無能と追放された大賢者様は少女と共に悠々自適な旅をする。

Coco@

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8.大賢者を失った国

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帝国から宣戦布告があった。
これ以上奴隷制度を許すわけにはいかないと。
そして、大賢者様を愚弄するのは大賢者様の友人である皇帝ルーギスが許さないと。
まさかこんなにも早く帝国に大賢者追放が伝わるとは思わなかった。
大賢者の追放は未だ民にも知られていない内容だからだ。
そんな極秘情報が何故こんなにも早く漏れてしまったのか。
いや、今はそんなことより戦争の準備だ。
奴隷制度を撤廃すると宣言しない限り帝国は攻めてくる。
家臣を集め意見を聞けば皆奴隷制度撤廃には反対だった。
奴隷はこの国の発展に役立ってきた。
故に、撤廃すればこの国の貴族ほぼ全員から反感を買うだろうと。
そうなれば戦争しか手段は無い。
こんな時大賢者がいれば良い策もあったろうにそれはもう遅い話だ。

「国王陛下っ!帝国軍が国境付近に陣を敷いたと!」

「なにっ!もうか!宣戦布告から2日だぞ!」

「恐らくその前から準備をしていたのでしょう。
そして、今回の相手の布陣の先頭に立つのは皇帝自らであると偵察より報告が来ています。」

おかしい。
あの皇帝は自ら最前線に立つような勇敢な男じゃない。
どちらかと言えば大賢者と同じく戦いを好まず、戦争も将軍に一任していた。
そんな皇帝が先頭に立つ?
いったい何故だ?

「すぐに軍を編成せよ!我らも出陣だ!」

そう臣下達に叫んで剣を手に取る。
こうなったら直接確かめに行くしかあるまい。

「陛下っ!陛下はこちらでお待ちください!」

「何を言うか!帝国は皇帝自ら先頭に立っておるのだぞ!であれば我も先頭に立たねばなるまい!」

そう言って家臣の言葉を無視して馬小屋へ向かう。
そこにいる白馬の頭を撫でる。

「陛下、明日の朝には出立出来ます。」

「そうか。今回の戦争、指揮は我がとる。
この国の長きに渡る歴史の為にも奴隷制度を失うわけには行かぬ。」

そう言って部屋へと戻る。
馬の調子は良さそうだ。
あれなら久しぶりの戦争でも充分に力を発揮できるであろう。

─────────────

翌日、城の中庭には沢山の兵達が集められた。

「良いか、これから国の為に出向く!我が国の未来はそなたらにかかっておる!帝国は手強い。
だが、倒せぬ我らでは無い!
西大陸1の大国の力見せてやろうぞ!!」

そう言うと兵達がおーっと歓声を上げる。
先頭にいる白馬に跨がり戦場へと赴く。
最後まで止める家臣もいたがそれを振り切って出陣する。
その間の事は優秀な家臣に任せたし準備は万全だ。
兵達の士気も高く、大賢者の策の通りに訓練していた兵達の力も大分上がっている。
我が国が西大陸最強であると見せるチャンスでもあるし帝国に恨みこそ無いがここは我が国の為に糧となって貰おう。
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