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本編
15 君はこちらの手のなかへ【冬悟】
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朝になったが、無理をさせたせいで羽花はよく眠っていた。
髪をなでる。
あどけない顔をして眠るその姿は昔のまま。
「ずっと好きでした、か」
きっと俺のほうが長い時間、君を待っていた。
そして想いが強いのも―――羽花はそれを知らない。
起き上がり、シャワーを浴びた。
乱れた彼女の姿は花が咲いたように綺麗だった。
ふだんは子供っぽい顔をしているくせに感じた顔はたまらないくらいに淫らだ。
「こっちを無意識で誘うからな……」
ごつっと鏡に頭をうちつけた。
あちらから煽ってくるのから参る。
騙していた俺にあんな見返りを求めない純粋な愛情与えてくるなよ。
悪い男だとわからなかったのか―――わからなかったのだろうな。
目を閉じ、シャワーのお湯を顔をあてた。
忘れられない姿を頭の隅へと追いやった。
いつもの冷静さを取り戻さなければ。
髪を乾かし、いつものように前髪をあげてセットする。
スーツを身に付ければ、どこからどうみても『社長』だ。
インターホンが鳴り、ドアを開ける。
入ってきたのは竜江だった。
「冬悟さん!おはようございますっ!」
朝から威勢がよすぎる。
「静かにしろ。羽花が眠ってる」
よりにもよって、今日の朝は竜江かよ。
仙崎は車で待っているのか。
ネクタイを締め、シャツのボタンをとめた。
「行くぞ」
「あれ?羽花さんは?」
「今日は休ませる」
「あー、もしかして!とうとうヤッちゃいました?」
だから、うるさいんだよ、お前は!
イラッとして竜江の横を通りすぎる瞬間、足をひっかけて体をすくいあげ、床に転がした。
「うわっ!」
すてんっと軽い音をたて転倒し、仰向けになる竜江を冷ややかに見下ろした。
「静かにしろと言っただろうが。とっとと外に出ろ」
不意打ちだったにも関わらず、すぐに受け身をとれる勘の良さはさすが竜江だ。
両手で口をおさえ、こくこくと竜江は首を縦に振った。
カードキーを手にし、鍵をかけて外に出る。
羽花に鍵は渡していない。
矢郷玄馬がまだ羽花を諦めていないからだ。
しつこい男だ。
あんな奴に指一本触れさせてたまるか。
やり方が姑息なんだよ。
自分の妹を差し向けやがって。
俺がお前の妹で我慢できると思ってんのか?
クソが。
おかげで羽花にいらぬ不安を抱かせた。
礼華を俺の婚約者にしたのも全部、玄馬が仕向けたことだ。
たしかに礼華と俺が結婚すれば、矢郷と嶋倉の関係はこれ以上、悪くなることはない。
だが―――
「面白くねぇな」
「冬悟さん。凶悪な目付きになってますよ。世間の平穏のためにもメガネをかけといてください」
竜江がすっとメガネを差し出した。
「うるせえよ」
メガネを受け取るとマンションのドアを見た。
ここに怪しい人間は一切入れないが―――
「竜江。誰も近寄れないように見張りをつけとけよ」
「手配済みっす!」
すでに強面な連中を数人、廊下前に待機させていた。
手際がいい。
車には仙崎が待機している。
乗るなり、俺は言った。
「婚姻届を出す。その後、会社に向かってくれ」
わずかに二人は驚いたものの、祝う気持ちあるらしく、頭を下げた。
「冬悟さん。おめでとうございます」
「とうとうですかっ!おめでとうございます!」
「反対しないんだな」
ふっと笑うと二人は苦笑した。
「反対したところで冬悟さんの考えは変わらないでしょう」
「反対して殺されたくないんで」
「まあな」
「否定してくださいよっー!」
するわけがない。
邪魔する奴は全部ぶっ潰す。
そう決めてるんだよ、こっちはな。
「それで最後までヤッたんですか?」
竜江がにこにことした顔で『おめでとうございます』の言葉を準備している。
だが、俺の答えは残念ながら違う。
「最後までしなかった」
「ふへっ!?どこか具合でも悪いんですか!?」
「変な声出すんじゃねえよ。俺は至って健康だ」
「いやだって、ほら……えぇー!?」
黙ってハンドルを握っていた仙崎にも動揺が見られ、わずかだが車体が左右に揺れた。
「大事にしたい」
急ブレーキに竜江がゴツッと窓に頭をぶつけ、仙崎はすみません!と謝罪した。
「やっぱりどっか悪いんじゃ……」
正常だと何度言えばいいんだ?
めんどくせぇなと思いながら、窓の外見た。
マンション横の公園を通り過ぎる。
朝早いせいか、誰の姿もなかった。
羽花は今頃、目が覚めた頃だろうか。
スマホが鳴った。
相手は『柳屋』だ。
矢郷玄馬の次は父親か。
メガネをはずし、スマホ画面を見る。
「わっるい顔してますねぇー」
前の席から竜江がこっちをのぞく。
「まぁな」
「どうします?さすがに父親に脅しも誤魔化しもきかないっしょ?」
「正々堂々いただくに決まっているだろう」
指で羽花が外した嶋倉の代紋を弾いて宙に浮かせ、それを手の中につかみ取る。
羽花は俺の手の内。
俺から誰も彼女を奪えない。
それをわからせてやる―――
髪をなでる。
あどけない顔をして眠るその姿は昔のまま。
「ずっと好きでした、か」
きっと俺のほうが長い時間、君を待っていた。
そして想いが強いのも―――羽花はそれを知らない。
起き上がり、シャワーを浴びた。
乱れた彼女の姿は花が咲いたように綺麗だった。
ふだんは子供っぽい顔をしているくせに感じた顔はたまらないくらいに淫らだ。
「こっちを無意識で誘うからな……」
ごつっと鏡に頭をうちつけた。
あちらから煽ってくるのから参る。
騙していた俺にあんな見返りを求めない純粋な愛情与えてくるなよ。
悪い男だとわからなかったのか―――わからなかったのだろうな。
目を閉じ、シャワーのお湯を顔をあてた。
忘れられない姿を頭の隅へと追いやった。
いつもの冷静さを取り戻さなければ。
髪を乾かし、いつものように前髪をあげてセットする。
スーツを身に付ければ、どこからどうみても『社長』だ。
インターホンが鳴り、ドアを開ける。
入ってきたのは竜江だった。
「冬悟さん!おはようございますっ!」
朝から威勢がよすぎる。
「静かにしろ。羽花が眠ってる」
よりにもよって、今日の朝は竜江かよ。
仙崎は車で待っているのか。
ネクタイを締め、シャツのボタンをとめた。
「行くぞ」
「あれ?羽花さんは?」
「今日は休ませる」
「あー、もしかして!とうとうヤッちゃいました?」
だから、うるさいんだよ、お前は!
イラッとして竜江の横を通りすぎる瞬間、足をひっかけて体をすくいあげ、床に転がした。
「うわっ!」
すてんっと軽い音をたて転倒し、仰向けになる竜江を冷ややかに見下ろした。
「静かにしろと言っただろうが。とっとと外に出ろ」
不意打ちだったにも関わらず、すぐに受け身をとれる勘の良さはさすが竜江だ。
両手で口をおさえ、こくこくと竜江は首を縦に振った。
カードキーを手にし、鍵をかけて外に出る。
羽花に鍵は渡していない。
矢郷玄馬がまだ羽花を諦めていないからだ。
しつこい男だ。
あんな奴に指一本触れさせてたまるか。
やり方が姑息なんだよ。
自分の妹を差し向けやがって。
俺がお前の妹で我慢できると思ってんのか?
クソが。
おかげで羽花にいらぬ不安を抱かせた。
礼華を俺の婚約者にしたのも全部、玄馬が仕向けたことだ。
たしかに礼華と俺が結婚すれば、矢郷と嶋倉の関係はこれ以上、悪くなることはない。
だが―――
「面白くねぇな」
「冬悟さん。凶悪な目付きになってますよ。世間の平穏のためにもメガネをかけといてください」
竜江がすっとメガネを差し出した。
「うるせえよ」
メガネを受け取るとマンションのドアを見た。
ここに怪しい人間は一切入れないが―――
「竜江。誰も近寄れないように見張りをつけとけよ」
「手配済みっす!」
すでに強面な連中を数人、廊下前に待機させていた。
手際がいい。
車には仙崎が待機している。
乗るなり、俺は言った。
「婚姻届を出す。その後、会社に向かってくれ」
わずかに二人は驚いたものの、祝う気持ちあるらしく、頭を下げた。
「冬悟さん。おめでとうございます」
「とうとうですかっ!おめでとうございます!」
「反対しないんだな」
ふっと笑うと二人は苦笑した。
「反対したところで冬悟さんの考えは変わらないでしょう」
「反対して殺されたくないんで」
「まあな」
「否定してくださいよっー!」
するわけがない。
邪魔する奴は全部ぶっ潰す。
そう決めてるんだよ、こっちはな。
「それで最後までヤッたんですか?」
竜江がにこにことした顔で『おめでとうございます』の言葉を準備している。
だが、俺の答えは残念ながら違う。
「最後までしなかった」
「ふへっ!?どこか具合でも悪いんですか!?」
「変な声出すんじゃねえよ。俺は至って健康だ」
「いやだって、ほら……えぇー!?」
黙ってハンドルを握っていた仙崎にも動揺が見られ、わずかだが車体が左右に揺れた。
「大事にしたい」
急ブレーキに竜江がゴツッと窓に頭をぶつけ、仙崎はすみません!と謝罪した。
「やっぱりどっか悪いんじゃ……」
正常だと何度言えばいいんだ?
めんどくせぇなと思いながら、窓の外見た。
マンション横の公園を通り過ぎる。
朝早いせいか、誰の姿もなかった。
羽花は今頃、目が覚めた頃だろうか。
スマホが鳴った。
相手は『柳屋』だ。
矢郷玄馬の次は父親か。
メガネをはずし、スマホ画面を見る。
「わっるい顔してますねぇー」
前の席から竜江がこっちをのぞく。
「まぁな」
「どうします?さすがに父親に脅しも誤魔化しもきかないっしょ?」
「正々堂々いただくに決まっているだろう」
指で羽花が外した嶋倉の代紋を弾いて宙に浮かせ、それを手の中につかみ取る。
羽花は俺の手の内。
俺から誰も彼女を奪えない。
それをわからせてやる―――
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