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しおりを挟む二口、三口、口にしただけのスープにいったいどれほどの毒が入れられていたのか。
それを考えると嗤いたくなってしまう。
王妃であるエレオノーラは、フリートディートを憎んでいる。
フリートディートとしても、その気持ちは分からなくはない。
何せ、王妃にとっては突然現れ、婚約者だった王太子の心を盗んでいった阿婆擦れの子だ。
ある意味、憎悪を向けられても仕方がないとも思う。
だが、王妃は表立ってフリートディートを排除出来ないのだ。
なぜなら王妃が思っている阿婆擦れは、ある日起こったスタンピードから王国を守った救国の聖女だと、巷では今でも持て囃されているからだ。
そして救国の聖女と当時の王太子の道ならぬ恋の結実がフリートディートで。
現れた時と同様、フリートディートを産み落とした後、姿を消してしまった少女のせいで、王妃には暗い噂がつき纏っている。
実際、フリートディートの母であるその少女をどうにかしたのかは分からなくても、隙があればこうやってフリートディートに毒を盛るのだから、全くの潔白とも言えないのだろうけれど。
それにフリートディートが18歳になっても魔道具をつけているのは、王妃や側妃がフリートディートを魔力もコントロールできない危険人物だと思わせたいがためのものだ。
まったく意味はないのだが、王妃や側妃はそれを知らないのだから仕方がない。
これでも一応、婚約者のマーシアが学園を卒業した後には、婚姻と共にレスリー公爵家に婿入りすると言っているのに、未だに信用されていないのはどうしたものか。
子供のいない正妃エレオノーラと、第二王子ヘルムートがいる側妃レオナ・ヘラ。
国内の公爵家筆頭ダーヴィド家の息女だったエレオノーラと隣国の第二王女だったレオナ・ヘラ。
ここだけでも、かなりバチバチの関係ではあるが、エレオノーラとレオナ・ヘラでは子供がいない分エレオノーラの方が分が悪かった。
それに未だフリートディートを王太子に、という声もなくはないのだ。
何せ救国の聖女の子で、国王からの寵愛も厚い。
魔法はどれくらい使えるのかは分からなくとも、近隣諸国の言語はすべて話せ、計算にも強く、剣術も馬術も騎士団長からお墨付き、となれば本人にその気がなくても期待値は高くなるというもの。
もちろんヘルムートを王太子にしようとする動きもあるため、フリートディートの周囲はいつも殺伐としていた。
ーーーーーーーーーー
マーシア・レスリー(16歳)
ラベンダー色の髪・琥珀の瞳・レスリー公爵家の令嬢
フリートディートの婚約者
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