15 / 53
二章 因果応報
15 ダンジョン(洞窟)② 捜索! 地下一階
しおりを挟む「ゴミムシダマシっていう昆虫なの!?」
僕達の前に現れた、大きな昆虫の名前を素早く言ったジーンに驚いた。
「こんなに大きくはないけどな! くっ!」
ゴミムシダマシという大きな昆虫は、ジーンに体当たりしてきた。剣で受け止めたジーンはすごい。
「穀物や飼料とかに混入している害虫だよ! こんなにバカでかいのは見たことない!」
僕は穀物に混入している虫を思い出した。あれか!
「うわ!」
一回り小さいのが僕の方に飛び跳ねてきたので、ブスリ! とレイピアで真っ二つにした。
「えっ? そのレイピア、お前のおやじさんの特製か?」
ジーンは僕のレイピアを怪訝そうに見て言った。
「そうだけど?」
なんだろう? ジーンはあきれたようにフッと笑った。
「お前のおやじさん、やっぱ良い腕している。そのレイピア、切れ味が鋭い」
「特製、なので」
僕は父の武器防具職人の腕が良いと言われて、鼻が高かった。
「一階の大キノコの群れはなぎ倒していけば楽に進めたけど、地下一階は慎重に行かないとやられる。気をつけろ、マオ」
ジーンは警戒しながら前に進んだ。
「うわっ!」
ガサガサ! 僕達が岩のあいだを進んで行くと、横から大ゴミムシダマシが襲ってきた。
「大丈夫か!? マオ!」
ザッ! ブシュッ! 油断した僕の腕をぐいと引っ張り、ジーンは大ゴミムシダマシを大剣で刺して仕留めた。昆虫はひっくり返ってピクピクしながら動かなくなった。
「うん。ありがとう」
ジーンは強いな。助かった。僕は冷や汗をかいた。
地下二階の真ん中あたりに進むと、岩が大きくなってきて見通しが悪くなってきた。急に襲ってくる場合があるから注意ポイントだな。
とりあえず、地下一階をざっと見ておきたい。
天井にぶら下がっているコウモリは寝ているようで襲っては来ない。昼間だからかな? そういえばここの明かりは、どうなっているのだろう?
「ねえ、ジーン。この洞窟の明かりって、どうなってると思う?」
「あ、そういえば」
一応、ランプや火を起こす道具を持ってきたけど使わなくても大丈夫な感じだ。
「あれ?」
ふと、僕の横にあった岩肌を見てみると僕の影が映っていて、そこの場所が光っているのが見えた。
影のせいで暗くなっているので気が付いた。
「どうした?」
僕がじっと見ていると、前にいたジーンが近づいてきた。
「この苔、光っている」
手をかざすと指の間から光が漏れて見えた。ヒカリゴケ……?
「え、でもヒカリゴケっていう苔はあるけど、反射で光っているだけのものだったはず」
僕は首をかしげていると、ジーンは壁に向かって歩いていった。そして指で苔を摘まむと「確かに光っている」と言った。
「新種かな?」
そんなに詳しくないけれど、今まで見た苔や本で調べたものには苔そのもの自身が発光するのはなかった。
「そうかもな。どちらにしろ便利だ」
ジーンはニヤッと笑って言った。
「そうだね」
地下一階、奥まで行くと行き止まりだった。下に降りる階段は見当たらなかった。
「おかしいな。下に降りる所がないぞ」
地下一階の奥の行き止まりは、半円形のゴツゴツした岩肌が見上げるほど高く天井まで続いていた。
足元は今までと違い、枯れて朽ちた木々が多々転がっていていた。
ジーンは、行き止まりの岩壁を叩いたり触ったりして調べていた。
僕は足元の地面の柔らかさが気になって、足先でグニグニと踏みしめていた。
ゆらり……。
「あれ? 地面が揺れた……?」
足先で地面を踏むのをやめた。気のせいかな?
どうやら朽ちた木々が、湿ったおが屑状の層になっているみたいだ。進んできた地下一階は岩が多かったけれど、この階の奥は違っていた。
もともとこの階は、木々が生い茂っていて徐々に枯れていったのだろうか。興味深いな。
僕はまた、柔らかい地面を何回か踏んでみた。程よい弾力があって、沈むことはなさそうだ。
ゆらゆら……! ガクンッ!
「……ジーン! 下から、何かくる!」
足裏から地中でなにか動く振動を感じた。足先から五メートル先の所から、モコモコと地面が盛り上がった!
ボコッッツ! 大きな魔物が、地面から出てきた!
「あれは、ミルワーム!? 大きい!!」
普通の数万倍? 大きいミルワームがボコボコと数匹、地面の下から這い出てきた!
「マオ! 囲まれているぞ!」
岩肌を調べていたジーンが、急いで僕の方へ走ってきているのが見えた。レイピアを構えて後ずさりする。襲ってくるか?
ギィユ――ィィィ……!
こんな鳴き声なんてしないっ! と思いながら、襲い掛かってきた大きなミルワームに向かってレイピアを振り落した。
ギュイ――! 先の部分が斜め真っ二つに切れて、ドサッと頭の地面に落ちた。遅れてあとから下の部分も地面に倒れた。立ち上がった高さ(長さ)三メートル、太さは十五センチぐらいだろうか?
「いいぞ! マオ」
ズシャッ……! ジーンが大ミルワームの後ろ側から戦ってくれた。
ここはミルワームの住処、だった。
次から次へと、地面から這い出てきて襲い掛かってきた。僕とジーンはただひたすら剣を振っていた。
そんなに長い時間ではなかったはず。だけど数十匹のミルワームの残骸が転がっていた。
「はぁはぁ……。あとの大ミルワームは地面の下へ逃げて行ったみたいだな……」
ジーンは息を切らして僕に言った。
「う、うん。そうみたいだね……」
僕も息を切らしてジーンに返事をした。
ミルワームに応戦しながら階の真ん中あたりまで後退していき、戦った。それが良かったのか大ミルワーム達を倒せた。
「あっ! あそこ!」
僕は岩陰にぽっかりと開いた、大きな穴を指さした。ジーンは汗を布で拭きながら僕の指をさした方向を向いた。
「下の階に降りられるんじゃない?」
呼吸をふう……と整えながら僕は見つけた穴に近づいていった。
455
お気に入りに追加
1,066
あなたにおすすめの小説
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生幼児は夢いっぱい
meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、
ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい??
らしいというのも……前世を思い出したのは
転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。
これは秘匿された出自を知らないまま、
チートしつつ異世界を楽しむ男の話である!
☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。
誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。
☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*)
今後ともよろしくお願い致します🍀
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる