7 / 24
第一章
1
しおりを挟むあれから三年が経ち、イライアスは十六歳になった。
ラティーロでは十五歳で成人とみなされ、平民であればいっぱしの大人の扱いになる。一応、婚姻も可能だ。
しかし貴族の間では、十三歳から十六歳までの間に王立ルルテラ学院に入学し、三年間みっちりと魔法学を含む勉学に励むのが推奨されている。
入学時の年齢にバラツキがあるのは、低位貴族が一定年齢での入学を義務付けていた時期に、授業料が捻出できない事が頻発したため、救済措置として決められたものだ。
イライアスも十三歳になるとルルテラ学院に入学し、三年間みっちりと学生生活を堪能した。何せ授業内容のほとんどは王子教育で終了してしまっている。最終学年では公務が少しづつ振り分けられたため、休みがちではあったけれども、友人と呼べるものもできたし、卒業式典とその後のダンスパーティにも出席する事ができた。とは言えダンスパーティではまだ婚約者のいないイライアスは、ご令嬢たちには大人気だった。おかげでほとんど休むことなく踊らされるという、剣術の訓練よりもハードな二時間を過ごしたのは言うまでもない。
そんなイライアスも、既に王城で王子としての執務に本格的取り組んでいた。だがまだほんのひよっこであるイライアスに回ってくる仕事はそれほど多くはない。だからイライアスは午前中に執務を終わらせると午後からは自主的に総務部と言われる部署に顔を出すようにしていた。
ここは宰相の管轄になるのだが、とにかくあちこちから書類が届く。財務省に届く予算意見書なども一度は総務部に届くのだ。届いた書類はまず総務部の第5課に回される。ここは所謂届いた書類の振り分け係のようなものだ。地方貴族から上がってくる陳情書や怪文書、市井から上がってくる請願書等々、それこそ諸々の書類が回ってくるので、それをただ只管仕分ける。
とは言っても機密文書も含まれるため、総務部第5課はかなりのエリート揃いだ。しかし王城に出仕している貴族の中には、その事はあまり知られていない。
そしていつも書類に塗れて人手不足でアップアップしているこの部署に、イライアスは午後になると訪れるのだ。書類の仕訳を手伝うために。
けれどこの日は、昼食を執務室で取った後、国王に呼ばれていると自分付きの侍従ディノッゾに言われた。
王城で働くようになって、国王にこうやって呼び出される事はしばしばあるが、大抵は面倒ごとが多い。しかし、それを嫌だという権利はイライアスにはない。国王の命は絶対だ。それがどんなにくだらない事であったとしても。
「陛下、イライアスが参りました」
国王の執務室の扉をノックすれば、暫くして入室許可がおりる。
「お呼びという事で参りましたが、どういったご用件でしょうか」
執務机の上で書類に目を通していた国王ーー名をトバイアス・ルル・ラティーロというーーは、ちらりとイライアスに視線を向けたが、しばし待てとでも言うかのように手元の書類にサインを始めた。カリカリとサインの音が響く。
その間、イライアスは直立不動で待っていた。第一王子と言えど執務中は国王と臣下の一人だ。黙って待つしかない。
「待たせたな、まあ、そこのソファにでも座れ、今、茶でも用意させる」
何枚かの書類にサインが済んだトバイアスは、そう言いながら席を立つ。もちろんトバイアスの専属侍従がいつの間にか紅茶の準備を始めていた。
「ああ、そうだ。メイナードも呼んでくれるか」
誰にともなくトバイアスがそう言えば、部屋の隅に控えていた護衛騎士がすっと隣室へと消えていく。隣りには宰相の執務室がある。わざわざ一旦扉から外へ出なくても済むように、国王の執務室と宰相の執務室は内扉で繋がっていた。
前もって打ち合わせはしていたのだろう。その内扉から宰相のメイナード・ドリス・メンドーサが入ってくる。肩下まである青銀の髪を無造作に束ねた眼光鋭い細身の男は、この城の中で誰よりも恐れられている男だ。時には国王ですら怯える事があるのだから、中々に侮れない。
「お呼びで」
「ああ、イライアスにあの話を。それと給仕が終わったら暫くは出ていてくれ。お前たちもだ」
三人がそれぞれの位置に座れば、淹れたての紅茶がすかさずサーブされる。ついでに茶菓子のクッキーとチョコレートが数個乗せられた小皿がそれぞれの前に置かれた。そしてトバイアスに言われたように、侍従も護衛騎士たちも執務室を出て行ってしまう。
三人だけになった瞬間、トバイアスはだらりとした雰囲気に変わった。そして早速チョコレートを口に放り込む。
「まずはイライアス殿下、カーネリアンの瞳という言葉を知っていらっしゃいますでしょうか」
こちらもまた紅茶を一口飲んでからメイナードが話し出した。
「いや不勉強で済まない、その言葉は知らない」
「いえ、これは私共も知らなかった言葉なのでお気になさらず」
では誰が? とイライアスがそう思えば、メイナードの視線がチラリとトバイアスに向けられる。
ふむ、父上か。
「それで、そのカーネリアンの瞳とは?」
「これをご覧ください。近隣諸国の歴史などを調べるだけ調べた結果でございます。遡れたものとしては、六百年前の出来事もございます」
ばさりとテーブルに置かれた紙の束に、イライアスは顔を引き攣らせた。たぶんメイナードの子飼いの者たちが調べたのだろうが、一枚の紙にびっしりと文字が書き込まれている。しかもそれが何十枚とあれば、イライアスでなくても引き攣るだろう。
「今ここでお読みいただくのは大変だと思いますので、口頭で説明いたしますが、年のころは十五、六から三十くらいまで、髪はハニーブロンドもしくはストロベリーブロンド、瞳はオレンジと赤を混ぜたような色合いの女性が、数百年前から存在していたようです」
メイナードの言葉に、イライアスは苦い表情を浮かべた。まさかその女性たちが全員同一ではないだろうとは思うものの、メイナードが表したその容姿で思い出す姿に、苦い思いがこみ上げる。
「名前は決まったものはないようです。さすがに六百年前は分かりませんでしたが、エルサ、マリアーナ、アルドゥーラ」
「アルドゥーラ妃……」
アドリアの側妃の名前に、やはりという思いは強かった。あの時、イライアスはアルドゥーラ妃の視線に竦んでしまったのだ。あの後、特に身体的にも何もありはしなかったが、トバイアスが言っていた「中てられた」という言葉はいつまでも引っかかっていた。
「そういえば、あのアドリア王国だけどな、一年前に政権交代があったのは知っているか?」
アルドゥーラ妃の名前がでたからだろうか、唐突にトバイアスがそんなことを言う。確か去年くらいに、山向こうの国で政変があったという話は聞いていた。
「政権交代? 何があったのです?」
「あそこの城さー、やけに豪華絢爛だったじゃねぇか」
そう言われて思い出すのは、あの目が痛くなるような客室とキラキラぎらぎらと輝くシャンデリアだ。確かに大理石や宝石がふんだんに使われていて、さして必要のないところで魔道具を使っていた記憶がある。
「けどな? あの国には鉱山があるわけでも魔石が取れる鉱床があるって話も聞いたことがなかった。それにあの時、飛竜車でオズワルドから行っただろう?」
「はい」
「後でドラゴに確認したんだが、あの飛竜車を手配したのはアドリア王国だったんだと」
ドラゴとは多分、竜人国の族長のことだろうなぁ、と思いつつ、どういう事か分からなくて小首を傾げたイライアスだ。
「あの時アドリア王は、国を見せたくなかったんだと思うんだよねぇ」
また一つ、今度はクッキーを口に放り込んで紅茶を飲んだトバイアスに、イライアスはどういう事です? と視線で問いかける。
「鉱山も鉱床もない、うちみたいな穀倉地帯も魔の森もない、じゃああの豪華絢爛な城にかかっている費用はいったいどこから出てきたんだろうなぁ?」
トバイアスの言葉に、イライアスも納得した。
あの城を維持するとなるとかなりの金が必要だろう。それに思い返してみれば、あのアルドゥーラ妃のドレスにも宝石がたくさん使われていた。国の収入が税収だけならば、どれだけ絞り取ったのか。
「あの側妃が金遣いが荒かったらしくてなぁ、地方の民はあまりの重税に逃げ出すやつは出るわ、王都ですらまともな人間は一日、一日命がけで過ごしていたらしい。高位貴族ですら屋敷の維持が儘ならなかったってぇくらいだからな、まあ、そうしたら不満は爆発するだろ」
住んでいる村や町を捨てるのは、たいていどの国でも重罪になる。その事は村人たちも分かってはいただろう。けれど、たとえ捕まって殺されたとしても、生きるためには捨てなければならなかったと思えば、なんとも言えない気分になる。
ましてや王都の住民でさえ、まともな暮らしができないとは。
「そうですね。平民は日々の生活が立ち行かなくなっていくというのに、城では毎日のように贅沢三昧。正妃はなんとかお諫めしようと奮戦なさっていたようですが、王と側妃が政務もほっぽり出して、愛欲に耽るわ、贅沢はやめないわで、とうとう王弟殿下が奮起なさいまして、王と王妃、側妃を拘束、一人で懸命に政務を回していた王妃は、地方にある離宮に蟄居、王と側妃は即刻処刑だったそうです」
滔々と紡がれる言葉に、イライアスは声を上げそうになった。それはある意味、王家あるあるとでも言えばいいのか。幸いなことにラティーロではそういったおバカな王様は、ここ数百年単位で現れてはいないが、必ず歴史の授業で習うのだ。愚かな王族とその末路は。
気の毒なのは孤軍奮闘していたのだろう正妃だ。イライアスはひっそりと国王の後ろを歩いていたシックなドレスを着た女性を思い浮かべる。もう三年も前だ。顔なんて覚えてはいない。
でも、あの時見たその女性が、王族として裁かれ地方の離宮で蟄居など、哀れと言わずしてなんと言うのか。
「で、だ。六百年前のやつには魔女が国に災いを齎したっつー事ぐらいしか書かれちゃあいなかったがよ、エルサって女は当時の王太子を篭絡して、婚約者だった令嬢を蹴落とし国外追放、マリアーナって女も似たようなもんだ。ただこいつは婚約破棄された令嬢を処刑している」
「は? その婚約者だった令嬢は何か罪を犯したのですか?」
「それがなぁ、資料がそこまで残っていないんだが、多分、冤罪だと思うんだよなぁ」
多分と言いつつも、どこか確信しているようなトバイアスの言葉に、イライアスは眉をしかめる。
「今回は王妃は無事だが蟄居という名の監禁だろうしなぁ」
「まあ、二年近くも政務を一人で執り行って城を回していたのでしょう? ある意味温情だとは思いますが」
「そうは言うが、一生監禁なんてあり得んだろう」
「うちに頂けるのなら頂きたいぐらいです」
トバイアスとメイナードの会話を聞きながら、イライアスはようやく紅茶を口に含んだ。すでに紅茶は冷めてしまっていたが、そんな事は気にもならない。それだけ今聞いている話の衝撃が凄まじかったのだ。
「このクソ女どもの特徴の一つにある、オレンジと赤が混ざったような色ってのが、カーネリアンって色なわけよ」
どうやらここで最初に聞かれた「カーネリアンの瞳」に繋がるらしい。
「本来これは悪女の代名詞じゃあないんだけどな」
「じゃあ、いったいなんなんです?」
「んー、今までに顕現してねぇから確かなこととしては言えねぇんだが、この女どもは本来神聖魔法の使い手として出てくる予定だったんじゃねぇかなーと」
目を反らしてぼそぼそと呟いたトバイアスに、父はいったい何を知っているのだろうかと、イライアスは目を瞬かせた。しかしその話もメイナードは知っている事らしく、目立った動揺も驚愕も見られない。
しかし神聖魔法の使い手とは。
それは聖女と呼ばれるものではないだろうか。イライアスとしては混乱するしかない。トバイアスから提示された情報の真偽を確かめる術がないのが悔やまれた。しかもトバイアスは、きっと自分にはその情報の出所を話そうとはしなはずだ。
「そして、だな、ここからが本題だ。今、オズワルドにこのカーネリアンの瞳を持った少女がいるらしい」
「はい?」
「うちの暗部の報告だから間違いないぞ~、ちょうどアドリアの側妃が処刑された後くらいから、なんとかいう伯爵のところに、その色を持つ少女が養子に入ったっつー情報が入った。一応、庶子だって話だが、養子に入る前の事が何もわからない。でもって、今年からオズワルドの学園に編入することが決まった」
次々と出てくる情報にイライアスは頭が追い付かない。いや、話としては分かるのだ。カーネリアンの瞳を持つ少女が、オズワルドにいるという事も、そしてその少女がオズワルドの学園に編入するという事も。
オズワルド帝国の帝都ディーラにあるオズワルド学園は、魔力の高い貴族が通う学校だ。魔力が高ければ平民でも授業料免除で通うことができるようだが、そんなものは極々一部に過ぎない。
それに確かあの学園は、十五歳から三年間通う事になってはいなかっただろうか。そうなると今、あの学園にはイライアスと同じ年の第二皇子シンディーラが通っているはずだ。
「イライアス、今から一年オズワルド学園に留学しろ。そしてそのカーネリアンの瞳を持つ少女の善悪を見極め、もし善ならできるだけうちに引っ張って来い、けれど悪ならオズワルドに押し付けてもいいんだが、隣国が荒れると戦争の可能性も出てくるからな。なるべく穏便にいければいいが、最悪は殺せ」
イライアスはヒュッと息を飲み込んだ。
トバイアスは王だ。普段、街の破落戸みたいな感じではあるが、殺せと言った瞬間の、あまりの静けさにイライアスは鳥肌がたった。静かなのに獰猛なその気配に、トバイアスが本気なのだと実感せざるを得ない。
多分少女はイライアスと同じ十六歳なんだろう。なんたって学園に編入するくらいなのだ。けれど、その少女を見極め、害あらば殺せとは。そしてそれを自分になせと言うのだ。実の父であるトバイアスが。
恐ろしい、と思った。
小さい頃から剣術の訓練はしてきたし、魔術の訓練も受けてきた。
王族であるイライアスは、団長クラスにはまだまだ及ばないとしても、剣の腕も魔術の腕もそこそこあると自負している。けれど実際に人を切った事もなければ、魔術を放った事もない。せいぜいが王都に近い魔の森の、魔獣討伐に行ったことがあるくらいだった。
イライアスの心の内が分かるのだろうか、トバイアスはイライアスをじいっと見つめ、ただ目を眇める。
「難しいか」
難しいか難しくないかと言ったら、人を殺す可能性があるのだ。難しいに決まっている。
けれどここで難しいと応えたら、いったいどうなるのだろうか。
その答えはイライアスには分からなかった。
王の子供はイライアスの他に第一王女のペネロペや第二王子であるヒューバートも居る。だが12歳のペネロペも8歳になったばかりのヒューバートも、他国に行くにはまだまだ子供すぎた。たとえ自分が断ったとしても、弟妹が向かわされることはないだろう。だが確実に王の期待を裏切る。
イライアスは背筋を伸ばした。そして決意を込めて口にする。
「分かりました、その任お受けいたします。すぐに向かった方がよろしいでしょうか」
「……ああ、そうだな。だが留学の手続きもある。支度もある程度は必要だろう。向こうは寮があったか?」
「あります。入寮手続きも同時に手配いたしましょう。多少人員も必要でしょうから、その選定もすぐにします。一週間もあればすべて完了するはずです」
イライアスの言葉にメイナードは立ち上がり、隣室にいるだろう秘書官を呼び寄せた。多分彼のことだ。必要なことはすべて漏れなく手配をすることだろう。
「出立は一週間後、用件は以上だ」
「はい、では御前失礼いたします」
そんな短い挨拶を交わし、イライアスは執務室を後にした。もちろんメイナードも既に十全の手配をするために隣室へと下がってしまっている。
執務室を出ていくイライアスの後ろ姿を見送ったトバイアスは、ふうっと大きく息を吐きだすと、ソファの背もたれに寄り掛かった。その顔には濃い疲労の色が浮かんでいる。
「すまねぇな……嫌な仕事押し付けちまって」
そうして小さく呟かれたその言葉は、誰に届く事もなく、するりと中空に消えていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
長くなってしまいました。多分、第一章は1話1話がそこそこ長い話になるかもしれません。
短編も1本UPしました。「私は公爵令嬢のサリア・ハーマン、私は今日も幸せです!」
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる