ゲームの世界(異世界)へ、モブ(子供キャラ)として転移してしまった

文字の大きさ
22 / 60

22 『勇者の宝剣』

しおりを挟む

 
 「一体何があったのか、教えてくれアッシュ……」
 だいぶ傷だらけだ。俺はアッシュにポーションを飲むように渡した。

 「あれっ? ポーションを作れるようになったんだ。すごいね」
 床に寝たまま、アッシュは俺に言った。そしてポーションをゴクリと飲んだ。
 「わ……、すごい」
 みるみるうちにアッシュの傷が癒えた。自分で作ったけれど、効き目が早いかも?

 ムクッと起き上がってアッシュはその場に座った。俺達もアッシュの側へ座った。
 「この塔のボスと、戦っていた」
 あ……! やっぱり塔にはボスがいるんだ。ボスを一人で倒した?

 「ボスを倒したのですか?」
 レミさんも気になったようなので、アッシュに聞いた。
 「ええ。ボスは消えていなくなりました。ただ最後に、ボスに突き飛ばされて塔から落ちるところでした」
 アッシュは俺とレミさんを見てお礼を言った。
 「ありがとうございました」

 アッシュは俺に握手を求めた。俺は握手をしようとして手を差し出した。……が!
『おめでとう御座います!』
 パチパチパチパチ! と拍手をし出した。また俺の意思とは関係なしの、テンプレセリフ&勝手に体が動いた。

 『勇者アッシュは、この塔のボスを見事倒した! 勇者の証、ルビーの宝石が埋め込まれた『勇者の宝剣』を授けましょう!』
 ふわりと赤い宝石が俺の手のひらに落ちてきた。アッシュとレミさんはただ茫然と俺を見ていた。

 ピカッ! とまぶしい光がフロア全体を照らした。
 「えっ!?」
 「まあ!」
  『これは勇者にしか使えない宝剣です! ルビーの宝石があなた勇者を守ってくれるでしょう!』
 ルビーの宝石が、光とともに『勇者の宝剣』に姿を変えた!

 『勇者アッシュ、受け取りなさい』
 「はい」
 アッシュは俺の手から『勇者の宝剣』を手にした! 

 モブの俺が『勇者の宝剣』をアッシュに渡す、重要な役割を果たしちゃった――! え、本当にいいのか?

  今、アッシュは俺の前にひざまついて宝剣を両手で受け取っている。主人公らしい美形の勇者。まつげ長いぞ。
 
 ゲームならきっと音楽が流れて花が舞い、勇者アッシュの姿がアップになっているだろう。もしかしたらテーマ曲が流れて盛り上がっている所かも。
 たぶん俺がこの場面に映ったとしても、チラッと手元しか観えていないだろう。モブだから……。

  ルビーの宝石が輝く宝剣を手にしたアッシュは、輝いていた。さすが主人公! アッシュは宝剣を持って立ち上がった。
 
 「レンたちのおかげだ! 宝剣も手に入れられたし、旅を続けるよ」
 「いや、ボスを倒したのはアッシュだし。気をつけて行けよ、アッシュ!」
 お互いの片手をガッチリと握りあった。――友情、いいな!

 「それじゃあ!」
 アッシュは自分のカバンから水晶らしいものを取り出した。何をするのかなと思っていたら、ちゅっ! と水晶に口づけをした。
 「!?」
 その瞬間、アッシュの姿がシュン! と消えた。

 「えっ!? アッシュが消えた?」
 何が起きたかわからず、ウロウロしてアッシュの姿が消えた場所を調べようとした。
 「レン様。あれは、水晶転送装置ですわ」
 レミさんが俺の横に並んだ。なぐさめるように俺の頭を撫でた。

 「立派に勇者へ『勇者の宝剣』を渡せましたね……」
 ここでの俺の役割は、勇者へ宝剣を渡すことだったのか? てか、ここに塔のボスがいたということは、アッシュより先に来たら俺達がエンカウントしてたんじゃ……?
 ゾクゾクと全身に震えがきた。アッシュだから、ボスを倒せた。
 
 回復したと聞いたけど、元気にもほどがある。それにボスが先に倒してくれて良かったけれど、どんなボスだったのだろう……。ゲーム好きとしては気になった。
もうイベントが終わった場所にいつまでもいても仕方がない。
 「俺達も帰ろうか」

 レミさんは「あっ!」と言った。なんだろう。
 「申し訳ございません……。水晶転送装置を持ってきてませんでした……」
 レミさんは頭を深々と下げた。

 ということは、一階まで同じところを戻っていかないといけない……?
 レミさんは俺のことを、チラッ、チラッと見た。……うん、しかたがないね――!

 「戻って帰ろうか……」
 あきらめてもと来た道を帰ろうとした。

『お待ちクダサイ――――!』
 バサバサッと羽をばたつかせて、さっきアッシュが落ちそうになっていた窓から、見たことのある小鳥が中へ入ってきた。
 「あれ? お前は!」
 パタパタと飛んできて俺の肩へとまった。

『そうデス! 助けてもらった小鳥デス!』
 やっぱり! ケガをしていた小鳥だった。でも何でこんなところに?
 「もうケガは治ったみたいだな! 良かった。でもなんで、ここに?」
 『ココは、ワタシのおうちデス! 魔物が住み着いて困っていまシタが、倒していただいたので、戻ってきました!』

 ピピピピ! ピピ! と小鳥は嬉しそうに歌った。

『勇者へ宝剣を渡す使命があったのですが、代わりに渡して下さって助かりました!』
 そ、そうなのか……。代わりに渡せてよかった。

『なので。お礼に、旅について行くことへしました!』
 だんだん小鳥は言葉がなめらかになって、たどたどしさがなくなった。
 「へ!? 旅に小鳥の君が、ついてくる?」

 「はい!」
 そう言ったと思ったら、小鳥は俺の肩から床へ下りて大きな羽を広げた。
  バサササッ……!

 大きい、きれいな鳥に変わった。

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。 異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。 前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。 神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。 朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。 そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。 究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...