動をする。
多分その時なのだろう。
もしかして、今の別行動もそうなのかな。
「ま、お互い詮索は無しとした方が良い。
その方が良い友人関係を築けると言うものだ。」
ルーギスさんがそう言って微笑む。
私とルーギスさん2人だけの秘密だ。
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