無能と追放された大賢者様は少女と共に悠々自適な旅をする。

Coco@

文字の大きさ
上 下
3 / 22

3.大賢者と幼女

しおりを挟む
国を出るためには正門の他にスラム街の方から出る東門がある。
俺は東門の方から出ることにした。
理由は簡単。
行きたい場所があるからだ。
そこに行くにはこちらの門から出た方が近い。
スラム街を通るのは少し嫌だが致し方ない。
俺はそう思いスラム街を歩く。
すると1人の少女が家屋にもたれて倒れているのが見えた。
持って数日だろう。
ただ餓死を待つばかりと言った感じだ。
しかし、その少女から違和感を感じる。

【鑑定】

俺が魔眼を使って鑑定を行う。
俺の唯一のスキルだ。
今のところは。

─────────────
アリス
種族:魔族
年齢:15歳
クラス:無し
スキル
盗技
短剣術
交渉術
闇神龍の加護
─────────────

加護持ちか。
神龍の加護と呼ばれるこのスキルはその属性を司る神より与えられる物でその属性によるあらゆるスキルの効果を高めてくれる。
彼女の場合は闇属性だ。
しかし、彼女は闇属性系統のスキルは持っていない。
闇属性スキルを持てば光るだろうに。
それに、クラスも無いならあらゆるクラスになれる可能性もある。
なかなか良い原石だと思う。

「食べる?」

俺は静かにその子にパンを差し出す。

「良いの?」

俺は微笑みながら頷くと起き上がってパンを受け取った少女の隣に座る。
黒く長いロングストレートに真ん丸な赤い瞳で丸顔。
華奢な体つきで身長は145cm程度。
服装はボロ布の様な薄汚れたTシャツとホットパンツのみだ。
まぁ、スラム街だし良く見る服装だ。
俺は無言でパンを食べる少女を隣で眺める。
今でこそ痩せ細っているが顔つきは可愛らしく将来は相当な美人になりそうだ。
そう言う意味でもここでのたれ死ぬなんて惜しいと思う。

「行く宛、無いの?」

「ん。お父さんとお母さんが戦争で死んでからここで生ゴミ漁ったり、たまに通る人の財布盗んだりかな。
そうしないと、生きていけないから。
ここって。」

少女はそう言ってパンを平らげた。

「俺は悠々自適な旅をしているんだ。
よかったら一緒にどうだい?」

「私、何も出来ないよ?
それとも、お兄さんには盗賊が必要?」

少し怪しむ目付きで俺を見て言った。

「はは、そんな事は無いよ。
俺はただ独り旅も虚しいから共に旅する仲間が欲しいだけだよ。」

俺がそう言って微笑む。

「変わってる。」

「はは、良く言われるよ。変わり者だってね。
けど、その方が人生楽しいだろ?
君の様な魔族は寿命も長いしね。」

俺が言うと少女はとっさにこっちに反抗的な目を向ける。

「安心して。俺も同じ様な者さ。
リュガって種族知ってる?」

「まぁ、神様からの遣いとされる龍と人のハーフだよね?」

「ま、そんなところさ。もうかれこれ数千年は生きているかな。でも、まだまだ寿命は有り余っているんだ。」

俺が言うと少し驚くような、怪しむような顔でこちらを見る。
無理もないだろう。
どんなに長寿でも千年を越えるものはそうそういない。
それこそ、リュガだけだ。
そして、そのリュガも俺を含めて数える程と言っても良いほど少ないし、人前に姿を見せることも少ない。
閉鎖的な山奥で他種族と関わらず独自の風習や文明を持つのがリュガだ。
言ってしまえば俺が変わっているのだ。
外界に出るなんて常人のする事ではないなんて言われる程だからな。

「そんなに生きてて大変じゃない?」

「とても楽しいよ。
数百年経つだけで同じ国でも様相が変わる。
それに、数十年そこに住んで変わり行く国を見るのも面白い物さ。
暇潰しに国のお偉いさんなんかになってみたりね。」

俺がそう言って微笑む。
暇潰しのつもりが300年だもんな。

「私も、寿命は300年はあるって言われてる。
けど、そんなにこの生活するのもつまんないかなって。
けど、私には何もないから。
ここでこうしてのたれ死ぬしか、無いから。」

少女はそう言って体育座りでうずくまる。
両親を失った彼女にはもう生きる気力すら無いようにも思えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...