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第7話 神月は輝き
チェックメイト
しおりを挟む「よそ見をする余裕はあるのかね?」
ブランの弓が強く黄金に輝きだした。
(・・・攻撃が来る)
イルザやブランの戦いを見てエルザは気づいたことがある。神界器の能力を使用する際、必ず武器が光り輝く。その予備動作ともいえる輝きを見逃さなければ攻撃に備えることが出来る。
「“極光雷砲”!」
黄金のレーザーがエルザに向かって一直線に空気を巻き込みながら突き抜ける。
(・・・直接受け止めるのはまずい、だけど避けるとスミレを巻き込んでしまう)
スミレは何かに集中している。
(・・・あの魔術、自信は無いけど仕方がない)
「あっははははは! 消し炭になるがいい!」
ブランは高揚し、勝利を確信した。
「・・・“ミラージュ・プロテクション”展開」
エルザの正面に防御性能を持った魔法陣が展開される。だが、プロテクションとは違い、消費魔力量は何倍にも膨れ上がっていた。
(・・・展開だけでキツい)
防御魔力は展開時のみならず、発動を維持する時間に比例して魔力を消費する。
「そんな防御魔術ごときで防げると思うな!」
苛烈極まりないブランのレーザーがエルザの魔法陣に届いた。月光を充分に吸収した ブランの攻撃は容易く魔法陣を打ち砕く。
と確信したが手応えがなかった。
(今度は何を仕掛けた!?)
一度エルザに敗れているブランは思考を張りめぐらせるため、冷静に現状を把握する。
レーザーは確実に魔法陣を貫通している、いや、していなかった。吸収していたのであった。
(あのエネルギー量を吸収だと!?)
エルザの魔方陣は砕かれることなく、レーザーをそのまま吸収していた。
「・・・返すわ、反転!」
吸収を行っている魔法陣の真横にもう1つ魔法陣が現れる。そして、その魔法陣からブランの放ち吸収された"極光雷砲"が、威力が変わらぬまま放出される。
「反射防御魔術っ!そんな魔力残っているはずがっ!」
魔力による攻撃であれば、すべてを吸収し、術者へ返す反射防御魔法。光属性の上位に位置する魔法であり、エルフの血を引き尚且つ天性の才能に恵まれているエルザだからこそ使えるのである。
反射されたレーザーはブランの左肩を狙う。予想外の反撃に遅れを取ったブランは回避が間に合わず、左肩をレーザーが抉った。
「ぐぁっは!」
「・・・自分の攻・・撃を・・・受けるのは・・・どんな・・・気分かしら?」
魔力を使い切ったエルザはその場に座り込む。もはや立ち上がる気力すら残っていないが、精一杯の皮肉だけは返す。
「本当に恐ろしいよ。貴様ほどの魔術使いがこんな辺鄙な地に居たなんてね。思わず濡れてしまっただろ?」
焼け焦げた左肩を押さえつつ、怒りはそのままいつもの調子で返事をする。
「だが、魔力がなければその驚異的な才能も無意味となる」
魔族が有する自己修復能力で徐々に左肩の傷が癒える。
「魔力が尽きた体ではもはや立ち上がることも出来まい、チェックメイトだ。そうだろ?」
もう言葉も発することも出来ない程に疲弊しているエルザは、ここまでかと諦めかけていた。
(・・・ごめんね、姉さん。私ここまでみたい)
「極光に呑まれろ!」
死を覚悟したその瞬間。
「チェックメイトは貴方です! "極光雷砲"!」
スミレの声が響く。
スミレの放ったレーザーはブランの頭上を通った。
「ふっ、召喚主への攻撃は無効化されることは知っているだろう。しかも、それすらも外すとは無駄な悪あがきだったね」
エルザをいたぶることに夢中で、スミレの行動に注意が逸れていたが杞憂だったことに安心したのか、呆れたように語りかける。
「いいえ! 無駄ではないです、狙ったのは主様では無いのです!」
「なに!?」
ブランの頭上を通り抜けたその延長線上にあるもの。それは。
「"月女神の輝護"を破壊!?」
黄金に輝く月は砕け、薄闇に染まっていた部屋は純白を取り戻す。
そして、イルザとグレンを囲んでいた青黒い霧の壁は紅蓮の劫火に呑み込まれた。
「やっと抜け出せたわ!」
「さてと、それじゃあ反撃と行きますかね!」
炎を纏った連結刃を元に戻し、燃え盛る炎の中から傷だらけのイルザとグレンが現れる。
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