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エピソード

風邪に気をつけて 冬のぬくもり 上

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「う――ん。アクセサリーの在庫が少なくなってきた」
 
 自分のお店 アクセサリー屋【猫の目】。
店内に販売しているアクセサリーの補充していた。

 手軽なお守りから、高価な宝石を使ったアクセサリーまで色々揃えている。最近忙しくて、アクセサリーの在庫品を作ってなかった。
 
「すまないけど、アクセサリーの在庫を作りたいから店番を頼んでいいかな?」
 「はい。大丈夫です」
僕はリファ君に店番を頼んで、店の奥に向かった。

 お店の奥はリビングやキッチン、寝室などプライベートな場所になっている。一室はアクセサリーを作る作業部屋になっていて、そこで作る。

 「まずは……」
パワーストーンでネックレス、ピアス、ブレスレッドを作る。
手軽な値段のものはテグスや細いゴムでブレスレッドを作り、宝石を使った高価なものは金細工と組み合わせていく。

 小さい子供がお小遣いで買えるブレスレットから、貴族や王族しか買えない商品まで。
 さすがに高級品は、店頭に並べないで受注販売をしている。

 ただ、いくら安価なアクセサリーでも加護の効果は同じ。高価なものには、もう1つか2つの加護をつける。
 ナイショで加護を多くつける時も、あったりする。

 注文品があったので、それにも加護をつけていく。

「これはマリア姉さんへ。生まれた赤ちゃんに、僕からの贈り物」
 誕生月の石に無病息災、厄除け&魔物よけ、少しラッキー運をつけた。本人の運に僕の加護をつけすぎると、おかしなことになるので……ほどほどに。

 マリア姉さんから赤ちゃんが生まれたと知らせがきたときは嬉しかった。安産だったらしい。良かった。
 落ち着いたと連絡が来たので近いうちに、お祝いに行く予定だ。

 ちまちま……と細かい作業から、トン! トン! と金槌を使うような力がいる作業まで夢中で作っていた。
 「ふう……」
 とりあえず、ブレスレッドやネックレス……その他をたくさん作った。

 「あとは、加護」
 ブレスレッドの購入層は、ほぼ子供達なので大きなけがをしないようにと、悪い者(魔物や悪意のある者)に狙われないような加護をつける。
祈り、手をかざす。

 いつものように、キラキラと頭上から光が降りてくる。
「少しでも皆を守れますように」
 光はブレスレッドに吸い込まれていった。
「これで、よし」
 
 次はネックレス。ブレスレッドより上位の加護をつける。
 「……よしっ、と」
 ふう……。いつもより多いから、ちょっと大変かも。少し汗をかいている。

 最後は注文のあった、高価な宝石と銀で作った指輪に加護をつける。
依頼主に聞いたら、この指輪を見せて結婚の申し込みをするそう。
 責任重大だ。
細工は注文通りに作ったし、あとは加護をつけるだけ。
 お二人にとって良いご縁になりますように。
「幸せになって欲しいな……」

 変な加護や、偽りの加護はつけない。
たまに魅了の加護や、呪いの類を依頼しに来る人がいるけど全部断っている。

 ちょっと疲れたかな……。いつもより魔力を多く使ったし。
何だか、ボーっとするような気がする。

 ふらふらとリビングに戻って、ソファーにポスンと座った。
「あれ? 力が入らないかも……」
ソファーへ倒れこむように横になった。クッションが、まくらの代わりになってちょうど良かった。
  
 
 「……さん! ルカさん!」
リファ君の呼ぶ声で気が付いた。
 あれ? ボクはアクセサリーを作っていて、それから……?
 目が開けづらい。体も重いのに気が付いた。

 「ルカさん! あ……気が付きましたね? 熱があります。さっきアラン様を呼びましたから、すぐ来てくれるはずです。大丈夫ですか?」 
リファ君が心配そうな顔で、僕に話しかけてる。

 「熱……?」
 そういえば体が熱いような?
 「アクセサリーを作りに行かれて、だいぶ時間が経ったのに休憩も無しだったので……。呼びかけたのですが、返事もなくて」
 いつも僕がアクセサリー作りを夢中になってた時は、リファ君が声をかけてくれて休憩するようにしていた。
 返事が無かったので、心配して来てくれたのだろう。

 「すまない。迷惑をかけた」
 起き上がろうとしたけど動けなかった。おかしいな。
 「あっ、動かないで下さい。かなり高い熱がありますから」
 リファ君が僕の肩を押さえた。

 あ……。熱が出ちゃったか。ちょっと魔力も使いすぎたかも。
 「アラン様が来てくれるまで、おとなしくしていて下さい」
「ん。そうする……」
 はぁ……とため息をついた。吐く息も熱いように感じた。

 「ルカ!」
 ドカドカ! と聞きなれた靴音と共に、アランが来てくれた。
「アラン様、ルカ様はかなり熱が高いようです」
 リファ君が僕の事を説明してくれた。

 「分かった。ありがとう。この後任せてもいいか?」
 アラン様がリファ君に話しかけている。僕はポーっとして話が頭に入ってこなかった。
 「はい。任せてください」
リファ君、頼りになるなぁ。良かった。
 「何か心配な事があれば隣の店にいる、キースに聞いてくれ」
リファ君が頷いたのは見えた。

 「ルカ、このまま病院に行く」
「……はい」
 僕は返事をするにも辛くなってきて、アラン様の胸に顔をすり寄せた。

 
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