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8 【魔力のツボ】
しおりを挟む「うわぁ……」
森の中は昨日と違って薄暗くて不気味な雰囲気を醸し出していた。
「森の様子がおかしいね。離れないようにして」
「……うん」
アッシュは用心深く、森の中を進んだ。俺は武器を持ってなかったことに後悔した。町の中に【武器屋】なんてあっただろうか? 町へ戻ったら一番に武器を買おう。
しかし俺の方がアッシュより異世界では年下みたいだけど、実際の年齢は俺の方が上なのに頼ってばかりだ。俺もアッシュの、力になりたい。
アッシュの後ろを用心深くついて歩いて行くと、だんだん薄黒くなってきた。まだ明るい時間なのにおかしい。俺は左右の確認をして魔物が近づいてきてないか用心をした。
「あ、薬草を見つけた!」
「レン!?」
用心深く周りを見ていたら薬草を見つけて、走ってその場所に行った。
そこには黄色い花が咲いていた。これは貴重な花だと植物図鑑に載っていたのを見たので、手に入れて袋へ入れておく。しゃがんで薬草を採っていたら、緑色の草の隙間から赤いモノが見えた。
「なんだろう?」
俺は長く伸びた草をかき分けて、その赤いモノを探した。
「レン! 離れたらダメだろ!」
ガサガサと草をかき分ける音がした。アッシュが俺を探しに来てくれたようだ。
「ケガをしている。かわいそうに」
俺が見た赤いモノは、ケガをした小鳥だった。白い羽が傷ついていて、痛そうだ。
「ピ、ピィ……」
「あれ?」
カバンから植物図鑑が、ポロッと地面に落ちてしまった。おかしいな? ちゃんとカバンのふたを閉めたのに。拾おうとしたらパラパラとまたページが開いた。
「止血と消毒の効果のある薬の作り方?」
植物図鑑の後ろの方に、薬の作り方が載っていた。これは! 薬を作って小鳥の手当が出来るかも!?
「こら。レン、危ないじゃないか」
しゃがんでいる俺の横に来てアッシュは片膝をついた。ケガをしている小鳥に気が付いてアッシュは俺を見た。
「この小鳥、ケガをしているから薬をつくって手当してあげたい」
「ピィ……」
プルプルと震えている。早く手当してあげたい。
「あ、そういえば……」
アッシュは自分のカバンの中から両手で持てるくらいの大きさの、茶色のフタつきツボを取り出した。よくこの大きさのツボが入っていたなと思った。
「これ【魔力のツボ】と言うもので魔力を帯びているんだ。拾ったものだけど、組み合わせて薬を作れるよ」
にっこりと笑って【魔力のツボ】を、俺の前の地面に置いた。
「えっ本当!? 借りていい?」
アッシュは頷いて、小鳥を見た。
「早く手当してあげたほうがいいね」
「うん」
俺は植物図鑑を読んだ。そこには先ほど採った薬草と黄色い花を、【魔力のツボ】に入れると傷薬が出来るようだ。
「作ってみるね」
「うん」
俺は小鳥が痛そうにしているのを見て、早く傷薬を作ってあげようと思った。
ツボのフタを開けて、中へ薬草と黄色い花を入れた。入れただけで薬が出来るのかな? 俺はツボのフタを閉めてアッシュを見た。
「これでいいの?」
不安だった。ツボのフタのつまみを持つ俺の手の上に、アッシュは手を乗せた。
「念じるんだ」
「念じる?」
アッシュはまぶたを閉じた。手から温かいものが流れた。
ポン!
フタがカタカタと鳴って、フタが開いた!
「できた!?」
ぽ――ん! とツボから出てきたのは、大きな葉に包まれた【薬】だった。
「うん。出来が良さそうだ」
俺はアッシュに言われてホッとした。さっそく小鳥の手当をすることにした。
「痛いだろう? かわいそうに。今、薬をつけてやるからな」
俺は手を布できれいに拭いて、小鳥へ薬をぬってあげた。
「ピィ……。ピィ」
「本当は野生の動物に手当をしてはいけないんだ。今回は特別だよ」
アッシュは難しい顔をして俺に教えてくれた。まだ出会って二日目だけど、ちゃんと子供の俺に教えてくれた。
「うん。ありがとう」
本当はわかっていた。俺の中身は大人だから。だけど見捨てることはできなかった。
「ピィ! ピ!」
あれ? 薬をぬってまだそんなに時間が経っていないのに、もう傷ついた羽を動かしている?
「これは……」
アッシュが首をかしげていた。やっぱり羽を動かすには、早いと思ったのだろう。そっと近寄ってケガをしている羽をジッと見た。
「驚いた。もうケガが治っているよ」
「えっ!?」
アッシュが小鳥を見て俺に言った。
「ピ! ピ!」
小鳥は羽をパタパタと動かしている。早すぎる……。
「まあ、早く治ったから良かったんじゃないかな? いつまでも地面にいると、肉食の魔物に食べられてしまうからね」
アッシュは立ち上がって周りを見た。警戒しているようだ。
「お前、大丈夫か? ケガが治ったなら、良かった」
「ピピッ!」
小鳥はパタパタと、両方の羽を動かして見せた。もう動かせるのか! 飛べそうだ。
「ピピピピ!」
小鳥は鳴いて何回か羽ばたきしてから、俺達の頭上へジャンプして飛んだ。
「もう飛べた! よかったな!」
何回か俺達の頭上を旋回してから森の奥へ飛んでいった。
「あ――、小鳥が飛べるようになって良かった!」
俺は小鳥が飛び立ったのを見て、安心して立ち上がった。アッシュは何かを考えているようだった。
「アッシュ?」
「あっ……、うん」
俺が声をかけると驚いたようだった。アッシュは小鳥が飛び立った方を見ていた。
「そのツボ、ぼくは使わないからレンにあげるよ」
アッシュは振り返って、俺にツボをあげると言った。
「ええ!? 高価なものじゃないの? 悪いよ!」
俺はさすがにアッシュに、色々お世話になっているので遠慮した。
「子供が遠慮をするな。拾ったものだし、ぼくは使わないから君にあげたいんだ。もらってくれるかい?」
俺はアッシュに困った顔で言われたので、根負けをして【魔力のツボ】をもらってしまった。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
俺はアッシュにお礼を言ったら、頭を撫でられた。ちょっと複雑な気持ちだった。
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