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第二章
7 真相②
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綾香さんがいなくなった後、有里さんは四等分にしてあったケーキをテーブルに並べ、それと同時に雅冬さんが入ってきた。
「写真と文書をマスコミに送っておいたぞ」
「雅冬さんが雑誌に出ていたのが役立ちましたね。これで、記事になれば、こんなバカな真似はできないでしょう」
八木沢さんは機嫌良く言った。
「あの、一体なにが?」
私だけ、なにが起きたか、分かっていない。
八木沢さんは気まずそうに言った。
「言いにくいのですが……。まあ、社内の内部クーデターです」
「ええええ!」
「記事が出るまでは内密にしていただきたい。知っているのは瑞生様、雅冬さん、有里と私だけですので」
「菜々子さん。だれが綾香さんを差し向けたか、わかっているでしょ?」
有里さんが新しい紅茶をいれながら、言った。
ケーキも最初から雅冬さんが来るのが、わかっていたのか、綺麗に四等分。
つまり、最初から、綾子さんをおびきよせ、嵌めるつもりだったーーー?
「えっと、綾子さんを差し向けたのは聖子さんかなあって思っていました。でも、私への嫌がらせだかと」
「そうなると、首謀者はわかりますよね?」
「雅冬さんのお父さん!?」
有里さんは首を縦に振り、雅冬さんは苦々しい表情を浮かべていた。
「菜々子さんに嫌がらせする目的もあったと思いますけどね」
と、有里さんは付け足した。
「宮ノ入グループの株は親族が過半数を所有している。株を取得し、親父は株主総会を開き、社長以下、役員を解任するつもりだった」
「それって。新しい社長は?」
「瑞生のことを綾香が嫌っていると、言っただろ?」
「言ってましたねって、綾香さんが社長!?」
「で、親父は副社長か常務に返り咲くつもりだったと言うわけだ」
「お家騒動じゃないですか……」
有里さんは頷いた。
「そうなんです。しかも、菜々子さんと雅冬さんと引き離して、綾香さんと雅冬さんを結婚させれば、一時的に副社長を解任しても、いずれは息子を社長にとでも思っていたんじゃないですか」
「ずっと俺の母親は瑞生に勝つことだけを目標にしてきたのに俺が瑞生の下についたのが、気に入らなかったんだ。だから、親父と共謀したんだろうな」
聖子さんの執念が凄すぎる……。
「まあ、前副社長が株をこちらに売却してくれた時点で勝負はついていましたが、二度とこんなことが起きないようにしておかなくてはね」
八木沢さんはにこやかに笑い、コーヒーを飲んだ。
「後は会長のおじいちゃんがお仕置きしてくれますよ」
有里さんはチーズケーキを頬張りながら言った。
「私だけ、ずっと振り回されていたってことですか」
恨めしげに雅冬さんを見た。
「内容が内容だけに言えなかったからな」
「そうですけど…」
「一応、気をつかって誘き寄せるのは直真がやってくれたんだからな」
雅冬さんの言葉に有里さんはあははっと笑った。
「気にしなくていいですよ。直真さん、こういうの得意なんで」
「お前が言うな!誰が得意だっ!」
「えー、得意じゃないですか。女の人と絡むの。なかなかの色気でしたよ」
「そういう言い方はやめろ!」
八木沢さんはいつもの顔を忘れて、怒鳴ったけれど、当の有里さんは全く気にしていない。
けろりとした顔でチーズケーキを突き刺していた。
「俺の親父が悪かったな。直真。迷惑をかけた」
「雅冬さんも被害者みたいなものですからね。別にいいですよ。ただ、ご両親の処分は重いものになるでしょうね」
「ああ。わかっている」」
雅冬さんは反対せず、それをあっさり受け入れたのだった。
「写真と文書をマスコミに送っておいたぞ」
「雅冬さんが雑誌に出ていたのが役立ちましたね。これで、記事になれば、こんなバカな真似はできないでしょう」
八木沢さんは機嫌良く言った。
「あの、一体なにが?」
私だけ、なにが起きたか、分かっていない。
八木沢さんは気まずそうに言った。
「言いにくいのですが……。まあ、社内の内部クーデターです」
「ええええ!」
「記事が出るまでは内密にしていただきたい。知っているのは瑞生様、雅冬さん、有里と私だけですので」
「菜々子さん。だれが綾香さんを差し向けたか、わかっているでしょ?」
有里さんが新しい紅茶をいれながら、言った。
ケーキも最初から雅冬さんが来るのが、わかっていたのか、綺麗に四等分。
つまり、最初から、綾子さんをおびきよせ、嵌めるつもりだったーーー?
「えっと、綾子さんを差し向けたのは聖子さんかなあって思っていました。でも、私への嫌がらせだかと」
「そうなると、首謀者はわかりますよね?」
「雅冬さんのお父さん!?」
有里さんは首を縦に振り、雅冬さんは苦々しい表情を浮かべていた。
「菜々子さんに嫌がらせする目的もあったと思いますけどね」
と、有里さんは付け足した。
「宮ノ入グループの株は親族が過半数を所有している。株を取得し、親父は株主総会を開き、社長以下、役員を解任するつもりだった」
「それって。新しい社長は?」
「瑞生のことを綾香が嫌っていると、言っただろ?」
「言ってましたねって、綾香さんが社長!?」
「で、親父は副社長か常務に返り咲くつもりだったと言うわけだ」
「お家騒動じゃないですか……」
有里さんは頷いた。
「そうなんです。しかも、菜々子さんと雅冬さんと引き離して、綾香さんと雅冬さんを結婚させれば、一時的に副社長を解任しても、いずれは息子を社長にとでも思っていたんじゃないですか」
「ずっと俺の母親は瑞生に勝つことだけを目標にしてきたのに俺が瑞生の下についたのが、気に入らなかったんだ。だから、親父と共謀したんだろうな」
聖子さんの執念が凄すぎる……。
「まあ、前副社長が株をこちらに売却してくれた時点で勝負はついていましたが、二度とこんなことが起きないようにしておかなくてはね」
八木沢さんはにこやかに笑い、コーヒーを飲んだ。
「後は会長のおじいちゃんがお仕置きしてくれますよ」
有里さんはチーズケーキを頬張りながら言った。
「私だけ、ずっと振り回されていたってことですか」
恨めしげに雅冬さんを見た。
「内容が内容だけに言えなかったからな」
「そうですけど…」
「一応、気をつかって誘き寄せるのは直真がやってくれたんだからな」
雅冬さんの言葉に有里さんはあははっと笑った。
「気にしなくていいですよ。直真さん、こういうの得意なんで」
「お前が言うな!誰が得意だっ!」
「えー、得意じゃないですか。女の人と絡むの。なかなかの色気でしたよ」
「そういう言い方はやめろ!」
八木沢さんはいつもの顔を忘れて、怒鳴ったけれど、当の有里さんは全く気にしていない。
けろりとした顔でチーズケーキを突き刺していた。
「俺の親父が悪かったな。直真。迷惑をかけた」
「雅冬さんも被害者みたいなものですからね。別にいいですよ。ただ、ご両親の処分は重いものになるでしょうね」
「ああ。わかっている」」
雅冬さんは反対せず、それをあっさり受け入れたのだった。
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