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第11話:ウラ娘~プリティーデビル~
しおりを挟む勇者の案内で森を進んでいくと、いかにも怪しい洞窟が現れた。
その洞窟を指差し、勇者が言う。
「あそこが私たちのアジトです」
こんな森の中で、さらに家じゃなくて洞窟に住むなんて、これはもう完全に反社会の組織だな。
「中にはどれくらいの人がいるの?」
僕が勇者にそう聞くと、勇者が答える。
「ここを拠点にしているのは、女戦士と白魔道士と私の3人だけです。今は女戦士と、もしかしたら白魔道士が帰ってきているかもしれません」
……白魔道士。
あれか。王の格好をしてた人か。
「魔王、突撃するの?」
そう聞くと、魔王は返事の変わりに木陰に隠れるよう指示を出した。
木陰に隠れ、どうしたのか質問しようとしたら魔王が小さな声で言う。
「誰かが洞窟から出てきおった」
女戦士かもしれない。
隠れて洞窟を見る僕の心拍数は上がった。
しかし、洞窟から出てきたのは女戦士ではなく、王の格好をした男だった。
勇者が小声で言う。
「あれが白魔道士です」
「強いの?」
僕がそう聞くと、勇者は首を横に振った。
「彼も私と同じです」
そう言うと、勇者は木陰から出て、白魔道士の前に姿を現した。
同じ……?
つまり、能力を全て金に変えたってこと?
「あっ、勝手に出ちゃったよ、魔王」
「仕方ない。ワシらも行くか」
そう言って木陰から出ていく魔王。
仕方がないので僕も魔王に続いた。
「お前たちはさっきの!」
僕たちの姿を見て、警戒する白魔道士に勇者が近づく。
「白魔道士、さっきは上手く逃げましたね」
「なぜアジトをこいつたちに教えた、勇者!」
「私はこの人たちと一緒に、女戦士を倒す為に帰ってきました」
勇者の言葉に、白魔道士は腰にぶら下げていた木製の杖を取って構える。
「気でも狂ったか!?」
「気など狂ってません。私は、この人たちと女戦士を倒して、自由になるんです!」
「自由……だと!?」
「そうです。この人たちとなら、それが出来ます!」
「俺たちを……いや、俺を裏切るつもりか、勇者!?」
白魔道士からそう言われ、苦い顔をする勇者。
「……できれば、あなたを裏切りたくありません。なので白魔道士、あなたもこちら側に──」
勇者の言葉を白魔道士が遮る。
「ふざけるなっ!」
そう吠えて、白魔道士は勇者めがけて走り出し、杖を振りかぶった。
それを見て僕は咄嗟にファイアーボールを出そうとしたが、魔王に止められる。
「えっ、魔王、なんで……」
「ここは勇者に任せるんじゃ」
──ゴツンッ!──
木の杖が勇者の頭に直撃し、鈍い音が鳴る。
勇者の頭部から流れた血が、勇者の顔を赤く蔦っていくが、勇者はそれを拭わずに白魔道士を睨んだ。
「白魔道士、なんですかその攻撃は。なぜ風の魔法を打たないんですか」
勇者の気迫に押され、白魔道士の杖を持つ手が震えているのが見える。
勇者は続けた。
「魔道士が魔法で攻撃しない。……いや、魔法が使えず杖で叩くことしかできない。情けないとは思わないのですか!」
「情けねえよ……情けねえよ!」
悔しそうにそう叫んで、白魔道士は持っていた杖を地面に叩きつけ、続けた。
「だけど、女戦士に脅されて能力を全て金に変えられたんだから、仕方ねえだろ! 俺だって昔みたいに風の魔法で竜巻呼んだりとかしてえよ! 上級魔法を覚えるのに、どれだけ苦労したと思ってんだよ!」
やっぱりそうなんだ。
白魔道士も勇者と同じく、女戦士に脅されて能力を売られた人なんだ。
この人も可哀想な人なんだな……。
勇者は白魔道士の肩に手を置いた。
そして、とても頭から血を流している人とは思えないほど優しい顔と口調で言った。
「白魔道士の努力は、側で見ていた私が一番知っています」
勇者の顔を見て、震える白魔道士。
「でも、もう何一つ魔法も使えねえんだよ!」
「知っています」
白魔道士は、涙を流した。
「お前のその血だって、魔法で治してやることもできねえんだよ!」
今は敵対しているはずだ。
勇者は一瞬驚いた顔をしたが、また優しい顔に戻して言った。
「女戦士を倒して、また一緒に一から苦労しませんか、白魔道士?」
勇者の言葉に、白魔道士は泣き崩れたのだった。
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