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3章 二人の過去と今と未来へ

24.腕の中のルカ  〜アラン視点〜

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「ルカ、その首を医師に診てもらったほうがいい。うちの主治医に診せていいか?」
「……お願いします」

 首を診てもらい、魔法の解除もしたい。うちの主治医は、国一番の医師魔法使いなのでちょうどいい。
 抱き上げて知ったが、体重が軽すぎる。

「このままうちに公爵家に連れて行く」
「え……。ご迷惑なのでは、ないでしょうか?」
ルカは俺の腕の中で遠慮がちに言った。
「屋敷の皆が『ルカ様は今度いつ、いらっしゃいますか?』と、うるさいくらいだから大丈夫だ」
 ルカは少しだけ笑顔を見せた。ホッとしたようだ。
 
 倉庫の敷地内を、ルカを抱き上げたまま歩く。
 「アラン様! 子供達は無事に保護されました。倒れていた者達は確保。連れて行き、尋問します」
 ニールが来て、的確に現場の指示をしてくれたので助かった。
 
「ルカ君……!」
ニールは、ルカの首に出来たに気がついて顔色を変えた。

「詳しいことは後で話す。ルカを連れて行くからあとは頼む」
「……わかりました。ゆっくり休ませて下さいね」
 俺はニールに向かって頷いた。

 騎士達に囲まれて、助けられた子供達がいた。
子供達は迎えに来た親達に抱きついたりして、無事に会えたことを喜んでいた。親達は子供達を泣きながら抱きしめていた。
 とにかく、子供達が無事で良かった。

 まだまだ油断はできない。あの黒いローブの青年は……。ルカは知っているみたいだが……。
 
まだ青い顔をしたルカを屋敷に連れて帰った。

 
 「お帰りなさいませ……えっ! アラン様、ルカ様は……「医師を呼んでくれ、至急だ」」
 話途中で医師を呼ぶように、セバスチャンに指示した。
「ネネ、俺の隣の部屋は使えるようになっているか?」
 俺の腕の中にルカが青い顔しているのに気が付いて、ネネは胸の前で自分の両手を握った。
 
 「は、はい。お部屋はいつでも使えるように整えております。何か入用なものがありましたら、おっしゃってくださいませ!」
ベテランのネネは、すぐに気を取り直して他のメイドに指示をした。
 
 「医師に診せたい。風呂に入れてやりたい。そのあと軽食を運んでくれ」
 「かしこまりました!」
ネネは走って準備をしに行った。
 
 早足で屋敷の玄関ホールを進んで、俺の部屋の隣の部屋に運んだ。
「すみません……ご迷惑をおかけします」
とりあえず部屋のソファにルカを座らせた。
 「迷惑ではない。とにかく医師に診察してもらおう」
 俺がルカに言うと、首に手を当てて頷いて下を向いた。
 
 
 「これはしばらく痕が消えません。これを行った人物はどこに?」
 医師が来てくれて、ルカを診察してもらった。首の痕はしばらく残るらしい。
 ルカは長い前髪で瞳は隠れているが、正面を向いて医師を見ていた。
 
「そいつは騎士団が捕まえた」
俺がルカの代わりに答えた。ルカは首を指で触れた。
「なら、いいですが。……かけられた魔法ですが、いわゆる 口封じ の魔法ですね。うーん……ずいぶん強力な魔法ですね。無理やり外そうとすると、かけられた者にダメージを与えるような制限がかかっています」 
 思い出したのかルカは、ビクリと体を揺らした。

 「首の痕はしばらくすれば消えます。かけられた魔法の方は解除は無理そうですね」
 国一番の魔法使いに言われてしまった。
「あなたを上回る魔法使い、なのか?」
 俺は渋い顔になってのを自覚した。

 「これだけでは分かりませんが。ただ一つ言えるのは……」
 医師は俺の方に顔を向けた。
「お城の魔法使いではないと断言できますし、相手にこういった魔法を施すのは禁止されてます。つまり、とても厄介な人物……。お城で働いている以外の魔法使いということです」
 
 俺はルカに視線を向けた。ルカは下を向いて震えていた。
「あなたは王宮魔法使いでもある。ニールに、報告書を送るように伝えておく」
「そうして下さい。いずれその人物が、何らかの形で関わってきそうですね」

 この医師は幼少の頃から優れた魔法使いで、魔法と医療の両方を学んだ特異な人物だ。
 歳は30歳頃だっただろうか?
王宮の魔法使い達を束ねる、筆頭魔法使いだ。

「あと……。ルカ君だったかな? きちんと食事は摂っている? 栄養不足気味なので、このままだと入院してもらうことになるけど。一人暮らし?」
「あ……。一人暮らしですが、入院は……」
 医師は困った顔をした。ルカは両手を組んで強く握った。

「栄養不足? ……抱き上げた時、軽いと思った。ルカ、この屋敷にしばらく住まないか? 食事はきちんと摂らないと駄目だ」
 医師は俺の提案に頷いた。
「それに安全面でも君の身が心配だ。この屋敷の者は退役した騎士や、メイド達も要人を護衛できるほどの腕を持つ者ばかりだから安心してくれ」

「そうなのですか?」
ルカは顔を上げて俺に聞いた。
「そうだ。ネネも優しげに見えて、凄腕の元女性騎士だった」
「え、凄い」
 ネネの話を聞いて驚いていた。

「入院したくない理由があるなら、バレンシア公爵家にお世話になったらどうだろうか? 医師としてこちらなら安心できる」
医師はルカに、どうだろうか? と話しかけた。

 ルカは少し考えて俺に話しかけた。
「お世話に、なって良いでしょうか? アラン様」
 控えめに、自分の手をギュッと握りながら話したルカは、いじらしかった。
  
 
  
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