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28 私はあなたのそばを離れません ※

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 目を閉じていてもわかる。
 さらさらと優しい音をたて水路の水が流れ、ここがレムナーク王国だと私に教えてくれる。
 水が豊富なだけあって少し手入れしただけで、水路には花咲き、緑の葉が浮かび、階段や石組みの隙間には花の蕾が顔を出していた。
 もっと季節が進めば、庭はたくさんの美しい花に包まれる―――そんな想像をしながら、私は柔らかな寝台に寝返りを打った。
 王宮に帰って来てから、私の体は疲れ切っていたらしく、たくさん眠った。どれだけ眠ったからわからないけれど、眠りから目覚めると食事が用意されてあり、それを食べ終わるとまた眠る。
 数日間、その繰り返しだった。
 寝返りを打った先にあったのは暖かな体温で、そのぬくもりに気が付いて目が覚めた。
 窓から漏れる日差しが明るく、そろそろ起きようとしたけれど、私の隣にギデオン様がいて、つい顔を寄せてしまった―――ところまではよかった。

「捕まえた」

 ギュっと私をギデオン様は抱きしめたかと思うと、その手には銀色に光るものを構えていた。

「そ、そんな寝起きから……」
「寝起きだからこそだろう?」

 おとなしくしろ、と私の体を押さえつけた。
 ギデオン様、乱暴すぎますっ。
 抵抗を許さず、私の体の隅々を調べ尽くす。

「こ、こんなところまで……駄目ですっ……」
「なに言ってるんだ。ぐちゃぐちゃじゃないか」
「それはっ……! や、優しくしてくださいっ」
「じゅうぶん優しくしているだろう?」
「だ、だって……」

 シュッと白い毛並みを丁寧にブラッシングした。
 ブラッシングされると毛並みが浮き上がり、ふわふわのサラサラにされてしまう。
 最近、ブラッシングをサボっていたせいか、ギデオン様が満足できる撫で心地ではなかったらしい。
 念入りなブラッシングによって、艶のある毛となり、優しく私の体を抱きかかえた。

「素晴らしい毛並みになったぞ」
「……ありがとうございます」

 完璧主義なギデオン様のブラッシングは足のつま先まで抜かりがない。
 ううっ……!
 私の体を隅々まで嬲られてしまった。
 その挙句、自分の仕事ぶりに満足したのか、ふわふわの毛にキスを落していく。

「よし。可愛くなったな」
「あっ、だ、だめです。ギデオン様っ!」

 そんなにキスされると、幸せすぎて人間の姿に戻ってしまう。
 案の定、人間の姿になった私を見てギデオン様は笑った。
 それは心からの笑み―――私がギデオン様を笑顔にさせている。
 寝台に横たえると、髪を撫でる。
 優しい手のひらに私はキスをした。
 
「お前はおねだりがうまいな」
「そっ、そうですか?」

 体を抱きかかえられ、寝台の上から身動きできなくなった私の唇に自分の唇を重ねた。
 唇を甘く食み、舌がなぞると教えられたとおりに口を開く。開かせた口からはするりと舌が入り込み、深く濃厚なキスを繰り返し、息を乱させた。
 
「んんっ……ん……う……」

 息をつく暇もいないくらいの激しいキスに肩を掴んでもがき、首を横に振った。

「ギデオン様っ……あっ……く、くるし……」
「これはお仕置きだ」
「ど、どうして……んっ……」
「勝手に俺のそばを離れたからな」
 
 解かれ、寝台に落ちていたリボンを手すると、私の手首を縛り付けた。そして、頭上に腕を高く上げさせると、身動きできないようリボンの端を頭上の真鍮へと結んだ。

「やっ、こ、こんなの……怖いからっ……」
「これくらい優しいものだ」

 首をつうっと指がなぞる。
 まさか、私に首輪をつけようと考えているとか?

「んっ……」

 声をあげ、反らした喉から鎖骨へと往復する指がこそばゆく、体を悶えさせるとギデオン様が笑った。

「自由でいさせてやりたいと思っているが、心配させるのはよくない」
「ご、ごめんなさっ……あっ……」

 指ではなく、次は舌が喉を舐めた。喉をぬめりを帯びた舌が滑り、鎖骨で止める。
 ギデオン様のつけた赤い痕が薄くなっていて、そのうっすらと残っていた赤い痕と同じ場所に濃い赤を残した。

「これからは俺の痕が消えないようにしてやる」
 
 ギデオン様は独占欲が強いと、ローナさんが言っていたけど、それを実感した。
 髪の毛一本から爪の一枚まで私はギデオン様のものなんじゃないかと、錯覚してしまうくらい丁寧に扱われる。
 ギデオン様の指が一糸纏わぬ白い肌の上を這い、体の輪郭を確かめるようにして、隅々まで見られ、探られる。

「み……見ない……で……」
「怪我は良くなったようだな」
「か、かすり、傷でしたからっ……」

 指の感触に耐えながら返事をする。
 焦らすように指は肌の上を往復し、胸の突起を弄ぶように転がしては声をあげさせた。
 少しずつ体は熱を帯び、次第に声が甘くなっていく。

「ふっ……あ、あ……ん」
「まだ少し触っただけだぞ」
「ご、ごめんなさっ……」

 指から逃れようと身を捩っても頭上高くに結ばれたリボンがそれを許してくれない。
 与えられる刺激を全部受け止めてしまう。
 なんとかして淫らな声を堪えようと唇をきつく結ぶも、舌で口がこじ開けられ、声をあげろと命じてくる。
 絡めた舌が擦りあげられて、言葉にならない声がこぼれ出た。

「あぅ……ん……んぅ……」

 口の端から零れた唾液を舐めとり、耳元でギデオン様が笑う。こそばゆい息が耳にかかり、耳の奥に息が届いて体が小さく震えた。
 敏感になっている体をギデオン様が逃すわけなかった。その体を更に追い詰め、感じさせようと、うなじから首筋へと舌が這い、震える肩を甘く噛む。

「ひっ……あっ……か、噛まないで……」

 怖い気がして、そう告げると噛み痕を舌が優しくなぞった。その舌の感触がじんっと腹の奥に痺れるような疼きを生む。

「本当に可愛いな。お前は」
「んぅ……」

 その蕩けるような声にたまらなくなって、唇をギデオン様の頬に触れさせて、キスをおねだりすると、指先が柔らかく潤み始めた場所を押し開いた。
 
「そ、そこっ……」
「もう濡れているな」

 蜜液を絡めた指が前後にゆるゆると押し付けるように動かしては声をあげさせる。ぬめる指が官能を高め、最奥からこみ上げる甘い疼きを引きずり出してくる。
 泣きたくなるような感覚に首を懸命に横に振った。
 
「ギデオン様っ……」

 もどかしい刺激に体を揺さぶった。
 優しい目でギデオン様が私を見下ろしたかと思うと、太ももに触れていた手のひらが脚を強い力で掴み、広げさせた。

「やっ……、やあっ! ギデオン様っ……、な、なにをしているんですか?」
「ここへのキスがまだだったな」
「そ、そこは嫌っ……いやぁっ……」

 脚の間に顔を埋められ、金色の髪が触れる。太ももに髪が触れるだけで、腰が浮きあがり、その刺激から逃れようと足をバタつかせたのを強い力で抑え込まれた。

「こら、暴れるな」
「は、恥ずかしい……」
「恥ずかしくないから、じっとしていろ。気持ちよくしてやるだけだから」
「あっ……」
 
 とめどなく蜜を溢れさせた蜜口に息がかかり、ひくりと震えた。
 唇が当てられただけで、じんっと頭の奥が痺れて羞恥を薄れさせていく。指とは違う舌の柔らかな感触が秘裂を割り、つぷりと淫らな水音をたて中へと入り込んだ。

「あ……ん……」

 中を蠢く舌が蜜をかき混ぜ、粘膜を擦られると甘い痺れが体を支配した。初めての感触に脚から力が抜け、痺れたようになっていく。こらえ切れない嬌声と淫らな水音が大きくなって部屋に響いた。

「んっ……ああっ、あ……あっ……」
 
 とろりとした陶酔感の中に浸り、羞恥は消されて思考は奪われた。深く貪る舌の動き追い求め、頭の中を白く染める。この上ない甘美な刺激に指先まで痺れて、力が入らなくなっていた。
 
「そっ、そこだめっ……」

 舌が敏感な場所を探り当て、そこを擦られるとなにも考えられないくらい気持ちよくて、頭がくらくらする。

「お、かしくなるか……らっ……」
「俺を欲しいと言え。もっと狂わせてやる」
「そんなのっ……こ、怖い……離れられなくなる……」

 私が自分から永遠に離れられないようにと―――それがギデオン様の私に対するお仕置きなのだと、気づいたけれど、もう体は熱く溶かされて逃げられない。
 
「俺から離れるつもりか?」

 アイスブルーの瞳が熱っぽく潤み、私を見つめていた。

「離れたくないんです……。わ、私っ……離れたくなかった」
 
 あの時の苦しみと悲しみを思い出し、涙を流すとギデオン様はするりと手首のリボンが解き、私を自由にしてくれた。
 自由になった手でギデオン様の体を抱きしめた。
 ギデオン様からは外の太陽の香りがする。暖かくて安心できる存在なのは私じゃなくて、ギデオン様のほう。

「そうか。俺もだ……」

 顔は見えなかったけれど、ギデオン様の声は優しかった。大きな手のひらが脇から、腹へと撫で、下腹部に触れる。
 とろりと蜜の滴る蜜口へ熱い切っ先が触れ、体がびくりと震えた。切っ先が触れただけで息を喘がせると、髪を撫でられ、目蓋にキスを落す。
 熱い塊で押し広げられ、少しずつ腹の奥へと埋め込んでいく。
 どろどろに溶けた中はそれを容易く迎え入れた。

「あ……んっ」

 腰を掴まれ、引き寄せられると蜜壁が擦れ、甘い声が出てしまった。

「もっと声を出せ」

 ゆっくりと抜き差しされ、物欲しげに中が蠢いた。
 私の反応を楽しむように浅く打ち付けられると、目の前がちかちかと点滅し、体が大きく仰け反った。仰け反った体を掴み、深く奥まで突き立てられると何度目かの絶頂を迎えた。

「ひっ、あぁっ……あ、あっ……」
 
 達したのを見て、激しく突き上げた。奥までかき混ぜられ、甘い快楽から苦しい快楽へと変わる頃、奥まで突き立てられた。

「あっ、あぁっ、あ……」

 内奥を突かれるたび、甘やかな疼痛に身を悶えさせると、しがみつくように抱きついていた指に力がこもり、ギデオン様の顔が僅かに歪んだ。

「ご、めんなさっ……傷がっ……」
「……っ! いい……。お前には許す」

 頭を撫でられ、耳に熱い吐息がかかる。
 
「ギデオン様……」
「なぜだろうな。全部許してしまう」
 
 最初から、お前はそうだった、とギデオン様は小さい声で囁いた。
 その言葉が嬉しくて、ギデオン様の唇にキスをする。

「おい」
「ちょ、調子に乗りましたっ……」
「そうじゃない。煽るな」
「んっ……あ……」

 蜜壁に焼き付くような熱さを感じ、体がびくっと震えた。再び中で蠢いたそれはみっちりと腹の中に圧迫感を生み苦しい。隙間なく埋め尽くされ、身を悶えさせていると中を擦られ、声を出せとばかりに喘がせた。

「あんっ、あ……あぁ」

 下を埋められたと思ったら、次は唇を塞がれた。
 なぞる舌に応じて舌を絡めると、目を細め、さらに深くまで唇を貪られる。
 口内の奥まで舌が押し込まれ、息苦しさを感じながらも、浅く打ち付けらえる下肢は痺れたように甘い。もどかしくて、自ら腰を寄せると、ギデオン様はそれに気づいたのか、奥深くまで強く打ち付けた。
 
「ふ、ふぁ……あぁ……んんっ……!」

 目の前がちかちかとして、打ち付ける腰の動きについていけない。すでに体からは力が抜け、目を閉じるとギデオン様が体を揺さぶった。

「こら、まだだぞ」
「ゆ、揺さぶられたらっ……またっ……あぁっ」

 腹の奥に焼き付くような熱さを感じ、再び体が熱を持つ。落ちかけた意識を強制的に目覚めさせ、ガツガツと激しく律動を繰り返し、何度目かの絶頂を半ば強制的に味わった。
 どくどくと熱いものが中へ流れ込む感触に身を震わせ、口を開けたままでいると、その唇を塞がれ、ぐぐっと最奥まで熱いものが押し込まれた。

「ひっ……あ、あぁ……」

 刺激に耐え切れず、少し待ってというように肩を掴み、首を横に振り、荒い息を整えていると上からキスの雨を降らせてくる。
 絶え間ない激しい愛撫と打ち付ける腰の動きに甘く泣いた。

「あっ、あっ……だ、だめっ……ギデオン様っ……」

 キスだけでもどろどろに蕩けた頭の中は次の快楽を追ってしまう。
 中に入って抜かれないまま、再び体を激しく揺さぶられる。

「エルヴィーラ。何度でも達していいぞ」
「ひあ……お、おかしくなるのっ……」

 ぎゅううっとギデオン様を掴んだ。
 ギデオン様も私を強く抱きしめる。

「あっ……あぁっ……す、好き……ギデオン様のことがっ……」

 肌と肌が一番近くで触れ合い繋がった―――こぼれた心の声にギデオン様が答える。

「エルヴィーラ、誰よりもお前が大切だ。愛している」
 
 その言葉を体にも刻むように何度も私の体を求め、抱き続け、私が目覚めて部屋から出たと外の人が知るのは数日後のこととなった―――
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