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24.さて重要なお話を致しましょう
しおりを挟むエイヴリルが部屋に連れていかれ、青白い顔をしたお母様もクストディオ殿下の計らいで部屋を退出したあと、殿下は真面目なお顔でシイの実の事を話し始めました。
それは、わたくしが帰りの馬車で話していた事で、改めて思い返しますと、わたくしは何を殿下にお話ししているのでしょうか。
思わず羞恥を覚えましたが、あの植物園は素晴らしいものでした。だからつい、お兄様にもお話ししたのですけれど。まさかうちもあの植物園に協力しているとは思いませんでしたわ。
しかも交配などの研究までされている施設だったなんて。陛下のお考えはとても素敵で素晴らしいものだと思います。
だから、クストディオ殿下が学園卒業後にベルグヴァイン領を賜ると聞いて、わたくしは納得しましたの。
あの場所は、人が暮らしている領地はさほど広くはありません。我が領と一緒で、それほど大地が豊かでもありませんし、領地の多くが森や山で埋め尽くされているのです。
それでもあの領地を、王族以外の方が拝領したという記録がない土地でもあります。いえ、この国も500年近い歴史がある国ですから、どなたかの領地だった事もあるのかもしれません。ですが、我が家も歴史だけはそれなりにある家です。
しかし、我が家の記録をひっくり返しても、近領であるその地が、誰かの領地だった記録はなかったようです。かなり昔から王家直轄の領地だったとか、それを調べたらしきお父様はそう仰っておりましたわ。
なんで、そんな事をお父様が調べたかと言いますと、これがわたくしがクストディオ殿下にお伝えしたい事でもあるのです。
だから、わたくしはお兄様に地図をお願いしました。
クストディオ殿下は、わたくしの「地図」という言葉に目を見張っておりましたが、それは仕方がない事だと思いますわ。
まず地図と言うものは秘匿されるのが普通ですし、国全体の地図など存在しませんーーもしかしたら王家にはあるかもしれませんが。
それに自領の地図があったとしても、それを他人に見せるなど、自分の手の内をさらけ出すようなものですもの。普通はそんな事はしないでしょう。
でも、わたくしたちは国の端っこにある、対して豊かではない土地を賜っている領主の娘と息子です。
わたくしたちの願いは、少しでも自領の民が幸せに暮らすこと。そして同じように豊かではない土地や痩せた土地の民たちも、お腹いっぱいに食事が出来るようになればいいと、そう思っておりますの。
ですから、殿下の「……やはり、あまり期待されていないのだな」というお言葉に、差し出がましいと思いつつも口を挟んでしまいました。
お兄様が取り出したマジックバックに、なぜかエルネスト王太子殿下が食いつきましたが、今はその事は横に置きましょう。大切なのはベルグヴァインのことですもの。
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