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番外編
実家 その2【直真 視点】
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夕飯が終わると、ホッとしたように有里が俺の手を握った。
「帰りましょう!!!早く!」
せっかく実家にきたっていうのに慌てなくてもいいだろ?と思いながら。俺は席を立った。
そんなに帰りたいのか?
それが少し嬉しかった。
普通は実家の方がいいもんだろうと思っていると―――
「待ちな。有里」
お義母さんの制止の声に有里が『ううっ』とうめいた。
「これ、持って行きなさい」
「い、いりません!絶対に!」
「わざと忘れても伊吹に届けさせるからね!」
「有里、諦めろ。木村家総司令官の命令には逆らうな」
伊吹は紙袋を有里に差し出した。
「また青汁じゃないですかあああ」
「ありがとうございます。有里にちゃんと青汁を飲ませますから」
「直真さんは本当にできた旦那様だねえ」
今回もお義母さんの称賛を受けて、木村家の夕食会は無事終了した。
有里の方は紙袋を見て『こんなにたくさん青汁が……』と半泣きだったが。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
マンションに帰ると有里は青汁の箱を並べて呻いていた。
それが嫌なら、観念して野菜を食えよ。
俺の皿に黙って野菜を入れやがって。
「野菜は好きなんですけどねー」
「なら、食えよ」
「一日の許容量があるんですよ。私の体には。それを守っています!」
「お前が守るべきなのは野菜の一日の摂取基準だろ!」
まともに相手をすると疲れるな。
水でも飲むかと冷蔵庫を開けるとコーラやジンジャーエール、サイダーが並んでいた。
ご当地サイダーには、わざわざ『有里』と名前が書いてある。
―――飲まねえよ。
「お前の大好きなコーラにでも混ぜて飲めよ」
皮肉のつもりで言うと、有里は真顔で答えた。
「神聖なコーラに毒を入れないでください」
「なにが毒だ!お前の体を心配して言ってるんだろうが!」
まったく、こいつは!
青汁の袋を破り、リンゴジュースに溶かした。
「直真さんも飲むんですか?いい心がけですねー」
なにがいい心がけだ。
減ってよかったと顔に書いてある。
青汁を一口飲んだが、俺は大丈夫だった。
まずくはない。
「有里」
「なんですか?おいしいですか?」
「ああ」
にっこり笑うと有里は何かを察知したのか『えっ!』と言って後ずさったのを見逃さず、有里の腕をつかむと抱き寄せた。
「ま、ま、待ってください!」
口に一口含むと唇を重ね、有里に飲ませると、拒めずに飲み込んだ。
「まだあるぞ」
黙らせるのに二口目も飲ませた。
有里は顔を赤らめ、軽く咳き込むと涙目で俺を見た。
「うまいか?」
「ひ、ひどっ!」
『ほら、飲めよ』と差し出すと、有里は慌ててコップを奪い取り、悔しそうに青汁を飲んでいた。
最初から黙って、飲んでおけよ。
お前の体を心配してくれているんだろうが―――後から後悔しても遅い。
一瞬、母の顔が浮かんだ。
あの人は芯は強いが、どこか儚げな人だった。
母になにもできず、俺は―――ドンッと体当たりされた。
「有里、お前」
「飲みましたよ」
ほらっと空のコップを見せた。
仕返しか?
そう思っていると、有里からキスをされた。
「これが本当のキスってやつですよ」
「どこがだ」
本当のキスはお前からやるにはまだ早い。
けど、嫌じゃない。
有里だけは―――な。
「帰りましょう!!!早く!」
せっかく実家にきたっていうのに慌てなくてもいいだろ?と思いながら。俺は席を立った。
そんなに帰りたいのか?
それが少し嬉しかった。
普通は実家の方がいいもんだろうと思っていると―――
「待ちな。有里」
お義母さんの制止の声に有里が『ううっ』とうめいた。
「これ、持って行きなさい」
「い、いりません!絶対に!」
「わざと忘れても伊吹に届けさせるからね!」
「有里、諦めろ。木村家総司令官の命令には逆らうな」
伊吹は紙袋を有里に差し出した。
「また青汁じゃないですかあああ」
「ありがとうございます。有里にちゃんと青汁を飲ませますから」
「直真さんは本当にできた旦那様だねえ」
今回もお義母さんの称賛を受けて、木村家の夕食会は無事終了した。
有里の方は紙袋を見て『こんなにたくさん青汁が……』と半泣きだったが。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
マンションに帰ると有里は青汁の箱を並べて呻いていた。
それが嫌なら、観念して野菜を食えよ。
俺の皿に黙って野菜を入れやがって。
「野菜は好きなんですけどねー」
「なら、食えよ」
「一日の許容量があるんですよ。私の体には。それを守っています!」
「お前が守るべきなのは野菜の一日の摂取基準だろ!」
まともに相手をすると疲れるな。
水でも飲むかと冷蔵庫を開けるとコーラやジンジャーエール、サイダーが並んでいた。
ご当地サイダーには、わざわざ『有里』と名前が書いてある。
―――飲まねえよ。
「お前の大好きなコーラにでも混ぜて飲めよ」
皮肉のつもりで言うと、有里は真顔で答えた。
「神聖なコーラに毒を入れないでください」
「なにが毒だ!お前の体を心配して言ってるんだろうが!」
まったく、こいつは!
青汁の袋を破り、リンゴジュースに溶かした。
「直真さんも飲むんですか?いい心がけですねー」
なにがいい心がけだ。
減ってよかったと顔に書いてある。
青汁を一口飲んだが、俺は大丈夫だった。
まずくはない。
「有里」
「なんですか?おいしいですか?」
「ああ」
にっこり笑うと有里は何かを察知したのか『えっ!』と言って後ずさったのを見逃さず、有里の腕をつかむと抱き寄せた。
「ま、ま、待ってください!」
口に一口含むと唇を重ね、有里に飲ませると、拒めずに飲み込んだ。
「まだあるぞ」
黙らせるのに二口目も飲ませた。
有里は顔を赤らめ、軽く咳き込むと涙目で俺を見た。
「うまいか?」
「ひ、ひどっ!」
『ほら、飲めよ』と差し出すと、有里は慌ててコップを奪い取り、悔しそうに青汁を飲んでいた。
最初から黙って、飲んでおけよ。
お前の体を心配してくれているんだろうが―――後から後悔しても遅い。
一瞬、母の顔が浮かんだ。
あの人は芯は強いが、どこか儚げな人だった。
母になにもできず、俺は―――ドンッと体当たりされた。
「有里、お前」
「飲みましたよ」
ほらっと空のコップを見せた。
仕返しか?
そう思っていると、有里からキスをされた。
「これが本当のキスってやつですよ」
「どこがだ」
本当のキスはお前からやるにはまだ早い。
けど、嫌じゃない。
有里だけは―――な。
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