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第8章 魔針美姫〈ビースティンガー〉
大鬼の襲撃
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「チャラオさんに相談て……ナナ」
「あ、ほら、見えて来たよソーマくん!」
ナナオの顏に一瞬さした影に気づいてソーマは何かを言いかけたが、ナナオの明るい声がそれを遮った。
小高い丘の上、ガラス張りの美術館の建物が見えて来たのだ。
「あー、やっと……」
「さ、早く行こうソーマくん」
「お、おいナナオ……!」
坂道を30分歩き続けてようやくたどり着いた目的地を見上げて、ソーマは大きく息をつく。
ナナオは笑顔でソーマの手を引くと、そのまま早足で歩き始めた。
#
「綺麗だなー。これがイギリスから持ってきたっていう……」
「そう。ロンドンの大英博物館から特別に借り出された展覧会の目玉……『アルティメスの髪飾り』だよ!」
平日の夕方なのに多くの見物客で賑わう美術館のギャラリーで。
ナナオが見たがっていたお目当ての展示物の前にやっと辿り着いたソーマは、思わず感嘆の声を上げていた。
強化ガラス製の展示ケースの中、淡い照明を反射してキラキラ輝いているのもの。
それは色とりどりの宝石を幾つもあしらい、優美な細工の施された小さな銀色の髪飾りだった。
「綺麗でしょソーマくん。発掘されたのはギリシャの古代遺跡なんだけど、その時代ではまだ考えられないような精巧な細工が施されていて、いわゆる完全な時代錯誤遺物ってヤツなんだ……」
「へー。よくわかんねーけど凄いな!」
目を輝かせて展示物の来歴を説明するナナオ。
ナナオの話の半分も理解できないソーマだったが、そのテンションに押されてしきりに相槌をうつ。
女の子みたいな顔を紅潮させて、熱心に語り始めるソーマのクラスメート。
こんな顔したナナオ、学校で見ることはまず無かった。
その時だった。
(んームニャムニャ……ソーマ。もう夕飯か……)
「ルシオン……やっと起きたか」
ソーマの中から眠そうな声がする。
ソーマは少し顔をしかめて小さくそう呟いた。
授業中も美術館までの道のりもずっと眠っていたルシオンが、ようやく目を覚ましたらしい。
ここ2、3日。
ルシオンは本当に寝てばかりだ。
(どこかに出かけているのか……ムムッ!)
「ん? どしたルシオン?」
目の前で輝いている展示品……『アルティメスの髪飾り』の気づいたのか。
だらけきっていたルシオンの口調が変わった。
(この魔素は……間違いない。これは深幻想界の宝具!)
「深幻想界の?」
ルシオンの発した意外な言葉に、ソーマは首を傾げた。
目の前の優美な美術品がルシオンの故郷……深幻想界のものだというのだ。
「何かの間違いだろルシオン。だってこれ、ギリシャの遺跡で発掘されてロンドンの大英博物館から……」
(いや、間違いない! これだけ精巧な魔素の塊……人間たちに造れるワケがない。一体どこからこんなモノを……)
今さっきナナオから聞いたばかりのウンチクでルシオンに反論するソーマだが、ルシオンには強い確信があるみたいだった。
深幻想界……
ソーマは頭が混乱してきた。
ルシオンたちの故郷、20年前の大暗黒でこちら側と繋がってしまったもう1つの世界。
そんな世界の宝具が、なぜ古代の遺跡から発掘されて、なぜ大英博物館に……なぜこの場所に?
「どうしたのソーマくん? 1人でブツブツ言っちゃって……」
「わっ! いやなんでもないナナオ。一人言だから」
我に返ると、ルシオンと小声で会話するソーマの顔をナナオが不思議そうに覗き込んでいる。
ソーマは慌てて首を振って、変な言い訳。
「さ、もう行こうソーマくん。列がつかえてるよ」
「あ、ああそうだなナナオ」
スポットライトを反射して不思議な輝きを放つ髪飾りを振り返りながら。
ソーマは首をかしげながらナナオと一緒に展示品の前から歩き出した。
#
「今日は付き合ってくれて本当にありがとう。ソーマくん!」
「いや、色々面白かったよナナオ。勉強になったわ……」
茜色に染まった夕暮れの美術館のカフェでコーヒーを飲みながら。
ソーマはナナオにお礼を言い返した。
ナナオとコウは、こういうのも好きなんだな。
学校では普段見えない親友たちの別の一面に触れた気がして、ソーマは何だか少しうれしかった。
「それにしても、綺麗だったな。あのお宝……」
「うん。本物を見ると全然違ったよ。『アルティメスの髪飾り』。なんだか見つめてると吸い込まれそうになるっていうか、頭の奥がジンジンしてくるような、不思議な感じ……」
「…………!?」
ナナオの答えに、ソーマは一瞬固まる。
ナナオはあの髪飾りを見て、そんな風に感じたらしい。
確かに綺麗だったけど……別にソーマは何も感じなかったし。
これもやっぱり芸術を愛する感性の違いってやつなのだろうか?
その時だった。
「ハハハ。その通りです。素晴らしい作品だったでしょう?」
「ん……」
カフェの向かいの席から、ソーマたちに笑顔でそう話しかけてくる者がいた。
「あ、えーと……」
「いや失敬失敬。この国にもあの美術品の価値を分かってくれる子たちがいるとわかって、嬉しくてつい……」
ソーマとナナオが席の方を振り向くと、座っているのは穏やかな笑みを浮かべた1人の男。
痩せぎすで鷲みたいな鼻すじ。
彫りの深い顔に右眼にはまった単眼鏡。
高価そうな藍色のスーツを着こなした一目で外国人とわかる老紳士だった。
ソーマたちと同じくカフェで一服していた、旅行者か何かだろうか?
「それにしても君は……」
そして、ブラウンの瞳でナナオの方をまっすぐ見つめながら。
その紳士は座ったまま、ソーマとナナオの方に近づいて来た。
あ!
ソーマは今ごろ気づく。
足が悪いのだろうか。
老紳士が腰かけていたのは、電動式の車椅子だった。
「君はあの髪飾りを見て、そんなふうに感じたのか。君の目は、君の体は……!」
「あ、いえ、僕はただ……とても綺麗だなって……」
ナナオに興味シンシンな様子で、紳士がそう話しかけて来る。
ナナオは少しドギマギした感じで顔を赤らめながら、首を振っている。
「なんだ……!?」
紳士とナナオの様子を見て、ソーマは妙に心がザワつく。
この男はいったい何に気づいて、ソーマたちに近づいてくるのだろう。
いや、思い過ごしだ。
ソーマは首を振る。
外国の地で同好の人間がいることに、ただ感激しているだけだ、きっとそうだ……
ソーマが自分を納得させようとしていた、その時だった。
(何だ……何か来るぞ!)
「ルシオン? 来る?」
ソーマの中のルシオンが、ただならぬ様子でそう声を上げた。
(ああ来るソーマ……強い魔素と力の気配……この建物の中。強い力を持った誰かがいきなり!)
「力? 誰か!?」
張り詰めた声でそう答えるルシオンに、ソーマが思わず声を強めた、その時だった。
ドガンッ!
カフェの外から轟音が聞こえた。
ソーマとナナオの足音がグラグラと揺れた。
「わっ!」
「なに、ソーマくん!」
ソーマとナナオが椅子から跳ね上がる。
美術館の建物全体が、まだ細かく震えている。
(この気配。さっきの宝具の方だ! 敵だ!)
「か……髪飾りの?」
猛り立つルシオンに、ソーマは混乱する。
この状況でいきなり敵って、何処から、いつの間に!?
(早く行くぞソーマ!)
「うっ……! ナナオ。ちょっとここで待っててくれ。俺、見て来る!」
「ソーマくん、だめだってソーマくん!」
ルシオンに促されるまま、ナナオの制止も聞かずに。
ソーマはカフェを飛び出す。
さっきの轟音が聞こえた方角に、全速力で走ってゆく。
#
「止まりなさい! 止まらないと……止まれお前……うあああ!」
誰かを止めようとする警備員の震え声が、一瞬で悲鳴に変わった。
散乱した瓦礫。モウモウと舞い上がる土煙。
さっきまで平和そのものだったギャラリーが、今はまるで戦場だった。
ギャラリーに集まった美術館の警備員は全員倒れて床に転がっていた。
「フン。まったく弱えー奴らばっかだな。あーツマンネ!」
そして倒れた警備員たちを見回して鼻を鳴らしている者がいた。
そいつの右手の掌にのっかっているのは、今さっき強化ガラスを叩き割って無理やり奪い取ったのだろう。
銀色に輝いた美しい髪飾り……『アルティメスの髪飾り』だ。
そいつ身長は3メートルは超えているだろう。
全身を包んだ分厚い筋肉。下半身を隠したボロ布。
剥き出しになった赤銅色の上半身を覆った、モジャモジャした剛毛。
ボサボサの髪の毛の間から生えているのはぶっとい1本の角だった。
左肩に背負っているのは、一体何が入っているのだろうか。
大きな灰色のズダ袋だった。
そいつの姿は、まさにおとぎ話から飛び出してきた鬼そのものだった。
「ちょろい仕事だったぜ。さて帰り道はと……」
髪飾りを強奪して、右手に持った棍棒で警備員全員をなぎ倒したそいつが、つまらなそうな声で辺りを見回していると……
「おまえ……深幻想界の大鬼が、人間世界で何をしている!」
「うん?」
足元から聞こえてきた声に、そいつが怪訝そうな顔で声の方を見ると……
土煙の合間から姿を現したのは、ルシオンだった。
ソーマの姿から一瞬で王女の戦闘形態に姿を変えて、真っ赤な瞳で厳しく大鬼をにらみつけている。
「その姿……その魔素……お前も魔族か小娘……!」
ルシオンの正体に気づいた大鬼が、大きな口をニタリと歪めて舌なめずりをした。
「あ、ほら、見えて来たよソーマくん!」
ナナオの顏に一瞬さした影に気づいてソーマは何かを言いかけたが、ナナオの明るい声がそれを遮った。
小高い丘の上、ガラス張りの美術館の建物が見えて来たのだ。
「あー、やっと……」
「さ、早く行こうソーマくん」
「お、おいナナオ……!」
坂道を30分歩き続けてようやくたどり着いた目的地を見上げて、ソーマは大きく息をつく。
ナナオは笑顔でソーマの手を引くと、そのまま早足で歩き始めた。
#
「綺麗だなー。これがイギリスから持ってきたっていう……」
「そう。ロンドンの大英博物館から特別に借り出された展覧会の目玉……『アルティメスの髪飾り』だよ!」
平日の夕方なのに多くの見物客で賑わう美術館のギャラリーで。
ナナオが見たがっていたお目当ての展示物の前にやっと辿り着いたソーマは、思わず感嘆の声を上げていた。
強化ガラス製の展示ケースの中、淡い照明を反射してキラキラ輝いているのもの。
それは色とりどりの宝石を幾つもあしらい、優美な細工の施された小さな銀色の髪飾りだった。
「綺麗でしょソーマくん。発掘されたのはギリシャの古代遺跡なんだけど、その時代ではまだ考えられないような精巧な細工が施されていて、いわゆる完全な時代錯誤遺物ってヤツなんだ……」
「へー。よくわかんねーけど凄いな!」
目を輝かせて展示物の来歴を説明するナナオ。
ナナオの話の半分も理解できないソーマだったが、そのテンションに押されてしきりに相槌をうつ。
女の子みたいな顔を紅潮させて、熱心に語り始めるソーマのクラスメート。
こんな顔したナナオ、学校で見ることはまず無かった。
その時だった。
(んームニャムニャ……ソーマ。もう夕飯か……)
「ルシオン……やっと起きたか」
ソーマの中から眠そうな声がする。
ソーマは少し顔をしかめて小さくそう呟いた。
授業中も美術館までの道のりもずっと眠っていたルシオンが、ようやく目を覚ましたらしい。
ここ2、3日。
ルシオンは本当に寝てばかりだ。
(どこかに出かけているのか……ムムッ!)
「ん? どしたルシオン?」
目の前で輝いている展示品……『アルティメスの髪飾り』の気づいたのか。
だらけきっていたルシオンの口調が変わった。
(この魔素は……間違いない。これは深幻想界の宝具!)
「深幻想界の?」
ルシオンの発した意外な言葉に、ソーマは首を傾げた。
目の前の優美な美術品がルシオンの故郷……深幻想界のものだというのだ。
「何かの間違いだろルシオン。だってこれ、ギリシャの遺跡で発掘されてロンドンの大英博物館から……」
(いや、間違いない! これだけ精巧な魔素の塊……人間たちに造れるワケがない。一体どこからこんなモノを……)
今さっきナナオから聞いたばかりのウンチクでルシオンに反論するソーマだが、ルシオンには強い確信があるみたいだった。
深幻想界……
ソーマは頭が混乱してきた。
ルシオンたちの故郷、20年前の大暗黒でこちら側と繋がってしまったもう1つの世界。
そんな世界の宝具が、なぜ古代の遺跡から発掘されて、なぜ大英博物館に……なぜこの場所に?
「どうしたのソーマくん? 1人でブツブツ言っちゃって……」
「わっ! いやなんでもないナナオ。一人言だから」
我に返ると、ルシオンと小声で会話するソーマの顔をナナオが不思議そうに覗き込んでいる。
ソーマは慌てて首を振って、変な言い訳。
「さ、もう行こうソーマくん。列がつかえてるよ」
「あ、ああそうだなナナオ」
スポットライトを反射して不思議な輝きを放つ髪飾りを振り返りながら。
ソーマは首をかしげながらナナオと一緒に展示品の前から歩き出した。
#
「今日は付き合ってくれて本当にありがとう。ソーマくん!」
「いや、色々面白かったよナナオ。勉強になったわ……」
茜色に染まった夕暮れの美術館のカフェでコーヒーを飲みながら。
ソーマはナナオにお礼を言い返した。
ナナオとコウは、こういうのも好きなんだな。
学校では普段見えない親友たちの別の一面に触れた気がして、ソーマは何だか少しうれしかった。
「それにしても、綺麗だったな。あのお宝……」
「うん。本物を見ると全然違ったよ。『アルティメスの髪飾り』。なんだか見つめてると吸い込まれそうになるっていうか、頭の奥がジンジンしてくるような、不思議な感じ……」
「…………!?」
ナナオの答えに、ソーマは一瞬固まる。
ナナオはあの髪飾りを見て、そんな風に感じたらしい。
確かに綺麗だったけど……別にソーマは何も感じなかったし。
これもやっぱり芸術を愛する感性の違いってやつなのだろうか?
その時だった。
「ハハハ。その通りです。素晴らしい作品だったでしょう?」
「ん……」
カフェの向かいの席から、ソーマたちに笑顔でそう話しかけてくる者がいた。
「あ、えーと……」
「いや失敬失敬。この国にもあの美術品の価値を分かってくれる子たちがいるとわかって、嬉しくてつい……」
ソーマとナナオが席の方を振り向くと、座っているのは穏やかな笑みを浮かべた1人の男。
痩せぎすで鷲みたいな鼻すじ。
彫りの深い顔に右眼にはまった単眼鏡。
高価そうな藍色のスーツを着こなした一目で外国人とわかる老紳士だった。
ソーマたちと同じくカフェで一服していた、旅行者か何かだろうか?
「それにしても君は……」
そして、ブラウンの瞳でナナオの方をまっすぐ見つめながら。
その紳士は座ったまま、ソーマとナナオの方に近づいて来た。
あ!
ソーマは今ごろ気づく。
足が悪いのだろうか。
老紳士が腰かけていたのは、電動式の車椅子だった。
「君はあの髪飾りを見て、そんなふうに感じたのか。君の目は、君の体は……!」
「あ、いえ、僕はただ……とても綺麗だなって……」
ナナオに興味シンシンな様子で、紳士がそう話しかけて来る。
ナナオは少しドギマギした感じで顔を赤らめながら、首を振っている。
「なんだ……!?」
紳士とナナオの様子を見て、ソーマは妙に心がザワつく。
この男はいったい何に気づいて、ソーマたちに近づいてくるのだろう。
いや、思い過ごしだ。
ソーマは首を振る。
外国の地で同好の人間がいることに、ただ感激しているだけだ、きっとそうだ……
ソーマが自分を納得させようとしていた、その時だった。
(何だ……何か来るぞ!)
「ルシオン? 来る?」
ソーマの中のルシオンが、ただならぬ様子でそう声を上げた。
(ああ来るソーマ……強い魔素と力の気配……この建物の中。強い力を持った誰かがいきなり!)
「力? 誰か!?」
張り詰めた声でそう答えるルシオンに、ソーマが思わず声を強めた、その時だった。
ドガンッ!
カフェの外から轟音が聞こえた。
ソーマとナナオの足音がグラグラと揺れた。
「わっ!」
「なに、ソーマくん!」
ソーマとナナオが椅子から跳ね上がる。
美術館の建物全体が、まだ細かく震えている。
(この気配。さっきの宝具の方だ! 敵だ!)
「か……髪飾りの?」
猛り立つルシオンに、ソーマは混乱する。
この状況でいきなり敵って、何処から、いつの間に!?
(早く行くぞソーマ!)
「うっ……! ナナオ。ちょっとここで待っててくれ。俺、見て来る!」
「ソーマくん、だめだってソーマくん!」
ルシオンに促されるまま、ナナオの制止も聞かずに。
ソーマはカフェを飛び出す。
さっきの轟音が聞こえた方角に、全速力で走ってゆく。
#
「止まりなさい! 止まらないと……止まれお前……うあああ!」
誰かを止めようとする警備員の震え声が、一瞬で悲鳴に変わった。
散乱した瓦礫。モウモウと舞い上がる土煙。
さっきまで平和そのものだったギャラリーが、今はまるで戦場だった。
ギャラリーに集まった美術館の警備員は全員倒れて床に転がっていた。
「フン。まったく弱えー奴らばっかだな。あーツマンネ!」
そして倒れた警備員たちを見回して鼻を鳴らしている者がいた。
そいつの右手の掌にのっかっているのは、今さっき強化ガラスを叩き割って無理やり奪い取ったのだろう。
銀色に輝いた美しい髪飾り……『アルティメスの髪飾り』だ。
そいつ身長は3メートルは超えているだろう。
全身を包んだ分厚い筋肉。下半身を隠したボロ布。
剥き出しになった赤銅色の上半身を覆った、モジャモジャした剛毛。
ボサボサの髪の毛の間から生えているのはぶっとい1本の角だった。
左肩に背負っているのは、一体何が入っているのだろうか。
大きな灰色のズダ袋だった。
そいつの姿は、まさにおとぎ話から飛び出してきた鬼そのものだった。
「ちょろい仕事だったぜ。さて帰り道はと……」
髪飾りを強奪して、右手に持った棍棒で警備員全員をなぎ倒したそいつが、つまらなそうな声で辺りを見回していると……
「おまえ……深幻想界の大鬼が、人間世界で何をしている!」
「うん?」
足元から聞こえてきた声に、そいつが怪訝そうな顔で声の方を見ると……
土煙の合間から姿を現したのは、ルシオンだった。
ソーマの姿から一瞬で王女の戦闘形態に姿を変えて、真っ赤な瞳で厳しく大鬼をにらみつけている。
「その姿……その魔素……お前も魔族か小娘……!」
ルシオンの正体に気づいた大鬼が、大きな口をニタリと歪めて舌なめずりをした。
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