家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち！？俺はどうなんですかね？遠い目~

2章 闇の魔力

28 アカツキにリベンジ

　あの日。家族四人で森に来ていた。俺は森の中を進んで行った。

　前方に、大きな木の下で愛里が背中をぐったりと木にあずけて座りこんでいるのが見えた。
あれ？　いるはずの俺・がいない。
　漫画や小説なら時間を越えてきたときには、も・う・一・人・の・自・分・がいるはずなのに。

　「愛里！」
　俺は座っている愛里に話しかけた。あの時俺は、愛里の隣に座っていたはずだけど……。愛里は後ろに振り向いて、俺を見て驚いた。
　「お兄ちゃん！？　いつの間に……？　さっきまで隣にいたのに」
　やはりもう一人の俺は愛里の隣から消えたらしい。どういうことだ？

　ざっと見て、母も父もここにいない。
アカツキの所へ向かった頃か。後を追わないと。
　
　「お、お兄ちゃん！」
「え？」
　名を呼ばれて愛里を見る。
　
ほんの数秒間、スローモーションのように動いて見えた。
「あっ！」
　愛里は立ち上がって俺に駆け寄り、肩に掴んだと思ったら引き寄せ倒して俺の前に立った。バランスを崩した俺は地面に転ぶ。

　「護まもりの盾！！」

　愛里の大きな声が響く。
地面に転んだまま愛里を見ると、軽く足を開いて両手を前に突き出していた。
　次の瞬間、愛里の手のひらから光が輝き溢れた。

　バシィィィン！！

　――そうだ。愛里の聖魔法に助けられたのだった。
　
「お兄ちゃん！！」
愛里が叫んだ。バサバサｯと風があたり、愛里の髪の毛や服がはためく。

　「愛里、大丈夫か！？」
後ろ姿の愛里に声をかける。徐々に光が消えて、愛里はグラリと倒れそうになった。　
「愛里！」　
　
「だ、大丈夫……。危なかったよ、二人とも」
とっさに護りの盾を展開してくれたおかげだ。　
「ありがとう、愛里」

　「……お父さんとお母さんの向かった方角から、何か強い闇・の・魔・術・がきたの」
「心配だ。父さんと母さんが向かった方へ行ってみよう、愛里」
　ここまではあの日と同じ展開だ。この後、父と母の所へ向かわないといけない。
「う、うん！」
　
　父と母の元へ向かって行くと、歩く先の木々がボロボロになっていて所々倒れていた。
さっきまで鳥の鳴き声が聞こえていたのに、今はシーンとして静まり返っていた。
「何か嫌な感じだな」
「うん……」
愛里は俺の手を強く握った。前と同じ場面なのに、愛里にかけてる言葉が無意識に出てきた。

　この、整備されてない獣道のような所を行く。
そして俺は剣を鞘から抜いた。

　剣を魔法で包むようにイメージして、前を睨んだ。
ボウッ……！　
　できた！　俺は頭上まで上げて、それを振り落とした。
　「は――っ！！」　

　前方から、切り裂くような攻撃を剣で弾いた。腕に衝撃が走ったが直ぐに治った。
　
　「なんだと！？　俺様の攻撃を、とめるなんて――！」
アカツキは、地面から二、三メートル上に浮かんでこちらを驚きの表情でこちらを見ていた。　

　あの日と違うのは、俺がアカツキの攻撃をとめた。
このために俺は来た。