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3章 二人の過去と今と未来へ

21.倉庫街 〜アラン視点〜

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  ~アランの視点~

 ここ数日で、6名の子供達が行方不明になっている。まだ幼い子供達ばかりなので、早く助けてあげたい。

 しかし、被害は南区から東区に西区と範囲が広い。一番大きな中央区は、不審者が目撃され始めた。
 早く手を打たないと。
俺は騎士団の団長室で、関連の書類に目を通していた。

 街の普段の安全は、そこに住む者達が見回り班や自警団を作って住人の安全を守っている。
 しかし今回は数人の子供が行方不明。裏に大きな組織の存在が見え隠れしてきた。騎士団が表立って動くことで、これ以上行方不明者を出さないよう、抑制のために動いたが……。
  
「今度は中央区! 男児が行方不明になりました。騎士数人、商店街の人達も探してます」
ニールがノックもせずに部屋に入ってきた。いつも礼儀はキチンとしているはずの、無作法なニールに身構えた。

 顔色が悪いニールは、一呼吸してから話を続けた。
「……捜索に加わっていたルカ君が、集合時間になっても来てないそうです」
 ガタン! 椅子を倒す勢いで立ち上がった。
 
「真面目な性格の彼が、集まりに来ないのはおかしいし店にも帰ってない、と商店街の皆さんが心配してます」
 
 一人で探しに行った……?
俺が店から帰った後からだろうか?
「くそっ!」
 ドンと机を叩いた。俺がもう少し、ルカと一緒に居れば良かった。

「落ち着いて下さい。……ルカ君、巻き込まれたかもしれませんね」
 ニールは自分の手を顎に触れて、考えてる仕草しぐさをした。
「その確率は高い」

「どうします?」
ニールは分かっていて聞いてきた。
「決まっている。俺も捜索に加わる。捜索する騎士の人数を増やすぞ」
出かける用意を始めると、ニールは書類の束を机から持ち上げた。
 
「事務仕事は私が引き受けますので、子供達やルカ君を探して、必ず見つけて下さい」
 ニールは深く俺に頭を下げた。

「中央区で、また子供の行方不明になった。それに捜索を行っていた商店街の者も行方不明。人数を増やして中央区一帯を捜索する! 時間がない。必ず見つけろ!」
「はっ!」

 もう、一人目が行方不明になってだいぶ時間が過ぎている。慎重に調査と探索していたが、これ以上は命に関わる。
 それに……。ルカは無事だろうか?
皆、危ない目に合ってないといいが。

「団長、気合が入っている! もうこれ以上、子供達が行方不明になるのを阻止して見つけ出せないと!」
「凶悪な敵に向かって行った、あの剣鬼の顔をしている……!」
「俺達も全力で、子供達を探して見つけよう!!」 
「「おう!」」
 騎士達は気合が入ったようだ。

 中央区、噴水広場に移動して各班に分かれて捜索を始める。裏の道や空き家、人気ひとけのない所などを調べる。
  
「新人と先輩騎士同士で組むように! 新人、誰か俺に付いてこい。向こうを探す」
「はい!」
 新人が返事をして付いてくる。新人二人で捜索するよりも、ベテラン騎士と組んだほうが安心だ。 
 
「あちらを捜索するのですか? 何もない所ですよね?」
 新人が、捜索に向かう途中で話しかけてきた。

 確かにこちらは中央区の噴水広場から離れた、見通しの良い何も怪しいところがない倉庫が多い場所だ。
 倉庫は持ち主や利用理由を国に登録されていて、すでに調査済みだ。

「ああ。もう調査済みだ。だがもう一度、全部初めから探してみると、見逃したことをみつけられることがある」
「なるほど、です!」
 新人は、俺が走る速度に付いてきて返事をした。

「君の名前は?」
見込みがありそうな若者なので、名前を聞いた。
「あっ! 光栄です! バーム•ヘンペス 子爵家嫡男です!」
 走りながら器用に礼をした。

 倉庫街に到着し、怪しい場所はないか調べる。
以前、部下が倉庫街の倉庫を全部調べたが、何も怪しい所は無かったと書かれた報告書を読んだ。

 今度は直接、俺が調べる。
「まずはこの倉庫街を徹底的に調べて、何もなかったら次の場所を探しに行く」
「承知しました!」

一つ一つ倉庫の周りと中を調べて行く。
「ひぇっ! 英雄騎士様ですか!? うちの倉庫を調べたい? どうぞどうぞ! 建築に使う物を置いてあるだけです」
怪しい所はなさそうだ。

 この倉庫街はルカの家からは近い。探すなら街中より、こちらから調べているかも知れない。

 いくつかの倉庫を調べていくうちに、真新しい鉄柵に囲まれた、大きな倉庫が奥にあった。

 正門らしき場所を見つけたのでそちらに近づいた。
鍵がかかっており入れない。倉庫前にも人影がなかった。
「あれ? この倉庫に何か用があるのかい?」
声の方に振り向く。作業着を来た者が話しかけてきた。

「ああ。ここの倉庫で働く者だろうか? この辺で子供を見なかっただろうか?」
荷台に荷物が積んである。業者だろうか。
「ああん? さっきも子供は見てないか、と聞かれたな。迷子か?」

「!?」
業者らしき者は、地面に置いてある木箱を荷台に載せた。
「手伝おう」
 俺は地面に置いてある木箱を持ち上げて、荷台に載せた。5箱ほど荷台に載せて手伝った。

「ありがとう! 助かった」
業者らしき者は俺に礼を伝えた。
「大したことはない。そういえば先程、他に『子供を見てないか』と聞かれたそうだが」
俺は業者らしき者に聞いた。

「ああ! 若い兄ちゃんだったな。ローブを着て、フードを深く被って顔があまり見えなかった。ワシが姿は見てないが、声が地下から聞こえたって言ったら何か考え込んでたな。そういや、あの兄ちゃん。帰ったのかな?」
 帰ったか、まで……は、知らんがなと業者らしき者は両腕を組んだ。
 
「いや、十分だ。ありがとう」
 業者はロバを引いて去って行った。

「バーム。応援を連れて来てくれ。俺は様子を見ながら突入する」
  
 

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