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魔法大会
第三四話:南の島の大王は
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アイと親父が無事に魔法を覚え、俺たちは小さな魔法屋を出た。
アイが拳に力を入れると、小さな氷の塊が浮き出てくる。
「これが……魔法……」
自分の魔法に驚愕し、氷の塊を見つめる。
しばらくすると、氷の塊はパリッという音を立てて砕け散った。
「あれ? 割れちゃった……」
残念そうにするアイに、サクヤ様が言う。
「まっ、初めはそんなものね。魔法の技術を覚えていくと、そのうち強い魔法が使えるようになっていくわ」
サクヤ様の言葉を聞いているのかいないのか、アイは背負っているでかいリュックを地面に置き、しばらく気張って力を溜め込んで、それを掌から一気に解放した。
すると、掌から氷の粒が無数に飛び散る。
「おお!」
思わず声をあげた。
なんとも、魔法らしい魔法だ。
この世界に来て、サクヤ様の神通力以外の、魔法らしい魔法を見たのは初めてかもしれない。
アイは踊るように体をくるくる回し、氷の粒を周りに撒き散らしながら、言った。
「ありのままの姿見せる……」
即座にアイに駆け寄り、頭をひっぱたく。
「お前は女王でもお姉ちゃんでもねえ!」
言った瞬間、胸がズキリと痛んだ。
「痛ぁい!」
体の回転と魔法をやめたアイは、頭を抱えて悲鳴をあげた。
「俺の方が痛いわ!」
痛がるアイの頭に、親父が手を乗せる。
そして親父の手が白く光りだした。
「えっ、とびっきりじゃん! 痛くなくなった!」
あれが、親父の魔法のようだ。
「へえ、驚いた。二人とも、魔法を覚えたばかりなのに、もう有効な魔法が使えるなんて」
感心したようにサクヤ様はそう言うが、思い返すと俺も魔法を覚えたてで有効な魔法を使っていたんじゃないだろうか?
役に立つ、立たないは別問題としてだが。
「俺の回復魔法ってのは、離れた所からでも効くんだろうか?」
親父の疑問に、サクヤ様が答える。
「手から出る白い光を飛ばして、回復したい相手にぶつければいいわ」
「なるほど」
親父はそう頷くと、俺に体を向け、腰を落として両手を右の脇腹辺りに置いた。
「かー……めー……はー……」
おい!
やめろ!
それはやめろ!
やりたくなる気持ちは分かる!
すげえ分かる!
俺も小さい時、それはやった!
いや、誰もが一度はやったことがあるとさえ思う。
だけど、俺の禁忌のこと何も考えてねえじゃねえか!
「……はー!」
やってしまった親父の手から、白い光の玉が俺に向かって飛んでくる。
尋常じゃないくらいに胸が痛み、俺は親父を睨んだ。
白い光の玉は回復魔法ということだが、俺の体に当たっても胸の痛みは和らぐことはなかった。
「全然効かねえじゃねえか、親父の魔法」
そう言うと、親父の代わりにサクヤ様が答える。
「禁忌による痛みは、回復魔法じゃ治らないわよ」
うっすらそんな気はしていた。
禁忌による痛みは、傷による痛みではないから、回復魔法でどうこうなるものではないと思う。
俺は親父に怒鳴った。
「俺の禁忌を知ってるくせに、何口走ってんだよ!」
親父は笑いながら答える。
「ははは、すまん。つい、な」
何が『つい』だ!
そんな軽い気持ちで、日本で一番有名な必殺技を使うんじゃねえ!
「でもよ」
親父は続けた。
「お前もこういうことができるなら、絶対にやるだろ?」
親父の言葉にギクリとする。
いやいや、そんなことは……。
完全に否定できない自分がいた。
アイが拳に力を入れると、小さな氷の塊が浮き出てくる。
「これが……魔法……」
自分の魔法に驚愕し、氷の塊を見つめる。
しばらくすると、氷の塊はパリッという音を立てて砕け散った。
「あれ? 割れちゃった……」
残念そうにするアイに、サクヤ様が言う。
「まっ、初めはそんなものね。魔法の技術を覚えていくと、そのうち強い魔法が使えるようになっていくわ」
サクヤ様の言葉を聞いているのかいないのか、アイは背負っているでかいリュックを地面に置き、しばらく気張って力を溜め込んで、それを掌から一気に解放した。
すると、掌から氷の粒が無数に飛び散る。
「おお!」
思わず声をあげた。
なんとも、魔法らしい魔法だ。
この世界に来て、サクヤ様の神通力以外の、魔法らしい魔法を見たのは初めてかもしれない。
アイは踊るように体をくるくる回し、氷の粒を周りに撒き散らしながら、言った。
「ありのままの姿見せる……」
即座にアイに駆け寄り、頭をひっぱたく。
「お前は女王でもお姉ちゃんでもねえ!」
言った瞬間、胸がズキリと痛んだ。
「痛ぁい!」
体の回転と魔法をやめたアイは、頭を抱えて悲鳴をあげた。
「俺の方が痛いわ!」
痛がるアイの頭に、親父が手を乗せる。
そして親父の手が白く光りだした。
「えっ、とびっきりじゃん! 痛くなくなった!」
あれが、親父の魔法のようだ。
「へえ、驚いた。二人とも、魔法を覚えたばかりなのに、もう有効な魔法が使えるなんて」
感心したようにサクヤ様はそう言うが、思い返すと俺も魔法を覚えたてで有効な魔法を使っていたんじゃないだろうか?
役に立つ、立たないは別問題としてだが。
「俺の回復魔法ってのは、離れた所からでも効くんだろうか?」
親父の疑問に、サクヤ様が答える。
「手から出る白い光を飛ばして、回復したい相手にぶつければいいわ」
「なるほど」
親父はそう頷くと、俺に体を向け、腰を落として両手を右の脇腹辺りに置いた。
「かー……めー……はー……」
おい!
やめろ!
それはやめろ!
やりたくなる気持ちは分かる!
すげえ分かる!
俺も小さい時、それはやった!
いや、誰もが一度はやったことがあるとさえ思う。
だけど、俺の禁忌のこと何も考えてねえじゃねえか!
「……はー!」
やってしまった親父の手から、白い光の玉が俺に向かって飛んでくる。
尋常じゃないくらいに胸が痛み、俺は親父を睨んだ。
白い光の玉は回復魔法ということだが、俺の体に当たっても胸の痛みは和らぐことはなかった。
「全然効かねえじゃねえか、親父の魔法」
そう言うと、親父の代わりにサクヤ様が答える。
「禁忌による痛みは、回復魔法じゃ治らないわよ」
うっすらそんな気はしていた。
禁忌による痛みは、傷による痛みではないから、回復魔法でどうこうなるものではないと思う。
俺は親父に怒鳴った。
「俺の禁忌を知ってるくせに、何口走ってんだよ!」
親父は笑いながら答える。
「ははは、すまん。つい、な」
何が『つい』だ!
そんな軽い気持ちで、日本で一番有名な必殺技を使うんじゃねえ!
「でもよ」
親父は続けた。
「お前もこういうことができるなら、絶対にやるだろ?」
親父の言葉にギクリとする。
いやいや、そんなことは……。
完全に否定できない自分がいた。
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