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第13章 魔城決戦〈グランドバトル〉
猛将ロック
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「これは黒竜の……暗黒の霧……!」
ロック将軍は重力城に備えられた巨大な飛空艇渠を見回しながら、唖然としてそう呟いていた。
いつもならば、城の警備や手入れの一切を取り仕切る機械人形たちがガチャガチャ慌ただしく歩き回っている飛空艇渠が……
今夜は沈黙に包まれていた。
そして喧騒のかわりに辺りを満たしているもの。
それは機巧都市の街並み全体を覆っているモノと同じ……黒い霧だった。
「マシーネ様の魔素の干渉が遮断されて動けなくなったのか……いや、これは!」
飛空艇渠の床に、まるで糸の切れた操り人形みたいに崩れ落ちた何体もの機械人形たちを見回しながら。
将軍は恐ろしいことに気づいた。
「互いに互いを……攻撃して!」
床に転がった機械人形の頭部や胴体は、彼らが握り締めた警備用の銃剣によって、切り落とされたり貫かれたりしていた。
機械人形たちは、互いに互いを破壊し合ったのだ。
魔王マシーネの魔素の指令によって動く操り人形たちは、彼女の指令が遮断された途端、手近で動くものを敵として攻撃するように作られていたのだ。
「あの黒竜が、増殖工場の搬送路を伝ってこの城に……なんということだ!」
事態の恐ろしさを一瞬で理解したロック将軍が、ギリギリと歯ぎしりをしながら周囲をにらみ回した。
魔王マシーネとドッペルアドラーの砲撃でも捕らえられなかった探偵マキシの仲間……
あのインゼクトリアの魔王の末妹と黒い幼竜は、事態のドサクサに紛れて、おそらくはポーフ男爵の屋敷からこの城に忍び込んでいたのだ!
「マシーネ様をお護りせねば!」
将軍が飛空艇渠を飛び出して、玉座の間へと続く回廊むかって駆け出した。
盤石の態勢で重力城を守っていたマシーネの機械人形は、今や手近で動き回る者に片っぱしから襲いかかる動く凶器となっていた。
このままでは城は壊滅。
機械人形の携えた銃剣の刃は、下手をすれば主のマシーネにも及びかねない!
マシーネが居るはずの玉座の間に向かって、将軍が全速力で疾走しようとした、その時だった。
「お待ちなさい。ロック将軍!」
「マシーネ様……!?」
頭上から響いた主の声を仰いで、ロックの動きがピタリと止まった。
魔王の声は、彼女の玉座の間から城全体に繋がった伝声管から発せられたものだった。
「その場を離れてはなりません。例の黒竜がこの城に侵入しています。ガイル医師からの報せも途切れました。第2王女の行方も知れない……! 将軍。あなたはドッペルアドラーにとどまって、双子王の欠片を見張っているのです」
「ですが……マシーネ様の御身は……!」
「……フン」
マシーネを気遣うロックの声に、伝声管から冷笑が返ってきた。
「くだらない気遣いは無用です将軍。わたくしの操り人形が何百体暴走しようが、このわたくしにかすり傷を負わせることもかないません。忘れるなロック・グリッド。わたくしはあなたの何百倍も強いのです……。連中の狙いは、今ドッペルアドラーであなたの手元にある双子王の欠片なのです。ですからあなたはその場を動かず、連中が現れたら速やかにこれを排除すればよい。わかりましたね?」
「御意に……」
「わかればよろしい。わたくしもこれから欠片を回収するため、そちらに向かいます。このわたくしが来るまでには、なるべく綺麗に仕事を終わらせておきなさい」
将軍がマシーネの指示に従うと、魔王の声が早口でそう捲し立てて、一方的に途切れた。
#
「く……! 欠片……か……!」
霧の立ち込めるドッペルアドラーの飛空艇渠に戻ったロック将軍が、頭上にそびえる飛空艇の艦橋を見上げて忌々しげにそう呟いていた。
刀傷に覆われた獣鬼の猛将のいかつい顔に、たまらない悲壮が張りついていた。
#
「疾走りなさいルシオン。もっと速く!」
「わかっています……小姉上!」
黒い霧がたちこめて、迷路のように複雑に入り組んだ重力城の回廊で。
ビーネスとルシオンが、それぞれの武器を自分の指先に構えながら疾走してゆく。
「本当にこっちでいいんだなグリザルド!」
「ああ、間違いねえ。アイツの匂いがハッキリしてきた!」
「みょーみょーみょー!」
ビーネスとルシオンの後を追って走るのグリザルド、ルシオンの問いに答えてクンクンあたりの空気を嗅いだ。
幼竜アンカラゴンの小さな体から巻き上がった暗黒の霧は、いまや城内全体を満たしていた。
霧に紛れてビーネスの処置室を探し当て、彼女を助け出したルシオン。
一同の次の目標は、この城の何処かに囚われているはずのグリザルドの連れ……小さなメイの救出だった。
「ルシフェリック・セイバー!」
「ビーネスティング!」
ガチャンッ! ガチャンッ!
黒い霧の向こうから銃剣を構えて襲いかかってくる何体もの機械人形たちに、ビーネスとルシオンがそれぞれの技で応戦する。
ビーネスの指先から放たれた銀色の針が、次々に機械人形の頭部を貫く。
ルシオンのホタルから放たれた眩い光矢が、機械人形の手足を切断していく。
本来ならば包囲されて、狙い撃ちにされれば、とても敵わない数の機械人形たち。
だが今やその動きを統率する者もなく、ただヤミクモに目の前の相手に襲い掛かってくるだけの重力城の衛兵たちは、ルシオンとビーネスの敵ではなかった。
破壊された機械人形の体が、入り組んだ回廊に無残に積みあがっていくばかりだった。
「近づいてきた、もうすぐ……あそこだ!」
メイの囚われた場所を完全につきとめたらしいグリザルドが、回廊の向こうに見えてきた大きな鉄の扉を指さした。
#
「これは……!」
「ドッペルアドラーの……飛空艇渠!?」
扉の向こうに飛び出した一同は、突然目の前に開けた巨大な空間を見回して驚きの声を上げた。
そこは重力城に帰投した全長300メートルを超える巨大飛空艇の格納庫。
ドッペルアドラーの整備と修理のすべてを担う、広大な飛空艇渠だった。
「あの船だ! あの船にまだメイはいる!」
頭上にそびえた真っ赤な飛空艇の船体を指さして、グリザルドは叫んだ。
「あの船に?」
「デカすぎる、いったい何処から……」
間近に見上げた飛空艇のあまりの巨大さに呆れた声を上げながら、ルシオンとビーネスとグリザルドが船の塔条口に駆け寄ろうとした、その時だった。
「そこまでだ。我が船に立ち入ることは許さん……!」
塔条口に通じるタラップの影からスッと……
大きな人影が立ち現れた。
ガキンッ!
そいつのかついだ3メートルはありそうな刀身をした金色の大剣が、金属製の飛空艇渠の床をこすって鈍い金属音をたてた。
「あ……!」
「「おまえは……!?」」
そいつの正体に気づいたルシオンとビーネスとグリザルドは、同時に息を飲んでいた。
目的の場所にたどり着いたルシオンとビーネスとグリザルドを待ち構えていたのは、1人の獣鬼だった。
きらびやかな金色の肩章をした船服の上から羽織った、ビロードの黒マント。
目深にかぶった船長帽の奥でギラリと輝く隻眼。
刀傷に覆われたいかつい顔。
叩きつけるような闘気をまとった、一目で只者でないとわかる男だった。
「まさか、ロック将軍がわたしたちを……!」
知ってるのかルシオン? そんなに……すごいヤツなのか!?
異変に気づいたソーマは、ルシオンの中で声を上げた。
ルシオンの体が、小さく震えていた。
その全身をジットリと、冷たい汗が伝っていた。
目の前に立ちふさがった、たった1人の獣鬼に……
ルシオンもビーネスも、凄まじい恐怖を感じていた。
「そうだ。あいつはロック・グリッド。機巧都市の全軍を統率指揮する、魔王マシーネの右腕。そして深幻想界でその名を知らぬ者はいない最強格の武人だ……!」
ソーマに答えるルシオンの声が、こわばっている。
「ああ、機巧都市近隣の村々を襲った野生の火炎飛竜の群れを、たった1人で全滅させてしまったという……そんなヤツと、どう戦う!」
ルシオンに相槌をうったビーネスの声もまた震えていた。
「インゼクトリアのゼクトの一族か……この先は通さぬ。押し通るなら私が相手だ……」
船帽の奥からルシオンとビーネスをにらみつけて、ロック将軍は重々しい声でそう言い放つ。
「でも、だからといって……退くわけにはいかない!」
「ええ、そうねルシオン。同時に仕掛けるよ!」
叩きつけるようなロックの闘気に圧倒されながら。
それでもルシオンとビーネスの瞳から、戦いの意志は消えていなかった。
ルシオンの指先に、次々に眩いホタルの光りが灯っていく。
ビーネスの肌を伝う銀色の体液が、彼女の指先に何本もの鋭い針を形成していく。
「ならばよかろう。お前たちに恨みは無いが、これもマシーネ様のご命令だ。機巧都市の守りを預かる将の名にかけて……このロック・グリッド、戦うからには必ず勝つ!」
ロック将軍の隻眼がギラリと光った。
将軍の身長ほどもある金色の大剣が、ルシオンとビーネスに向かって構えられていた。
「ルシフェリック・アロー!」
「ビーネスティング!」
ルシオンとビーネスが同時に動いた。
金色の大剣を構えたロック将軍に向かって、2人の遠距離攻撃が時差0で。
ホタルたちから一斉に放たれた眩い光矢の合間を縫うようにして、ビーネスの両手から放たれた銀色の針が風を切る。
だが……
「ぬぅうううん!」
ゴオオオッ!
将軍の大剣のたったのひと薙ぎで。
キンキンキンキンキンキンキンキンキンッ!
ルシオンの光矢は全て金色の刀身に阻まれて乱反射し、ビーネスの針もすべて………へし折られて辺りに散っていた。
「一撃で……!」
「なんてヤツ……!」
その巨体からは想像もできないような将軍の剣戟に、ルシオンとビーネスが息を飲む……その隙もなかった。
「だあああっ!」
将軍が、2人に向かって一気に間合いを詰めてきた。
渾身の溜めをつくって中段に構えられた大剣の一閃を食らったら、2人の体など一溜まりもなく両断されてしまう!
「う……あ……」
「ルシオン!」
恐怖にすくんで一瞬うごけないルシオンの前に、ビーネスが出た
「ビーネス・ペレット!」
迫りくるロックを前にして、ビーネスが自分の体をものすごいスピードで回転させた。
ヒュッ! ヒュッ! ヒュッ!
ビーネスの体を伝う彼女の銀色の体液……『ビーネスリザー』の飛沫が、微細な散弾のように飛び散ってロック将軍を直撃した!
「ぬううううっ!」
「飛べ! ルシオン!」
「あっ! ハイ」
金色の大剣でも払えないほど至近距離での散弾の直撃を受けて。
ロック将軍の剣戟が止まり、獣鬼の巨体がその場から飛び退った。
ビーネスと、動けるようになったルシオンも、すかさずロックから距離を取る。
「小姉上……」
ビーネスにピンチを救われたルシオンが、目をシバシバさせながら姉の背を見た。
戦いの才能も、踏んでいる場数も……
悔しいが、ビーネスの方が圧倒的に上だった!
「ゼクトの一族……戦姫ビーネスか。なるほど、確かに疾い。だが、疾いだけでは私には勝てんぞ……」
「機巧都市のロック将軍……なんてヤツだ。噂通りメチャクチャ強い! でもね……」
再び大剣を構えてルシオンとビーネスの方にジリジリ間合いを詰め始めた将軍。
叩きつけるような将軍の剣気を前にしながら、だがビーネスの顔に浮かんでいるのは妖しい笑みだった。
「あたしたちの目的は、お前に勝つことじゃない。あの盗賊の連れを助けて、ここから脱出することなんだ……だから安心しろ。お前は死ぬ必要はない。お前は黙って静かに……この場で這いずっていればいい」
「なん……だと?」
薄青色に染まった唇をペロリと舐めまわしながら、ビーネスは将軍を指さしてそう言った。
ビーネスの言葉にいぶかしげに首をかしげながら。
将軍はあたりに起きている異変に気づいた。
「霧が……!」
将軍は小さくうめいた。
飛空艇渠全体にたち込めていた黒い霧……暗黒の霧が、徐々に徐々にその濃さを深めていくのだ。
いったいどこに行ったのだろうか。
さっきまで辺りを飛び回っていた小さな幼竜の姿も、その場から消えていた。
そして……ユラリ。
不意にルシオンと、妖しく笑ったビーネスの姿が、霧の向こうにスッと隠れた。
「霧に紛れて逃げるつもりか? それとも仕掛けてくるか? いずれにしても愚かな……」
将軍は忌々しげに、あたり霧に向かってそう声を上げた。
「すでにマシーネ様の手で、城からの出口は全て塞がれているだろう、お前たちに逃げる術はない。そしてもし霧に紛れて私を闇討ちする気なら……試してみるがいい。私は戦士だ。たとえ視界を塞がれ魔素を遮断されたとしても、お前たちの放つ殺気くらい、手に取るようにわかるぞ……!」
金色の大剣を油断なく構えながら、将軍はあたりをうかがいながら、ジリジリと飛空艇ドッペルアドラーの搭乗口の方に歩みを進めていく。
ゼクトの一族と黒竜の目的は、艦橋に取り残された動けぬメイの救出だった。
そこさえ守り通せば、彼らが目的を果たすことはかなわないのだ。
マシーネの命令を守り通すべく、将軍が霧の中を移動していく……その時だった。
「…………!?」
どこからともなく。
霧の向こうから自分をジッとうかがう刺すような殺意を、将軍は感じた。
「来るか!」
将軍は身構える。
この気配は、この殺気はビーネス・ゼクトのモノ。
どこから仕掛けてくる?
正面か、背中か、側方か、それとも頭上か?
来た! 将軍のすぐ傍まで、ビーネスの殺気が迫っていた。
だが、その方角は……
「なにぃいいいいい!?」
次の瞬間、将軍の怒号が辺りの空気を震わせていた。
ビシュンッ!
将軍のブーツを破って、将軍の右足首に深々と突き立てられたモノ。
それはビーネスの針だった。
さっきビーネスが撃ち放ち、ロック将軍の剣でへし折られあたりにまき散らされていた銀色の針が……
まるで本体から抜け落ちても執拗に人間の体に突き刺さり潜り込むケムシの毒針みたいに、将軍の足を貫いていたのだ!
「アハハハッ! 愚かなのはお前の方だったなロック将軍。その針もまた、あたしの体の一部。この霧は、あたしとルシオンの姿を隠すためのモノじゃない。床にまき散らされたあたしの針を、お前の視界から覆い隠すためのモノだったんだよ!」
霧の向こうから、勝ち誇ったようなビーネスの高笑い。
ビシュンッ!
ビシュンッ!
ビシュンッ!
矢継ぎ早に、その場で動けないロック将軍のすねにむかって、膝にむかって。
床から跳ね上がったビーネスの銀の針が、次々に突き刺さっていく。
「ガアアアアアアアアッ!」
両足を貫く激痛に、将軍はたまらず悲鳴を上げた。
針に仕込まれたスズメバチのような猛毒が、将軍の両足の自由を封じて、将軍はその場から動けない!
「だから言っただろう? お前はこの場で這いずっていればいい……。準備は出来たか盗賊!」
霧の向こうから姿を現したビーネスが、動けぬロック将軍を見下ろしてニヤリと笑った、その時だった。
「ああ、もう行けるぜ!」
盗賊グリザルドの声が、ビーネスとルシオンとロック将軍の頭上から響いてきた。
「まさか!」
声の方を見上げて、将軍は愕然とする。
ゴオン……ゴオン……ゴオン……
飛空艇渠全体が、軋んだよううな轟音を上げていた。
頭上から叩きつける突風が、飛空艇渠を覆った黒い霧を吹き散らしていく。
そして開けた霧の向こうに将軍が見た光景は……
まるで竜のような壮麗な主翼をしならせながら、6対のプロペラを回転させて飛空艇渠から浮揚しようとしている、飛空艇ドッペルアドラーの真っ赤な船体だった!
「馬鹿な! 飛空艇を……動かしている!?」
「アイツ……飛空艇も操縦できるのか、凄いな……」
「さすがグリザルド……ダテに深幻想界随一の大盗賊を名乗ってはいない……!」
起動したドッペルアドラーの姿に、悲鳴にも似た声を上げるロック。
ビーネスとルシオンが、真っ赤な船体を見上げながら感心しきりでウンウンうなずき合った……
その時だった。
「グヌゥウウウウ! やらせんぞ、それだけは!」
「あっ……!」
動けないはずのロック将軍が、刀傷だらけの顔を怒りに歪めながら、その場から立ち上がろうとしていた。
「魔王マシーネ様!」
将軍が、頭上を仰いで吠えた。
「このままでは賊どもに機巧都市の旗艦が……ドッペルアドラーが奪われてしまいます! アレを使うことをお許しください!」
「わかりました。許可します将軍。アレを使って掃除を終わらせなさい……」
飛空艇の起動する轟音をもかき消すような大声で、ロック将軍がそう叫ぶと。
重力城全体につながった伝声管から、鈴を振るようなマシーネの澄んだ声がした。
「御意にマシーネ様。今ココで、全て終わらせます……瞬速適合!」
激痛を堪えて立ち上がった将軍が、右手にはまった金色の腕輪を頭上にかざしてそう叫んだ、次の瞬間!
ズドンッ!
浮揚していくドッペルアドラーの甲板から、ものすごい勢いで何かが射出された。
そして……ガチャン、ガチャン、ガチャン……
甲板から飛空艇渠の方まで飛んできた奇怪な鉄の塊が、ロック将軍の体に激突すると、ものすごいスピードで変形しながら将軍の全身を覆っていく!
「あれは、機甲鎧……!」
「ウエー、またですか。わたしアレ嫌い!」
ロック将軍が身にまとった鉄塊の正体に気づいて、ビーネスとルシオンの顔がこわばっていた。
だがそれは、大鬼の蛮族グロム・グルダンがまとっていたいた鎧と同じ形ではなかった。
その巨体の各所を流れる虹色に輝いた光のレリーフ。
頭上に頂かれた雄々しい角飾り。
右下腕を覆った金色の手甲。
それはまさに、将軍のまとう鎧にふさわしい……美しささえ感じさせる赤銀色をした勇壮な機甲鎧だった!
「機甲鎧将軍専騎! ロック・グリッド、参る!」
浮揚してゆくドッペルアドラーを見上げながら。
機甲鎧にその身を包んだロック将軍が、猛然と声を上げた。
ロック将軍は重力城に備えられた巨大な飛空艇渠を見回しながら、唖然としてそう呟いていた。
いつもならば、城の警備や手入れの一切を取り仕切る機械人形たちがガチャガチャ慌ただしく歩き回っている飛空艇渠が……
今夜は沈黙に包まれていた。
そして喧騒のかわりに辺りを満たしているもの。
それは機巧都市の街並み全体を覆っているモノと同じ……黒い霧だった。
「マシーネ様の魔素の干渉が遮断されて動けなくなったのか……いや、これは!」
飛空艇渠の床に、まるで糸の切れた操り人形みたいに崩れ落ちた何体もの機械人形たちを見回しながら。
将軍は恐ろしいことに気づいた。
「互いに互いを……攻撃して!」
床に転がった機械人形の頭部や胴体は、彼らが握り締めた警備用の銃剣によって、切り落とされたり貫かれたりしていた。
機械人形たちは、互いに互いを破壊し合ったのだ。
魔王マシーネの魔素の指令によって動く操り人形たちは、彼女の指令が遮断された途端、手近で動くものを敵として攻撃するように作られていたのだ。
「あの黒竜が、増殖工場の搬送路を伝ってこの城に……なんということだ!」
事態の恐ろしさを一瞬で理解したロック将軍が、ギリギリと歯ぎしりをしながら周囲をにらみ回した。
魔王マシーネとドッペルアドラーの砲撃でも捕らえられなかった探偵マキシの仲間……
あのインゼクトリアの魔王の末妹と黒い幼竜は、事態のドサクサに紛れて、おそらくはポーフ男爵の屋敷からこの城に忍び込んでいたのだ!
「マシーネ様をお護りせねば!」
将軍が飛空艇渠を飛び出して、玉座の間へと続く回廊むかって駆け出した。
盤石の態勢で重力城を守っていたマシーネの機械人形は、今や手近で動き回る者に片っぱしから襲いかかる動く凶器となっていた。
このままでは城は壊滅。
機械人形の携えた銃剣の刃は、下手をすれば主のマシーネにも及びかねない!
マシーネが居るはずの玉座の間に向かって、将軍が全速力で疾走しようとした、その時だった。
「お待ちなさい。ロック将軍!」
「マシーネ様……!?」
頭上から響いた主の声を仰いで、ロックの動きがピタリと止まった。
魔王の声は、彼女の玉座の間から城全体に繋がった伝声管から発せられたものだった。
「その場を離れてはなりません。例の黒竜がこの城に侵入しています。ガイル医師からの報せも途切れました。第2王女の行方も知れない……! 将軍。あなたはドッペルアドラーにとどまって、双子王の欠片を見張っているのです」
「ですが……マシーネ様の御身は……!」
「……フン」
マシーネを気遣うロックの声に、伝声管から冷笑が返ってきた。
「くだらない気遣いは無用です将軍。わたくしの操り人形が何百体暴走しようが、このわたくしにかすり傷を負わせることもかないません。忘れるなロック・グリッド。わたくしはあなたの何百倍も強いのです……。連中の狙いは、今ドッペルアドラーであなたの手元にある双子王の欠片なのです。ですからあなたはその場を動かず、連中が現れたら速やかにこれを排除すればよい。わかりましたね?」
「御意に……」
「わかればよろしい。わたくしもこれから欠片を回収するため、そちらに向かいます。このわたくしが来るまでには、なるべく綺麗に仕事を終わらせておきなさい」
将軍がマシーネの指示に従うと、魔王の声が早口でそう捲し立てて、一方的に途切れた。
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「く……! 欠片……か……!」
霧の立ち込めるドッペルアドラーの飛空艇渠に戻ったロック将軍が、頭上にそびえる飛空艇の艦橋を見上げて忌々しげにそう呟いていた。
刀傷に覆われた獣鬼の猛将のいかつい顔に、たまらない悲壮が張りついていた。
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「疾走りなさいルシオン。もっと速く!」
「わかっています……小姉上!」
黒い霧がたちこめて、迷路のように複雑に入り組んだ重力城の回廊で。
ビーネスとルシオンが、それぞれの武器を自分の指先に構えながら疾走してゆく。
「本当にこっちでいいんだなグリザルド!」
「ああ、間違いねえ。アイツの匂いがハッキリしてきた!」
「みょーみょーみょー!」
ビーネスとルシオンの後を追って走るのグリザルド、ルシオンの問いに答えてクンクンあたりの空気を嗅いだ。
幼竜アンカラゴンの小さな体から巻き上がった暗黒の霧は、いまや城内全体を満たしていた。
霧に紛れてビーネスの処置室を探し当て、彼女を助け出したルシオン。
一同の次の目標は、この城の何処かに囚われているはずのグリザルドの連れ……小さなメイの救出だった。
「ルシフェリック・セイバー!」
「ビーネスティング!」
ガチャンッ! ガチャンッ!
黒い霧の向こうから銃剣を構えて襲いかかってくる何体もの機械人形たちに、ビーネスとルシオンがそれぞれの技で応戦する。
ビーネスの指先から放たれた銀色の針が、次々に機械人形の頭部を貫く。
ルシオンのホタルから放たれた眩い光矢が、機械人形の手足を切断していく。
本来ならば包囲されて、狙い撃ちにされれば、とても敵わない数の機械人形たち。
だが今やその動きを統率する者もなく、ただヤミクモに目の前の相手に襲い掛かってくるだけの重力城の衛兵たちは、ルシオンとビーネスの敵ではなかった。
破壊された機械人形の体が、入り組んだ回廊に無残に積みあがっていくばかりだった。
「近づいてきた、もうすぐ……あそこだ!」
メイの囚われた場所を完全につきとめたらしいグリザルドが、回廊の向こうに見えてきた大きな鉄の扉を指さした。
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「これは……!」
「ドッペルアドラーの……飛空艇渠!?」
扉の向こうに飛び出した一同は、突然目の前に開けた巨大な空間を見回して驚きの声を上げた。
そこは重力城に帰投した全長300メートルを超える巨大飛空艇の格納庫。
ドッペルアドラーの整備と修理のすべてを担う、広大な飛空艇渠だった。
「あの船だ! あの船にまだメイはいる!」
頭上にそびえた真っ赤な飛空艇の船体を指さして、グリザルドは叫んだ。
「あの船に?」
「デカすぎる、いったい何処から……」
間近に見上げた飛空艇のあまりの巨大さに呆れた声を上げながら、ルシオンとビーネスとグリザルドが船の塔条口に駆け寄ろうとした、その時だった。
「そこまでだ。我が船に立ち入ることは許さん……!」
塔条口に通じるタラップの影からスッと……
大きな人影が立ち現れた。
ガキンッ!
そいつのかついだ3メートルはありそうな刀身をした金色の大剣が、金属製の飛空艇渠の床をこすって鈍い金属音をたてた。
「あ……!」
「「おまえは……!?」」
そいつの正体に気づいたルシオンとビーネスとグリザルドは、同時に息を飲んでいた。
目的の場所にたどり着いたルシオンとビーネスとグリザルドを待ち構えていたのは、1人の獣鬼だった。
きらびやかな金色の肩章をした船服の上から羽織った、ビロードの黒マント。
目深にかぶった船長帽の奥でギラリと輝く隻眼。
刀傷に覆われたいかつい顔。
叩きつけるような闘気をまとった、一目で只者でないとわかる男だった。
「まさか、ロック将軍がわたしたちを……!」
知ってるのかルシオン? そんなに……すごいヤツなのか!?
異変に気づいたソーマは、ルシオンの中で声を上げた。
ルシオンの体が、小さく震えていた。
その全身をジットリと、冷たい汗が伝っていた。
目の前に立ちふさがった、たった1人の獣鬼に……
ルシオンもビーネスも、凄まじい恐怖を感じていた。
「そうだ。あいつはロック・グリッド。機巧都市の全軍を統率指揮する、魔王マシーネの右腕。そして深幻想界でその名を知らぬ者はいない最強格の武人だ……!」
ソーマに答えるルシオンの声が、こわばっている。
「ああ、機巧都市近隣の村々を襲った野生の火炎飛竜の群れを、たった1人で全滅させてしまったという……そんなヤツと、どう戦う!」
ルシオンに相槌をうったビーネスの声もまた震えていた。
「インゼクトリアのゼクトの一族か……この先は通さぬ。押し通るなら私が相手だ……」
船帽の奥からルシオンとビーネスをにらみつけて、ロック将軍は重々しい声でそう言い放つ。
「でも、だからといって……退くわけにはいかない!」
「ええ、そうねルシオン。同時に仕掛けるよ!」
叩きつけるようなロックの闘気に圧倒されながら。
それでもルシオンとビーネスの瞳から、戦いの意志は消えていなかった。
ルシオンの指先に、次々に眩いホタルの光りが灯っていく。
ビーネスの肌を伝う銀色の体液が、彼女の指先に何本もの鋭い針を形成していく。
「ならばよかろう。お前たちに恨みは無いが、これもマシーネ様のご命令だ。機巧都市の守りを預かる将の名にかけて……このロック・グリッド、戦うからには必ず勝つ!」
ロック将軍の隻眼がギラリと光った。
将軍の身長ほどもある金色の大剣が、ルシオンとビーネスに向かって構えられていた。
「ルシフェリック・アロー!」
「ビーネスティング!」
ルシオンとビーネスが同時に動いた。
金色の大剣を構えたロック将軍に向かって、2人の遠距離攻撃が時差0で。
ホタルたちから一斉に放たれた眩い光矢の合間を縫うようにして、ビーネスの両手から放たれた銀色の針が風を切る。
だが……
「ぬぅうううん!」
ゴオオオッ!
将軍の大剣のたったのひと薙ぎで。
キンキンキンキンキンキンキンキンキンッ!
ルシオンの光矢は全て金色の刀身に阻まれて乱反射し、ビーネスの針もすべて………へし折られて辺りに散っていた。
「一撃で……!」
「なんてヤツ……!」
その巨体からは想像もできないような将軍の剣戟に、ルシオンとビーネスが息を飲む……その隙もなかった。
「だあああっ!」
将軍が、2人に向かって一気に間合いを詰めてきた。
渾身の溜めをつくって中段に構えられた大剣の一閃を食らったら、2人の体など一溜まりもなく両断されてしまう!
「う……あ……」
「ルシオン!」
恐怖にすくんで一瞬うごけないルシオンの前に、ビーネスが出た
「ビーネス・ペレット!」
迫りくるロックを前にして、ビーネスが自分の体をものすごいスピードで回転させた。
ヒュッ! ヒュッ! ヒュッ!
ビーネスの体を伝う彼女の銀色の体液……『ビーネスリザー』の飛沫が、微細な散弾のように飛び散ってロック将軍を直撃した!
「ぬううううっ!」
「飛べ! ルシオン!」
「あっ! ハイ」
金色の大剣でも払えないほど至近距離での散弾の直撃を受けて。
ロック将軍の剣戟が止まり、獣鬼の巨体がその場から飛び退った。
ビーネスと、動けるようになったルシオンも、すかさずロックから距離を取る。
「小姉上……」
ビーネスにピンチを救われたルシオンが、目をシバシバさせながら姉の背を見た。
戦いの才能も、踏んでいる場数も……
悔しいが、ビーネスの方が圧倒的に上だった!
「ゼクトの一族……戦姫ビーネスか。なるほど、確かに疾い。だが、疾いだけでは私には勝てんぞ……」
「機巧都市のロック将軍……なんてヤツだ。噂通りメチャクチャ強い! でもね……」
再び大剣を構えてルシオンとビーネスの方にジリジリ間合いを詰め始めた将軍。
叩きつけるような将軍の剣気を前にしながら、だがビーネスの顔に浮かんでいるのは妖しい笑みだった。
「あたしたちの目的は、お前に勝つことじゃない。あの盗賊の連れを助けて、ここから脱出することなんだ……だから安心しろ。お前は死ぬ必要はない。お前は黙って静かに……この場で這いずっていればいい」
「なん……だと?」
薄青色に染まった唇をペロリと舐めまわしながら、ビーネスは将軍を指さしてそう言った。
ビーネスの言葉にいぶかしげに首をかしげながら。
将軍はあたりに起きている異変に気づいた。
「霧が……!」
将軍は小さくうめいた。
飛空艇渠全体にたち込めていた黒い霧……暗黒の霧が、徐々に徐々にその濃さを深めていくのだ。
いったいどこに行ったのだろうか。
さっきまで辺りを飛び回っていた小さな幼竜の姿も、その場から消えていた。
そして……ユラリ。
不意にルシオンと、妖しく笑ったビーネスの姿が、霧の向こうにスッと隠れた。
「霧に紛れて逃げるつもりか? それとも仕掛けてくるか? いずれにしても愚かな……」
将軍は忌々しげに、あたり霧に向かってそう声を上げた。
「すでにマシーネ様の手で、城からの出口は全て塞がれているだろう、お前たちに逃げる術はない。そしてもし霧に紛れて私を闇討ちする気なら……試してみるがいい。私は戦士だ。たとえ視界を塞がれ魔素を遮断されたとしても、お前たちの放つ殺気くらい、手に取るようにわかるぞ……!」
金色の大剣を油断なく構えながら、将軍はあたりをうかがいながら、ジリジリと飛空艇ドッペルアドラーの搭乗口の方に歩みを進めていく。
ゼクトの一族と黒竜の目的は、艦橋に取り残された動けぬメイの救出だった。
そこさえ守り通せば、彼らが目的を果たすことはかなわないのだ。
マシーネの命令を守り通すべく、将軍が霧の中を移動していく……その時だった。
「…………!?」
どこからともなく。
霧の向こうから自分をジッとうかがう刺すような殺意を、将軍は感じた。
「来るか!」
将軍は身構える。
この気配は、この殺気はビーネス・ゼクトのモノ。
どこから仕掛けてくる?
正面か、背中か、側方か、それとも頭上か?
来た! 将軍のすぐ傍まで、ビーネスの殺気が迫っていた。
だが、その方角は……
「なにぃいいいいい!?」
次の瞬間、将軍の怒号が辺りの空気を震わせていた。
ビシュンッ!
将軍のブーツを破って、将軍の右足首に深々と突き立てられたモノ。
それはビーネスの針だった。
さっきビーネスが撃ち放ち、ロック将軍の剣でへし折られあたりにまき散らされていた銀色の針が……
まるで本体から抜け落ちても執拗に人間の体に突き刺さり潜り込むケムシの毒針みたいに、将軍の足を貫いていたのだ!
「アハハハッ! 愚かなのはお前の方だったなロック将軍。その針もまた、あたしの体の一部。この霧は、あたしとルシオンの姿を隠すためのモノじゃない。床にまき散らされたあたしの針を、お前の視界から覆い隠すためのモノだったんだよ!」
霧の向こうから、勝ち誇ったようなビーネスの高笑い。
ビシュンッ!
ビシュンッ!
ビシュンッ!
矢継ぎ早に、その場で動けないロック将軍のすねにむかって、膝にむかって。
床から跳ね上がったビーネスの銀の針が、次々に突き刺さっていく。
「ガアアアアアアアアッ!」
両足を貫く激痛に、将軍はたまらず悲鳴を上げた。
針に仕込まれたスズメバチのような猛毒が、将軍の両足の自由を封じて、将軍はその場から動けない!
「だから言っただろう? お前はこの場で這いずっていればいい……。準備は出来たか盗賊!」
霧の向こうから姿を現したビーネスが、動けぬロック将軍を見下ろしてニヤリと笑った、その時だった。
「ああ、もう行けるぜ!」
盗賊グリザルドの声が、ビーネスとルシオンとロック将軍の頭上から響いてきた。
「まさか!」
声の方を見上げて、将軍は愕然とする。
ゴオン……ゴオン……ゴオン……
飛空艇渠全体が、軋んだよううな轟音を上げていた。
頭上から叩きつける突風が、飛空艇渠を覆った黒い霧を吹き散らしていく。
そして開けた霧の向こうに将軍が見た光景は……
まるで竜のような壮麗な主翼をしならせながら、6対のプロペラを回転させて飛空艇渠から浮揚しようとしている、飛空艇ドッペルアドラーの真っ赤な船体だった!
「馬鹿な! 飛空艇を……動かしている!?」
「アイツ……飛空艇も操縦できるのか、凄いな……」
「さすがグリザルド……ダテに深幻想界随一の大盗賊を名乗ってはいない……!」
起動したドッペルアドラーの姿に、悲鳴にも似た声を上げるロック。
ビーネスとルシオンが、真っ赤な船体を見上げながら感心しきりでウンウンうなずき合った……
その時だった。
「グヌゥウウウウ! やらせんぞ、それだけは!」
「あっ……!」
動けないはずのロック将軍が、刀傷だらけの顔を怒りに歪めながら、その場から立ち上がろうとしていた。
「魔王マシーネ様!」
将軍が、頭上を仰いで吠えた。
「このままでは賊どもに機巧都市の旗艦が……ドッペルアドラーが奪われてしまいます! アレを使うことをお許しください!」
「わかりました。許可します将軍。アレを使って掃除を終わらせなさい……」
飛空艇の起動する轟音をもかき消すような大声で、ロック将軍がそう叫ぶと。
重力城全体につながった伝声管から、鈴を振るようなマシーネの澄んだ声がした。
「御意にマシーネ様。今ココで、全て終わらせます……瞬速適合!」
激痛を堪えて立ち上がった将軍が、右手にはまった金色の腕輪を頭上にかざしてそう叫んだ、次の瞬間!
ズドンッ!
浮揚していくドッペルアドラーの甲板から、ものすごい勢いで何かが射出された。
そして……ガチャン、ガチャン、ガチャン……
甲板から飛空艇渠の方まで飛んできた奇怪な鉄の塊が、ロック将軍の体に激突すると、ものすごいスピードで変形しながら将軍の全身を覆っていく!
「あれは、機甲鎧……!」
「ウエー、またですか。わたしアレ嫌い!」
ロック将軍が身にまとった鉄塊の正体に気づいて、ビーネスとルシオンの顔がこわばっていた。
だがそれは、大鬼の蛮族グロム・グルダンがまとっていたいた鎧と同じ形ではなかった。
その巨体の各所を流れる虹色に輝いた光のレリーフ。
頭上に頂かれた雄々しい角飾り。
右下腕を覆った金色の手甲。
それはまさに、将軍のまとう鎧にふさわしい……美しささえ感じさせる赤銀色をした勇壮な機甲鎧だった!
「機甲鎧将軍専騎! ロック・グリッド、参る!」
浮揚してゆくドッペルアドラーを見上げながら。
機甲鎧にその身を包んだロック将軍が、猛然と声を上げた。
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