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第2章
15 素敵なプレゼント
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「はぁーい! お届け物でーす! 仕立屋『ブルーベール』でご注文いただきありがとうございました!」
「サーラさん。舞踏会のドレスの打ち合わせをしましょ!」
賑やかに登場したのは、裏通りに店を構える仕立屋『ブルーベール』の女主人エミリさんとヒュランデル夫人だった。
いったいなにが始まるのか、上品で可憐なヒュランデル夫人まで、エミリさんにつられてハイテンションになっている。
「エミリさん。なんだか荷物が多くないですか?」
舞踏会のドレスやアクセサリーは、ヒュランデル夫人からお借りし、侍女が私の支度を手伝ってくれることになっていた。
だから、エミリさんに注文してあるのは、別のものである。
「うふふふ。まあまあ。詳しい話は後でね。まずは、サーラちゃんに頼まれていた注文の品から渡すわね」
「ありがとうございます」
エミリさんから箱を二つ受け取った。
仕立屋『ブルーベール』は、フランの帽子を購入した店で、私に興味を持ったエミリさんが、開店した直後から、たびたびお店へ訪れてくれている。
今ではすっかりお店の常連さんだ。
お針子の女の子たちも、掘り出し物を探しに、よくお店にやってくるようになった。
エミリさんは金髪に緑の瞳をした美しい人で、ヒュランデル夫人とは同じ年齢である。
二人は話が合うのか仲がよく、身につけるものも流行の最先端を取り入れ、センスがいい。
そして、仕立屋としての腕も確かだ。
だからこそ、仕立屋『ブルーベール』に頼んだのだけど――
「フラン、ラーシュ。ちょっといいですか?」
エミリさんから受け取った箱を手にして、二人を呼んだ。
「サーラ? なにかあった?」
「師匠、お呼びですか?」
集まった二人に、それぞれ箱を渡す。
「これは、頑張っているフランとラーシュに、私からのちょっとしたプレゼントです」
ラーシュには魔道具師が使う革の手袋とエプロン、フランは剣士用の革の手袋。
それぞれ箱の中から取り出した瞬間、二人は目を輝かせた。
「師匠っ! これって、魔道具師の手袋とエプロンですよね?」
「おれのは剣士用の手袋だ!」
二人は大喜びで、お互いの贈り物を見せて自慢し合う。
「フレアリザードの革製品だよな? おれ、本物の傭兵みたいだ!」
「素手だと手の皮がめくれますから、丈夫な手袋がいると思ったんです」
「サーラ、ありがとう! すごく嬉しいよ!」
「師匠。ぼく、頑張ります!」
可愛い二人に、エミリさんとヒュランデル夫人も微笑んだ。
「フレアリザードの加工は難しいのよね。加工されてから、仕立屋には届けられるけど、火色の鱗を取るのが大変らしいわ」
「剣が欠けるくらいだって言いますからね」
革のほうも丈夫で、普通の針だと折れてしまう。
だから、特別な針を使っているらしい。
すべて手縫いの大変な作業だったけど、私の話を聞いたエミリさんは、快く引き受けてくれた。
「それじゃあ、サーラちゃん。本命の箱を開けまーす!」
「本命? 注文したものは、これで終わりですけど……」
「エミリさん早くっ!」
普段は落ち着いた話し方をするヒュランデル夫人まで、大盛り上がりな様子に、なにが始まるのかと『本命』の箱を眺めた、
エミリさんが大きな箱を開け、中身を広げる。
「えっ? ドレス……?」
大きな箱から出てきたのは、深い青色のドレスだった。
夜空に似たドレスには、星粒に見立てた細かい光の魔石が散らばっている。
布が揺れると、光の魔石がキラキラ輝き、とても綺麗だった。
そして、このドレスは、わざわざ光の魔石をビーズほどの大きさまで【粉砕】し、ひとつひとつ縫いつけた手間のかかったドレスだ。
「これをご注文されたのは、なんと宮廷魔術師長リアム様よ! 光の魔石を惜しみ無く使用した贅沢なドレスでしょ。手が震えて、縫いつけるのが大変だったのよ」
浄化の力があると言われる光の魔石は、最上級の護符としても人気で、それをドレスに使うのは、どれだけ贅沢なことなのか、私にもわかる。
「我が『ブルーベール』のお針子たちの力を結集させたドレスなんだから!」
「ドレスにぴったりなアクセサリーは、私が細工師工房にお願いして、デザインを選ばせてもらったのよ。サーラさん、見ていただける?」
ヒュランデル夫人が別の箱から、取り出したのは、光の魔石のネックレスとブレスレット、イヤリング、髪飾りだった。
生地と同じ色の靴もあり、なにもかもが揃えられていた。
「リアム様がわざわざヒュランデル商会まで、足を運ばれて、私にご相談されたの」
「これをリアムが……」
夜色の素敵なドレスを手に取った時、嬉しかったはずなのに、私の心境は複雑だ。
――素敵なドレス。大人っぽくて、光の魔石を豪華につかった特別なドレスなのは、私にだってわかる。
ドレスを握りしめたまま、考え込んでしまった。
このドレスは落ち着いた色はイメージするなら、むしろ私じゃなくて……
「サーラ。これって、あの日の星空だよね」
私の横から顔を覗かせ、ドレスを見たフランが素直な感想を口にした。
「覚えてない? 凍った魔石を溶かした日の夜空だよ!」
興奮しているフランを見て、ヒュランデル夫人が微笑んだ。
「サーラさん。贈り物は贈る人のことを考えて選ぶものよ。リアム様が思っているサーラさんのイメージは、星空なのね」
「うん、わかる。きっとそうだ」
一緒に夜空を眺めていたフランが、確信を持って、強くうなずいた。
――これは、リアムが私のために作ってくれたドレス。
そう思ったら、なぜかホッとした。
「フラン。リアムにお礼を言いたいので、後からクラゲ精霊ちゃんの使い方を教えてくれますか?」
「うん。わかったよ!」
――私のイメージは星空。
リアムの中にある自分の印象が、悪いものじゃなかったからか、とても嬉しかった。
「もぉ~! リアム様ったら、無表情でなにを考えているかわからないけど、舞踏会前にドレス一式を贈っちゃうなんて、案外やるわね!」
「こんな立派なドレスを着ている令嬢は、きっと誰もいないわ。光の魔石ですものね」
少女のように、二人はきゃあきゃあ騒ぎ始めた。
「リアム様の心は、鉄の心! 誰が突破できるの、その心! 近寄る令嬢たちをちぎってはなげ、ちぎってはなげ!」
エミリさんは仕事柄、令嬢たちの噂話をよく聞くらしく、歌うように口ずさむ。
「報われぬ恋心に終止符か? 国王に即位? それとも駆け落ち? 始まる王宮ロマンス!」
そんな事実はなく、かなり創作が混じっているような気がしたけど、エミリさんの勢いに負け、なにも言えなかった。
そろそろ踊り出しそうになっているエミリさんをヒュランデル夫人が止めた。
「待って、エミリさん。サーラさんに言わなくてはいけないことがあるでしょう?」
「私にですか?」
さっきまでの明るい雰囲気が消え、ヒュランデル夫人は心配そうな顔をしている。
「そうだったわ……。実はね、これは知り合いの仕立屋から聞いたのだけど、ルーカス様がサーラちゃんのドレスを頼んでいたらしいの」
「えっ!? どうして、ルーカス様が?」
エミリさんは仕立屋同士の特別な情報ルートがあるらしく、私に教えてくれた。
「もちろん、ソニヤ様というお妃様がいるから、ご自分の名前は出していないわ。だから、王宮からのご注文という形だったけど、注文されたサイズでわかるでしょ」
「ソニヤのサイズではなかったということですか?」
「それもあるけど、ソニヤ様ならドレスを新調なさる時、王宮に仕立屋を呼んで、ゆっくり選ばれるの。王宮で暮らしていると、気軽に買い物もできないでしょ。だから、とても時間をかけるのよ」
「でも、他の令嬢のものという可能性も……」
ヒュランデル夫人は首を横に振った。
「注文を受けたのが、十年前、ウェディングドレスを担当した仕立屋で、サイズを見て、サーラさんのものではと思ったらしいの」
――ルーカス様は今の私のサイズを知らないから、ウェディングドレスを仕立てた店に注文した。それなら、だいたい同じサイズだろうし、王宮からのドレスを請け負う仕立屋なら、腕も悪くない。
私のドレスを仕立てたと知ったら、間違いなくソニヤは激怒する。
困惑した仕立屋が、私と普段着を仕立てているエミリさんの元へ相談にきた――そういうことだろう。
「サーラちゃんも元旦那からドレスを贈られても複雑でしょう? だから、自分とは別の仕立屋が、すでにサーラちゃんのドレスを仕立てましたっていう話を王宮側に、さりげなく伝えてもらったのよ」
その後、王宮からの注文がキャンセルされ、疑惑は確信に変わったということらしい。
――舞踏会は私を糾弾する場だと思っていたけど、ルーカス様はいったいなにを考えているの?
今さら、ルーカス様からドレスを受け取る気になれない。
なにか思惑があるのではと、勘ぐってしまう。
ヒュランデル夫人は貴族階級の知人から噂を聞き、不安な様子だった。
「サーラさん。今のヴィフレア宮廷は、ルーカス様とリアム様の王位継承争いで荒れているから、巻き込まれないように気をつけてね」
ヴィフレア王国の王位継承争いがあるのは、リアムから聞いて知っていたけど、私には関係ないと思っていた。
「大丈夫です。私は魔道具師ですから、王位継承争いとは無関係です」
笑って私は答えたけれど、ヒュランデル夫人もエミリさんも笑っていなかった。
無関係だと思っていたのは私だけで、二人の心配は、舞踏会で現実のものになったのだった。
「サーラさん。舞踏会のドレスの打ち合わせをしましょ!」
賑やかに登場したのは、裏通りに店を構える仕立屋『ブルーベール』の女主人エミリさんとヒュランデル夫人だった。
いったいなにが始まるのか、上品で可憐なヒュランデル夫人まで、エミリさんにつられてハイテンションになっている。
「エミリさん。なんだか荷物が多くないですか?」
舞踏会のドレスやアクセサリーは、ヒュランデル夫人からお借りし、侍女が私の支度を手伝ってくれることになっていた。
だから、エミリさんに注文してあるのは、別のものである。
「うふふふ。まあまあ。詳しい話は後でね。まずは、サーラちゃんに頼まれていた注文の品から渡すわね」
「ありがとうございます」
エミリさんから箱を二つ受け取った。
仕立屋『ブルーベール』は、フランの帽子を購入した店で、私に興味を持ったエミリさんが、開店した直後から、たびたびお店へ訪れてくれている。
今ではすっかりお店の常連さんだ。
お針子の女の子たちも、掘り出し物を探しに、よくお店にやってくるようになった。
エミリさんは金髪に緑の瞳をした美しい人で、ヒュランデル夫人とは同じ年齢である。
二人は話が合うのか仲がよく、身につけるものも流行の最先端を取り入れ、センスがいい。
そして、仕立屋としての腕も確かだ。
だからこそ、仕立屋『ブルーベール』に頼んだのだけど――
「フラン、ラーシュ。ちょっといいですか?」
エミリさんから受け取った箱を手にして、二人を呼んだ。
「サーラ? なにかあった?」
「師匠、お呼びですか?」
集まった二人に、それぞれ箱を渡す。
「これは、頑張っているフランとラーシュに、私からのちょっとしたプレゼントです」
ラーシュには魔道具師が使う革の手袋とエプロン、フランは剣士用の革の手袋。
それぞれ箱の中から取り出した瞬間、二人は目を輝かせた。
「師匠っ! これって、魔道具師の手袋とエプロンですよね?」
「おれのは剣士用の手袋だ!」
二人は大喜びで、お互いの贈り物を見せて自慢し合う。
「フレアリザードの革製品だよな? おれ、本物の傭兵みたいだ!」
「素手だと手の皮がめくれますから、丈夫な手袋がいると思ったんです」
「サーラ、ありがとう! すごく嬉しいよ!」
「師匠。ぼく、頑張ります!」
可愛い二人に、エミリさんとヒュランデル夫人も微笑んだ。
「フレアリザードの加工は難しいのよね。加工されてから、仕立屋には届けられるけど、火色の鱗を取るのが大変らしいわ」
「剣が欠けるくらいだって言いますからね」
革のほうも丈夫で、普通の針だと折れてしまう。
だから、特別な針を使っているらしい。
すべて手縫いの大変な作業だったけど、私の話を聞いたエミリさんは、快く引き受けてくれた。
「それじゃあ、サーラちゃん。本命の箱を開けまーす!」
「本命? 注文したものは、これで終わりですけど……」
「エミリさん早くっ!」
普段は落ち着いた話し方をするヒュランデル夫人まで、大盛り上がりな様子に、なにが始まるのかと『本命』の箱を眺めた、
エミリさんが大きな箱を開け、中身を広げる。
「えっ? ドレス……?」
大きな箱から出てきたのは、深い青色のドレスだった。
夜空に似たドレスには、星粒に見立てた細かい光の魔石が散らばっている。
布が揺れると、光の魔石がキラキラ輝き、とても綺麗だった。
そして、このドレスは、わざわざ光の魔石をビーズほどの大きさまで【粉砕】し、ひとつひとつ縫いつけた手間のかかったドレスだ。
「これをご注文されたのは、なんと宮廷魔術師長リアム様よ! 光の魔石を惜しみ無く使用した贅沢なドレスでしょ。手が震えて、縫いつけるのが大変だったのよ」
浄化の力があると言われる光の魔石は、最上級の護符としても人気で、それをドレスに使うのは、どれだけ贅沢なことなのか、私にもわかる。
「我が『ブルーベール』のお針子たちの力を結集させたドレスなんだから!」
「ドレスにぴったりなアクセサリーは、私が細工師工房にお願いして、デザインを選ばせてもらったのよ。サーラさん、見ていただける?」
ヒュランデル夫人が別の箱から、取り出したのは、光の魔石のネックレスとブレスレット、イヤリング、髪飾りだった。
生地と同じ色の靴もあり、なにもかもが揃えられていた。
「リアム様がわざわざヒュランデル商会まで、足を運ばれて、私にご相談されたの」
「これをリアムが……」
夜色の素敵なドレスを手に取った時、嬉しかったはずなのに、私の心境は複雑だ。
――素敵なドレス。大人っぽくて、光の魔石を豪華につかった特別なドレスなのは、私にだってわかる。
ドレスを握りしめたまま、考え込んでしまった。
このドレスは落ち着いた色はイメージするなら、むしろ私じゃなくて……
「サーラ。これって、あの日の星空だよね」
私の横から顔を覗かせ、ドレスを見たフランが素直な感想を口にした。
「覚えてない? 凍った魔石を溶かした日の夜空だよ!」
興奮しているフランを見て、ヒュランデル夫人が微笑んだ。
「サーラさん。贈り物は贈る人のことを考えて選ぶものよ。リアム様が思っているサーラさんのイメージは、星空なのね」
「うん、わかる。きっとそうだ」
一緒に夜空を眺めていたフランが、確信を持って、強くうなずいた。
――これは、リアムが私のために作ってくれたドレス。
そう思ったら、なぜかホッとした。
「フラン。リアムにお礼を言いたいので、後からクラゲ精霊ちゃんの使い方を教えてくれますか?」
「うん。わかったよ!」
――私のイメージは星空。
リアムの中にある自分の印象が、悪いものじゃなかったからか、とても嬉しかった。
「もぉ~! リアム様ったら、無表情でなにを考えているかわからないけど、舞踏会前にドレス一式を贈っちゃうなんて、案外やるわね!」
「こんな立派なドレスを着ている令嬢は、きっと誰もいないわ。光の魔石ですものね」
少女のように、二人はきゃあきゃあ騒ぎ始めた。
「リアム様の心は、鉄の心! 誰が突破できるの、その心! 近寄る令嬢たちをちぎってはなげ、ちぎってはなげ!」
エミリさんは仕事柄、令嬢たちの噂話をよく聞くらしく、歌うように口ずさむ。
「報われぬ恋心に終止符か? 国王に即位? それとも駆け落ち? 始まる王宮ロマンス!」
そんな事実はなく、かなり創作が混じっているような気がしたけど、エミリさんの勢いに負け、なにも言えなかった。
そろそろ踊り出しそうになっているエミリさんをヒュランデル夫人が止めた。
「待って、エミリさん。サーラさんに言わなくてはいけないことがあるでしょう?」
「私にですか?」
さっきまでの明るい雰囲気が消え、ヒュランデル夫人は心配そうな顔をしている。
「そうだったわ……。実はね、これは知り合いの仕立屋から聞いたのだけど、ルーカス様がサーラちゃんのドレスを頼んでいたらしいの」
「えっ!? どうして、ルーカス様が?」
エミリさんは仕立屋同士の特別な情報ルートがあるらしく、私に教えてくれた。
「もちろん、ソニヤ様というお妃様がいるから、ご自分の名前は出していないわ。だから、王宮からのご注文という形だったけど、注文されたサイズでわかるでしょ」
「ソニヤのサイズではなかったということですか?」
「それもあるけど、ソニヤ様ならドレスを新調なさる時、王宮に仕立屋を呼んで、ゆっくり選ばれるの。王宮で暮らしていると、気軽に買い物もできないでしょ。だから、とても時間をかけるのよ」
「でも、他の令嬢のものという可能性も……」
ヒュランデル夫人は首を横に振った。
「注文を受けたのが、十年前、ウェディングドレスを担当した仕立屋で、サイズを見て、サーラさんのものではと思ったらしいの」
――ルーカス様は今の私のサイズを知らないから、ウェディングドレスを仕立てた店に注文した。それなら、だいたい同じサイズだろうし、王宮からのドレスを請け負う仕立屋なら、腕も悪くない。
私のドレスを仕立てたと知ったら、間違いなくソニヤは激怒する。
困惑した仕立屋が、私と普段着を仕立てているエミリさんの元へ相談にきた――そういうことだろう。
「サーラちゃんも元旦那からドレスを贈られても複雑でしょう? だから、自分とは別の仕立屋が、すでにサーラちゃんのドレスを仕立てましたっていう話を王宮側に、さりげなく伝えてもらったのよ」
その後、王宮からの注文がキャンセルされ、疑惑は確信に変わったということらしい。
――舞踏会は私を糾弾する場だと思っていたけど、ルーカス様はいったいなにを考えているの?
今さら、ルーカス様からドレスを受け取る気になれない。
なにか思惑があるのではと、勘ぐってしまう。
ヒュランデル夫人は貴族階級の知人から噂を聞き、不安な様子だった。
「サーラさん。今のヴィフレア宮廷は、ルーカス様とリアム様の王位継承争いで荒れているから、巻き込まれないように気をつけてね」
ヴィフレア王国の王位継承争いがあるのは、リアムから聞いて知っていたけど、私には関係ないと思っていた。
「大丈夫です。私は魔道具師ですから、王位継承争いとは無関係です」
笑って私は答えたけれど、ヒュランデル夫人もエミリさんも笑っていなかった。
無関係だと思っていたのは私だけで、二人の心配は、舞踏会で現実のものになったのだった。
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