幼馴染は私を囲いたい!

椿蛍

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36 ごほうび?※R-18

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「奏花。コンサートを頑張った俺にごほうびが必要だと思わない?」

マンションに帰ったなり、そんなことを逢生が言い出した。
負けたことを気にしていたしおらしい逢生はどこにいったのよと思ったけど、それを気にしているのはわかっていた。
梶井さんから奪われた時の逢生は私の気持ちを探っていたことも。
お願いを聞いてくれるまでは動きません!というようにリビングのソファーに座り、じいっーと私を見つめてくる。
……犬かな?

「ごほうびね……」

「それか、落ち込んでいる俺を慰めて?」

「どこが落ち込んでるのよっ!」

元気いっぱいでしょうがっ!
しかも、帰りにお腹空いたとか言って屋台でラーメン食べたわよね?
じろっーと逢生を見ると目を期待で輝かせている。
まあ、あの梶井さんと対等に弾けたんだから、頑張ったは頑張ったのよね。
逢生達がオマケになっちゃうくらい梶井さんって有名なチェリストなんだし……

「わかったわ……」

うなずくと逢生は嬉しそうにほほ笑んだ。
でもね―――そのお願いって言うのはこれなのっていう気持ちよ?
正直言って、聞かなきゃよかったって思って後悔している。
弱々しいふりをした逢生にいいようにされたんじゃないかっていう疑惑のほうが大きい。
ちゃぷっとお湯を手でかきまぜた。
バラの香りがする入浴剤にぬるめのお湯。
計画的犯行と言わざるを得ない。
すっぽりと腕の中に私の体を包み込み、背後からキスを落とす。
逢生のご褒美は前々からしつこく要求していた『お風呂に一緒に入ろう』っというものだった。

「逢生。もういいでしょ?」

何度も体にキスをする逢生がくすぐったい。
腕の中から逃れようとするのに強い力が体を離してくれない。

「まだ」

嘘をつきなさいよ、嘘を。
諦めておとなしく逢生の胸に寄りかかった。
嬉しそうに耳や首筋をなめる。
前世どころか、もう人間やめて犬なのってくらい何度も。

「ねえ、逢生。私がもし梶井さんのこと好きだったらあのまま、梶井さんにあげてたの?」

ずっと気になっていたことを聞いてみた。
逢生の顔を見上げると目を細めて意地の悪い顔をしていた。

「まさか。あいつ、ずるかったし」

「ずるかった?」

「奏花の寝顔が可愛いって俺に言ってきた」

「そっ、そんなことっ」

「あいつの前で眠った?」

「ほんの少しの時間だけよ!?」

「奏花は警戒心が足りなさすぎるよ」

それについては反論の余地はない。
言葉につまる私に唇を重ねた。
悪い顔をしたまま。

「奏花は全部俺のものなのに」

これが逢生の本性なんじゃないだろうか。
体を自分のほうに向かせると、タオルを奪った。

「やっ、な、なにして」

明るいせいで体の隅々まで見えてしまう。
もがく私に逢生は笑う。

「今のは他の男に寝顔をみせた罰。それから、手をつないでいた罰もある」

知って―――逢生の唇が乱暴に私の唇を塞いで拒否することを許さない。
これはお仕置きなんだろうか。
自分のひざにまたがらせると、体を浮かせ、胸をすくう。

「あ、おっ……」

「もっと俺だけしか知らない顔を見せて」

指が下腹部をこすり、歯が胸の敏感な部分にあたる。

「あっ、んんっ」
 
思わず、こぼれた甘い声を手で塞ごうにもお湯の中に落ちてしまわないように逢生の体にしがみついているせいで声が響いてしまう。
これ、絶対にわざとっ―――ぐっと感じる部分に指が深くこめられて体勢を崩した。

「危ないよ。奏花」

体を受け止めた逢生は近づいた顔に唇を重ねて舌を割り入れる。
舌を絡めて、言葉を奪うと激しく口内を貪った。

「んっ、あっ」

お湯から体を浮かせると自分の熱く硬くなったものを浅く埋め込んだ。

「あ―――」

疼く体が与えられた感触に悦び、もっと深くに飲み込もうとするのを逢生が腰をつかんで止めた。

「や、どうして……」

「奏花がもっと欲しがるまで待ってる」

限界までと逢生が囁く息すら、中を苦しくさせた。
生温かい舌が胸の突起をなぞり、腹へ這わせる。
なぞった部分が毒のように下腹部へと伝わり、腰を揺らした。
胸の突起を舐め転がされるたび、甘い声がこぼれてしまう。

「ひあ……んっ、あぁっ」

追い討ちをかけるように指で前を弄ばれ、耐えきれずに体を揺らすとお湯がぱしゃっと激しく音をたてた。
揺れる体に逢生が顔を苦しそうに歪めた。

「動かれるときつい」

「もぉ、やっ……」

浅い部分だけをこすられて、いつまでも体が熱をもったまま。
こんなのひどいと逢生に言いかけた瞬間、深く腰を落とされた。

「あっ―――」

貫かれた衝撃に頭が真っ白になった。
中がぎゅうっと締め付けて逢生のものを離さない。

「……っ!苦しいよ、奏花」

息を乱した逢生は耳をなめ、甘く噛む。
中を締め付けてしまって、逢生がぐっとこらえたのがわかった。

「ご、ごめっ……あっ、んっ」

軽く揺さぶられるだけで、声がこぼれた。
罰と言ったのは本当だったのかもしれない。
もっと激しく動いてほしいのにゆっくりと私が感じる部分をこするだけで、達しそうになると動きを止めてしまう。

「逢生のっ……」

「なに?奏花?」

嬉しそうな声。
私がねだるのを待っている。

「逢生のバカっ……!」

泣き出した私に逢生は慌てた。
さっきまでの悪い顔はなくなり、今は表情を崩していた。
困った顔をして、私の顔を覗き込んだ。

「意地悪だった」

ごめんと逢生は謝ってこぼした涙を舌ですくう。
泣いている私にですら、うっとりとした表情をしているのは私の目に映っているんだからっ!
誤魔化されないわよっ。
逢生は優しく手のひらで頬を撫でた。
ゆるやかな動きは早められ、突き上げられるたびに苦しみが消されていく。
揺れるお湯と音が激しくなるたび、耳からも感じさせられてたまらない。

「は、あっ、んんっ」

いつの間にこんな逢生の体に自分の体が馴染んでしまったのだろう。
与えられる快楽が心地よくて肌をこすりあわせた。
お互いの触れる肌に安心する。
奥深くに熱いものが注がれた衝撃で達するとくたりと逢生の胸に顔を埋めた。
その顔をもちあげられてまたキスをされる。

「奏花。俺がどれだけ待ったと思う?簡単に手放すわけないんだよ」

梶井さんの『一人前の男の顔をしていた』という言葉を思い出していた。
私が初恋をした頃、もう逢生は私を想ってくれていたのに。

「うん……私をちゃんとつかまえていて」

じゃあ、もう一回ねと逢生が言って体にキスを落とした。

「ま、まだ!?」

「当たり前。まだ罰の一回目だったから」

二回も三回もないわよっと言いかけたのに唇を奪った。

「んむっ!」

「じゃあ、次は奏花が好きなように動いて」

無邪気に見える笑みはきっと悪魔の笑みに違いない。
力が入らない体をもちあげられて、またがらせると揺さぶられた。

「んうっ」

「また感じてる」

「さ、最悪よっ!」

逢生の憎たらしい顔にぱちんっと両手で平手打ちをして反撃した。
それはささやかすぎてなんの抵抗にもならない。
指を絡め、逢生は微笑む。
これ以上の幸福は望むべくもないという顔で。
逢生が望むのは私だけ。
そのためだけに生きてきた―――

「愛してるわ。逢生」

私が返せるものはこれだけ。
でも逢生には一番の『ごほうび』だった。
逢生の綺麗な目から一筋の涙がこぼれた。
幸せな時も涙がこぼれるんだと知った―――

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