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一章 流転

4 料理スキル① 初レベルアップ

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 「ルルン! 頑張ってね!」
この辺境の村から旅立つ子達を、村の皆で見送っていた。昨日先に帰ってしまったジーンもルルンを見送りに来ていた。
 「ベル! マオ! ジーン! 頑張ってくるね!」
ルルンはお城の騎士さん達に、迎えに来てもらっていた。なんだか特別待遇されているみたい。ルルンは両親と話をしている。
 
 ジーンはお城の騎士さん達をあこがれの目で見ていた。
「ジーン君かい?」
騎士さんの一人がジーンに話しかけてきた。銀色の鎧がカッコイイ。
 「そうです!」
あこがれのお城の騎士さんから話しかけられて、ジーンは緊張しているようだ。
 「君、騎士の素質があるそうだね。お城の騎士の募集は17歳からだから、それまで鍛錬して騎士の試験を受けに来てくれ」
 これを。と、渡されたのは通行証のようなもの。
 「ありがとうございます! 必ず、受けに行きます!」とジーンは騎士さんに答えた。
 「待ってるぞ!」「はい!」
ジーンは嬉しそうだった。良かった。僕も頑張らなくちゃな。皆を見送った後、村の人達は寂しさを感じつつ自分の仕事に戻っていった。
 
 
 僕は僕の進むべき正しい道を行かなければ、してしまう。気を付けて進まなければいけない。

 「でもせっかく女神様から加護をもらったのだから、楽しもう!」
家にある材料を使って何か料理を作ろう。お昼ご飯にしてもいいし、何を作ろうかな? みんなが旅立つ子達を見送って、誰もいなくなった村の一本道をのんびり歩いていた。
 
 子だくさん家族のブラウンさん家の前を通りかかったとき、次男のニイルが家から飛び出してきた。
 「マオ兄ちゃん! ママが病気なんだ! 助けて!」
「病気? わっ!」
 ニイルに腕を掴まれて引っ張られ、ブラウン家の中に入ってしまった。

 中にはニイルのほかに、ニイルの下の妹と弟達が四人いた。下の妹と双子の弟に一番下の子は赤ちゃん。
「ママはお医者さんに診てもらって寝ているけど……。ご飯だけ、僕たちは作れなくて! ママに栄養のあるご飯を作ってあげたいけれど、危ないからダメって……」
 ニイルはシュン……と項垂れてうなだしまった。
 「パパと一番上のお兄ちゃんはお仕事だし……」
 ニイルの妹は泣きそうに言った。

 「なるほど。ご飯だけ、作れないんだね?」
部屋の中を見てみると、きちんと片付いている。いつもニイルや妹が母の手伝いをしているのだろう。子供たちは頷いた。
 「わかった! 僕が作ってあげるよ!」
「わ――い!」
 ブラウンさん家の子供たちは嬉しそうに笑った。

 「すぐに作るよ。キッチンに案内してくれる? あと、手伝ってくれるかな?」
僕がそう言うと子供達は、僕の両手を引っ張ってキッチンへと連れて行った。
 さすが大家族、キッチンが広い。色々道具や食材もそろっているし作りがいがありそうだ。
 「好き嫌いがある子はいるかな?」
子供達に好き嫌いを聞いてみる。食べられないものや、体に合わない食べ物もあるから事前に聞いておく。
 「ないよ――」
 「わかった!」
子供達の食事を作りつつ、ママさんの療養食りょうようしょくを作っていく。

 「ママさんは、お熱があるの?」 
子供達との会話の中で、ママさんの病状を聞いていく。
 「そうなの。お熱があって、あんまり食欲がないみたい」「……ないみたい」
 心配そうに双子の弟君たちが教えてくれた。熱があって、食欲がないのか……。
「そっか。心配だね。ママが食べやすいご飯を作るからね」
 「うん!」
 「うん」
双子の弟君達は僕の話を聞いて安心したのか、元気よくキッチンから走って行った。

 「あんまり変わったものは作らないからね」
いつもの、どの家庭でも食べているもののほうが安心するだろう。お野菜たくさんのシチューを作る。
 野菜を切って、大きな鍋に入れて煮込む。お肉を包丁でミンチにして、柔らかい肉団子にする。お鍋の野菜が柔らかくなったら肉団子を入れてさらに煮込む。牛乳とチーズを入れて、塩で味を調えていく。
 「味見をしてくれる? 熱いから気を付けてね」
 野菜の皮むきなど手伝ってくれた兄妹に、味見をお願いする。小皿にすくって渡した。

 「お兄ちゃんのシチュー、おいしい!」
「うん!」
 上の二人においしいと言ってもらえた。次に小皿にすくっておいて冷ましたものを下の子達に渡して味見してもらった。
 「おいちい」
 「うん。うまい」
 どうやらブラウン家の子供達に、合格点をもらえたらしい。

 ママさんには、野菜が崩れるくらい煮込んだトロトロの味の薄めのシチュー。パパさんと一番上のお兄さんには、ちょっと濃い目の味付けにする。
 「よし! できた!」
 わ――い! 子供達は嬉しそうに声を上げた。
「こぼさないように、ママさんへシチューを持って行ってくれるかな?」
 「うん!」
 トレイにシチューと、お水と食後に飲むお薬を乗せて運んでもらった。

 「あとはみんなで協力してできるかな?」
料理が出来上がった後は、使ったものを洗ったり片づけたりした。あんまり長居するのも悪いだろうから、僕はみんなで食事を始めたのを見て帰ろうとした。
 「は――い! おいしいよ! ありがとう、マオお兄ちゃん!」
 「ありがとう!」
 よかった! みんな、喜んでくれたようだ。

 ピコン! 
ブラウン家から出て、しばらく歩いていたら聞いたことのない音がして立ち止まった。
 「何の音? あれっ?」
教会で女神様の鑑定を授かったときにあらわれた、向こう側が透けて見える透明なお告げのノートが、僕の斜め上の空中にあらわれた。

 ~◆レベルが上がりました!◆~

 ★料理スキル★
 
 ・料理レベル 16 (スタート時、レベル 15)
 ・【回復食】レベル 5 (スタート時、レベル 1)
 
 ~◆おめでとうございます!◆~

 「うわっ! レベルが上がった!」
こんな風に知らせてくれるんだ!? びっくりした。
「なになに? 料理のレベルが16……と、【回復食】ってなんだろ? が、レベル5?」
 料理のスキルでこんなのあったかな? 
僕はレベルが上がって嬉しいけれど、この聞いたことのない【回復食】のスキルを不思議に思った。
 
  
 
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