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第14章 王都帰還〈ゼクトパレス〉
帰郷
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「小姉上、父上の様子がおかしいのです……2日前からわたしがどんなに呼びかけても……この指輪に答えてくれない!」
「うーん、確かに気になるわねルシオン……」
探偵マキシの屋敷の客間。
ミセス・デイジーが作ってくれたオムレツを平らげたルシオンが、怪訝そうな顔で自分の右手に輝く銀色の指輪をビーネスに差し出していた。
それはソーマが御珠中央公園の森の中でルシオンの父、魔王ヴィトル・ゼクトから預かった『ヴィントライゼの指輪』。
ルシオンが呼びかければ、深幻想界のどんな場所からも指輪の力で駆けつけると魔王が請け合った、インゼクトリアの至宝だった。
だがその指輪が、今は沈黙していた。
あの日の夜、スカイタワーの戦いで魔王マシーネの企みを知ったルシオンがどれだけ指輪に呼びかけても。
ルシオンの声に、父親のヴィトルが答える気配がないのだ。
ルシオンが意を決して、グリザルドとともに機巧都市潜り込んだのも、ビーネスを助けるのに他に頼れる者がいなかったのがその理由だった。
大変だなあルシオンも……
ルシオンの中のソーマも彼女の心中をおもんばかってため息をつく。
姉のビーネスを命がけで助けたルシオンが、今度は連絡のとれない父親を気にかけているのだ。
「今すぐにでもインゼクトリアに戻らなきゃだけど……この翅じゃしばらく翔べないし……」
ルシオンの姉ビーネスが、忌々しげに自分の背中に手を伸ばす。
機巧都市の武人ロック将軍との戦いで、ビーネスの翅は切り裂かれたまままだ回復していなかった。
ルシオンの翅も、人間世界での戦いで切り裂かれたまま。
戦姫の姉妹は2人そろって、今は翔ぶことが出来ないのだ。
「フーム、ちょっと失敗したな……」
ルシオンたちの事情を知ったマキシが、自分の顎に手をやりながら少し困り顔で首をかしげる。
「ここからインゼクトリアでは、馬車を使っても1週間はかかる。さっきいた狭間の城の『ものみの鏡』を使えば、一瞬で君たちの故郷に辿りつけたんだが……この『時の羅針』は繊細でね。あまり短時間に頻繁に城を行き来すると折れて使えなくなってしまうんだ……」
探偵マキシが自分の上着の胸ポケットに収まった『時の羅針』を取り出してため息をつく。
「いずれ周期が繰れば、この『表札の無い屋敷』の門はインゼクトリアに移動するが……それもあと半年は先だろう」
「そうか……結局時間がかかるってことか……」
マキシの言葉に、ルシオンは肩を落とす。
マキシの住む『表札の無い屋敷』は、深幻想界中の街にランダムに偏在しているという。
屋敷の門がいずれはルシオンたちの故郷に移動することはあっても……それもまだ、ずいぶん先の話みたいだ。
「やっぱり……馬車を使うしかないか!」
紅玉みたいなルシオンの瞳が、何かを決めたようにキラリと輝いた。
ルシオンの決意は固いみたいだった。
なんとしてでも自分の故郷、インゼクトリアに辿りつき、父親の安否を確認したいようだ。
馬車で……1週間……!?
ルシオンの中のソーマは戸惑いの声を上げる。
元々、ソーマの住む場所……人間の世界に戻れるのがいつになるかわからない旅だったが……
今のルシオンの様子では、想像以上の長旅になりそうだ。
ユナやナナオやコウ……それに姉のリンネの顔が頭をよぎる。
1週間も2週間も、家に帰れず学校にも顔を出せなかったら……みんなに心配かける死、だいたい何て言い訳をすればいいのだろう?
ソーマが途方に暮れていた、その時だった。
「みょーみょーみょー!」
「あん? 『任せておけ』だって?」
自分の分のオムレツを平らげて、テーブルの周りをパタパタ飛び回っていた幼竜アンカラゴンが、盗賊グリザルドの方を向いてネコみたいな声を上げた。
「みょーみょーみょーみょー!」
「そうか……『ちょうど黒の森に帰る方角と一緒だから、ついでに乗せてってやる』……ってよ?」
アンカラゴンの言葉を聞き届けたグリザルドは、ネコみたいな鳴き声を聞き取れずキョトンとしているルシオンとビーネスを向いて、竜の申し出を伝えた。
「そうかい……お前さんも帰っちまうのかいアンカラゴン。短い間だったけど、メチャクチャ世話になったぜ! ありがとうな……」
グリザルドは少ししんみりした顔で、自分の周りを飛び回る小さな黒竜の頭をなでた。
「乗せてくれる……! 古竜の翅だったら、インゼクトリアまで行くのに半日もかからない! 礼を言うアンカラゴン!」
ルシオンの顔が、パッと明るくなっていた。
#
「色々と世話になったマキシ。わたしたちは……もう行く!」
「ああ、元気でなルシオン君、ビーネス君。いずれ周期が来たならば、君たちの故郷からも私の屋敷に遊びに来てくれたまえ」
朝露でひんやり湿ったマキシの屋敷の緑の庭園で。
ルシオンが探偵マキシと、別れの挨拶をかわしていた。
ルシオンとビーネスの傍らには、雄々しい若竜の姿になって漆黒の翅をうんと広げたアンカラゴンがしゃがみこんでいる。
「グリザルド……お前にも改めて礼を言う。お前の助けがなければ、わたしたちはマシーネに囚われて、この街から生きて出ることは出来なかった。色々あったけど……達者でな!」
「フン。礼には及ばねーぜ王女。俺もお前も、互いの約束を果たした。それだけのことだ……」
ルシオンは探偵のそばに立った盗賊グリザルドに頭を下げた。
双頭のリザードマンも、まんざらでもんまい様子でルシオンにそう答えた。
「グリザルド、お前はこれから……どこへ?」
「ああ、俺はしばらく人間の世界を見て回るつもりだ。あの妙な連中の騒ぎに巻き込まれた時に思ったんだ。ひょっとして……俺がやりたい事のヒントは人間世界に散らばってるんじゃねーかってな……」
「人間の……世界!?」
人間の世界?
グリザルドの答えに、ルシオンは目を丸くした。
ルシオンの中のソーマも小さく驚きの声を上げる。
人間の世界で、あの犯罪者ベクター教授の一味の悪事に巻き込まれたグリザルド。
盗賊はそこで、何かに気づいたというのだ。
グリザルドはいったい、人間世界で何をするつもりなのだろう……?
「さあルシオン、行くよ!」
「あ、はい小姉上……」
その時だった。
すでにアンカラゴンの背中に飛び乗っていたビーネスがルシオンに声をかける。
と同時に、黒竜の翅が風を舞いあげて大きくしなった。
「じゃあ、もう行く! さよならだマキシ、グリザルド!」
「じゃあな、ルシオン君」
「ああ、またどこかでな王女!」
「キューンン……」
ルシオンも慌てて黒竜の背中に飛び乗ると、アンカラゴンが漆黒の翅を羽ばたかせて、マキシの庭から飛び立った。
庭で手を振るマキシとグリザルドの姿が、ルシオンたちの視界からどんどん遠ざかっていく。
機巧都市の街並み全体を金色に染め上げていくような朝日の光を切るようにして。
風を切り、雲を切り、2人の王女をその背に乗せたアンカラゴンが機巧都市の西の方、ルシオンの故郷インゼクトリアに向かって飛んでいく。
#
「まったく、この翅さえどうにかなれば、こんな面倒かからないのに……」
「まあまあ小姉上、帰ったらドクター・ネイルに診てもらいましょう。それよりも……」
機巧都市を取り囲んだ鬱蒼とした森を眼下にしながら。
黒竜の背の上のビーネスが、自分の背中に手をやりながら忌々しげに息をついている。
「小姉上、いまインゼクトリアの王都には……?」
「ああ、都に残っているのは父上と姉上の2人だけよルシオン。あたしは蛮族グロムの討伐のためずっと辺境にいたし……兄上は、いつも通りよルシオン……」
ルシオンの質問に答えるビーネスの声に、かすかな影がさしていた。
「父上の呼びかけに応じて、機巧都市との和平条約には顔を出したけれど、そのあとはいつもの通り……アイツを探すために深幻想界中を彷徨い旅している……」
「そうですか、兄上はまだ……」
ビーネスの答えに、ルシオンの顔にもかすかな悲壮が宿っていく。
えーと……ビーネスの上に姉上と……あともう1人兄上が……
ルシオンとビーネスのやり取りを耳にしながら、ソーマも自分の頭を整理する。
人間世界にいた時から、たびたびルシオンやコゼットの口の端に上っていた彼女の兄姉たち。
もう1人の姉はいまインゼクトリアに、そして兄の方は故郷を離れて旅をしているらしい……
その時だった。
……ビュンッ!
おわあっ!
ソーマは思わず悲鳴を上げる。
突然ルシオンとビーネスの乗った黒竜のすぐ脇を……風を切る音と共に、ものすごいスピードで何かが通り過ぎて行ったのだ。
「あ、あれは……!?」
そしてあたりを見回したルシオンの視界に映った、とても奇妙なモノたちにソーマは驚愕のうめきを漏らしていた。
「インゼクトリアの行商たちか……」
「さすがは古竜の翅。もうこんな場所まで来たのか……!」
ルシオンとビーネスが、あたりを飛び交うモノたちを見回して、満足そうな声を上げていた。
飛竜の脇を次々とかすめて、鬱蒼とした森の上空を飛んでいるのは……
飛行服みたいな衣を身にまとった小鬼や土鬼たちに手綱を引かれた、仔馬くらいの大きさもあるトンボや、カナブンみたいな甲虫……
空中で行列を作りながら空を飛ぶ、巨大な昆虫たちだった!
大きなムシ……じゃあここが……!
「ああソーマ、もうすぐそこだ。見えてきたぞ、あれがわたしたちの故郷……甲蟲帝国だ!」
ソーマの声に答えて昂った様子のルシオンが指さす先。
黒竜アンカラゴンが飛んでいく先。
その向こうに見えてきたのは……
中天に上った日の光をあびて広がった灰色の大山脈。
その中腹に切り立っているのは、山々とおなじく灰色の石造りをした……まるで山肌を切り取って創り上げたようにも見える壮麗な都。
その都の中心で、ひときわ高くそそり立っているモノ。
それは樹高300メートルはありそうな……雄大な緑の枝葉を天に向かって茂らせた大木だった!
「ゼクトパレス……帰ってきたんだ……!」
その大木を取り囲むように建てられたに違いない、勇壮で美しい石の城を見て、ルシオンは大きく安堵の息を漏らした。
ルシオンとビーネスが、2人の故郷に帰り着いたのだ。
#
ムシ……ムシ……ムシ……。
あっちにも、こっちにも。
どうしてこんなに……ムシがデカいんだ!?
「アハハハ。驚いたかソーマ。これがインゼクトリアだ!」
驚き戸惑うソーマに声に、ルシオンが愉快そうに笑う。
ルシオンとビーネスを乗せた黒竜の眼下に広がっている、灰色の石で建造された壮麗な都。
その都の上空のいたるところを飛び回っているのは、翅アリやトンボやテントウムシやカナブン……
様々な魔族たちをその背に乗せて、手綱にひかれた巨大な昆虫たちだった。
「彼らは『大蟲の子ら』……このインゼクトリアの地でしか生まれ育つことのない、わたしたちの使役蟲だ!」
大蟲の……子ら!?
ルシオンの言葉に、ソーマは訳が分からず目をパチクリさせた。
ルシオンが戦闘で光矢を撃つために召喚するのは、光り輝く無数のホタル。
そして彼女の姉ビーネスが戦闘で使用するのは、まるでスズメバチのような毒持つ針。
そして、いま辺りを飛び回っている巨大なムシたち。
インゼクトリア……ルシオンの生まれ故郷であるこの国も、そしてルシオンの一族も……
なにか、昆虫と浅からぬ縁があるのだろうか?
「そうだソーマ。伝説では……もともと大蟲《かれら》は遥か昔、この地に巣食っていた邪悪な一族によって生み出されたと言われているんだ……」
ソーマの抱いたモヤモヤに気づいたのか、ルシオンがそう言葉を続ける。
邪悪な一族?
「ああ。この世に生きとし生けるあらゆるモノを憎み、食らい尽くそうとした禍々しい『牙蜘蛛の一族』……そいつらが自分たちの奴隷として生み出したのが『大蟲の子ら』だったと、そう伝えられている」
ソーマの声に答えるルシオンの声が、心なしかこわばっていた。
「だがそんな邪悪な一族にも、ついに滅びの時がやってきた。尽きることなく世に溢れ、暴虐と殺戮とを繰り返していた牙蜘蛛一族は、その時代に深幻想界を治めていた古の魔王たちによって、とうとう1匹残らず駆逐されたのだ。そして……牙蜘蛛たちの頸木から自由になった『大蟲の子ら』が、彼らの巣食っていた大洞穴『隠の洞』から、この地にあふれ出したのだ。以来……この『黒鉄山』の地は魔族が決して近づけない、巨大な蟲たちの跋扈して支配する禁断の地とされてきたんだ。1人の魔族の勇者がこの地を訪れるまではな……!」
ソーマには話を続けるルシオンの声が、徐々に昂っていくのがわかった。
勇者?
ルシオンの中でソーマは首をかしげる。
「そう、その勇者は、かつて牙蜘蛛一族の巣食っていた大洞穴……とうの昔に滅び去り忘れ去られていた『隠の洞』の奥底まで辿り着いて……そして見つけたのだ。『大蟲の子ら』と言葉を交わし、彼らを操るために牙蜘蛛一族の長が作り出した最強の宝珠……『ゼクトオーブ』を!」
ゼクトオーブ!?
ルシオンの言葉にソーマは息を飲む。
「そして『ゼクトオーブ』の力をその身に取り込んだ勇者は……山々に跋扈するムシたちに語り掛け、その心を開いたのだ。それまで魔族たちが危険だと思い込んでいた『大蟲の子ら』と和解したのだ! そして勇者はこの地に国を開いた。魔族と『大蟲の子ら』が助け合い共に生きる美しい都を創り上げたのだ。それがインゼクトリア。そしてその勇者の名がヴィトル・ゼクト。インゼクトリアを統べる新たなる魔王……わたしたちの父上だ!」
ルシオンが得意満面に、そう話を結ぶ。
この国と……ルシオンの父さんにはそんな過去が……!?
ソーマは人間世界で出会ったルシオンの父、ヴィトル・ゼクトの勇壮な姿を思い出して、改めて息を飲んだ。
その時だった。
「着くわよルシオン。ゼクトパレスに……!」
「……あっ!」
ビーネスの声を耳にして、ソーマにむかって有頂天だったルシオンが我に返ったみたいだった。
緑の枝葉を天に向かって茂らせた雄大な巨樹、そしてその巨樹を取り囲むように建造された壮麗な城が、すぐ目前に迫ってきたのだ。
「アンカラゴン、ありがとう。ここで降ろして……!」
「キューン……!」
ルシオンがアンカラゴンにそう呼びかけると、黒竜は一声鳴いて大きな漆黒の翅をしならせた。
ルシオンとビーネスをその背に乗せた若い竜の体が、地上に広がった美しい街並みにむかって急降下していく。
「うーん、確かに気になるわねルシオン……」
探偵マキシの屋敷の客間。
ミセス・デイジーが作ってくれたオムレツを平らげたルシオンが、怪訝そうな顔で自分の右手に輝く銀色の指輪をビーネスに差し出していた。
それはソーマが御珠中央公園の森の中でルシオンの父、魔王ヴィトル・ゼクトから預かった『ヴィントライゼの指輪』。
ルシオンが呼びかければ、深幻想界のどんな場所からも指輪の力で駆けつけると魔王が請け合った、インゼクトリアの至宝だった。
だがその指輪が、今は沈黙していた。
あの日の夜、スカイタワーの戦いで魔王マシーネの企みを知ったルシオンがどれだけ指輪に呼びかけても。
ルシオンの声に、父親のヴィトルが答える気配がないのだ。
ルシオンが意を決して、グリザルドとともに機巧都市潜り込んだのも、ビーネスを助けるのに他に頼れる者がいなかったのがその理由だった。
大変だなあルシオンも……
ルシオンの中のソーマも彼女の心中をおもんばかってため息をつく。
姉のビーネスを命がけで助けたルシオンが、今度は連絡のとれない父親を気にかけているのだ。
「今すぐにでもインゼクトリアに戻らなきゃだけど……この翅じゃしばらく翔べないし……」
ルシオンの姉ビーネスが、忌々しげに自分の背中に手を伸ばす。
機巧都市の武人ロック将軍との戦いで、ビーネスの翅は切り裂かれたまままだ回復していなかった。
ルシオンの翅も、人間世界での戦いで切り裂かれたまま。
戦姫の姉妹は2人そろって、今は翔ぶことが出来ないのだ。
「フーム、ちょっと失敗したな……」
ルシオンたちの事情を知ったマキシが、自分の顎に手をやりながら少し困り顔で首をかしげる。
「ここからインゼクトリアでは、馬車を使っても1週間はかかる。さっきいた狭間の城の『ものみの鏡』を使えば、一瞬で君たちの故郷に辿りつけたんだが……この『時の羅針』は繊細でね。あまり短時間に頻繁に城を行き来すると折れて使えなくなってしまうんだ……」
探偵マキシが自分の上着の胸ポケットに収まった『時の羅針』を取り出してため息をつく。
「いずれ周期が繰れば、この『表札の無い屋敷』の門はインゼクトリアに移動するが……それもあと半年は先だろう」
「そうか……結局時間がかかるってことか……」
マキシの言葉に、ルシオンは肩を落とす。
マキシの住む『表札の無い屋敷』は、深幻想界中の街にランダムに偏在しているという。
屋敷の門がいずれはルシオンたちの故郷に移動することはあっても……それもまだ、ずいぶん先の話みたいだ。
「やっぱり……馬車を使うしかないか!」
紅玉みたいなルシオンの瞳が、何かを決めたようにキラリと輝いた。
ルシオンの決意は固いみたいだった。
なんとしてでも自分の故郷、インゼクトリアに辿りつき、父親の安否を確認したいようだ。
馬車で……1週間……!?
ルシオンの中のソーマは戸惑いの声を上げる。
元々、ソーマの住む場所……人間の世界に戻れるのがいつになるかわからない旅だったが……
今のルシオンの様子では、想像以上の長旅になりそうだ。
ユナやナナオやコウ……それに姉のリンネの顔が頭をよぎる。
1週間も2週間も、家に帰れず学校にも顔を出せなかったら……みんなに心配かける死、だいたい何て言い訳をすればいいのだろう?
ソーマが途方に暮れていた、その時だった。
「みょーみょーみょー!」
「あん? 『任せておけ』だって?」
自分の分のオムレツを平らげて、テーブルの周りをパタパタ飛び回っていた幼竜アンカラゴンが、盗賊グリザルドの方を向いてネコみたいな声を上げた。
「みょーみょーみょーみょー!」
「そうか……『ちょうど黒の森に帰る方角と一緒だから、ついでに乗せてってやる』……ってよ?」
アンカラゴンの言葉を聞き届けたグリザルドは、ネコみたいな鳴き声を聞き取れずキョトンとしているルシオンとビーネスを向いて、竜の申し出を伝えた。
「そうかい……お前さんも帰っちまうのかいアンカラゴン。短い間だったけど、メチャクチャ世話になったぜ! ありがとうな……」
グリザルドは少ししんみりした顔で、自分の周りを飛び回る小さな黒竜の頭をなでた。
「乗せてくれる……! 古竜の翅だったら、インゼクトリアまで行くのに半日もかからない! 礼を言うアンカラゴン!」
ルシオンの顔が、パッと明るくなっていた。
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「色々と世話になったマキシ。わたしたちは……もう行く!」
「ああ、元気でなルシオン君、ビーネス君。いずれ周期が来たならば、君たちの故郷からも私の屋敷に遊びに来てくれたまえ」
朝露でひんやり湿ったマキシの屋敷の緑の庭園で。
ルシオンが探偵マキシと、別れの挨拶をかわしていた。
ルシオンとビーネスの傍らには、雄々しい若竜の姿になって漆黒の翅をうんと広げたアンカラゴンがしゃがみこんでいる。
「グリザルド……お前にも改めて礼を言う。お前の助けがなければ、わたしたちはマシーネに囚われて、この街から生きて出ることは出来なかった。色々あったけど……達者でな!」
「フン。礼には及ばねーぜ王女。俺もお前も、互いの約束を果たした。それだけのことだ……」
ルシオンは探偵のそばに立った盗賊グリザルドに頭を下げた。
双頭のリザードマンも、まんざらでもんまい様子でルシオンにそう答えた。
「グリザルド、お前はこれから……どこへ?」
「ああ、俺はしばらく人間の世界を見て回るつもりだ。あの妙な連中の騒ぎに巻き込まれた時に思ったんだ。ひょっとして……俺がやりたい事のヒントは人間世界に散らばってるんじゃねーかってな……」
「人間の……世界!?」
人間の世界?
グリザルドの答えに、ルシオンは目を丸くした。
ルシオンの中のソーマも小さく驚きの声を上げる。
人間の世界で、あの犯罪者ベクター教授の一味の悪事に巻き込まれたグリザルド。
盗賊はそこで、何かに気づいたというのだ。
グリザルドはいったい、人間世界で何をするつもりなのだろう……?
「さあルシオン、行くよ!」
「あ、はい小姉上……」
その時だった。
すでにアンカラゴンの背中に飛び乗っていたビーネスがルシオンに声をかける。
と同時に、黒竜の翅が風を舞いあげて大きくしなった。
「じゃあ、もう行く! さよならだマキシ、グリザルド!」
「じゃあな、ルシオン君」
「ああ、またどこかでな王女!」
「キューンン……」
ルシオンも慌てて黒竜の背中に飛び乗ると、アンカラゴンが漆黒の翅を羽ばたかせて、マキシの庭から飛び立った。
庭で手を振るマキシとグリザルドの姿が、ルシオンたちの視界からどんどん遠ざかっていく。
機巧都市の街並み全体を金色に染め上げていくような朝日の光を切るようにして。
風を切り、雲を切り、2人の王女をその背に乗せたアンカラゴンが機巧都市の西の方、ルシオンの故郷インゼクトリアに向かって飛んでいく。
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「まったく、この翅さえどうにかなれば、こんな面倒かからないのに……」
「まあまあ小姉上、帰ったらドクター・ネイルに診てもらいましょう。それよりも……」
機巧都市を取り囲んだ鬱蒼とした森を眼下にしながら。
黒竜の背の上のビーネスが、自分の背中に手をやりながら忌々しげに息をついている。
「小姉上、いまインゼクトリアの王都には……?」
「ああ、都に残っているのは父上と姉上の2人だけよルシオン。あたしは蛮族グロムの討伐のためずっと辺境にいたし……兄上は、いつも通りよルシオン……」
ルシオンの質問に答えるビーネスの声に、かすかな影がさしていた。
「父上の呼びかけに応じて、機巧都市との和平条約には顔を出したけれど、そのあとはいつもの通り……アイツを探すために深幻想界中を彷徨い旅している……」
「そうですか、兄上はまだ……」
ビーネスの答えに、ルシオンの顔にもかすかな悲壮が宿っていく。
えーと……ビーネスの上に姉上と……あともう1人兄上が……
ルシオンとビーネスのやり取りを耳にしながら、ソーマも自分の頭を整理する。
人間世界にいた時から、たびたびルシオンやコゼットの口の端に上っていた彼女の兄姉たち。
もう1人の姉はいまインゼクトリアに、そして兄の方は故郷を離れて旅をしているらしい……
その時だった。
……ビュンッ!
おわあっ!
ソーマは思わず悲鳴を上げる。
突然ルシオンとビーネスの乗った黒竜のすぐ脇を……風を切る音と共に、ものすごいスピードで何かが通り過ぎて行ったのだ。
「あ、あれは……!?」
そしてあたりを見回したルシオンの視界に映った、とても奇妙なモノたちにソーマは驚愕のうめきを漏らしていた。
「インゼクトリアの行商たちか……」
「さすがは古竜の翅。もうこんな場所まで来たのか……!」
ルシオンとビーネスが、あたりを飛び交うモノたちを見回して、満足そうな声を上げていた。
飛竜の脇を次々とかすめて、鬱蒼とした森の上空を飛んでいるのは……
飛行服みたいな衣を身にまとった小鬼や土鬼たちに手綱を引かれた、仔馬くらいの大きさもあるトンボや、カナブンみたいな甲虫……
空中で行列を作りながら空を飛ぶ、巨大な昆虫たちだった!
大きなムシ……じゃあここが……!
「ああソーマ、もうすぐそこだ。見えてきたぞ、あれがわたしたちの故郷……甲蟲帝国だ!」
ソーマの声に答えて昂った様子のルシオンが指さす先。
黒竜アンカラゴンが飛んでいく先。
その向こうに見えてきたのは……
中天に上った日の光をあびて広がった灰色の大山脈。
その中腹に切り立っているのは、山々とおなじく灰色の石造りをした……まるで山肌を切り取って創り上げたようにも見える壮麗な都。
その都の中心で、ひときわ高くそそり立っているモノ。
それは樹高300メートルはありそうな……雄大な緑の枝葉を天に向かって茂らせた大木だった!
「ゼクトパレス……帰ってきたんだ……!」
その大木を取り囲むように建てられたに違いない、勇壮で美しい石の城を見て、ルシオンは大きく安堵の息を漏らした。
ルシオンとビーネスが、2人の故郷に帰り着いたのだ。
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ムシ……ムシ……ムシ……。
あっちにも、こっちにも。
どうしてこんなに……ムシがデカいんだ!?
「アハハハ。驚いたかソーマ。これがインゼクトリアだ!」
驚き戸惑うソーマに声に、ルシオンが愉快そうに笑う。
ルシオンとビーネスを乗せた黒竜の眼下に広がっている、灰色の石で建造された壮麗な都。
その都の上空のいたるところを飛び回っているのは、翅アリやトンボやテントウムシやカナブン……
様々な魔族たちをその背に乗せて、手綱にひかれた巨大な昆虫たちだった。
「彼らは『大蟲の子ら』……このインゼクトリアの地でしか生まれ育つことのない、わたしたちの使役蟲だ!」
大蟲の……子ら!?
ルシオンの言葉に、ソーマは訳が分からず目をパチクリさせた。
ルシオンが戦闘で光矢を撃つために召喚するのは、光り輝く無数のホタル。
そして彼女の姉ビーネスが戦闘で使用するのは、まるでスズメバチのような毒持つ針。
そして、いま辺りを飛び回っている巨大なムシたち。
インゼクトリア……ルシオンの生まれ故郷であるこの国も、そしてルシオンの一族も……
なにか、昆虫と浅からぬ縁があるのだろうか?
「そうだソーマ。伝説では……もともと大蟲《かれら》は遥か昔、この地に巣食っていた邪悪な一族によって生み出されたと言われているんだ……」
ソーマの抱いたモヤモヤに気づいたのか、ルシオンがそう言葉を続ける。
邪悪な一族?
「ああ。この世に生きとし生けるあらゆるモノを憎み、食らい尽くそうとした禍々しい『牙蜘蛛の一族』……そいつらが自分たちの奴隷として生み出したのが『大蟲の子ら』だったと、そう伝えられている」
ソーマの声に答えるルシオンの声が、心なしかこわばっていた。
「だがそんな邪悪な一族にも、ついに滅びの時がやってきた。尽きることなく世に溢れ、暴虐と殺戮とを繰り返していた牙蜘蛛一族は、その時代に深幻想界を治めていた古の魔王たちによって、とうとう1匹残らず駆逐されたのだ。そして……牙蜘蛛たちの頸木から自由になった『大蟲の子ら』が、彼らの巣食っていた大洞穴『隠の洞』から、この地にあふれ出したのだ。以来……この『黒鉄山』の地は魔族が決して近づけない、巨大な蟲たちの跋扈して支配する禁断の地とされてきたんだ。1人の魔族の勇者がこの地を訪れるまではな……!」
ソーマには話を続けるルシオンの声が、徐々に昂っていくのがわかった。
勇者?
ルシオンの中でソーマは首をかしげる。
「そう、その勇者は、かつて牙蜘蛛一族の巣食っていた大洞穴……とうの昔に滅び去り忘れ去られていた『隠の洞』の奥底まで辿り着いて……そして見つけたのだ。『大蟲の子ら』と言葉を交わし、彼らを操るために牙蜘蛛一族の長が作り出した最強の宝珠……『ゼクトオーブ』を!」
ゼクトオーブ!?
ルシオンの言葉にソーマは息を飲む。
「そして『ゼクトオーブ』の力をその身に取り込んだ勇者は……山々に跋扈するムシたちに語り掛け、その心を開いたのだ。それまで魔族たちが危険だと思い込んでいた『大蟲の子ら』と和解したのだ! そして勇者はこの地に国を開いた。魔族と『大蟲の子ら』が助け合い共に生きる美しい都を創り上げたのだ。それがインゼクトリア。そしてその勇者の名がヴィトル・ゼクト。インゼクトリアを統べる新たなる魔王……わたしたちの父上だ!」
ルシオンが得意満面に、そう話を結ぶ。
この国と……ルシオンの父さんにはそんな過去が……!?
ソーマは人間世界で出会ったルシオンの父、ヴィトル・ゼクトの勇壮な姿を思い出して、改めて息を飲んだ。
その時だった。
「着くわよルシオン。ゼクトパレスに……!」
「……あっ!」
ビーネスの声を耳にして、ソーマにむかって有頂天だったルシオンが我に返ったみたいだった。
緑の枝葉を天に向かって茂らせた雄大な巨樹、そしてその巨樹を取り囲むように建造された壮麗な城が、すぐ目前に迫ってきたのだ。
「アンカラゴン、ありがとう。ここで降ろして……!」
「キューン……!」
ルシオンがアンカラゴンにそう呼びかけると、黒竜は一声鳴いて大きな漆黒の翅をしならせた。
ルシオンとビーネスをその背に乗せた若い竜の体が、地上に広がった美しい街並みにむかって急降下していく。
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家庭教師として独り立ちしようとするウリートに手を差し伸べてくれる優しくも男らしいヒュンダルンに憧れを抱くウリート。
社交界の一員として高貴な貴婦人達に優しく緩く色々と、時にはそっと手を差し伸べられながら憧れのヒュンダルンと何故か一緒になりました…
ウリート 侯爵家子息
体が弱く過保護な家族達から
家の外に出してもらえず、
立派な世間知らず。
身体は弱くとも少し線の
細い中肉中背
ヒュンダルン国最強の騎士団長
高身長、整った感じの一見
強面
結婚したら妻を溺愛したい
と思っている
R18に*を入れます。
後半、これでもかって言うほど甘やかせてみたいです……
途中無理矢理表現入りますが注意つけるので苦手な方は飛ばしてください。
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