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22 『勇者の宝剣』
しおりを挟む「一体何があったのか、教えてくれアッシュ……」
だいぶ傷だらけだ。俺はアッシュにポーションを飲むように渡した。
「あれっ? ポーションを作れるようになったんだ。すごいね」
床に寝たまま、アッシュは俺に言った。そしてポーションをゴクリと飲んだ。
「わ……、すごい」
みるみるうちにアッシュの傷が癒えた。自分で作ったけれど、効き目が早いかも?
ムクッと起き上がってアッシュはその場に座った。俺達もアッシュの側へ座った。
「この塔のボスと、戦っていた」
あ……! やっぱり塔にはボスがいるんだ。ボスを一人で倒した?
「ボスを倒したのですか?」
レミさんも気になったようなので、アッシュに聞いた。
「ええ。ボスは消えていなくなりました。ただ最後に、ボスに突き飛ばされて塔から落ちるところでした」
アッシュは俺とレミさんを見てお礼を言った。
「ありがとうございました」
アッシュは俺に握手を求めた。俺は握手をしようとして手を差し出した。……が!
『おめでとう御座います!』
パチパチパチパチ! と拍手をし出した。また俺の意思とは関係なしの、テンプレセリフ&勝手に体が動いた。
『勇者アッシュは、この塔のボスを見事倒した! 勇者の証、ルビーの宝石が埋め込まれた『勇者の宝剣』を授けましょう!』
ふわりと赤い宝石が俺の手のひらに落ちてきた。アッシュとレミさんはただ茫然と俺を見ていた。
ピカッ! とまぶしい光がフロア全体を照らした。
「えっ!?」
「まあ!」
『これは勇者にしか使えない宝剣です! ルビーの宝石があなたを守ってくれるでしょう!』
ルビーの宝石が、光とともに『勇者の宝剣』に姿を変えた!
『勇者アッシュ、受け取りなさい』
「はい」
アッシュは俺の手から『勇者の宝剣』を手にした!
モブの俺が『勇者の宝剣』をアッシュに渡す、重要な役割を果たしちゃった――! え、本当にいいのか?
今、アッシュは俺の前に跪いて宝剣を両手で受け取っている。主人公らしい美形の勇者。まつげ長いぞ。
ゲームならきっと音楽が流れて花が舞い、勇者アッシュの姿がアップになっているだろう。もしかしたらテーマ曲が流れて盛り上がっている所かも。
たぶん俺がこの場面に映ったとしても、チラッと手元しか観えていないだろう。モブだから……。
ルビーの宝石が輝く宝剣を手にしたアッシュは、輝いていた。さすが主人公! アッシュは宝剣を持って立ち上がった。
「レンたちのおかげだ! 宝剣も手に入れられたし、旅を続けるよ」
「いや、ボスを倒したのはアッシュだし。気をつけて行けよ、アッシュ!」
お互いの片手をガッチリと握りあった。――友情、いいな!
「それじゃあ!」
アッシュは自分のカバンから水晶らしいものを取り出した。何をするのかなと思っていたら、ちゅっ! と水晶に口づけをした。
「!?」
その瞬間、アッシュの姿がシュン! と消えた。
「えっ!? アッシュが消えた?」
何が起きたかわからず、ウロウロしてアッシュの姿が消えた場所を調べようとした。
「レン様。あれは、水晶転送装置ですわ」
レミさんが俺の横に並んだ。なぐさめるように俺の頭を撫でた。
「立派に勇者へ『勇者の宝剣』を渡せましたね……」
ここでの俺の役割は、勇者へ宝剣を渡すことだったのか? てか、ここに塔のボスがいたということは、アッシュより先に来たら俺達がエンカウントしてたんじゃ……?
ゾクゾクと全身に震えがきた。アッシュだから、ボスを倒せた。
回復したと聞いたけど、元気にもほどがある。それにボスが先に倒してくれて良かったけれど、どんなボスだったのだろう……。ゲーム好きとしては気になった。
もうイベントが終わった場所にいつまでもいても仕方がない。
「俺達も帰ろうか」
レミさんは「あっ!」と言った。なんだろう。
「申し訳ございません……。水晶転送装置を持ってきてませんでした……」
レミさんは頭を深々と下げた。
ということは、一階まで同じところを戻っていかないといけない……?
レミさんは俺のことを、チラッ、チラッと見た。……うん、しかたがないね――!
「戻って帰ろうか……」
あきらめてもと来た道を帰ろうとした。
『お待ちクダサイ――――!』
バサバサッと羽をばたつかせて、さっきアッシュが落ちそうになっていた窓から、見たことのある小鳥が中へ入ってきた。
「あれ? お前は!」
パタパタと飛んできて俺の肩へとまった。
『そうデス! 助けてもらった小鳥デス!』
やっぱり! ケガをしていた小鳥だった。でも何でこんなところに?
「もうケガは治ったみたいだな! 良かった。でもなんで、ここに?」
『ココは、ワタシのおうちデス! 魔物が住み着いて困っていまシタが、倒していただいたので、戻ってきました!』
ピピピピ! ピピ! と小鳥は嬉しそうに歌った。
『勇者へ宝剣を渡す使命があったのですが、代わりに渡して下さって助かりました!』
そ、そうなのか……。代わりに渡せてよかった。
『なので。お礼に、旅について行くことへしました!』
だんだん小鳥は言葉がなめらかになって、たどたどしさがなくなった。
「へ!? 旅に小鳥の君が、ついてくる?」
「はい!」
そう言ったと思ったら、小鳥は俺の肩から床へ下りて大きな羽を広げた。
バサササッ……!
大きい、きれいな鳥に変わった。
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