6 / 60
6 お金を貯めて好きなことをしたい
しおりを挟む「レン! 大丈夫か?」
アッシュは俺を心配そうにしている。薬屋のお姉さんと、お医者さんを呼ぼうかと話している二人の声が聞こえた。
「あ……、もう大丈夫です」
頭痛が治まって、俺は顔を上げた。いつの間にか涙を流していたようなので、手の甲で涙をぬぐった。
「本当? お医者さんを呼びましょうか?」
お姉さんも優しい人だ。俺は無理やり笑ってみせた。
「ありがとう御座います。またひどく痛くなったら、お医者さんに診てもらいます」
「そう? 無理しないでね」
赤の他人の、初めて会った人たちに心配された。なんだか胸が温かくなった。
「もう宿屋に行こうか? ぼくが泊っている宿は安くていいよ」
転移前のことを一気に思い出して頭が混乱している。これから宿屋を探す気になれないので、アッシュについていくことにした。
「お願いしてもいいかな?」
俺がアッシュに伝えると「まかせて!」と言ってくれた。
アッシュの後ろをついていくと、薬屋さんからすぐの宿屋だった。
『いらっしゃいませ』
年老いたおじいさんがやっている宿屋に着いた。
「ああ。アッシュさん、お帰りなさいませ」
「戻りました。一人、泊まりたいのだけど部屋は空いていますか?」
心配してくれたアッシュは代わりに部屋が空いているか聞いてくれた。
「空いていますよ。そちらの方ですね」
俺に聞いてきたので返事をした。
「はい」
宿屋の店主は、おお! と言って微笑んだ。
「まだ若いのにすごいな! 宿代をおまけしてあげよう」
そう言って鍵を渡してくれた。宿代のおまけなんて初めて聞いた。
「ありがとう御座います」
俺は鍵を受け取ってお礼を言った。そういえばまだ十代くらいの姿だった。中身はもっと年が上なので気をつけなくてはいけないな。
「部屋は、ぼくの隣みたいだよ。何かあったら、隣にいるから呼んでね」
アッシュは優しい……。――もしかして俺が子供だからか? ありえる……。
階段を上って隣同士の部屋。
「明日の予定は、何かある?」
部屋へ入ろうかと思ったら、アッシュが話しかけてきた。
「そうだな……。また薬草など、拾いに行くと思う」
「そうか。良かったら途中まで一緒に行こうか」
どこまでもアッシュは良いやつだ。
「ありがとう! 色々教えてくれると嬉しいな!」
俺は早くこの世界の基本的なものを知りたかったので、子供の姿を借りて色々聞いてしまおうと思った。アッシュには騙しているようで悪いけど、俺には事情がある。
「じゃあ、お休み。レン」
「お休みなさい」
ドアを閉めて俺はベッドへポスン! とダイブした。
「あ――、疲れたぁ……」
今日一日でこんな目まぐるしく環境が変わった。まさかゲームの世界だなんて信じられない。
俺がこの世界に来た意味は、あるのかな……。
でもせっかくゲームの世界に来て、子供の姿になったなら楽しんでもいいかな? 神様や女神様みたいな案内人が、いないのが不安だけど……。
転移する前。頑張ったから、いいかな……。たぶんもう戻れないだろう。それだったら全力で楽しんでみたい。
どこか旅行に行きたかった。
何かのお店をやりたかった。
動物に囲まれてモフモフしたかった。……お金を貯めて、この世界でやってみよう。
モフモフ……。いいな。ペット禁止のアパートに住んでいたから、動物を飼えなかった。家を買えば、動物と一緒に暮らせるよな? うん。楽しくなってきた。
旅も自由に行ける。動物を連れて旅行も憧れていた。広い場所でペットと思いっきり全速力で走ったり、遊んだりしてみたい。何かのお店を開店してやってみたい。何のお店か決めてないけれど、何がいいかな?
子供だからか天井を見ていたら、目に膜が張って視界が見えにくくなった。俺は涙をこらえて、楽しいことを考えて眠りについた。
63
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。
異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。
前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。
神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。
朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。
そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。
究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。
どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!
スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!
天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる