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バーバラ
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しおりを挟む私がアルトワイス伯爵家を訪れると、お義父様が屋敷の入り口でお待ちになっておりました。
「お久しぶりです、お義父様」
そう言って私が頭を下げますと、お義父様は今にも泣きだしそうな顔をなさいました。
お義父様の気持ちは分からなくはありません。しかし私はほとんど最初から、リカルド様には期待しておりませんでしたから、お義父様に気落ちされた顔をされますと大変いたたまれません。
「もうしわけ、ない。いきなりバーバラさんをこちらに寄越すなんて手紙を貰って、何があったのか問い質そうにも全くのなしの礫で」
お義父様の言葉に、私は首を振りました。私にもどうしてこうなったのかは分かりません。ただでさえ一緒に暮らしてもいなかったのに、私が近くに存在する事が、そんなにも嫌だったのでしょうか。
本当は、あの勝手な事を言いに来た時、リカルド様にそう聞いてみたかったです。でも、あまりにも唐突過ぎて、その時は言葉も浮かばず、後になって聞けばよかったと後悔したのでした。
けれど部屋を退去するにもあまり時間がありませんでした。
毎月卸している小物類の納品数は揃っていたのですが、さるご婦人に依頼されていた大判のショールの仕上げが残っていたのです。
そのショールは、かなり複雑な柄を編み込まなくてはいけなくて、元々多くの時間をいただいておりました。けれどお義父様のところに行くとなると、納期が間に合わなくなるかもしれません。
ですので取りあえずはお詫びの品を別途用意して、ご婦人のもとに説明に向かい、謝罪をし、ひと月余分にお時間をいただきました。
それからも今まで卸していたお店に、納品と材料の仕入れなど今後の事を相談したり、荷造りをしたり。
一応、実家にもお義父様の所に行く旨を手紙に書いて送ったりしていると、一週間という時間は瞬く間に過ぎて行ったのです。
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