私達は結婚したのでもう手遅れです!

椿蛍

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番外編

温泉旅行へ!

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旅のしおりまで作ってしまった。
『わくわく温泉旅行』なんて題名をつけた白黒印刷の旅のしおり。
指をさして笑われるかと思ったけど、竜江さんも仙崎さんも熱心に見てくれた。

「ここの場所の護衛は何人必要すっかね」

「そんないらないだろう」

「まあ、冬悟さんが凶器みたいなものですからね」

「そうだ」

なんて、二人が話している声が聞こえてきたけど、冬悟さんは凶器なんかじゃないですから!
だって、冬悟さんは一緒に『わくわく温泉旅行』のしおりを楽しそうに見てくれた。
そんな素敵な冬悟さんが凶器?
ありえないよー!
もー、冗談が二人ともうまいんだからっ。

「準備できたか?羽花?」

「はいっ!バッチリです!」

帽子にワンピース、カーディガンと歩きやすいスニーカー。
奥様らしい初夏コーデにしてみた(雑誌参照)
冬悟さんには言えなかったけど、温泉旅行は実は初めてだった。
そして、楽しみすぎて昨日の夜はあまり眠れなかった。

「羽花。おやつを持ちすぎだ。置いていけよ」

「部屋で食べようと思ったんです」

「部屋菓子がついている。料理でお腹がいっぱいになって食べれないぞ」

「そうですか……そうですよね……」

これが温泉初心者の考えることですよ……
しゅんっとしていると仙崎さんがサッとおやつの袋を持ってくれた。

「車の中で食べる分にしましょうか」

「ああ。それもそうだな」

二人の全力フォローが申し訳なくかんじた。
旅行なれしていないのバレバレだよね。
昔から、お店があって私は修学旅行も行けなかった。
衣兎いとおばさんがお店を手伝ってくれると言ってくれたけど、継母が反対してそれを阻んだ。
もちろん、父は継母を無視して衣兎おばさんに頼んだ。
けれど、それを知った継母は父と喧嘩をして、私が修学旅行に行かないと言うと継母は気が済んだらしく、おとなしくなった。
私が楽しいって思うことを継母はさせたくなかった。
けど、今は―――

「しおり通りに進めればいいんだな? ……酒造とワイナリーは羽花の行きたい場所じゃないだろう?」

「温泉の近くにある陶芸体験が私の行きたいところで、酒造とワイナリーは冬悟さん用ですっ。だって、冬悟さんはお酒好きでしょう?」 

「羽花が行きたいところだけでいいぞ」

「私は冬悟さんも楽しんで欲しいんです!」

冬悟さんは笑みを浮かべた。
私達が見つめあっていると、その横を竜江さんが通りすぎた。

「あー、ハイハイ。 荷物運びましたけど。そろそろ出発でいいっすかねー」

なんだか、竜江さがトゲトゲしい。

「竜江、なにをやさぐれているんだ?」

「温泉を断られた俺の身にもなってくださいよ」

「めずらしいな。お前、女に断られることがあるんだな」

「これが、あるんですよねー。あー、俺って報われないのになんであんなに好きなんだろう」

「お前、けっこうマゾ気質だからな」

「マジですか!?」

「お前は殴られてもけっこう平気な顔をしているぞ」

う、嘘だろおおお!と、竜江さんが床にがっくりと膝をついていた。
そんなショックなの?
マゾ気質って?

「あの、冬悟さん。マゾ気質ってなんですか?」

「羽花は知らなくていい。要するに竜江は変態ってことだ」

「へ、変態なんですか?」

「ちがうっ!羽花さんに変なこと教えないでくださいよ。本気にするでしょ」 

冬悟さんが言うと説得力がありすぎて困る。
竜江さんは否定したけど、竜江さん変態疑惑は完全にぬぐうことはできなかった。

「車にどうぞー」

不満そうな竜江さんと運転席に黙って座る仙崎さん。 
仙崎さんはそこにいるだけで、存在感がある。
車の後部座席に私と冬悟さんが乗った。

「仙崎さんっていつも落ち着いてますよね。恋人とかいらっしゃらないんですか?」

「いますよ」

「やっぱり!」

「おーい。仙崎さんは特別かよ。俺の時とずいぶん差があるな」

竜江さんが助手席から恨めしい顔を私に向けていたけど、みてみぬふりをした。

「どんな方なんですか」

「そうですね。歳はけっこういってますが、その分、落ち着いていて疲れた自分を癒してくれる存在です」

やっぱり!  
私の読みは当たっていた!
きっと昔からの付き合いで小料理屋の女将とかなんだろうな。
着物が似合う落ち着いた美人。
間違いない。

「素敵ですね」

「はい」

さすが仙崎さん。
お相手もとても素敵な方なんだろうな。

「サービスエリアに寄るんだったな」

冬悟さんがしおりを見ながら言った。

「そうです!旅の醍醐味と言えば、サービスエリア。サービスエリアグルメも楽しみたいなって思って、お昼はサービスエリアにしました」

「わかった」

「冬悟さんがサービスエリアで食事……」

「食券は自分が購入しますから、席で待っていてください」

仙崎さんの言葉に冬悟さんは笑って断った。

「駄目だ。羽花がせっかく考えてくれたプランだからな」

「そうですよね。冬悟さん。一緒に食券を買うのも楽しいですよね」

「は?楽しいわけ―――」

ゴツッと竜江さんが仙崎さんから肘でどつかれた。

「い、いてっ!」

ちょっと竜江さん達がいるのにイチャイチャしすぎてしまったかもしれない。
竜江さんにもきっと素敵な女性が見つかりますよ、と私は仙崎さんにどつかれたのを見て、そっとうなずいた。
仙崎さんはサービスエリアに車をとめた。
車から降りて私と冬悟さんは竜江さんに申し訳ないくらいラブラブで歩いた。

「羽花と一緒なら、なんでも楽しいに決まっている」

「ですよねっ」

竜江さんは痛そうにわき腹をさすりながら、仙崎さんと降りて前と後ろを歩く。
まるで映画の護衛みたいだった。

「あっ!お土産売り場も少しみていいですか?」

「ああ」

地元名産品のコーナーやご当地キャラのキーホルダー。
こういうのが欲しかったんだよね。
旅行に行った子達がご当地だけで買えるキャラクター物がうらやましかったのを思い出していた。
ふと顔をあげると、冬悟さんは仕事の電話中で竜江さんがその横にいるのが見えた。

「あれ?仙崎さんは?」

キョロキョロと見回すと熱心に仙崎さんは地元名産品のコーナーを眺めていた。
なにを見ているんだろう。

「仙崎さん、何か買いたいものがあったんですか?」

「ええ、まあ」

ちょっと恥ずかしそうにしていた。
これはもしやっ!
恋人へのお土産?

「仙崎さんの恋人へのお土産ですか?」

つい聞いてしまった。
仙崎さんは照れたように笑った。
わ、笑ったっー!
これは珍しいですよ。
仁王像が笑顔になるくらい珍しい。

「恋人にお土産を選んでいました」

「やっぱりっ!」

一体、どんな素敵なお土産を?
二人で飲む地酒?
それとも、ペアグラス?
きっと大人っぽいものに違いない。
ドキドキしながら、仙崎さんの手にした物を見た。

「……え?」

恋人へのお土産。
仙崎さんの手にあったのは地元名産の煮干しだった―――
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