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番外編

会いたい人は一人だけ ※社長視点※一章の3、4のデート後

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海外支店から、戻された時は正直、従兄の瑞生たまきを恨んだ。
俺は母親が苦手というより、嫌いだ。
昔から、従兄達と競わせては一番でなければ、叩かれ、閉じ込められた。
母親のヒステリックにはうんざりだ。
だから、高校からは海外の全寮制の進学校に入った。
レベルの高い学校だったせいか、両親は反対しなかった。
やっと親から離れられたと喜んでいたら、子会社の社長にされた挙げ句に階数と部屋は別だが、両親が住んでいるマンションに住居を決められた。
最悪だ。
マンションの窓から、暗い海を眺めていた。
マンションから、見える海と夜景だけは好きだった。
海を見ているとあいつを思い出す。
真嶋まじま菜々子ななこ
「あいつ、面白いよなあ」
最初は高校生かと思っていただけに着飾らせた時は言葉がでなかった。
ちゃんとした服装をすれば、変わるもんなんだな。
可愛かった。
まさか、24歳とは思いもよらなかったが。
だいたいメイクもしないで、ファミレスのアルバイトとか、どうなんだ。
今日なんて、マンションまで来ておきながら、さっさと帰ろうとするしな。
ちょっと軽いキスしただけなのに逃げられた。
そんなに俺が嫌か!?
あんな態度をとられたのは初めてだ。
また、一緒に出掛けたら楽しいに違いない。
「あ。連絡先、もらわなかったな」
俺としたことが。
女から連絡先を聞かれても、自分から聞いたことがなったからな。
名刺を渡してあるのに連絡すら来ないのには驚いた。
まあ、また海を見に来るだろうから―――
そんなことを考えていると、インターホンが鳴った。
母親だった。
ドアを開けると、こっちの都合も聞かないで部屋にズカズカと無遠慮に入ってくる。
これだから、嫌なんだ。
雅冬まさと、秘書のお嬢さん達の中に気に入る女性はいた?」
秘書のお嬢さん達とは母親が選んだ婚約者候補らしいが、どれも感じが悪い。
俺は勘が良すぎるらしく、あの女達の下心が見えすぎて、遊びでさえも手を出す気にならない。
「いない」
一気に気分が悪くなった。
ずっとこれだ。
他に話題はないのかよ。
「まあ、困ったわね」
勝手に困っていろよ。
「どんな方ならいいの?」
どんな?
そんなことを考えたことがない。
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そうやって、付き合ってきた。
ただ、そうだな。
俺の今の最悪な気分を救ってくれるような―――そんな人間がいい。
「いた」
脳裏に一人だけ、その姿がよぎった。
「え?」
「なんでもない」
思わず、笑ってしまった。
なんだよ、まさか。
俺はあいつを思いのほか、気に入ってしまったようだ。
初めて自分から他人に好意を持ったかもしれない。
そうだな。
まずは連絡先を聞こう。
それから、また出掛ける約束をしたらいいか。
話を聞いていないことに気づいた母親はいつのまにか帰っていた。
「真嶋菜々子か―――」
きっと、これから楽しくなる。
出会った暗い海を眺めながら、そんな予感がしてならなかった。
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