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第8話 新たな足音

朝靄の夢

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 そして夜が明け、窓に光が差し込む。

 光を浴びて、一番初めに目を覚ましたのはグレンだった。

 「!」

 瞳を開くと見慣れない天井、だけどよく知っている匂い。グレンはすぐさま自分がいる場所を把握した。

 ベッドの傍には朝の光によって綺麗に輝く青がかった銀髪の少女、イルザが眠っていた。

 守るべき主が無事生きていてほっと一息を吐いた。

 最後に覚えているのは、捕まったイルザを押し飛ばして、ブランの反撃を受けたところまで。きっとあの後、イルザが何とかして家まで帰ってこれたのだろう。

 最後まで一緒に戦い抜くことが出来なかったことに酷く後悔している。今回の戦いは最初から最後まで完全に足手まといだった。

 (また、体を鍛えないとな・・・)

 傷は塞がっているが、酷く頭が痛み、気分が悪い。まだ誰かが起きている気配は無いので、グレンは再び眠りについた。

 

 
 「・・・の・・・よ。 ・・・人の子よ・・・。 愚かなる人の子よ」

 蒼白の霧の中、何者かが話しかけてくる。

 (誰だ?)

 「我は其方であり、其方は我である」

 (・・・どういうことだ?)

 霧の中響く声は、男性とも女性ともとれる中性的な声だった。

 状況がいまいち呑み込めないグレン。さっきまでイルザの家にいて、再び眠った。つまりここは夢の中なのか、とグレンははっきりしているようで曖昧な意識の中、状況を整理する。

 「再び、我が地を訪れよ」

 (我が地? いったい何のことだ?)

 「其方の始まりの刻、時は黄昏にて」

 (始まりの刻? 黄昏? どういうことかさっぱりわかんねぇぞ!)

 再び問いかけてみたが、返事が返ってくることは無かった。

 そして考える間もなく、蒼白の霧が鋭い光へと変化する。




 「・・・・・・」

 グレンは目を覚ました。なにか大事な夢を見ていた気がするが、寝起き特有のぼんやりした意識のせいで思い出せない。しかし、今朝の不快感がなくなって目覚めはスッキリしている。

 上半身を起こし、大きく伸びをする。さっきまでベッドの傍で眠っていたイルザの姿は既になく、扉の向こう側から香草のいい香りが漂ってくる。

 いい具合に腹も空いている。まだ体は痛むが空腹には抗えないので、ベッドから起き上がって、香りの元へ足を運んだ。

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