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25 しるしを残して※R-18
しおりを挟む涙をなぞり、繰り返しキスをした。
会えなかった分を埋めるように。
そっと唇を離し、斗翔は濡れた目を細めて笑った。
「俺のことを忘れようと思った?」
「忘れたいと思ってた……」
正直に言った。
だって、苦しすぎる。
二人で暮らした家がなくなって、それを目の当たりにした時の私は息もできないくらいで、悲しいを通り越してただ苦しかった。
どれだけ傷ついたかわかる?
ねえ、斗翔。
噛みつくようなキスをした斗翔に私は仕返しのようにシャツの襟首をつかんで乱暴なキスで返した。
私の仕返しに気づいた斗翔が笑う。
「もっと夏永からキスが欲しい」
どんなキスでもと斗翔は言った。
飢えたように斗翔は私を求めた。
輪郭を確かめるように体をなでて、耳たぶを舐め、首筋を唇がゆっくりなぞる。
濡れた箇所からは甘い余韻が広がり、唇をぎゅっと噛んだ。
忘れたことを思い出させるみたいにして、自分だけが知る私の弱い部分を一つ一つ触れていく。
耳と首が弱いとわかっていて、わざとそこばかり唇を這わせて―――チリッとした痛みが走り、斗翔を見るとにこりと笑った。
「俺のだってちゃんと印をつけておかないと悪い虫がつく」
一つだけでは飽き足らず、いくつも赤い痕を肌に残し、さすがの私も慌てた。
「だ、駄目!目につくとこばかり……」
「見えなかったら、虫除けにならないから」
「虫!?」
「俺にもしるしをつけて。ちゃんと夏永のだってわかるようにね」
ほら、ここにと自分の首をとんとんっと指で叩いた。
言われるままに唇を押しあてて、赤い痕をつけた。
もっとと悪い顔をして斗翔は言う。
そのまま、崩れるようにドサッと体を押し倒されて、ハッとした。
縁側が全開で誰かきたら見られてしまう。
「だ、だめ!ここは!」
誰か来たら大変なことになる。
体を起こして縁側の方へ行こうとしたところをつかまれて、畳の上に転がった。
「い、痛っ」
「もしかして誰かくる?こないだの男?もしかして、あいつのことを好きになったとか?」
「ちがっ……」
斗翔は苦しげに顔を歪ませた。
泣きそうな斗翔の顔に驚き、呆然と見つめていると唇を塞がれた。
激しい感情と愛撫に抵抗できずにわずかに抵抗を見せるだけで、息もつくことのできないキスに口をあけて酸素を求めているとまた唇を塞がれる。
その繰り返しだった。
「……っ、だ、めっ」
制止の声すら耳に入ってないのか、手が体をまさぐり、衣服を奪い去り、明るい中で肌を晒されてぶるりと身が震えた。
「あ、明るいのに……」
あまりの恥ずかしさに顔を覆った手を奪い、斗翔は胸元にキスを落とした。
「大丈夫。綺麗だよ、夏永」
「やだっていってるでしょ……!」
泣きそうな顔をしていると斗翔は体を抱き抱えて、私が寝室として使っているベッドがある客間に連れていった。
「そのかわり、俺以外の人にこんな姿を見せないでよ」
体をベッドに下ろすと真剣な顔で斗翔は言った。
「み、見せたことないっ!」
「どうだか」
「なっ!?」
「もう黙って。俺、今日はあんまり我慢できない」
優しくもねと付け加えてキスをした。
胸をなぞり、斗翔の長くて繊細な指が下腹部に触れるとすでに濡れていた中はあっさりとのみこんで肌がざわりと粟立った。
「俺以外には抱かれてないみたいだね?」
「……だから、誤解っ……」
受け入れた中は狭くてゆるゆると指を動かされるたび、もっと刺激が欲しくて腰が揺れそうになる。
「んっ、く」
「声聞きたい、久しぶりだし」
「意地悪になったんじゃない……っ!」
指が増やされ、息が詰まる。
疼くような快感から、甘く痺れるような刺激に変わって苦しい。
訴えるように斗翔を見上げると、にこりと微笑んだ。
その顔は優しく見えるのに指はそうじゃない。
ぐるりと中をかき回すと、腰が大きく跳ね、声をあげかけ、とっさに手の甲で口を塞いだ。
「そうかも。いつもどうやってあの女を出し抜こうか考えてたからね」
くちゅと水音が聞こえ、ぶるりと身を震わせた。
駄目だと思っていても体は完全に感じている―――だめ、このままだと。
ぐっと中を押されて仰け反り、必死に斗翔の体を掴んだ。
「やっ、あっ……!」
もうやめてと言いたいのに言えずに涙がこぼれた。
「いいよ、一回達しても」
そう言うと斗翔は指を増やし、深くまで突き立て、激しく追いたてた。
腰が跳ねて悶える私の姿を見て、熱い息が耳元にかかって、それがさらに快感を呼ぶ。
―――こんなの無理。
「んっ、あっ、ああっ―――」
指が深くまで突き立てられ、頭が真っ白になった。
大きくのけぞり、爪先を丸めると、くたりとシーツの中に崩れ落ちた。
はぁっと荒い呼吸をしていると斗翔が汗ではりついた髪をそっと指ですくった。
「好きだよ、夏永」
呼吸が乱れ、好きだとすぐには言えずにいると斗翔は熱いものを押しあてた。
「待って―――今はまだっ」
達したばかりで辛いからと言いかけた瞬間、一気に貫かれて、その衝撃でまた達してしまった。
目の前がくらくらして、声もだせずにいると斗翔が言った。
「夏永は俺のこと好き?」
なにも考える余裕がなく、ただ頭にある言葉を口にした。
「あ、あっ……す、好き……」
「それならよかった」
すこしだけ息を乱した斗翔は体を持ち上げると下から突き上げた。
「あっ……やっ、こ、んなっ」
いつもより深く繋がってるせいか、苦しい。
「もっと感じて」
中には入ったまま、前の固い粒を押され、脚が跳ねた。
激しく突かれる衝撃と前をなぶる指で頭がおかしくなる―――やめてと言おうにもこぼれる声は言葉にならなかった。
「ひ、ああ……ん、んっ、あ」
胸の上に手を置き、あえぐ私の姿をたまらないと言うように熱のこもった目で斗翔は私をみていた。
「……っ、夏永の顔が……みたい……」
―――もうどこまでもおちていい。
なにもかもどうでもいい。
その熱に浮かされたような斗翔の顔が好き。
激しい腰の動きに導かれて、ただその熱を貪った。
何も考えれずに肌を重ねて、好きだという感情一つだけで与えられる快楽を追い求めた。
「激しいね……夏永」
「誰の……っ……せ、い」
腰を深く落とすと、斗翔は満足そうに微笑んで奥まで貫いた。
「あっ……あぁ……」
苦しいのに甘い。
汗を浮かばせて悦ぶ斗翔に覆い被さり唇を重ねると、どくりと中で熱いものが弾けた。
「んっ、んんっ」
流れ込む感覚に身を震わせていると斗翔は耳元で囁いた。
「まだ、夏永は俺のこと好き……?」
嫌いになんか、なれないよ。
斗翔―――
意識が遠のき、体が崩れ落ちたのがわかった。
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