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本編
9 二人
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朝―――ぼうっとしながら起き上がった。
私の朝は早い。
父や職人さん達があんこを早い時間から炊き始めるから、いつの間にか私も早起きになってしまった。
朝食の賄いを作るのは私の仕事だった。
カーテンの隙間から差し込むのは薄暗い光だけ。
眠い目をこすり、そっとベッドから抜け出した。
さすがにこのパジャマは恥ずかしいし、クローゼットルームでなにかないか探していると私が好きそうなリネンワンピースが見つかり、それにエプロンをしてスカーフを三角巾かわりにした。
「うん。これでいいわね」
いそいそとキッチンに入ると冷蔵庫にはトマトとレタス、卵やハム、チーズなどの一般的な食材が入っていたその時―――
「羽花さん早いですね」
「えっ!?あれっ?」
リビングから冬悟さんが現れた。
起きてたの?
すでにメガネをかけて、髪を整えていて、私のほうがむしろ寝起きのような顔をしているくらいだった。
「冬悟さん、ベッドで眠らなかったんですか?」
「さすがに眠れませんよ」
冬悟さんが微笑んだ。
私だけが眠れないわけじゃなかったんだ―――って私は眠ってしまったけど。
私のほうが図太いみたいで恥ずかしい。
みたいって、そうなんだけど……
「冬悟さん。今、コーヒーをいれますね」
「ありがとう」
「いいえっ!仕事の時間まで休んでいてください」
しっかりベッドで眠ってしまった後ろめたさから、声が大きくなってしまった。
こうなったら、『彼女』として素敵な朝食を用意してみせる!
ケチャップ、マヨネーズ、砂糖醤油を少々加えて、朝だからニンニクはソースに入れない。
ピーマンはなかったから、代わりにアボカド。
玉ねぎは薄くスライスしておいて、塩コショウをしてしんなりさせておく。
食パンに合わせたソースをぬり、ハムと玉ねぎアボカドをのせてさいごにとろけるチーズをかければ、簡単ピザトーストのできあがりっ!
そして、冷凍庫にあったブルーベリーでブルーベリーとバナナのフルーツヨーグルトをデザートにつけた。
「冬悟さん、朝食できましたっ」
並んだ朝食に冬悟さんは目を細めて嬉しそうに笑ってくれた。
これだけでもうご飯三杯はいただけてしまうかもしれない。
神様、ありがとうございます。
朝から、眼福でした。
そう心の中でつぶやいた。
「羽花さん、料理上手ですね」
「職人さん達の賄いを作っていたので、自然に覚えてしまって」
「偉いですよね、羽花さんは昔から」
昔から―――という部分が少し気になったけど、冬悟さんに褒められて嬉しくなった。
偉いね、なんて職人さん達からしか言われたことない。
父は口数が少ない方だったし、継母は私が家事をしたり店の手伝いをすることは当たり前だって思われていたから。
こんなふうに食事を作っただけで、すごく喜ばれることがあるんだって初めて知った。
「どうぞっ!召し上がってください」
「羽花さんも」
「はい」
二人でダイニングの椅子に座って向かい合わせで朝食を食べた。
これが恋人同士の朝ってかんじなのかな!?
わからないけど、幸せなことには間違いない。
「今日から羽花さんも私と一緒に会社に出勤してもらいますね」
「一緒にですか!?」
「矢郷組がなにをしてくるかわかりません。目の届くところに羽花さんがいないと心配ですから」
「は、はい。そうですよね!それじゃあ、私、冬悟さんのお仕事のお手伝いをします」
「社長室にいるだけでかまいませんよ」
「いいえ。なにかしてないと落ち着きませんから。簡単なことしかできませんけど、ご迷惑じゃなければ……」
「迷惑なんてことはありません」
なんて優しい。
冬悟さんの柔らかな口調に癒される。
和菓子屋でしか働いたことがないから、役に立つかどうかはわからないけど、ただ座っているなんて申し訳なくてそんなことできない。
それにタダで守ってもらうなんてとんでもないことだった。
三千万円も冬悟さんから借りてるのに……
「あの、父や妹はどうしてますか?」
「昨日、私の部下から連絡があり、柳屋のほうは無事だそうですよ」
「そうですか!よかったー!」
「こちらから、見張りを送り込みますから羽花さんはご心配なく」
「そこまでしてもらうなんて悪いです……」
「相手はヤクザです。徹底的に潰しておかなくては何をしてくるかわかりませんよ?」
「潰すだなんて。冬悟さん、危なくないですか?」
「なれてますから」
さらっと言われて、そんなものなのかなと思ってしまった。
なんの違和感もなく。
二人でコーヒーを飲みながら、朝を迎える。
なんて素敵な恋人同士の朝。
うっとりしていると、玄関のインターホンが鳴った。
「迎えに来ましたぁー!」
冬悟さんがすっと目を細めた。
「早すぎる。わざとだな」
「え?」
わざとって何がわざとなんだろう。
私がその表情を見ると、さっと冬悟さんが微笑んだ。
「私の部下の竜江と仙崎です。羽花さんにあらためて紹介しますね」
二人の分もコーヒーを入れた。
招き入れられた二人は私をジッと見た。
「おはようござます。コーヒーをどうぞ」
「いただきます」
「あざっす!」
大きな声。
しかも、恭しくコーヒーカップを両手で持ち上げている。
な、なんで?
はぁっと冬悟さんが二人を見てため息をついている。
「羽花さん。このヒゲを生やした男が仙崎。その隣の若い男が竜江。なんでも二人に言いつけてください」
「は、はあ……」
言いつけるってお願いするってこと?
なんだか、独特な言い回しだなぁ。
ぼんやりとそんなことを思いながら、ならんだ二人を見た。
ボディガードのようにスーツをビシッと来た仙崎さん。
スーツの下にパーカーを着ている学生のような竜江さん。
対照的だけど、腕っぷしの強さは昨日で十分証明されている。
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると二人は私よりも深々と頭を下げた。
礼儀正しい人達なんだなと思いながら、冬悟さんに言った。
「私、会社に行く準備をしてきますね」
「はい」
にっこりと冬悟さんは微笑んだ。
二人はなぜかソファーに座らず床に正座していた。
なぜ正座!?
それも床。
部下だから?
もやもやしながら、クローゼットルームに入っていた。
その謎を私の知識では解明できぬまま。
私の朝は早い。
父や職人さん達があんこを早い時間から炊き始めるから、いつの間にか私も早起きになってしまった。
朝食の賄いを作るのは私の仕事だった。
カーテンの隙間から差し込むのは薄暗い光だけ。
眠い目をこすり、そっとベッドから抜け出した。
さすがにこのパジャマは恥ずかしいし、クローゼットルームでなにかないか探していると私が好きそうなリネンワンピースが見つかり、それにエプロンをしてスカーフを三角巾かわりにした。
「うん。これでいいわね」
いそいそとキッチンに入ると冷蔵庫にはトマトとレタス、卵やハム、チーズなどの一般的な食材が入っていたその時―――
「羽花さん早いですね」
「えっ!?あれっ?」
リビングから冬悟さんが現れた。
起きてたの?
すでにメガネをかけて、髪を整えていて、私のほうがむしろ寝起きのような顔をしているくらいだった。
「冬悟さん、ベッドで眠らなかったんですか?」
「さすがに眠れませんよ」
冬悟さんが微笑んだ。
私だけが眠れないわけじゃなかったんだ―――って私は眠ってしまったけど。
私のほうが図太いみたいで恥ずかしい。
みたいって、そうなんだけど……
「冬悟さん。今、コーヒーをいれますね」
「ありがとう」
「いいえっ!仕事の時間まで休んでいてください」
しっかりベッドで眠ってしまった後ろめたさから、声が大きくなってしまった。
こうなったら、『彼女』として素敵な朝食を用意してみせる!
ケチャップ、マヨネーズ、砂糖醤油を少々加えて、朝だからニンニクはソースに入れない。
ピーマンはなかったから、代わりにアボカド。
玉ねぎは薄くスライスしておいて、塩コショウをしてしんなりさせておく。
食パンに合わせたソースをぬり、ハムと玉ねぎアボカドをのせてさいごにとろけるチーズをかければ、簡単ピザトーストのできあがりっ!
そして、冷凍庫にあったブルーベリーでブルーベリーとバナナのフルーツヨーグルトをデザートにつけた。
「冬悟さん、朝食できましたっ」
並んだ朝食に冬悟さんは目を細めて嬉しそうに笑ってくれた。
これだけでもうご飯三杯はいただけてしまうかもしれない。
神様、ありがとうございます。
朝から、眼福でした。
そう心の中でつぶやいた。
「羽花さん、料理上手ですね」
「職人さん達の賄いを作っていたので、自然に覚えてしまって」
「偉いですよね、羽花さんは昔から」
昔から―――という部分が少し気になったけど、冬悟さんに褒められて嬉しくなった。
偉いね、なんて職人さん達からしか言われたことない。
父は口数が少ない方だったし、継母は私が家事をしたり店の手伝いをすることは当たり前だって思われていたから。
こんなふうに食事を作っただけで、すごく喜ばれることがあるんだって初めて知った。
「どうぞっ!召し上がってください」
「羽花さんも」
「はい」
二人でダイニングの椅子に座って向かい合わせで朝食を食べた。
これが恋人同士の朝ってかんじなのかな!?
わからないけど、幸せなことには間違いない。
「今日から羽花さんも私と一緒に会社に出勤してもらいますね」
「一緒にですか!?」
「矢郷組がなにをしてくるかわかりません。目の届くところに羽花さんがいないと心配ですから」
「は、はい。そうですよね!それじゃあ、私、冬悟さんのお仕事のお手伝いをします」
「社長室にいるだけでかまいませんよ」
「いいえ。なにかしてないと落ち着きませんから。簡単なことしかできませんけど、ご迷惑じゃなければ……」
「迷惑なんてことはありません」
なんて優しい。
冬悟さんの柔らかな口調に癒される。
和菓子屋でしか働いたことがないから、役に立つかどうかはわからないけど、ただ座っているなんて申し訳なくてそんなことできない。
それにタダで守ってもらうなんてとんでもないことだった。
三千万円も冬悟さんから借りてるのに……
「あの、父や妹はどうしてますか?」
「昨日、私の部下から連絡があり、柳屋のほうは無事だそうですよ」
「そうですか!よかったー!」
「こちらから、見張りを送り込みますから羽花さんはご心配なく」
「そこまでしてもらうなんて悪いです……」
「相手はヤクザです。徹底的に潰しておかなくては何をしてくるかわかりませんよ?」
「潰すだなんて。冬悟さん、危なくないですか?」
「なれてますから」
さらっと言われて、そんなものなのかなと思ってしまった。
なんの違和感もなく。
二人でコーヒーを飲みながら、朝を迎える。
なんて素敵な恋人同士の朝。
うっとりしていると、玄関のインターホンが鳴った。
「迎えに来ましたぁー!」
冬悟さんがすっと目を細めた。
「早すぎる。わざとだな」
「え?」
わざとって何がわざとなんだろう。
私がその表情を見ると、さっと冬悟さんが微笑んだ。
「私の部下の竜江と仙崎です。羽花さんにあらためて紹介しますね」
二人の分もコーヒーを入れた。
招き入れられた二人は私をジッと見た。
「おはようござます。コーヒーをどうぞ」
「いただきます」
「あざっす!」
大きな声。
しかも、恭しくコーヒーカップを両手で持ち上げている。
な、なんで?
はぁっと冬悟さんが二人を見てため息をついている。
「羽花さん。このヒゲを生やした男が仙崎。その隣の若い男が竜江。なんでも二人に言いつけてください」
「は、はあ……」
言いつけるってお願いするってこと?
なんだか、独特な言い回しだなぁ。
ぼんやりとそんなことを思いながら、ならんだ二人を見た。
ボディガードのようにスーツをビシッと来た仙崎さん。
スーツの下にパーカーを着ている学生のような竜江さん。
対照的だけど、腕っぷしの強さは昨日で十分証明されている。
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると二人は私よりも深々と頭を下げた。
礼儀正しい人達なんだなと思いながら、冬悟さんに言った。
「私、会社に行く準備をしてきますね」
「はい」
にっこりと冬悟さんは微笑んだ。
二人はなぜかソファーに座らず床に正座していた。
なぜ正座!?
それも床。
部下だから?
もやもやしながら、クローゼットルームに入っていた。
その謎を私の知識では解明できぬまま。
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