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38.ベルグヴァインに行ってきましたわ

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 夏の休暇で訪れたベルグヴァインは、とても森深い場所でした。

 まだ正式に領主になったわけではないからと、エイムズ伯爵領の森からお父様が辿ったらしきルート(と申しましても獣道でしたが)から、何日もかけて野宿しながら進みましたけれど、クストディオ殿下がお持ちくださったテントがなければ、わたくしとアリソン様は早々に脱落していたように思います。

 わたくしもエイムズ伯爵領の森で採取などをしておりましたから、体力も森歩きにも自信があったのですが、アリソン様は生粋のお嬢様ですもの。

 一刻も経たないうちにアリソン様がへばってしまって、彼女をそのままにするわけにもいかず、エルネスト王太子殿下が背負いながら進みましたの。

 そんなわたくしも、途中で体力が尽きお父様の背中におぶさる羽目になりましたけれど。

 お父様の広い背中におぶわれるなんて子供の頃以来でしたから、恥ずかしくてしょうがありませんでしたが、護衛の皆様や殿下方は鍛えてらっしゃるんでしょうね。平気そうな顔をされていらっしゃいましたわ。

 それでもエルネスト王太子殿下がアリソン様を背負われているので、殿下の様子を見つつ休憩や野宿をしたので予定よりも時間がかかってしまいました。

 でも、元々夏の休暇中目いっぱい使う予定でいましたので、問題はありませんわ。


「しかし、このテントは素晴らしいですな」

 クストディオ殿下の用意されたテントに、お父様も護衛さんたちも感心しきりでしたわ。

「これは行軍の際に、指揮官や王族が使うためのもので、今回ベルグヴァインに行くという事で借りてきたんです」

 ちょっとよそ行きの顔で、クストディオ殿下が微笑みながら仰いました。王都からエイムズ伯爵領までの道中は、いつも通りの殿下でしたが、エイムズ伯爵家に着いてからは、王族らしいアルカイックスマイルを浮かべているのです。

 普段は、こういった表情をされないので、ちょっとだけ違和感を感じてしまいますわ。けれどお父様もお父様の護衛さんたちも、そんな事は知りませんもの。

 穏やかな笑みを浮かべる殿下に気安く話しかけます。

「いやあ、これだけ森の奥に入って風呂に入れるとは思いませんでした」

 そう言って笑ったのはお父様の護衛の1人、リネーさんですわ。この方、元々は冒険者を生業とされていて、現在は父の護衛としてエイムズ伯爵家にお仲間と一緒に滞在中なんですの。

 ですからお父様が森に行くと言い出せば、常に一緒に居てくださる心強い方たちなのです。

「しかもベッドまであるんですからねぇ、地面にマント被って寝っ転がらなくていいなんて」

 殿下が借りてきてくださったテントは、空間拡張がされておりまして、見た目は少し大きめな普通のテントに見えるのですが、中はとても広く10人くらいは眠れるようになっているのだとか。

 しかも簡易式ではありますけれど、ベッドもありますしお風呂までついている優れモノ。

 しかもわたくし達がいるからと、少し小さめのテントも用意してきてくださって、わたくしとアリソン様とアリソン様の侍女さんの3人で使わせて頂いております。

 さすがに調理は外でしないといけませんけれど、テントの中には簡易テーブルとイスも置けるようになっているので、魔道具のポットさえあればテントの中で温かい紅茶も飲めるのですわ。

 今回アリソン様と一緒にいらっしゃった侍女の方は、野営などの経験のある方らしく、マジックバックもお持ちでしたし、魔道具のポットやマグカップ、茶葉に日持ちのする焼き菓子やドライフルーツまで持ってきてくださっておりました。

 わたくしの方も焼しめた硬めのクッキー(飲み物に浸さないと食べるのが大変なものですが)やドライフルーツ、干し肉や干した野菜に調味料などを持参してきております。

 もちろん食料の調達は現地で行うのですが、干したものでも野菜があるかないかではだいぶ違いますもの。それに干したキノコ類は、スープで戻すと味わいが深くなるのです。そこに干し肉と野菜、それとソーの実を投入すれば具だくさんなソースープになるんですわ。

 ショーの実、ソーの実に関しては、やはりカレスティアでも見かけたことがないそうで、エルネスト王太子殿下や側近のセドリック様、護衛騎士のディオン様は、驚きつつも美味しいと絶賛してくださいました。

 その上、是非とも購入したいとまで仰っていただけたのですけれど、ショーの実、ソーの実はエイムズ伯爵領でしか見かけたことがないのです。

 もちろん他の領にもあるのかもしれませんが、王都で売っているところは見たことがありませんから、やはりそれほど収穫が出来ないのかもしれません。

 でも、雪の降る時期以外であれば、いつでも実をつける木ですし、実のままであれば1年くらいは保存できますから、うちではかなり重宝しているのですけれどね。

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