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王都にて
コリンナ 1
しおりを挟むあたしは西の辺境伯の領地の端っこで農民の子として生まれました。
王都からは凄く遠くて、この村の人間は誰も行った事がないけれど、内陸側にあるあたしたちの村は、魔獣に襲われることもないし、平地が多いから小麦をたくさん作って暮らしていて、特別裕福ではなかったけれど、貧しくてどうしようもない、ということもありませんでした。
それは西の辺境伯様のおかげだと、父ちゃんも母ちゃんもよく言ってました。
税金は金貨の代わりに小麦を納めればいいし、必要以上に納めろと無理を言われることもありません。
うちの村では毎年決まって生産した小麦の三割を領主様に納めているけれど、ほかのところは五割、六割を納めさせらている所もあるんだって聞きました。
そんなに納めたら、来年までの蓄えが無くなっちゃうじゃない。
父ちゃんからそんな話を聞いて、うちのところは西の辺境伯様でよかったと思いましたね。
だって、領主様に三割、自分たちの食料と備蓄として三割、モミだねとして一割、残りは王都からやってくる商人が買い取ってくれるんです。
そうやって手にしたお金は、村長さんがあたしたちに均等に割り振ってくれます。
そしたら今度は別の商人がやってきて、生活に必要な塩や砂糖、油なんかを買いこんで、極々たまに母ちゃんが父ちゃんのためにって小さな酒壺を買ったりしてたんですよ。
肉なんかは、村の近くに小さな森があって、そこに行けば猪とか鹿がいるし、うさぎもいます。
もちろん、きのことか食べられる木の実なんかもありますし、野イチゴとかも生えているので、うちくらいの村なら、その森から得られる自然の恵みでも充分生活は出来なくないんです。
もちろん小川もあるから川魚もいますし。ちょっと泥臭いからあたしはあんまり好きじゃなかったですけどね。
でも、小さい頃から村の外にーーというか王都に行ってみたいと憧れていて。
だって、年に一度、社交シーズンとかいうのに出るために、領主様のご一家が王都に向かって行くんです。
うちの村は丁度その道すがらにあるらしくて、領主様ご一家が泊まれるような立派な建物なんてないのに、わざわざ一泊していってくれるんですよ。
しかもご領主一家は必ず肉やら酒やらを提供してくれるんです。
もちろん果物やお菓子なんて滅多に食べられない甘味まであたしたちにくれるんです。
だから、ご領主様たちが王都に向かう日は、お祭り騒ぎになるんです。
美味しい食事でお腹はいっぱいになるし、辺境伯の奥様もお嬢様にお坊ちゃんもお綺麗だし、可愛らしいし。
お坊ちゃんなんて、目をキラキラさせて王都がどれだけ凄い場所かあたしたちに教えてくれるんです。
だから、でしょうかねぇ。
あたしは王都に行ってみたいと、いつの間にかそう思うようになっていたんですよ。
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