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三章 共存共栄
24 から揚げ(醬油&ショウガ味)と塩おにぎり
しおりを挟む「ああああ! これはなんだ!? めちゃ美味しい!」
騎士さん達に好評だったのが、から揚げ。醤油とショウガの下味がきいているようで、噛むとジュワッと美味しい肉汁が口の中に広がる。鼻に抜ける醤油とショウガの香りはいくらでも嗅いでいたい。
「この野菜と肉の煮たやつ? しみ込んでいて、特にジャガイモが美味しい!」
どうやら肉じゃがも好評みたいだ。
「これは……。遠い国、東の国のお米というものじゃないか?」
騎士団長さんが塩おにぎりを手に持って言った。僕はたまたま近くを通りかかったので、話しかけてみた。
「そうです。そのお肉と野菜を煮た物は『肉じゃが』で、お米のやつは『塩おにぎり』と言います。食べてみてくださいね」
「ああ。いただこう」
団長さんの大きな手で塩おにぎりを持つと小さく見える。
母に教えてもらった結界魔法の応用で、衛生的に直接触らないよう手に膜を張って調理をした。なので、食中毒予防はできている。
これだと熱くない。炊きたてのお米で塩おにぎりを握った。
「ん! うまい」
大きな口で団長さんは塩おにぎりを頬張って食べた。モグモグとあっという間になくなった。野菜たっぷりの肉じゃがと、から揚げと塩おにぎりは、体が資本の騎士さん達に好評だった。
ふんわりと口の中でほぐれるお米。ほんのり塩がきいたお米は美味しい。
「これ美味しいわね~! マオちゃん、これお総菜屋さんで売っているのかしら?」
村のおばあちゃんや色々な人に聞かれたので料理の説明をした。良かった。お米や僕の作った日本の料理が受け入れてもらえた。
ピロピロ、ピロロン!
ん? レベルアップのお知らせ音かな?
僕は休憩所から外に出た。
~◆ レベルアップしました! ◆~
・料理 30 (20→10アップ)
・【回復食】スキル 30 (10→20アップ)
・テイマーレベル 71 (1アップ)
~◆順調にレベルアップしてますね!◆~
テイマーレベルが、1レベルアップ。……あれだな。最弱スライム。
最後の「順調に~」って書いてあるの、もしかして女神様が書いたものなのかな? 赤い字で書かれているから、某○○ゼミみたい。
とりあえずレベルが上がったからよかった。
「マオ君……だったかな」
騎士団団長さんが指についたご飯粒を摘まんで食べながら、僕を追いかけてきたようだ。
「はっ、はい」
「騎士団の者達が世話になった。礼を言う」
きっと爵位持ちの偉い人なのに僕へ頭を下げてきた。
「そんな! 頭を上げてください!」
慌てて団長さんに言った。偉い人なのに僕のような平民に、頭を下げるなんてなかなかできないことだと思う。
「ところで。王命でダンジョンの安全性を視察に来たのだが、ダンジョンの中に入ってもいいだろうか?」
え、団長さん自ら?
「私が一緒に行って、今後、利用しやすくする改装についてもお話ししたい」
あ。サウスさんと? 大丈夫かな。
「マオ様と団長がダンジョンに行って、暗殺されても困りますから」
こそっと、サウスさんが僕に耳打ちをした。暗殺!? まさか!
「では行こうか。俺の部下は二人ほど連れていく。いいな?」
団長さんは僕に言った。
「どうぞ。サウスさん、お願いしますね」
頷いて、サウスさん、団長さんと部下さん二人はダンジョンに視察へ行った。
「さて僕は……」
サウスさんと、団長さんと部下さんを見送って休憩所へ片付けに戻った。
「お――! マオ君!」
お昼ご飯をきれいに食べ終わっていたハリマさんが、座って食後のお茶を飲んでいた。
「ハリマさん。お味はいかがでした?」
あちこちの国へ行商に行っているハリマさんなら、舌が肥えているし感想を聞きたかった。
「旨かったよ――! お米を仕入れてきて良かった。他のおかずも美味しかったよ。なかなか味わえない料理だった。ありがとう、ごちそう様」
ハリマさんはごちそう様と僕に言った。ハリマさんの舌に合ったなら美味しいということでいいかな? 僕は安心した。
いきなり食べなれない味にするより、まずは塩味のおにぎり。塩味でも好評だった、から揚げを醤油とショウガで味を変えて出せば受け入れやすくなる。
肉じゃがは野菜たっぷり柔らかく煮たので、子供からお年寄りまで美味しく食べられる。
一応考えたけど初めての日本食は、皆に受け入れられて良かった。
休憩所で美味しそうに食べている、村の人や騎士さん達を眺めていた。
「マオ様」
「え?」
さっきダンジョンへ視察に行ったはずのサウスさんと団長さん達が戻ってきた。
「初心者用のダンジョンだから、すぐに終わる」
団長さんが、ちょっとトイレに行っていたような感じの言い方をした。そりゃあ、初心者用のダンジョンですけど……。早すぎじゃないですか?
「ダンジョン中の休憩所&宿泊所の計画は聞いた。ダンジョンの魔物のレベル、仕掛けなど問題はなかった」
しっかり見てくれたみたいですね。合格かな?
「あとは管理を、継続的にちゃんとしてもらえればいい。合格だ」
団長さんは部下から豪華な紙を受け取って、ペンを取り出しサインをさらさらと紙に書いた。
「国王公認、辺境の村・初心者用ダンジョンだ。しっかり安全に管理してくれ」
「はい!」
僕はお辞儀をして団長さんから豪華な紙……ではなくて、許可書を受け取った。
ただの紙切れではなくて、王様に認められて運営できる。――魔族のダンジョンだけど。
僕は受け取った許可書を大事に袋にしまった。
「辺境の村お土産も見ないものだし、人気が出るだろう。村の安全は、王都から騎士を何人か派遣するから安心してくれ」
騎士の人がきてくれるのなら村の人も安心だ。
「ありがとうございます!」
僕と騎士団団長さんで話をしていた。そこへ、ぬっ! と誰かが割り込んできた。
「お前か。ミゲル」
肩を組もうとした神父さんだったけど、団長さんに避けられてた。
「あっ、神父さん!」
団長さんと神父さんは知り合いなのかな? うわぁ……。サウスさんが怖い顔をしている。
「やあ、マオ君。元気かい?」
神父さんは余所行きの顔で僕に話しかけてきた。僕は少し警戒しながら返事をした。
「はい……元気です。ブレスレットも調子いいです……」
最後は尻つぼみになって小さい声になった。
「なんだ? ミゲル、脅かしすぎたんじゃないか?」
団長さんが僕を心配して神父さんに言ってくれた。もっと言ってください……。
「はん! このくらいでいいんだよ」
僕に対して神父さんは厳しい。サウスさんが何か言いたそうにしていたけど、目線を送って何もしないように合図をした。
「そうそう。ダンジョンで、もしも。死人が出たら、強制的にダンジョンから脱出する魔法陣を仕込んでほしい。転送先は教会で、たのむ」
神父さんがサウスさんにお願いした。
「承知した」
ぶっきらぼうにサウスさんは、神父さんに返事をした。
「俺に、辺境土産のプルプルゼリーはないの?」と神父さんは文句を言ってきた。
サウスさんが切れそうだったので、僕達は片付けがあるから……と言って二人から離れた。
マオ達が離れてから――。
「あれが例の魔王だろう? 間違いじゃないのか?」
騎士団団長が小声で神父、ミゲルに言った。
神父は、休憩所の中に入っていったマオ達を見送りながら溜息を吐いた。
「間違いじゃない。間違いなら良かったんだけどな」
今度は団長の肩に腕を置いて言った。
「まあ、俺が見張っているから大丈夫だ」
マオの知らないところで、二人の話題にされているとは思いもしなかった。
「から揚げ、塩おにぎり、肉じゃが、美味しかったぞ」
団長が料理の感想を、神父に言った。
「ずるい。俺も食べたかった」
神父は、まだ料理が残ってないか休憩所へ覗きに行った。
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