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二章 因果応報
12 ハリマさんにもらった本
しおりを挟む「しかし、マオ君。よくお米とか知ってたね~。まだあまり知られてないのに」
ハリマさんは不思議そうに、僕の顔を覗き込んで話しかけてきた。ハリマさんは日に焼けた顔に、黒髪を後ろで一つに束ねている。ワイルドな感じなんだけど清潔感がある。
頼れるお兄さんだ。
「あはは。本で読んだんだ。おにぎり、の絵が描いてあっておいしそうだった」
これは本当だ。前世を思い出してから偶然見ていた本に描いてあった。
「マオは食いしん坊だな!」
ハリマさんに言われて二人で笑った。そうかも!
僕は自分で使う分をハリマさんから買った。ハリマさんの持ってきたものは品が良い。これからもひいきにしたい。
「お米は重くないですか? たくさん注文して大丈夫ですか?」
お米はキロで買う。重いのに大丈夫か心配になった。
「隣の国から来て、ここは一番初めに寄る村なんだ。ここで重い米を買ってくれると軽くなるから大丈夫だ」
ニッ! とハリマさんが大丈夫だと笑った。
「マオは優しいな」
そう言って僕の茶色い髪の毛を、くしゃくしゃと撫でた。僕は前世を含め、一人っ子なのでお兄さんみたいで嬉しかった。前世のことは思い出したくないけど、どうやらあまり良い家族に恵まれなかったみたいだ。……なので今は、優しい人達に囲まれて幸せだ。
「まだ何か大きなこと、考えているんだろ?」
商売ではハリマさんは先輩だ。
「ハリマさんこそ! 何か一緒に出来るといいですね!」
僕はハリマさんと何か、一緒に仕事ができたらいいなと思った。
「そうだな」
近いうちに実現できるといいな。
僕はハリマさんの手伝いをしながら話をしてたら、品物が完売していた。
「マオ君が手伝ってくれたから、早く品物が売れたよ。ありがとう」
「少しでもお役に立てて嬉しいです」
へへっ……! と僕は照れ笑いをした。ハリマさんは「お礼に、これをあげる」と言った。
『薬草の効果』というタイトルの本だった。
「これ、身近に生えてる薬草の本で。擦り傷に効く草や、組み合わせで症状に効果的な薬となる調合のやり方とか書いてある。覚えておいて損はないから」と渡してくれた。
「え、いいの?」
役に立ちそうで興味がある。高そうだけど……。
「ちゃんと読んで覚えてくれれば、いいよ」
読んでみたい。僕はハリマさんに甘えて受け取ることにした。
「ありがとう御座います!」
「次は来週になるかな。注文の品が入り次第に来るから。楽しみに待っててくれ」
後片付けをしてハリマさんは、次の場所へ移動するため村から出発した。
「気を付けて! また!」
ハリマさんが次に、この村へ来るのが楽しみだ。
僕はハリマさんにもらった『薬草の効果』というタイトルの本を読んでみた。薬草の効能や組み合わせ方、または毒を持っている毒草までも載っていた。
「う――ん。毒草には気をつけないとな……」
これ覚えて料理に使えないかな? 日本の料理でも例えばヨモギだんごみたいな、食べられる薬草を使った料理とか。ハーブも同じだけど。
この村に生えているハーブと薬草は、ほぼ前世の世界と同じものだけどあんまりハーブとか薬草を使った料理はたぶん、ないみたい。
世界の料理図鑑みたいな本を何冊か見たことがあるけど、ハーブや薬草を使ったものは見なかった。王都や大きい街に行けば、もしかしてあるかもしれないけれど。
「でも取扱いに注意しないと。まずは薬を作ってみるのもいいかもしれない」
僕はもらった本を読んで活用しようと思った。
この村は、自然が豊かで森には自然の恵みがたくさんある。毒のある物と魔物に気をつければいい。
ただあまり村の人は、魔物を怖がって森には入りたがらない。僕が森に入ってもほとんど魔物に会わないのはもしかして、僕が魔王(絶対にならないけど!)だから……?
「いやいや! そんなことは、……ないよね?」
きっとそうだ。うん。
ハーブは何種類か育てているけど薬草は育ててないから、また森に入って薬草を摘んでこようかな。育てられるのなら育ててもいいし。
「よし。お総菜屋さんの夜ご飯用の料理を作る前に、森へ行こう!」
その前に、家へ帰って準備をしないとな。僕は家へ走って帰った。
「あら、お帰り。マオ、どこか行くの?」
母さんが家の中でゆっくり休んでいた。毎日母も、朝から忙しい。基本的に、この村の人達は働き者だ。
「森へ行ってきます!」
行き先を伝えると母は、にっこりと微笑んだ。
「気を付けてね。奥まで行ってはダメよ」
「はい」
僕は袋や手袋など、カバンに入れて森へ出かけた。
ハリマさんからもらった本を見ながら森の中を歩いていると、色々な薬草が生えているのが見えてきた。今までは気にも留めてなかった、薬になる草花がたくさんあった。
「面白いな」
ただの草だと思っていたものが色々な効用があるなんて。ハリマさんにもらった本のおかげだ。
注意書きにあった、毒には気を付けて僕はいくつか草花を採取した。
「よしっ……と!」
持ってきた袋に入れてカバンにしまった。どう料理するか考えると楽しみだ。
ガサガサッ!
「がう!」
「へ?」
聞き覚えのある鳴き声が聞こえて、僕は後ろを向いた。黒い毛並みの頭が三つのケルベロスの子供だった。
「え? 僕、そんなに森の奥に入り込んでないよね?」
キョロキョロと、辺りを見回してみる。まだ森の中間位なはず。
「がうぅ……」
ケルベロスの子供は何か言いたげに僕を見ていた。
ガウ! とひと吠えして歩き出したケルベロスの子供。
「あっ、待って」
とりあえず僕はケルベロスの子供の後について行った。
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