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Ⅱ バーバラ

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 そして私は取り合えず、アルトワイス伯爵家にお世話になるまでを全部話しました。

 その話を聞いてお義父様とアーカード様は、話の途中で何度も謝ってくださいました。

「バーバラ、大変だったわね」

 エリザベス姉様がその瞳を潤ませて私の肩を抱き寄せてくれます。

「うん、バーバラはよく我慢したね、でもおかしい部分があるから確認してもいいかな?」
「はい」
「騎士団の官舎はわざわざ家賃を貰いに来たりしないはずだよ?」
「はい?」
「いや、私も確認したが、家賃はバーバラが支払っていたと」

 ニコル兄様の発言に、私とアーカード様が思わず口を開きました。

「うん、だからそれがおかしいんだよ。だって宿舎や官舎といった国が管理しているものは、給与から最初に天引きされているはずだから。それにいくらリカルド・アルトワイスが間抜けでも、長期の遠征に出かけるのなら、毎月の生活費を家族に渡すよう申請書を提出しているはず。そして結婚証明書を提出している訳だから、リカルド・アルトワイスの家族はバーバラになるはずなんだ」
「え?」
「あら、そうなの?」

 そんな事初めて聞きました。
 もしそうだとしたら、あの家賃を取りに来た方は。

「その家賃を取りに来た人の名前分かる? アーカード殿はその尋ねた人の名前覚えてますか?」

 私とアーカード様を交互に見ながら言うニコル兄様に、私も記憶をあさってみます。確か。

「ロナウド様と言っていたような」
「すまん、リカルドと騎士団に手紙を出して、リカルドからは返信がなく、騎士団の事務方から家賃は毎月支払われていると、しかし官舎にはあまり帰って来ていないようだと、書かれていて、特に個人の名前は書かれていなかった」

 アーカード様は、気まずげにそうおっしゃいます。

「ロナウド、ロナウドねぇ……」

 ニコル兄様は目を閉じて眉間に皺を寄せて考え込んでしまいました。

「ただアーカード殿への手紙は、バーバラともし話をした時に齟齬ができるとまずいと思って、そう書いたんだと思うんですよ。騎士団の事を知っている人がいればすぐばれるような話なのに」

 ニコル兄様の言葉に、私は思わず下を向いてしまいます。

 確かにニコル兄様の言う通りだと思ったのです。
 私は不審にも思わず、言われるがまま家賃を支払っておりました。

 生活費の事だって、私に稼ぎがあったからこんなものなのかと思ってしまったのです。

 手に職のない令嬢であったらお給金の一部でも、ちゃんと貰わなければ食べることもままならなかったでしょう。

 普通に考えればわかるはずの事でした。
 でも私にはそんな簡単な事が分からなかったのです。


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