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第一章
12 妹の罠
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「今日も私は留守番?」
熱が下がると、もう退屈で仕方がなかった。
「大事をとって、な。今日は好きなやつ頼めよ?遠慮なんかするな」
「はい」
「野菜は絶対に食えよ」
「はーい」
口うるさいお父さんみたいだなと、思いながら、送り出した。
「お昼はどれにしようかな」
メニュー表を並べ、唸っているとスマホが点滅していた。
凛々子だった―――
「菜々子、いまどこ?」
ビジネスホテルと言いかけてやめた
もうはっきり言おうと決めていた。
「雅冬さんの家だよ」
しん、と間があり、何を言うのか待っていたけれど、なかなか返ってこなかった。
「そう」
それだけ、言うとブツッと一方的に電話を切られた。
なんだったんだろうか。
生存確認かな、と思いながら、お昼のメニューを考えていたら、またスマホが点滅した。
「菜々子。俺。恭平だけど」
「恭くん?」
「ちょっと午後から会えないか?大事な話がある」
「え、でも。今はちょっと」
「悪い男が部屋に閉じ込めているのか?」
「違うよ。風邪引いてたから」
「じゃあ、出てこれるな。五時にこないだのファーストフード店で待ってる」
半ば、強引に感じたけど、仕方ない。
まだ悪い男に引っ掛かっていると思い込んでいるようだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ファーストフード店に行くと、恭くんは笑顔で手をあげた。
「よかった。来てくれて」
「恭くん、大事な話って?私、あまり時間なくて」
席に座ると、恭くんは真剣な顔で言った。
「菜々子。悪い男と別れて、俺と付き合わないか?なかなか別れてもらえないなら、一緒に話をしてもいい」
は?何を言っているのか、わからなかった。
理解するまでに時間がかかり、やっと口を開いたその時。
「やだー。恭くんったら、かっこいいー!」
凛々子の声がして、顔をあげると、そこには凛々子と雅冬さんがいた。
どうして、二人で?
「恭くんは姉の元カレで、菜々子のこと忘れられなくて、よりを戻すらしいですよー」
は?どういう意味?
「できたら、俺はそうしたい」
ぽかんとして、凛々子と恭くん交互に見た。
「だから?」
がつ、と椅子が足で蹴られ、恭くんの体が浮いた。
まさか、雅冬さんがキレるとは思っていなかった凛々子がひ、と息を呑んだ。
恭くんをガタンと椅子ごとひっくり返し、ダンッと顔の横に靴底を叩きつけた。
「いいんじゃないか?よりを戻せるなら、戻してみろ」
凄みのある低い声と鋭い目に二人は言葉を失った。
ぐい、と腕をつかみ、立たせると引きずるようにして二人の前から連れ去ると、店の前にとめてあった車に放り込んで言った。
「海沿いの別荘まで」
運転手さんがぎょっとして、雅冬さんを見た。
「かしこまりました」
そう言った声が緊張で固く、表情は強張っていた。
スマホをだし、どこかに電話をしていた。
「直真。しばらく休む」
それだけ、言うと切ってしまった。
雅冬さんの顔を見ると、無表情で冷たい目をしていた。
「これ。家を追い出された日だよな」
スマホを渡され、それを見ると家を追い出され、恭くんとファーストフード店に入った時の画像があった。
荷物を持ち、店に入る瞬間と店で話している所の画像が二枚。
「お前の妹が言うには俺といるのが、辛くなって、元彼に連絡したそうだ」
「してない!」
「それで、よりを戻すのか」
「戻さないってば!」
どうしたら、信じてもらえるのか。
凛々子はなにを言ったんだろう。
すごく怒っているのはわかる。
「最初に連絡するのは、普通、俺じゃないのか?」
「ち、違う。これは、偶然会っただけで!」
自分で言って、ハッとした。
そんな、都合よく会うわけがない。
凛々子が引き合わせたに違いない。
それ以上、何も言えなかった。
雅冬さんはずっと怖い顔をして無言だった。
別荘は車で一時間くらいの所にある海沿いの小さな白い洋館だった。
「誰にも言うな。いいな」
「雅冬様」
運転手さんは困った顔をした。
車から、引きずり出され、心配そうな顔をしていた運転手さんが帰ってしまうと、心細く感じた。
「ここは俺の持ち物だ。俺意外は知らない」
小さな白い洋館は管理している人がいるのか、きちんと手入れされてあった。
「これって、拉致じゃないの!?」
「違うだろう?旅行に来ただけだ。恋人同士なら当たり前だろ」
「なんで怒ってるの?」
怖くて声が震えた。
いつものバカみたいな明るさがなかった。
「どうして、信じてくれないの!」
入るなり、リビングのソファーに突き飛ばされ、押し倒された。
「や、やだ!」
びり、とシャツが破かれボタンが飛び、かつんっと乾いた音をたてた。
「雅冬さん!」
「お前が本当は俺のことを嫌いだって言ってた。迷惑らしいな」
「そんなこと、言ってない!」
傷ついた顔をしていた。
私のほうが、酷いことされてるはずなのに。
「会いたくないのに会うしかないから、仕方なくって、なんだよ、それ―――絶対に俺は嫌だ!」
痛みをこらえるように叫んだ。
「離すものか」
「い、痛いっ」
ぎり、と手首を強く握られた。
「私より凛々子を信用するんですか?私は言ってないって言ってるじゃないですか」
「嘘だとわかってる。けれど―――」
泣き出しそうな顔で、雅冬さんは言った。
「離れられないようにしてしまいたい」
ぎし、と軋む音がした。
熱が下がると、もう退屈で仕方がなかった。
「大事をとって、な。今日は好きなやつ頼めよ?遠慮なんかするな」
「はい」
「野菜は絶対に食えよ」
「はーい」
口うるさいお父さんみたいだなと、思いながら、送り出した。
「お昼はどれにしようかな」
メニュー表を並べ、唸っているとスマホが点滅していた。
凛々子だった―――
「菜々子、いまどこ?」
ビジネスホテルと言いかけてやめた
もうはっきり言おうと決めていた。
「雅冬さんの家だよ」
しん、と間があり、何を言うのか待っていたけれど、なかなか返ってこなかった。
「そう」
それだけ、言うとブツッと一方的に電話を切られた。
なんだったんだろうか。
生存確認かな、と思いながら、お昼のメニューを考えていたら、またスマホが点滅した。
「菜々子。俺。恭平だけど」
「恭くん?」
「ちょっと午後から会えないか?大事な話がある」
「え、でも。今はちょっと」
「悪い男が部屋に閉じ込めているのか?」
「違うよ。風邪引いてたから」
「じゃあ、出てこれるな。五時にこないだのファーストフード店で待ってる」
半ば、強引に感じたけど、仕方ない。
まだ悪い男に引っ掛かっていると思い込んでいるようだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ファーストフード店に行くと、恭くんは笑顔で手をあげた。
「よかった。来てくれて」
「恭くん、大事な話って?私、あまり時間なくて」
席に座ると、恭くんは真剣な顔で言った。
「菜々子。悪い男と別れて、俺と付き合わないか?なかなか別れてもらえないなら、一緒に話をしてもいい」
は?何を言っているのか、わからなかった。
理解するまでに時間がかかり、やっと口を開いたその時。
「やだー。恭くんったら、かっこいいー!」
凛々子の声がして、顔をあげると、そこには凛々子と雅冬さんがいた。
どうして、二人で?
「恭くんは姉の元カレで、菜々子のこと忘れられなくて、よりを戻すらしいですよー」
は?どういう意味?
「できたら、俺はそうしたい」
ぽかんとして、凛々子と恭くん交互に見た。
「だから?」
がつ、と椅子が足で蹴られ、恭くんの体が浮いた。
まさか、雅冬さんがキレるとは思っていなかった凛々子がひ、と息を呑んだ。
恭くんをガタンと椅子ごとひっくり返し、ダンッと顔の横に靴底を叩きつけた。
「いいんじゃないか?よりを戻せるなら、戻してみろ」
凄みのある低い声と鋭い目に二人は言葉を失った。
ぐい、と腕をつかみ、立たせると引きずるようにして二人の前から連れ去ると、店の前にとめてあった車に放り込んで言った。
「海沿いの別荘まで」
運転手さんがぎょっとして、雅冬さんを見た。
「かしこまりました」
そう言った声が緊張で固く、表情は強張っていた。
スマホをだし、どこかに電話をしていた。
「直真。しばらく休む」
それだけ、言うと切ってしまった。
雅冬さんの顔を見ると、無表情で冷たい目をしていた。
「これ。家を追い出された日だよな」
スマホを渡され、それを見ると家を追い出され、恭くんとファーストフード店に入った時の画像があった。
荷物を持ち、店に入る瞬間と店で話している所の画像が二枚。
「お前の妹が言うには俺といるのが、辛くなって、元彼に連絡したそうだ」
「してない!」
「それで、よりを戻すのか」
「戻さないってば!」
どうしたら、信じてもらえるのか。
凛々子はなにを言ったんだろう。
すごく怒っているのはわかる。
「最初に連絡するのは、普通、俺じゃないのか?」
「ち、違う。これは、偶然会っただけで!」
自分で言って、ハッとした。
そんな、都合よく会うわけがない。
凛々子が引き合わせたに違いない。
それ以上、何も言えなかった。
雅冬さんはずっと怖い顔をして無言だった。
別荘は車で一時間くらいの所にある海沿いの小さな白い洋館だった。
「誰にも言うな。いいな」
「雅冬様」
運転手さんは困った顔をした。
車から、引きずり出され、心配そうな顔をしていた運転手さんが帰ってしまうと、心細く感じた。
「ここは俺の持ち物だ。俺意外は知らない」
小さな白い洋館は管理している人がいるのか、きちんと手入れされてあった。
「これって、拉致じゃないの!?」
「違うだろう?旅行に来ただけだ。恋人同士なら当たり前だろ」
「なんで怒ってるの?」
怖くて声が震えた。
いつものバカみたいな明るさがなかった。
「どうして、信じてくれないの!」
入るなり、リビングのソファーに突き飛ばされ、押し倒された。
「や、やだ!」
びり、とシャツが破かれボタンが飛び、かつんっと乾いた音をたてた。
「雅冬さん!」
「お前が本当は俺のことを嫌いだって言ってた。迷惑らしいな」
「そんなこと、言ってない!」
傷ついた顔をしていた。
私のほうが、酷いことされてるはずなのに。
「会いたくないのに会うしかないから、仕方なくって、なんだよ、それ―――絶対に俺は嫌だ!」
痛みをこらえるように叫んだ。
「離すものか」
「い、痛いっ」
ぎり、と手首を強く握られた。
「私より凛々子を信用するんですか?私は言ってないって言ってるじゃないですか」
「嘘だとわかってる。けれど―――」
泣き出しそうな顔で、雅冬さんは言った。
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