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13.うっかり口にしてしまった妹のこと

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 うっかりしておりました。

 ついついアリソン様とのお話しが楽しくて色々とお話ししていたら、なぜか我が家の話題に。

 別に、兄の話はいいのです。アリソン様でしたらアポロニア様と既にお知り合いでしょうし。エイムズ伯爵の持つタウンハウスで生活されていらっしゃるアポロニア様は、お母様から家内のことを学んでいる最中ではありますが、時間があればわたくしにも、これから経験するだろう社交について教え下さいます。

 それにスレンダーで、程よくお胸もありますし、近くにいるといい匂いも致しますし、本当にお兄様には勿体ないほどの女性ですの。

 だから、兄や義姉の話の流れで妹の事を聞かれて、ついポロリと。

 そうしましたらアリソン様は、妹が入れられる女学校の事を知っていたようで、少し呆然とした様子でしたわ。

 しかも淑女教育の難しいご令嬢が集められた修道院のような女学校、ですって。

 わたくしが聞いていたのは、傲慢、我儘令嬢を矯……いえ、淑女教育を施していただける女学校との事でしたが、なるほど、修道院のような所ですのね。

 アリソン様もびっくりされたでしょうね。だって高位貴族に名を連ねる(末端ですけれど)伯爵家の令嬢が、そういう女学校に行くのですもの。まるで、うちの教育がなっていないような印象を持たれたのではないかしら。

 でも、アリソン様もエルネスト王太子殿下もお優しいわ。

 思わず、わたくしは俯いてティーカップを眺めてしまいました。飲み干してはいない中身は、すっかり冷めて俯くわたくしの顔を映しています。

 はあ、せっかく楽しい時間でしたのに。そう思うと、自分のうっかりさが嫌になります。

「……申し訳ありません、ご不快にさせてしまいましたわね」

 いつまでも俯いている訳にもいかないだろうと、わたくしは顔をあげました。するとアリソン様とエルネスト王太子殿下の心配そうな顔が見えます。ちらりとクストディオ殿下に視線を向けると、少し不思議そうな表情をしていました。

 そうですわね。妹がどんな子かも知らない、女学校についても今初めて聞いたのでしょうから、不思議に思っても仕方がないかもしれません。

「そんな事はありませんわ。私も余計なことを聞いてしまいました……でも、そんなに妹さんは?」
「ふふ、妹はお父様と同じローズピンクのふわふわとした髪に、やはりお父様と同じエメラルドグリーンのぱっちりとした瞳を持っているので、祖父母が大変可愛がっておりまして」
「ああ、そういうのはあるな。うちも父が異母妹を可愛がってるよ」

 わたくしの言葉にクストディオ殿下が、苦笑を滲ませて仰いました。わたくしも少しだけ苦い笑みを浮かべてしまいます。

「妹が生まれてから、領地の別宅で暮らしていた祖父母が、タウンハウスで暮らすようになって。妹が物心つく前から何でも買い与えて、可愛い、可愛いとお人形のように連れ回し、お母様が教育を施そうとしても、可愛い孫に何をするのとお婆様が授業から逃げ出す妹を庇ってしまうのです」
「という事は」
「はい、お恥ずかしい話ではありますが、あまり教育ができておりません。その上、妹は何でも欲しがります。特にわたくしの大事にしているものを欲しがるので、今まではわたくしが我慢すればそれで良かったのですが、お母様の化粧品やアクセサリー、最近ではアポロニア様のお輿入れのための家具なども欲しがってしまい」
「それでコルネリア女学校なわけね……」

 わたくしの話で納得したのでしょう。アリソン様がぽそりとそう呟きました。
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