26 / 26
26 ずっと隣に
しおりを挟む
私が会社に復帰できたのは、おばさんが警察に連れていかれてから、一週間後のことだった。
驚くべきことに、新聞の記事は小さく、火事の概要が載ったくらいで、仁礼木の名前の一文字も出ていなかった。
社内でも気づいた人はおらず、あの黒ヒョウみたいな宮ノ入社長が、この裏にいるんだろうなと想像がつく。
そして、社内での話題は、扇田工業の事件に加え、私と要人の結婚について盛り上がり、出勤した私を待っていたのは、質問攻撃だった……
「結婚式の準備でもないし、休んでいたのは妊娠したからじゃないわよっ! だいたい病欠理由が、精神的に病んでって……!?」
本人が不在だったせいで、噂は一人歩きして、そのままダンスまで踊っちゃうような勢いだった。
誰が結婚式の仲人をするのか聞かれ、子供名前はなにかまで追求された時は、さすがの私も倒れそうになった。
「でも、志茉が精神を病んだことに関して、誰も疑っていなかったわよ。愛弓さんのパフォーマンスを見た後だったし、信ぴょう性が高かったのよ。可哀想にって、同情されたくらい」
私が要人との関係を隠していたのも、愛弓さんの嫉妬と嫌がらせから逃れるためだという噂が流れ、完全な憶測なのに、真実のように語られている。
嫌がらせを受けたのは本当だけど、心は病んでない。
全部、要人の策略に違いないとわかっていながら、その証拠はどこにもなく、なにも言えなかった。
「うー……。でも、人の噂も七十五日っていうから……」
噂話にさらされ、耐える私の前には、八重子さんが作ってくれた鮭と卵焼き、きんぴらごぼうという懐かしいお弁当がある。
お弁当を見たら、少し元気が出てきた。
「それ、八重子さんのお弁当?」
「そう。人からお弁当を作ってもらうのって、すごく久しぶり。八重子さんの卵焼きは、どっしりしていて美味しいの」
「へぇー。一個ちょうだい」
「いいわよ」
恵衣にひとつ卵焼きをわけてあげた。
一口食べた恵衣が、ふふっと笑う。
「志茉の卵焼きにそっくり」
「気づいた? 私のお母さんがね、八重子さんから聞いたレシピで、食事を作っていたらしいの。お母さんはお嬢様育ちで、料理ができなかったんだけど、八重子さんから聞いて少しずつ覚えていったんだって」
「そっか……。それじゃあ、仁礼木先輩と志茉が食べていた味は、同じ味だったのね。違う家に住んでいても家族みたい」
八重子さんが自分で言ったわけではなかった。
私が食べているうちに、もしかしてと思って聞いてみたら、八重子さんはいい生徒さんでしたよと教えてくれたのだ。
数年し、料理上手になったお母さんと八重子さんは、お互いにおすすめレシピを交換していたことを知った。
「私のことで、要人が知らないことってないのかも」
八重子さんがもう一度働いてくれたのは、きっと要人が頼んだから。
アパートから出たタイミングで、八重子さんの料理を口にしたのも偶然ではない気がする。
「なにを今さら」
恵衣はいつもの日替わり定食。
魚フライのオーロラソースがけに、キャベツの千切りが添えられている。
ソースをまんべんなく、フライの上にのばし、恵衣は言った。
「仁礼木先輩以上に、志茉を理解している人なんていないわよ」
「恵衣は?」
「悔しいけど、仁礼木先輩には敵いません! というより、嫉妬が怖くて、勝ちたくないわよ……。だいたい、志茉覚えてる?」
「え? なにを?」
「高校生の時に、付き合った男子のことよ」
十六歳の時、告白されて付き合った他校の男子。
スポーツをしていて、とても爽やかな男子高校生だった気がする。
生まれて初めて告白されたから、すごく嬉しくて、要人にも自慢した。
要人は告白されて当たり前の生活だったから、私の気持ちはわからなかったみたいで、自慢しても反応が薄かった。
「うん。覚えてるわよ」
「本当に?」
「もちろん」
青春の一ページ、淡い恋心と、すぐに駄目になった恋人関係――どうして、駄目になったんだっけ?
「……あれ?」
駄目になった理由が思い出せない。
でも、自然消滅だった気がする。
向こうが部活で忙しくて、会えなくなったのが原因で終わった。
「あの男子高校生、苗字は違うけど、湯瀬さんだからね」
「えっ!?」
驚くと、恵衣は冷たい目で私を見る。
「親が離婚して、苗字が変わったんだって。でも、向こうは志茉を覚えていたわよ」
「で、でも……。私、両親が亡くなったせいで、高校時代の記憶があいまいな部分があって……そ、それで……」
「それも湯瀬さんは知ってるわよ。湯瀬さんも会いに行こうとしたけど、仁礼木さんの妨害で会えなかったのよ」
「妨害!?」
「別れた後だったけどね。湯瀬さんのほうは、嫌いで別れたわけじゃなかったから、志茉の様子を見に行ったわけ」
思えば、あの頃の私は、とても不安定で、恵衣とでさえ、会話できない状態だった。
「会えないのは、仕方なかったとはいえ、湯瀬さんはどうなったか、ずっと気にしていたみたい。沖重グループに志茉が入社してきたのを知って、嬉しかったって言ってたわ」
「恵衣は気づいてたの?」
「うん。だって、あたしは湯瀬さんに憧れてたし。湯瀬さんは高校時代から人気があったもの。仁礼木先輩は別格で、もう殿堂入りみたいなものだけど」
今、恵衣から衝撃的なことを聞いた気がする。
要人のモテモテ殿堂入りは、どうでもいいけど、恵衣が湯瀬さんに憧れていたなんて、知らなかった。
「初耳なんだけど……」
「言ってなかったし。でも、志茉が結婚して、湯瀬さんもふっきれて、あたしと付き合ってますけどね?」
「えっー! それも初めて聞いたわよ!?」
「つい、昨日からですー」
「そっか……。うん。おめでとう」
恵衣はお祝いの言葉に微笑んだけど、周囲を見回し、小声で私に言った。
「言っておくけど、仁礼木先輩は湯瀬さんの事。すぐにわかったわよ」
要人がいないことを確かめたようだった。
本当にどれだけ、要人は危険人物なのだろうか。
「湯瀬さんは大丈夫だったの!?」
「うん。無言の圧をかけられたらしいけど、特に攻撃はしてこなかったって」
「攻撃って、要人は猛獣なの?」
「しっかり猛獣を繋いでおくのよ? 世間のためにね」
「はい……」
今になって知る要人の過去。
でも、私も要人を責められない。
この後、一番の被害者と思われる湯瀬さんに、平謝りしたのはいうまでもなかった――
◇◇◇◇◇
夏になって、ようやく噂も落ち着いた頃、私は経理課から秘書課へ正式に異動した。
経理課で引き継ぎを終えてからでないと、異動はしないと要人に言ったからだ。
要人も(一応)社長だから、そこは守ってくれた。
そして、要人は忙しかったけど、お盆休みはしっかり取ってくれて、私と一緒にお墓参りへ来ていた。
いつもは一人だったけれど、今回は二人で。
「ああ。暑いですねぇ」
そう声をかけてくれたのは、いつもこの霊園を掃除しているお寺の人だった。
お盆の時期だからか、数珠を手にしている。
そして、黒いスーツ姿――それで、この人がお寺の人ではなかったことを知った。
「お寺の方じゃなかったんですね。来るたび、掃除していらっしゃったから、てっきり……」
「朝の散歩がてらに、お墓の掃除に通っているんですよ」
ちょうど、私のおじいちゃんにあたるくらいの年齢だろうか。
きっとお墓に、どうしても忘れられない人が眠っているのだろう。
「今年は二人で来られたんですね」
水と花を持ち、後からやってくる要人を眩しそうに眺めて、その人は言った。
「はい。ようやく」
「そうですか。よかった」
私が答えると、笑ってうなずいた。
それで会話は終わり、私に会釈すると、霊園の出口へ向かって歩いていく。
その人は要人ともすれ違う時に、挨拶かなにか、一言だけ交わしていたようだ。
けれど、長話することはなく、やがて、その背中が見えなくなった。
「志茉、なにか話したか?」
「うん。今年のお盆は、私と要人が別々じゃなくて、一緒に来たことに気づいたみたい。もしかしたら、私を心配してくれていたのかも」
「そうだろうな」
多くを語らなかったけど、よく出会う私を気にかけてくれていたのだろう。
思えば、私が立ち直るまでに、要人だけでなく、たくさんの人が支えてくれていたと思う。
「要人はなにを話したの?」
「結婚おめでとうございますって言われただけだ」
「どうしてわかったのかしら」
「指輪だろ」
私と要人の指にある結婚指輪。
もう自分の身の一部のようになっていて、忘れてしまっていた。
「あ、そうよね……」
「ちゃんと、おじさんとおばさんに結婚報告しろよ?」
「わ、わかってるわよ。そこまで抜けてないんだから!」
お墓に花を添え、手を合わせ、目を閉じる。
相変わらず、言い争っている私たちを眺め、両親が笑っているような気がした。
「志茉……」
泣く私を見て、要人は心配そうにハンカチを差し出した。
「違うの、要人。これはね、悲しくて泣いてるんじゃなくて、懐かしくて泣いてるの。お父さんもお母さんも、私と要人が一緒にいるのを見て、喜んでるだろうってわかるから」
今までと違う気持ちで、私はここにいる。
「そっか。俺はおじさんとおばさんに、志茉を幸せにしますって言っておいた」
「そう。じゃあ、私も言わないとね」
私はもう一度、手を合わせた。
要人には、まだ教えてない秘密がある。
それを両親に報告する。
『私には、要人がいるから大丈夫。来年のお盆には、二人の孫を連れてくるからね』
お隣の要人が、この秘密を知るまで、あともう少し――
【了】
驚くべきことに、新聞の記事は小さく、火事の概要が載ったくらいで、仁礼木の名前の一文字も出ていなかった。
社内でも気づいた人はおらず、あの黒ヒョウみたいな宮ノ入社長が、この裏にいるんだろうなと想像がつく。
そして、社内での話題は、扇田工業の事件に加え、私と要人の結婚について盛り上がり、出勤した私を待っていたのは、質問攻撃だった……
「結婚式の準備でもないし、休んでいたのは妊娠したからじゃないわよっ! だいたい病欠理由が、精神的に病んでって……!?」
本人が不在だったせいで、噂は一人歩きして、そのままダンスまで踊っちゃうような勢いだった。
誰が結婚式の仲人をするのか聞かれ、子供名前はなにかまで追求された時は、さすがの私も倒れそうになった。
「でも、志茉が精神を病んだことに関して、誰も疑っていなかったわよ。愛弓さんのパフォーマンスを見た後だったし、信ぴょう性が高かったのよ。可哀想にって、同情されたくらい」
私が要人との関係を隠していたのも、愛弓さんの嫉妬と嫌がらせから逃れるためだという噂が流れ、完全な憶測なのに、真実のように語られている。
嫌がらせを受けたのは本当だけど、心は病んでない。
全部、要人の策略に違いないとわかっていながら、その証拠はどこにもなく、なにも言えなかった。
「うー……。でも、人の噂も七十五日っていうから……」
噂話にさらされ、耐える私の前には、八重子さんが作ってくれた鮭と卵焼き、きんぴらごぼうという懐かしいお弁当がある。
お弁当を見たら、少し元気が出てきた。
「それ、八重子さんのお弁当?」
「そう。人からお弁当を作ってもらうのって、すごく久しぶり。八重子さんの卵焼きは、どっしりしていて美味しいの」
「へぇー。一個ちょうだい」
「いいわよ」
恵衣にひとつ卵焼きをわけてあげた。
一口食べた恵衣が、ふふっと笑う。
「志茉の卵焼きにそっくり」
「気づいた? 私のお母さんがね、八重子さんから聞いたレシピで、食事を作っていたらしいの。お母さんはお嬢様育ちで、料理ができなかったんだけど、八重子さんから聞いて少しずつ覚えていったんだって」
「そっか……。それじゃあ、仁礼木先輩と志茉が食べていた味は、同じ味だったのね。違う家に住んでいても家族みたい」
八重子さんが自分で言ったわけではなかった。
私が食べているうちに、もしかしてと思って聞いてみたら、八重子さんはいい生徒さんでしたよと教えてくれたのだ。
数年し、料理上手になったお母さんと八重子さんは、お互いにおすすめレシピを交換していたことを知った。
「私のことで、要人が知らないことってないのかも」
八重子さんがもう一度働いてくれたのは、きっと要人が頼んだから。
アパートから出たタイミングで、八重子さんの料理を口にしたのも偶然ではない気がする。
「なにを今さら」
恵衣はいつもの日替わり定食。
魚フライのオーロラソースがけに、キャベツの千切りが添えられている。
ソースをまんべんなく、フライの上にのばし、恵衣は言った。
「仁礼木先輩以上に、志茉を理解している人なんていないわよ」
「恵衣は?」
「悔しいけど、仁礼木先輩には敵いません! というより、嫉妬が怖くて、勝ちたくないわよ……。だいたい、志茉覚えてる?」
「え? なにを?」
「高校生の時に、付き合った男子のことよ」
十六歳の時、告白されて付き合った他校の男子。
スポーツをしていて、とても爽やかな男子高校生だった気がする。
生まれて初めて告白されたから、すごく嬉しくて、要人にも自慢した。
要人は告白されて当たり前の生活だったから、私の気持ちはわからなかったみたいで、自慢しても反応が薄かった。
「うん。覚えてるわよ」
「本当に?」
「もちろん」
青春の一ページ、淡い恋心と、すぐに駄目になった恋人関係――どうして、駄目になったんだっけ?
「……あれ?」
駄目になった理由が思い出せない。
でも、自然消滅だった気がする。
向こうが部活で忙しくて、会えなくなったのが原因で終わった。
「あの男子高校生、苗字は違うけど、湯瀬さんだからね」
「えっ!?」
驚くと、恵衣は冷たい目で私を見る。
「親が離婚して、苗字が変わったんだって。でも、向こうは志茉を覚えていたわよ」
「で、でも……。私、両親が亡くなったせいで、高校時代の記憶があいまいな部分があって……そ、それで……」
「それも湯瀬さんは知ってるわよ。湯瀬さんも会いに行こうとしたけど、仁礼木さんの妨害で会えなかったのよ」
「妨害!?」
「別れた後だったけどね。湯瀬さんのほうは、嫌いで別れたわけじゃなかったから、志茉の様子を見に行ったわけ」
思えば、あの頃の私は、とても不安定で、恵衣とでさえ、会話できない状態だった。
「会えないのは、仕方なかったとはいえ、湯瀬さんはどうなったか、ずっと気にしていたみたい。沖重グループに志茉が入社してきたのを知って、嬉しかったって言ってたわ」
「恵衣は気づいてたの?」
「うん。だって、あたしは湯瀬さんに憧れてたし。湯瀬さんは高校時代から人気があったもの。仁礼木先輩は別格で、もう殿堂入りみたいなものだけど」
今、恵衣から衝撃的なことを聞いた気がする。
要人のモテモテ殿堂入りは、どうでもいいけど、恵衣が湯瀬さんに憧れていたなんて、知らなかった。
「初耳なんだけど……」
「言ってなかったし。でも、志茉が結婚して、湯瀬さんもふっきれて、あたしと付き合ってますけどね?」
「えっー! それも初めて聞いたわよ!?」
「つい、昨日からですー」
「そっか……。うん。おめでとう」
恵衣はお祝いの言葉に微笑んだけど、周囲を見回し、小声で私に言った。
「言っておくけど、仁礼木先輩は湯瀬さんの事。すぐにわかったわよ」
要人がいないことを確かめたようだった。
本当にどれだけ、要人は危険人物なのだろうか。
「湯瀬さんは大丈夫だったの!?」
「うん。無言の圧をかけられたらしいけど、特に攻撃はしてこなかったって」
「攻撃って、要人は猛獣なの?」
「しっかり猛獣を繋いでおくのよ? 世間のためにね」
「はい……」
今になって知る要人の過去。
でも、私も要人を責められない。
この後、一番の被害者と思われる湯瀬さんに、平謝りしたのはいうまでもなかった――
◇◇◇◇◇
夏になって、ようやく噂も落ち着いた頃、私は経理課から秘書課へ正式に異動した。
経理課で引き継ぎを終えてからでないと、異動はしないと要人に言ったからだ。
要人も(一応)社長だから、そこは守ってくれた。
そして、要人は忙しかったけど、お盆休みはしっかり取ってくれて、私と一緒にお墓参りへ来ていた。
いつもは一人だったけれど、今回は二人で。
「ああ。暑いですねぇ」
そう声をかけてくれたのは、いつもこの霊園を掃除しているお寺の人だった。
お盆の時期だからか、数珠を手にしている。
そして、黒いスーツ姿――それで、この人がお寺の人ではなかったことを知った。
「お寺の方じゃなかったんですね。来るたび、掃除していらっしゃったから、てっきり……」
「朝の散歩がてらに、お墓の掃除に通っているんですよ」
ちょうど、私のおじいちゃんにあたるくらいの年齢だろうか。
きっとお墓に、どうしても忘れられない人が眠っているのだろう。
「今年は二人で来られたんですね」
水と花を持ち、後からやってくる要人を眩しそうに眺めて、その人は言った。
「はい。ようやく」
「そうですか。よかった」
私が答えると、笑ってうなずいた。
それで会話は終わり、私に会釈すると、霊園の出口へ向かって歩いていく。
その人は要人ともすれ違う時に、挨拶かなにか、一言だけ交わしていたようだ。
けれど、長話することはなく、やがて、その背中が見えなくなった。
「志茉、なにか話したか?」
「うん。今年のお盆は、私と要人が別々じゃなくて、一緒に来たことに気づいたみたい。もしかしたら、私を心配してくれていたのかも」
「そうだろうな」
多くを語らなかったけど、よく出会う私を気にかけてくれていたのだろう。
思えば、私が立ち直るまでに、要人だけでなく、たくさんの人が支えてくれていたと思う。
「要人はなにを話したの?」
「結婚おめでとうございますって言われただけだ」
「どうしてわかったのかしら」
「指輪だろ」
私と要人の指にある結婚指輪。
もう自分の身の一部のようになっていて、忘れてしまっていた。
「あ、そうよね……」
「ちゃんと、おじさんとおばさんに結婚報告しろよ?」
「わ、わかってるわよ。そこまで抜けてないんだから!」
お墓に花を添え、手を合わせ、目を閉じる。
相変わらず、言い争っている私たちを眺め、両親が笑っているような気がした。
「志茉……」
泣く私を見て、要人は心配そうにハンカチを差し出した。
「違うの、要人。これはね、悲しくて泣いてるんじゃなくて、懐かしくて泣いてるの。お父さんもお母さんも、私と要人が一緒にいるのを見て、喜んでるだろうってわかるから」
今までと違う気持ちで、私はここにいる。
「そっか。俺はおじさんとおばさんに、志茉を幸せにしますって言っておいた」
「そう。じゃあ、私も言わないとね」
私はもう一度、手を合わせた。
要人には、まだ教えてない秘密がある。
それを両親に報告する。
『私には、要人がいるから大丈夫。来年のお盆には、二人の孫を連れてくるからね』
お隣の要人が、この秘密を知るまで、あともう少し――
【了】
38
お気に入りに追加
1,596
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
ネトゲ女子は社長の求愛を拒む
椿蛍
恋愛
大企業宮ノ入グループで働く木村有里26歳。
ネトゲが趣味(仕事)の平凡な女子社員だったのだが、沖重グループ社長の社長秘書に抜擢され、沖重グループに出向になってしまう。
女子社員憧れの八木沢社長と一緒に働くことになった。
だが、社長を狙っていた女子社員達から嫌がらせを受けることになる。
社長は有里をネトゲから引き離すことができるのか―――?
※途中で社長視点に切り替わりあります。
※キャラ、ネトゲやゲームネタが微妙な方はスルーしてください。
★宮ノ入シリーズ第2弾
★2021.2.25 本編、番外編を改稿しました。
私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
日下奈緒
恋愛
課長としてキャリアを積む恭香。
若い恋人とラブラブだったが、その恋人に捨てられた。
40歳までには結婚したい!
婚活を決意した恭香を口説き始めたのは、同期で仲のいい柊真だった。
今更あいつに口説かれても……
御曹司はまだ恋を知らない
椿蛍
恋愛
家政婦紹介所に登録している桑江夏乃子(くわえかのこ)は高辻財閥の高辻家に派遣されることになった。
派遣された当日、高辻グループの御曹司であり、跡取り息子の高辻恭士(たかつじきょうじ)が婚約者らしき女性とキスをしている現場を目撃するが、その場で別れてしまう。
恭士はその冷たい態度と毒のある性格で婚約者が決まっても別れてしまうらしい。
夏乃子には恭士がそんな冷たい人間には思えず、接しているうちに二人は親しくなるが、心配した高辻の両親は恭士に新しい婚約者を探す。
そして、恭士は告げられる。
『愛がなくても高辻に相応しい人間と結婚しろ』と。
※R-18には『R-18』マークをつけます。
※とばして読むことも可能です。
★私の婚約者には好きな人がいる スピンオフ作品。兄の恭士編です。
一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
椿蛍
恋愛
念願のデザイナーとして働き始めた私に、『家のためにお見合いしろ』と言い出した父と継母。
断りたかったけれど、病弱な妹を守るため、好きでもない相手と結婚することになってしまった……。
夢だったデザイナーの仕事を諦められない私――そんな私の前に現れたのは、有名な美女モデル、【リセ】だった。
パリで出会ったその美人モデル。
女性だと思っていたら――まさかの男!?
酔った勢いで一夜を共にしてしまう……。
けれど、彼の本当の姿はモデルではなく――
(モデル)御曹司×駆け出しデザイナー
【サクセスシンデレラストーリー!】
清中琉永(きよなかるな)新人デザイナー
麻王理世(あさおりせ)麻王グループ御曹司(モデル)
初出2021.11.26
改稿2023.10
政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
椿蛍
恋愛
★2022.1.23改稿完了しました。
母が亡くなり、身寄りがないと思っていた私、井垣朱加里(いがきあかり)はまさか父がお金持ちの社長だったなんて知らなかった。
引き取られた先には継母とその娘がいた。
私を引き取ったのは気難しい祖父の世話をさせるためだった。
けれど、冷たい家族の中で祖父だけは優しく、病気の祖父が亡くなるまではこの家にいようと決めた。
優しかった祖父が亡くなり、財産を遺してくれた。
それだけじゃない、祖父は遺言として結婚相手まで決めていた。
相手は『王子様』と名高い白河財閥の三男白河壱都(しらかわいちと)。
彼は裏表のあるくせ者で、こんな男が私の結婚相手!?
父と継母は財産を奪われたと怒り狂うし、異母妹は婚約者を盗られたと言うし。
私が全てを奪ったと、完全に悪者にされてしまった。
どうしたらいいの!?
・視点切り替えあります。
・R-18には※R-18マークをつけます。
・飛ばして読むことも可能です。
初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる
ささゆき細雪
恋愛
樹理にはかつてひとまわり年上の婚約者がいた。けれど樹理は彼ではなく彼についてくる母親違いの弟の方に恋をしていた。
だが、高校一年生のときにとつぜん幼い頃からの婚約を破棄され、兄弟と逢うこともなくなってしまう。
あれから十年、中小企業の社長をしている父親の秘書として結婚から逃げるように働いていた樹理のもとにあらわれたのは……
幼馴染で初恋の彼が新社長になって、専属秘書にご指名ですか!?
これは、両片想いでゆるふわオフィスラブなひしょひしょばなし。
※ムーンライトノベルズで開催された「昼と夜の勝負服企画」参加作品です。他サイトにも掲載中。
「Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―」で当て馬だった紡の弟が今回のヒーローです(未読でもぜんぜん問題ないです)。
黒王子の溺愛は続く
如月 そら
恋愛
晴れて婚約した美桜と柾樹のラブラブ生活とは……?
※こちらの作品は『黒王子の溺愛』の続きとなります。お読みになっていない方は先に『黒王子の溺愛』をお読み頂いた方が、よりお楽しみ頂けるかと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
【完結】もう二度と離さない~元カレ御曹司は再会した彼女を溺愛したい
魚谷
恋愛
フリーライターをしている島原由季(しまばらゆき)は取材先の企業で、司馬彰(しばあきら)と再会を果たす。彰とは高校三年の時に付き合い、とある理由で別れていた。
久しぶりの再会に由季は胸の高鳴りを、そして彰は執着を見せ、二人は別れていた時間を取り戻すように少しずつ心と体を通わせていく…。
R18シーンには※をつけます
作家になろうでも連載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる