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13 夫婦の朝?

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朝日が眩しい……。
外からは日差しが降り注ぎ、目を焼いた。
ううっ……まさかの徹夜。

「なかなか面白かった!」

ゲーム機からはエンディング曲が流れている。
天清たかきよさんは『ときラブ』のキャラクター全員を攻略した。
それも的確に素早く選択肢を選んで。
攻略本なんて読んでないのにどうして!?というくらいバッドエンドにはいかない。
なんて見どころのある人だろう。
乙女ゲームの天才だろうか。

「なるほど。月子の好きなタイプは王子みたいなかんじなんだなー」

「分析されると恥ずかしいですけど、そうです(きっぱり)」

「うーん、王子キャラは俺に難しいな」

「天清さんはそのままでいいです。目指さなくても―――」

「目指さなくても?」

「―――っ!?なんでもないです!」

今、私は何を言おうとしたの?
徹夜明けで頭が動いてないせいで、うっかり乙女ゲームの主人公ヒロインみたいなセリフを口にするところだった。
ぼすぼすっと枕を頭に叩きつけている私を見ながら、天清さんはあくびをした。

「うー、さすがに眠いな」

「す、すみません。徹夜はきつかったですよね。つい夢中になって語ってしまいました」

「いいよ。月子が嬉しそうな顔をしていたから、楽しかった」

キラキラとした笑顔で言われ、危うく倒れかけた。
ま、また、そんな直球で!
にやけた顔を見られたくなくて、枕で顔を隠した。
天清さんはごろごろと布団に横になり、目を閉じた。

「今日は土曜日だし、このまま寝よう」

「そうですね……」

確かに私も体力の限界だ。
一晩中、『ときラブ』のいいところを語っていたのだから、眠くてしかたがない。
天清さんは優しくて、真剣に聞いてくれた。
もう天清さんは目を閉じ、眠っていた。
いつも眠るのが早いけど、その方が私も安心して眠れる。

「ありがとうございます。天清さん」

そっとお礼を言って、お辞儀し、横になった。
嫌われずに済んでほっとしたのと疲れていたせいで、何も考えずにそのまま一緒に眠ってしまった―――


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「天清さん、起きてらっしゃいますか?」

部屋の戸をノックする音に目が覚めた。
すでにお昼過ぎ。

「起きてる。遠堂えんどうなにかあったか?」

「失礼してもよろしいですか」

「いいぞ」

部屋の戸が開く音がして、さすがの私も目を開けた。
驚いた顔をした遠堂さんと目があう。
え?どうして、と思っていると私は天清さんの腕の中で眠り、なぜか天清さんは上半身裸だった―――
叫びそうになったのを慌てて手で口を押えた。
天清さんは私が起きたのに気づき、ばさっと布団を頭からかけた。

「あ、寝起き姿を遠堂に見られると嫌だよな。悪い」

そうじゃなくっっ!!
私が驚いたのは、なぜ上半身裸なんですかって話ですよ!?

「天清さん、夫婦仲がよろしいようで何よりです」

「うん。仲いいよ。それで用事って?」

「来週の新崎家あらさきけの会食の出席の是非を聞いていませんでしたので、どうなさるかお聞きしたかったのですが。新崎家から返事をするよう催促されました」

「あー、出席する」

「月子さんもぜひにと」

「月子も出席で」

「承知しました」

遠堂さんがどんな顔をしていたか、見えなかったけど、わずかに声が動揺しているような気がしたのは私の気のせいじゃないはず。
わ、私だって、こ、こんな!!!
ちらりと見た天清さんの体は筋肉質で引き締まっていた。
肌も綺麗でってしっかり見すぎでしょ!?私!!
ばんばんばんっと枕を叩いていると、天清さんが言った。

「まだ眠いけど、お腹空いたし、朝昼ご飯食べようか」

「……はい」

私は新崎家の会食より、天清さんの裸に気をとられ、会食の話を聞き逃してしまっていた。
天清さんが先に部屋を出て行くと、ようやく平常心を取り戻すことができ、服を選んで着替えた。

「救心飲まないとだめかもしれない……」

最近、胸の動悸がひどすぎる。
このままじゃ心臓がもたない。
そう思いながら、起きていくとお手伝いさんが作ってくれたご飯が並んでいた。
そして、父がいた―――嬉しそうな顔をして。

「いやぁ!どうしたことかと思ったが、うまくいっているみたいだな!天清君!」

「月子が俺を受け入れてくれるおかげです」

「そうか!そうかっ!」

感動のあまりか、父は目に涙を浮かべていた。

「この子は内気でいったいどうなることかと思っていたが、素晴らしい婿をもらったおかげで人並みに暮らしていけそうで安心したよ……」

父はぎゅっと天清さんの手を握った。

「寝不足かね?いや、それもしかたないな!新婚だ。励んでくれ!おっと!邪魔になると困るな!月子、天清さんのいうことをしっかり聞いて、逃がさないようにな!!」

なにを言っているのだろう。
盛大な勘違いをしているような気がする。
けれど、父を止めることはできず、まるで壊れたラジオのように喋り倒すといなくなってしまったのだった。

「孫の顔を見る日も近いか」

などと、言い捨てて。
―――そんな日はこないと思う。
今はきっと物珍しいだけ。
私はツチノコみたいな存在で天清さんが私に飽きたら、このゲームは終わる。
そう思って天清さんを見るとまた胸が苦しくなった。
この胸の苦しさの意味を知っている。
けれど、それを口出すことはできなかった。
まだ―――
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