5 / 31
5 私の欲しいもの (麗奈 視点)
しおりを挟む
お父様が亡くなった。
多額の借金を残して。
莉世お姉様はお父様の秘書をしていたのに気づかなかったみたい。
ほんっっと、昔からトロくてぼんやりしていて、バカなんだから。
そのくせ、お父様に気に入られていて、お父様はお姉様によく話しかけていた。
私がお父様に話しかけても生返事ばかりでまともに話を聞いてくれたことはないのに。
なんなのよ。この扱いの差は!
極めつけは婚約者だった。
事もあろうか、露原聡さんを莉世お姉様の婚約者にお父様は選んだのた。
そして、私にはあの変人で成金の時任朗久を与えた。
どうして、私の相手があんな浮浪者みたいな男なのよ!
その点、聡さんは次男でいい大学をお出になられていて、商社にお勤めで家柄もよくて、私だけじゃなく、友人達も狙っていたわ。
それをなにもしないお姉様が手に入れた―――そんなの絶対に許さない。
しかも、婚約が決まってからもお姉様は仕事ばかりで聡さんを放置状態。
聡さんが食事に誘っても残業があると言って断ってしまうし、旅行に誘えば、海外出張と言って断っていたのには呆れたわ。
「麗奈、莉世さんの様子はどうだった?結婚式は無事に終わったのか?」
結婚式が終わり、自宅に帰ってしばらくすると、聡さんが訪ねてきた。
元婚約者のお姉様が取り乱してないか、知りたかったみたい。
いっそ、みっともなく泣いてくれたら、もっと面白かったのに
可愛げがないったら。
「それがね、すっごくおかしいのよ。結婚相手の時任様が遅刻してきたの。しかも、髪はボサボサで眼鏡をかけていて、だらしないのよ。噂通りの非常識な人だったわ」
「それはひどいな」
時任様の姿を想像し、聡さんは笑った。
そうよね。それが普通の反応よ。
「私も友達も大爆笑よ。お姉様は気丈にふるまっていたけど、内心はショックだったと思うわ」
「可哀想に」
「あら。私が結婚すれば、よかったっていうの?」
「いや、そうじゃないけれど」
聡さんは笑った。
「明日から、聡さんは絹山百貨店の社長よ。頑張ってね」
「ああ。莉世さんには悪いけど、僕のやることにあまり口出しされたくはないからね。絹山社長に莉世さんはいろいろ注文をつけていたみたいだし。そういうのはちょっと」
「お姉様は出しゃばりなところがあるものね」
聡さんは商社に勤めているけど、社長になるのと一介のサラリーマンじゃ全然違う。
歴史と伝統ある絹山の百貨店の社長よ?
嬉しいに決まってるわ。
「頑張るよ」
「頑張るのはいいけれど、私のことも忘れないでよ。聡さん?」
「わかっているよ」
聡さんの膝の上に乗り、首に腕を絡めてキスをした。
こんなこと、お姉様は絶対にできないでしょ。
「ね、聡さん。お姉様の様子を見てくるわね」
「それがいいね。百貨店に近寄らせないようにしてくれよ。仕事の邪魔をされたくない」
「任せておいて」
素敵な婚約者と結婚できず、百貨店の仕事も失って、実家からは追い出されて、何もかも失くしてしまったお姉様が一人寂しく打ちのめされている姿をこの目に焼き付けてくるつもりだった。
多額の借金を残して。
莉世お姉様はお父様の秘書をしていたのに気づかなかったみたい。
ほんっっと、昔からトロくてぼんやりしていて、バカなんだから。
そのくせ、お父様に気に入られていて、お父様はお姉様によく話しかけていた。
私がお父様に話しかけても生返事ばかりでまともに話を聞いてくれたことはないのに。
なんなのよ。この扱いの差は!
極めつけは婚約者だった。
事もあろうか、露原聡さんを莉世お姉様の婚約者にお父様は選んだのた。
そして、私にはあの変人で成金の時任朗久を与えた。
どうして、私の相手があんな浮浪者みたいな男なのよ!
その点、聡さんは次男でいい大学をお出になられていて、商社にお勤めで家柄もよくて、私だけじゃなく、友人達も狙っていたわ。
それをなにもしないお姉様が手に入れた―――そんなの絶対に許さない。
しかも、婚約が決まってからもお姉様は仕事ばかりで聡さんを放置状態。
聡さんが食事に誘っても残業があると言って断ってしまうし、旅行に誘えば、海外出張と言って断っていたのには呆れたわ。
「麗奈、莉世さんの様子はどうだった?結婚式は無事に終わったのか?」
結婚式が終わり、自宅に帰ってしばらくすると、聡さんが訪ねてきた。
元婚約者のお姉様が取り乱してないか、知りたかったみたい。
いっそ、みっともなく泣いてくれたら、もっと面白かったのに
可愛げがないったら。
「それがね、すっごくおかしいのよ。結婚相手の時任様が遅刻してきたの。しかも、髪はボサボサで眼鏡をかけていて、だらしないのよ。噂通りの非常識な人だったわ」
「それはひどいな」
時任様の姿を想像し、聡さんは笑った。
そうよね。それが普通の反応よ。
「私も友達も大爆笑よ。お姉様は気丈にふるまっていたけど、内心はショックだったと思うわ」
「可哀想に」
「あら。私が結婚すれば、よかったっていうの?」
「いや、そうじゃないけれど」
聡さんは笑った。
「明日から、聡さんは絹山百貨店の社長よ。頑張ってね」
「ああ。莉世さんには悪いけど、僕のやることにあまり口出しされたくはないからね。絹山社長に莉世さんはいろいろ注文をつけていたみたいだし。そういうのはちょっと」
「お姉様は出しゃばりなところがあるものね」
聡さんは商社に勤めているけど、社長になるのと一介のサラリーマンじゃ全然違う。
歴史と伝統ある絹山の百貨店の社長よ?
嬉しいに決まってるわ。
「頑張るよ」
「頑張るのはいいけれど、私のことも忘れないでよ。聡さん?」
「わかっているよ」
聡さんの膝の上に乗り、首に腕を絡めてキスをした。
こんなこと、お姉様は絶対にできないでしょ。
「ね、聡さん。お姉様の様子を見てくるわね」
「それがいいね。百貨店に近寄らせないようにしてくれよ。仕事の邪魔をされたくない」
「任せておいて」
素敵な婚約者と結婚できず、百貨店の仕事も失って、実家からは追い出されて、何もかも失くしてしまったお姉様が一人寂しく打ちのめされている姿をこの目に焼き付けてくるつもりだった。
57
お気に入りに追加
2,197
あなたにおすすめの小説
再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。
2024年4月21日 公開
2024年4月21日 完結
☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる